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- 俳句庵 2014年07月 優秀賞発表
- 俳句庵 2014年07月 作品一覧
俳句庵
7月『虫干』全応募作品
(敬称略)
- 東京都 安西 信之
- 露座佛の胎内佛も土用干
- 虫干や今も書架には英和辞書
- あらたふと初学のころの書を曝す
- 空き部屋に大屋久しく風通す
- 傍線の夥しき書を曝しけり
- 北海道 澤野まひる
- 虫干の手の止まりたる遺品かな
- 虫干の衣装干さるる楽屋かな
- 三重県 石川 喜美子
- 雨ばかり 虫干しできずに いらいらと
- 虫干しや 陽のにおいうけ いい気持ち
- 兵庫県 北前 恵嗣
- 虫干しの途中や電話長々と
- 虫干しや恋文端に並べをり
- 千葉県 横井 隆和
- 胸中も晒して新た土用干し
- 虫干しの栞に走る若きメモ
- そよ風に虫干すシーツの読書かな
- 神奈川県 佐々木 僥祉
- 虫干や誂へし祖母の藍好み
- 虫干や翳る座敷に揺れる藍
- 愛知県 石川 順一
- ヴェランダで虫干本と紙ばかり
- 虫干は魔法の風が必要だ
- 雲行きが虫干時間を半分に
- 風水で虫干場所も八通り
- 虫干しが注目されず少し拗ね
- 埼玉県 守田 修治
- どの家も物語ある土用干
- 虫干や祖父の結城に父の染み
- 長生きもいまが峠か土用干
- 書を売って身仕舞い軽く土用干
- 巻落ちの落語全集曝書かな
- 北海道 飯沼 勇一
- 虫干の如来の顔の綻んで
- 夫の香を留めるジャケツ虫干す
- 虫干の背広の胸に紅の跡
- 納戸より鼻歌交じりの虫払い
- 窓を開け書斎と我が身虫干す
- 東京都 安達 健治
- 虫干しや若き親父にそっと触れ
- 虫干しや年一回の懐かしさ
- 虫干しやさまざまなこと飛び交いて
- 虫干しや心模様空模様
- 虫干しをする家も無く子も育ち
- 大阪府 太田 紀子
- 虫干しや能楽堂の展示会
- 虫干しや和綴じの本に紙魚一つ
- 東京都 石見みつを
- 諸肌脱ぎ吾も虫干すひと日かな
- 土用干記念の硬貨眺めをり
- 千葉県 藤原 純夫
- 虫干さんちりあかほこり定年す
- 虫干さんこころのひだのおもてうら
- 虫干や己の虫も追いだせり
- 虫干され出たら帰らぬ仕事虫
- 東京都 鈴木 眞由美
- 虫払すらと着られし去年のこと
- 虫干や母と姉とは衣装持ち
- 風入て羽裏の峨眉の微笑みぬ
- 虫干て袖も通さぬ形見かな
- 栃木県 長浜 良
- 虫干の和服家中に華やぎて
- 虫干の夜は樟脳の香に眠る
- 青春の想い新たに曝書かな
- 虫干して捨てるつもりを覆す
- 富山県 岡野 満
- 曝書する真偽不明の家宝かな
- 虫干しや恋の未練のあれやこれ
- びっしりと線の引かれた書を曝す
- 愛知県 山歩
- 虫干や家康公の逃げし寺
- 本尊は秘仏の寺や土用干
- 虫干の現役頃の一張羅
- 虫干やもう二度と着ることもなく
- 虫干の青い山脈捨てきれず
- 東京都 蘭丸
- 寺の子の玩具も並ぶお風入
- 虫干や写真の人は皆死せり
- 東京都 大槻 実
- 虫干しの 場所も手狭な 日曜日
- 虫干しで 深呼吸する 昭和本
- 虫干しの 知恵を引き継ぐ 誕生日
- 東京都 岩川 容子
- 曝書してしばし昭和の中に居る
- 古着屋のごとく吊るせり虫払い
- 陽と風を使いきったる土用干し
- 虫干しや路地の奥よりカレーの香
- 埼玉県 小玉 節郎
- 虫干しやついに由来の知れた軸
- 虫干しに日向日陰の指示があり
- 虫干しや明治大正昭和まで
- 虫干しや蝿虻蝶に蟻も来る
- 「太陽の季節」どうする虫払い
- 千葉県 隼人
- 青春を読み耽りたり曝書かな
- 書を曝す朱線父の愛読書
- 神奈川県 相模太郎
- 白昼を避けて虫干地獄絵図
- 虫干すガリ版刷りの句集かな
- 虫干や登山のニッカボッカーズ
- 虫干や押入れひと日風通す
- 虫干や探せしものも並べられ
- 埼玉県 哲庵
- 曝書して祖母のへそくり舞ひ落ちる
- 虫干しのチョッキ息子が狙ってる
- 虫干しや大正ロマン匂ひ立つ
- 曝書して青春詩集捨てられず
- 遺産なる骨董どもを土用干し
- 神奈川県 矢神 輝昭
- 虫干しや人の香とも防虫剤
- 虫干しの畳の下から古新聞
- 虫干しや物干し竿のたわみけり
- 大阪府 津田 明美
- 虫干しの蔵戸を開ける軋みかな
- 虫干しや本の折りあと夢のあと
- 虫干しの真中に座して十重二十重
- 虫干しやあの日この日の夢の数
- 千葉県 伊藤 和幸
- 虫干や 少年時代の 宝物
- 虫干や 母の思ひ出 父の影
- 虫干や 昔を語る 通信簿
- 茨城県 坂場 俊仁
- 虫干や甲乙丙の通信簿
- 貰い手のなき全集の曝書かな
- 兵庫県 山地 美智子
- 捨てられぬ亡父の蔵書を土用干し
- 虫干しやもう着るつもりなき和服
- 慕わしや曝書の若き父の文字
- 風入れる夫の使わぬ道具箱
- ポケットに残る半券土用干し
- 神奈川県 井手 浩堂
- 虫干や見覚えのある妻の服
- 虫干に初学の頃の英文法
- 虫干や変色すすむ本の数
- 虫干や古書のにほひも消さむとて
- 埼玉県 井上 寿郎
- 虫干や行間にある小宇宙
- 虫干やまだキューポラの残る街
- 虫干や父に繋がるわが記憶
- 虫干や古地図に残る旧地名
- 虫干や東照宮へと蔵の道
- 千葉県 本間 順子
- 虫干の 単衣ひろげて 旅をまつ
- 山口県 山縣 敏夫
- 遠き日の写真集いま曝しをり
- 亡き父の蔵書を庭に曝しをり
- 黄ばみたる記事に読み入る曝書かな
- 偏屈な父の箪笥の風入れず
- 引越の前に古着の土用干し
- 岡山県 八木五十三
- 虫干やなんだなんだと斑猫
- 曝書して妻に内緒の現れり
- 他愛なき古傷捲る曝書かな
- 東京都 紫雲
- 虫干や こんなとこより 父形見
- 虫干の 胸ポケットに 捜し物
- 東京都 紫晴
- 思い出も 虫干をして 補強する
- 虫干の 立会いするや 風ひとつ
- 東京都 紫風
- 虫干や 数独のごとく 並べ置く
- 虫干や サイズ小さき ものばかり
- 山口県 有田 ひろ子
- 虫干しの形見の着物袖長し
- 神奈川県 山崎 祐一
- 虫干や 晴れの舞台は いつの日か
- 虫干や 母の姿が よみがえる
- 風そよぐ 虫干しの日の 晴れ姿
- 虫干は 年三回の ありがとう
- ありがとう 時が流れの 虫干し日
- 佐賀県 平吉 俊郁
- 体型も保ち背広を虫干しす
- 兵庫県 岸野 孝彦
- 虫干しや風髪流る汨羅江
- 虫干しや潮騒響く瀬戸の里
- 虫干しや祖父の形見の涅槃像
- 虫干しの仕方を誰に教えよう
- 虫干しや記憶の穴にナフタリン
- 神奈川県 川島 欣也
- 眼鏡を上目に遣い曝書かな
- 曝書して繙書の跡を顧みる
- 虫干や臍の緒箱を見つけたり
- 風を入れ押入れの闇開放す
- 土用干し参拾六景へ風流し
- 大阪府 高塚 政宜
- 虫干の恋衣よと叔母言へり
- 東京都 三浦 靖男
- 虫干しや平和憲法むしばまれ
- 老いの身を虫干し粋に散歩かな
- 虫干しや樟脳の香母の顔
- 虫干しと友を誘いて居酒屋へ
- タワ─住まい虫干しいかにただ仰ぎ
- 神奈川県 佐藤 博一
- 虫干しやつい声を出す唐詩選
- 岐阜県 長谷 都代
- 虫干しや防虫剤の効き目なく
- 虫干しの進まぬ部屋の息苦し
- 虫干しや母の匂いの物ばかり
- 虫干しや母と呉服屋通った日
- 母に詫び虫干し終えてたとう紙に
- 大阪府 瀬戸 順治
- 虫干の作法を伝授すると母
- 長野県 木原 登
- 風入の本の中より友の文
- 来し方のいよよ遠のく曝書かな
- 捨てきれぬ母のアルバム土用干
- 虫干の虫小癪ともあはれとも
- 曝書無用電子ブックの世なりけり
- 神奈川県 パラレル
- 虫干しや頁を繰れば十円札
- 東京都 岩崎 美範
- 鍵かけて他人には見せぬ土用干
- 広島県 安冨 正則
- 虫干や箪笥の底の一分銀
- 埼玉県 大野 美波
- 虫干やあやしい書物が気になって
- 虫干の終わったあとの風がいい
- 虫干や虫も元気だ仕方ない
- 虫干の髪かきあげる仕草かな
- 若い子と一緒にやって虫干よ
- 東京都 服部 かつこ
- 虫干の侘しさ竿に 掛けにけり
- 虫干に錆びたる刀光りけり
- 虫干の子育て終り着れるかな
- 埼玉県 岸 保宏
- 子等のもの何も出てこぬ虫干しや
- 虫干しや父の袴をはく羽目に
- 掛け軸をかしこまらせる虫干しや
- 東京都 丸山 清子
- 名立たりし明治文豪虫干しす
- 愛知県 柵木 充義
- 経版木千巻はありお虫干し
- 筆順のわからぬ花押お風入
- 寺領差し下さるる状お風入
- 整理まだつかぬ遺品や虫払
- 読みもせぬ全集ばかり書を曝す
- 神奈川県 佐藤 博一
- 虫干しや捨て難きもの増やしつつ
- 兵庫県 岸下 庄二
- 亡き母の長持ち開き風入れる
- 虫干しの着物にじゃれる児を叱る
- 捨て切れぬ無用の長物土用干し
- 捨て切れぬままに今年も土用干し
- 曝す書の隙間を選び猫歩く
- 大阪府 高塚 政宜
- 虫干に式立会の日取りかな
- 虫干の夜のビールに生き返り
- 虫干の衣を語らぬ三保の松
- 福岡県 紙田 幻草
- 虫干しや針金ハンガー総動員
- 曝書してぱらりと写真現れし
- 合掌の形に畳土用干し
- 神奈川県 佐藤 博一
- 青春を曝すが如く書を曝す
- 北海道 江田 三峰
- 老妻は母の遺品を曝しけり
- 貰ひたる俳書百冊曝しけり
- 書を曝す数多の恥も曝しけり
- 土用干し書の山埋もれ三日間
- 捨てがたき子の卒論を曝しけり
- 東京都 岩崎 美範
- あぶな絵も一枚混じる土用干
- 神奈川県 佐藤 博一
- 虫干しや父の手擦れの広辞苑
- 岐阜県 金子 加行
- 虫干に十年ぶりの探し物
- 虫干の箪笥全段母の物
- 虫干に検閲済みの父の恋
- 虫干の遭難を見し登山靴
- 虫干の天金光る父の本
- 東京都 摩耶
- 虫干しや広げて落つる覚え書き
- 虫干して隅に転がる紙縒りかな
- 神奈川県 佐藤 博一
- 虫干しや俎板曝し裏表
- 熊本県 貝田 ひでを
- 朱線太き中也の詩集土用干
- 夢路画の古き栞や書を曝す
- 引き揚げの柳行李もお風入
- 土用干真偽判らぬ書画のあり
- 土用干大方母の遺品かな
- 愛知県 岩田 勇
- 資本論これが最後の曝書かな
- 家族写真セピア色増す曝書かな
- 虫干や叔父の遺品の海軍帽
- 又一年馬齢重ねる曝書かな
- 断捨離のなじまぬ暮らし土用干
- ブラジル 林 とみ代
- 移住時の思ひ出の品土用干
- 派手な衣装何時しか褪せて虫干す
- 虫干やセビア色なる写真集
- 細々な旅の土産や虫払
- 亡き夫の闘病日記曝書かな
- 大阪府 黄山木
- 白昼に曝す素顔や土用干し
- 白昼の虫干し呪ひ幽霊図
- 虫干しの一石二鳥骨董市
- 新潟県 近藤 博
- 手垢付く歳時記ことに書を曝す
- 虫干せし母の遺せし衣収め
- 書を曝す中に昭和史軍事便
- 虫干せば去年の臭ひす防虫剤
- 虫干や要らぬは棄つか選ぶとす
- 埼玉県 佐藤 茂
- 虫干や岩波文庫資本論
- 神奈川県 むこう
- この香り 虫干をする 時期がきた
- 古の 知恵を込めたる 虫干よ
- 虫干で 新茶の香り なる箪笥
- 虫干しを 忘れた夏の 懺悔あり
- 嫁箪笥 祖母の遣いで 虫干しす
- 京都府 中村 万年青
- 虫干や古いセーター穴二つ
- 虫干の古書懐かしきセピア色
- 虫干や古い日記に手を止めて
- 虫干や亀も甲羅を干す晴れ間
- 虫干や黴に愁ひの無き物を