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- 俳句庵 2016年08月 優秀賞発表
- 俳句庵 2016年08月 作品一覧
俳句庵
8月『残暑』全応募作品
(敬称略)
- 愛知県 古賀 敦子
- 教会の鐘鳴り響く残暑かな
- 宿下駄に漫ろ歩ける残暑かな
- 街頭のポスター褪せし残暑かな
- 交差点の人動き出す残暑かな
- 作務僧の庭を掃きをる残暑かな
- 千葉県 いかさ かずまさ
- 突きあたる道引きかへす残暑かな
- もろ肌に湿るシャツ着る夕間暮
- 石垣の角に座つてゐる残暑
- 兵庫県 山崎ぐずみ
- 宿題を減らす気のなき残暑かな
- 予報士の痩せずに励む残暑かな
- 文机の上片付ける残暑かな
- バザールの投げ売り狙ふ残暑かな
- 残暑撮れと弐拾四駒フィルムかな
- 千葉県 藤原 純夫
- イカロスを焼きし残暑くすぶれり
- 8月が残暑なりしはひと昔
- 節電も建前なりし残暑かな
- 熱溜まりヒートアイランド残暑かな
- 地下鉄の冷房寒し残暑かな
- 京都府 昴弥
- ダリの絵の時計熔けたり残暑なほ
- 千葉県 土井探花
- 屋根裏のぬんと匂へる残暑かな
- 千葉県 山田 香津子
- 新聞紙 束ねる重さ 残暑かな
- 神奈川県 海野 優
- 物売りの声遠ざかる残暑かな
- 日めくりの半ばまで来る残暑かな
- 埼玉県 哲庵
- 屋根薄き仮設住宅残暑の陽
- 芭蕉葉の茶色く裂けし残暑かな
- 携帯の音姦しき残暑かな
- 城壁の崩れ落ちたる残暑かな
- 大残暑ビル全体が呻りをり
- 埼玉県 守田 修治
- 子だくさん纏り付いて残暑かな
- 来ぬバスを待つ間の長き残暑かな
- 秋暑し町内板に訃の報せ
- 船ひとつ見えず一湾残暑かな
- こめかみに梅干しを貼る残暑かな
- 東京都 紫汗
- 健やかな ポケモンGOの 影残暑
- 残暑なお ざるそば海苔も すぐ茹(う)だり
- シャワー後に 体重計へ 乗る残暑
- 東京都 暑泉
- 公園の ベンチは一人 ずつ残暑
- 買い物の ずしりと重き 残暑光
- 残暑なお 蕎麦に多めに 海苔のせる
- 東京都 紫暑
- 残暑なお 寒暖計と 対峙して
- 茶を啜り 愚痴こぼす祖母 残暑かな
- 残暑光 背中に浴びし 招き猫
- 東京都 右田 俊郎
- 俳画付き残暑見舞いの届きけり
- なほしばし残暑に耐へる日のつづく
- じっと耐へひたすら耐へる残暑かな
- 老いの身に厳しき残暑耐へるのみ
- 学び舎は廃校となり残暑かな
- 長野県 伊東 慶子
- 江の島の鬱蒼と浮く残暑かな
- 熊本県 貝田 ひでを
- なんとなく胃の腑の重き残暑かな
- 秋暑し釣果なきまま父戻る
- 縁談の反故となりたり秋暑し
- 秋暑し瓦礫の撤去延びのびに
- 下町に鉄を打つ音秋暑し
- 岡山県 渡辺 牛二
- 無精ひげ剃りて残暑に立ち向かふ
- 山口県 ひろ子
- 義母逝く日残暑のきびし年忌明け
- 水かけて残暑潤す六地蔵
- 赤子泣く残暑に探す母の胸
- 蔓伸びて歩道を覆う残暑かな
- 愛媛県 アリマノミコ
- 天の陽も道に迷える残暑かな
- 神奈川県 重兵衛
- 早口の物売電話秋暑し
- ぞろぞろと歩きスマホや秋暑し
- きびきびと総帆展帆雲の峰
- D51の厚き鋼鈑残暑かな
- 棹竹売りの間延びする声残暑かな
- 東京都 中島 寧寧
- 病む母の修行のごとき残暑かな
- 病む母の残暑乗り越え粥二膳
- 千葉県 隼人
- 湯上りの肌にそよ風残暑かな
- 福島県 いらくさ
- 字の付く住所に残暑見舞いかな
- 染付の草の埃や秋暑し
- 納屋ひとつ取り壊したる餞暑なり
- 松一本枯らして慚愧秋暑し
- 残る暑さ祖母の遺愛の機織り機
- 東京都 岩川 容子
- 返さねばならぬ本積む残暑かな
- 髪一本顔にまつわる残暑かな
- 秋暑しバス席のみなまどろめり
- 解き難き残暑に歩をばゆるめけり
- 三重県 竹田茶人
- 厠にて待ちかまえたる残暑かな
- 影ひとつ動かぬ午後の残暑かな
- 千葉県 都丸 浩美
- 爆心地祈りの鶴の舞ふ残暑
- 一夜だけと云ひて酔ひたる残暑かな
- この残暑打ち砕きたる太鼓あり
- 隅田川に大輪散りて残暑くる
- 義の塩を思ひ起こせし残暑かな
- 岡山県 土屋 徹三
- 木仏に蟻の群がる残暑かな
- 花街に鯉の浮きたる残暑かな
- 大黒の笑い忘れた残暑かな
- 岩砕く雨打つ音や秋暑し
- 大阪府 太田 紀子
- 足許に蚊の声迫る残暑かな
- パソコンのフォント小さき残暑かな
- 残暑の夜子供をしかる父の声
- 愛知県 川俣 周二
- 見上ぐれば空未だ燃ゆる残暑かな
- 食卓の椅子の余りて残暑かな
- 〆切に追はれてをりし残暑かな
- 大阪府 永田
- 碁敵は残暑ぼやくも長考す
- 焙じ茶の熱きを二杯残暑かな
- 茨城県 栗原 和泉
- 雨が止み 暑さだらけだ 汗だくだ
- 東京都 蘭丸
- 光背の後ろに黙す残暑かな
- サヨナラの出待ちのなかの残暑かな
- 埼玉県 小玉 拙郎
- 戦後という二文字の残暑七十年
- 群青のインク手に漏る残暑かな
- 外野手のグラブをはずす残暑なり
- 滋賀県 村田 紀子
- 立ち話あまり弾まぬ残暑かな
- 草を抜く残暑の風に囁かれ
- 山風が残暑飛ばして舞っていく
- 雉の子も青年となる残暑かな
- 友に会う残暑に耐えた花一輪
- ブラジル 林 とみ代
- 残暑とて義理ある用の断れず
- 山の宿去りがたきかな秋暑し
- 窓を開け風を通して残暑断つ
- 孫達の寝相悪しきや残暑の夜
- 残暑後に古里訪ふ旅企画
- ブラジル 玉田 千代美
- あるがまま生きて残暑を忍び居り
- 残暑の来ると思ひつ病み居りし
- 気がかりの一つは消えて残暑かな
- 明方の夢に彩無き残暑かな
- 宮城県 遠藤 正寿
- スカートに風入れる野の残暑かな
- 漬樽に梅紫蘇浸る残暑かな
- 栃木県 優空(はるく)
- 羽蟲の音絶えぬ小窓も残暑なり
- 乾麺の木箱にあまり残暑かな
- 東京都 櫻井 光
- 耐へ難きを耐へいまだに残暑かな
- 植物は語らずに耐ふ残暑かな
- 千葉県 玉井裕遊
- 色褪せしシャツ若者の残暑かな
- 球場のベンチの隅の残暑かな
- 鉄道の曲がりくねって残暑かな
- コンビカフェ銀杏並木の残暑かな
- 浮き玉の影ゆらゆらと残暑かな
- 静岡県 平野 宏
- 工房にろくろ乾きぬ残暑かな
- 喜寿の身の生きる戦や秋暑し
- スクイズのホームは遠き残暑かな
- 秋暑し老いしと思ふ独語癖
- 残暑かな見放されしか勝負神
- 和歌山県 中浴 智美
- ちぐはぐな会話の増ゆる残暑かな
- 新潟県 佐藤 繁正
- 憲法に訛りありとや残暑かな
- 裏庭の茶飲み話も残暑かな
- 東京都 中田ちこう
- 殉教の残像走る残暑かな
- 栃木県 長浜 良
- 亜麻色に替へし長袖残暑かな
- 東京へ向ふ電車の中残暑
- 下校子の列の乱るる残暑かな
- 物売の露地に来ている残暑かな
- 北海道 樋口 範子
- 帰り来て 夕風に座す 残暑かな
- 喉元に 泡立つ水を 残暑かな
- するすると 残暑を刻む 心電図
- 秋暑し どこを切れども 熱の色
- 秋暑し 保冷車に乗り 当て所無し
- 東京都 豊 宣光
- 亡き友の残暑見舞の遺墨かな
- 船影や残暑の大き日の沈む
- 上段の構へ残暑を打ち払ふ
- 夜ごとに風のやさしき残暑かな
- 一杯の水に残暑の消えにけり
- 東京都 石井 まゆみ
- 変え下着今日も一枚残暑かな
- 棟梁のうなじに光る残暑かな
- 昼餉過ぎに残暑うんざり変下着
- 鳩の群れ灯籠の影に残暑かな
- 乳くわえベビーの鼻に残暑かな
- 埼玉県 琴吹痴庵
- 風見鶏微動だにせぬ残暑かな
- 脛に傷叩けば埃ああ残暑
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- エッシャーの密画だまし絵残暑かな
- 約束の一つ残暑の陶器市
- 屋根にある土嚢を下ろす残暑かな
- 考(ちち)の靴仕舞う残暑のケアホーム
- 葬列に流るるジャズや秋暑し
- 奈良県 平松洋子
- 木陰にて話し終わらぬ残暑なり
- 夏野菜食べ尽くしての残暑かな
- なんとなく席譲られて残暑かな
- 神奈川県 龍野 ひろし
- 爆心の片足鳥居秋暑し
- 洛中に支那人の声秋暑し
- 手と足で泣きし赤子や残暑なほ
- 地下道に昭和の匂ひ残暑なほ
- 神奈川県 成田 あつ子
- 潦濁りて街の残暑かな
- 旅終へし残暑の街へ一歩かな
- 断捨離に悔いの残るる残暑かな
- 幾たびも眼鏡拭きゐる残暑かな
- 前掛けの紐よれよれの残暑かな
- 愛知県 浅野 敏子
- 一の字の猫をまたぎぬ残暑かな
- ぬか床の糠のやはやは残暑かな
- 埼玉県 やまちゃん
- 飽き飽きの一日過ぐるる残暑かな
- 雑踏で残る暑さに迷ひけり
- 決め事も忘るるままの残暑かな
- コーヒーを残る暑さと飲みにけり
- 季の神の怠慢なるや秋暑し
- 岐阜県 ときめき人
- せせらぎに裾をまくりて残暑かな
- 千葉県 横井 隆和
- 野には風残暑の終わる頃が好き
- 岡山県 岸野 洋介
- 一句添え残暑見舞いの返書かな
- 残暑にも元気がとりえ老い鰥夫
- 一雨に残暑やわらぐ苫屋かな
- 鳴きあって鴉残暑のごみ突く
- 縁台の将棋に負けて秋暑し
- 三重県 後藤 允孝
- 干網の匂ふ砂浜残暑かな
- やうやうに過ぐる残暑のにわか雨
- 薄縁に身を委ねたる残暑かな
- 古書積まれセピア色して残暑光
- 残暑なほ厳しき中の野良仕事
- 岡山県 名木田 純子
- 秋暑しせめて挨拶歯切れよく
- 逃げ込みし森の中より見る残暑
- 秋暑し遅れがちなる花時計
- 東京都 楠田 伸彦
- 掌に陽射しを置きし残暑かな
- 風列の暫し乱れて残暑かな
- 故郷の遠のいていく残暑かな
- 神奈川県 川島 欣也
- 口の端にかける残暑の長電話
- 電柱の動く残暑の小蔭かな
- 残暑なお上毛三山雲を呼び
- 快晴や残暑はじまる朝ぼらけ
- 電車バス降りる残暑の迎えうけ
- 大阪府 樽見 拓
- 機織りに残暑まどろむリズムかな
- ネオン街残暑に惑い朦朧と
- SLや残暑混じりの煙吐き
- アメ横の残暑にむせび声や交い
- 鴨川や残暑の京都抜けてゆき
- 神奈川県 矢神 輝昭
- 手付かずの宿題よぎる残暑かな
- 太公望浮子の動かぬ残暑かな
- 旅疲れ芭蕉の像に残暑かな
- 檻の虎右往左往の残暑かな
- 連れられてデパート巡り残暑かな
- 三重県 吉田 博實
- 海の家の旗のでれりと残暑かな
- フナムシの歩行忙しき残暑かな
- 波ぎはに貝打ち上げられて残暑かな
- 秋暑しサーフボードの深き疵
- さそり座のアンタレースや秋暑
- 東京都 雨不埒
- 校庭に人影もなし残暑かな
- 洗濯や残暑のお陰で数こなし
- 家中に逃げる場所なし残暑かな
- 公園に声も響かぬ残暑かな
- 赤信号長く感じて残暑かな
- 富山県 津田 明美
- ご無沙汰の残暑見舞いが届きけり
- 名所へとガイドの旗や秋暑し
- 気怠さを纏うがごとき残暑かな
- 神奈川県 猪狩千次郎
- 身の上の話にもどる残暑かな
- 棒キャンデー箸にも使ふ残暑かな
- 手拭ひの端ほつれたる残暑かな
- 灯台のなほも点らぬ残暑かな
- 革靴に畳に残る暑さかな
- 埼玉県 櫻井 玄次郎
- 蕎麦啜る箸の重きが残暑かな
- 愛知県 佐藤 三郎
- 水着あと暑さの土産残暑かな
- 網張りて落鮎狙う残暑かな
- 盆すぎて日傘が並ぶ特売日
- 山口県 山縣 敏夫
- クーデターニュース飛び込む残暑かな
- 松山の予選落ち聞く残暑かな
- 秋暑しパチンコ店に客集う
- スーパーにへたり込む客秋暑し
- 残暑いまテレビニュースの華となる
- 神奈川県 塚本 治彦
- 紙おむつはいて寝る夜の残暑かな
- 秋暑し老の小便長々と
- 秋暑し焼き場にかかる大時計
- 失禁の雑巾がけの残暑かな
- 閉ぢこもる便秘の厠残暑かな
- 東京都 三浦 靖男
- かあさんやいかが残暑どぜう鍋
- 残暑やうなぎやの暖簾焦がしおり
- 残暑は冷麦がよしでも飽きた
- もつ鍋の煮たぎる地獄残暑かな
- 焼き鳥やけむり地を這い残暑かな
- 大阪府 森村 冨美子
- バス降りて散らばる残暑身にうけし
- 空眺め一雨望む残暑かな
- 最北へ残暑の見舞い書いており
- 神奈川県 泉水
- トンネルを抜ければ故郷残暑の香
- 里山の噴井ほとりに残暑避け
- 枯葉乗せ水面も残暑照り返し
- まだ残暑故郷より来て街の道
- 暑し秋街路樹の陰選びつつ
- 東京都 岩崎 美範
- 挨拶を目と目で済ます残暑かな
- ひもすがら母の愚痴聞く残暑かな
- 孫四人どつと訪ひ来る残暑かな
- 九回裏二死満塁の残暑かな
- 茨城県 ―
- ひとりカフエ和みの時間残暑かな
- ワクワクと白ワンピース残暑かな
- オーボエで奏でる未完残暑かな
- 秋暑 しイチゴジャムよりママレ-ド
- 最後までキラキラキラと残暑かは
- 大阪府 椋本望生
- 円光を放つ亀頭や秋暑し
- 大飛球あわや残暑の火の中に
- 大鍋にカレーを煮込む残暑かな
- 矢印に入るや残暑の大渋滞
- 静岡県 柳谷 益弘
- ゴーヤの葉隠しきれない残暑かな
- 神奈川県 井手浩堂
- 降り立ちて駅のホームの残暑かな
- 路地ひとつ曲がりそこねて秋暑し
- 残暑なほ手紙の返事のびのびに
- 立話長引いてをり街残暑
- 番犬の吠ゆる素振りもなく残暑
- 茨城県 大洋太郎
- 残暑はぐらかすつもりの親父ギャグ
- 車椅子押し和らげる残暑かな
- 薬瓶青き炎の残暑光
- 言ひ足りぬ思ひ残暑の飛行雲
- がぶ飲みのカルキが臭ふ残
- 神奈川県 佐藤 博一
- 昨日言ひ今日も言ひ合ふ残暑かな
- バスを待つ列の後ろにある残暑
- 石段の一段ごとの残暑かな
- 雑然と机上に積まれし残暑かな
- 温暖化進む地球の残暑かな
- 香港 インイン
- 買って来たセーター着ずに残暑かな
- 福岡県 西山 勝男
- 焼香のけむり染み入る残暑かな
- 濡れ足に砂浜歩く残暑かな
- 老犬の吐息あらだつ残暑かな
- 残暑なほ水禍の跡をまざまざと
- 胆を据え野良へ下り立つ残暑かな
- 滋賀県 東野 了
- シーサーの歯を食ひしばる残暑かな
- 残暑なか上がって降りる歩道橋
- 母訪へばあんたはだれといふ残暑
- 飛石の石の不揃ひ庭残暑
- 猫の目の少しずれたる残暑かな
- 東京都 直木 葉子
- 子の頬のおべんとつまむ残暑かな
- 滋賀県 入野 隆治
- つくつくの これが最後と 鳴く残暑
- つくつくの 別れが響く 残暑かな
- 雲ひとつ 想い出残る 残暑かな
- 影深く 残暑に忍ぶ 秋夕暮れ
- 山口県 佐藤洋
- 言ひわけも口ひらかずに残暑かな
- 行つて来ゐ今日は帰りの残暑かな
- 神奈川県 ―
- 亡き父母に告げたる古稀や秋暑し
- 福井県 半田 信和
- やるべきとやりたいことと残暑かな
- 神奈川県 河野 肇
- 主待つ犬吠ゆる夜や秋暑し
- 小さき蛾の書架に飛び入る残暑かな
- ごみの日のカラス呼び合ふ残暑かな
- 美男美女だけの選挙や秋暑し
- 舌を焼く珈琲を欲る残暑かな
- 京都府 宮脇 詩織
- もう少し 風鈴の音で 眠りたい
- 秋海苔が 美味く感じる 気温かな
- 不意に来る 残暑見舞いに 胸弾み
- 隣人の 蚊を叩く音 うめき声
- 福岡県 紙田幻草
- 秋暑し年金生活の身なれども
- 思はずも口に出したる残暑かな
- 残暑見舞普通ハガキで返信す
- なす事の無き毎日や秋暑し
- 上半身下着で過ごす残暑かな
- 茨城県 文海胡
- 達筆な 残暑見舞いに 見る決意
- 残暑にて 日暮れまで待つ 犬散歩
- 残暑超え 次の季節の 植木鉢
- 宿題の 済まぬ夢見る 残暑かな
- 母想う 残暑厳しき 生まれ月
- 兵庫県 岸野 孝彦
- 逝く人を惜しむがごとき残暑かな
- 弔いの水琴窟の残暑かな
- 葬儀終え駅を重ねし残暑かな
- 試験終え抜け殻となる残暑かな
- 奥穂より紀美子平の残暑かな
- 東京都 かつこ
- 奥の間の畳が焼ける残暑かな
- 通帳の残高かすむ残暑かな
- 東京都 石川 昇
- 日捲りを剥がして絶える残暑かな
- 残暑とて高校球児の土まみれ
- 老いの身に何がどうしてこの残暑
- 山形県 白雅
- 秋暑し思い出せずにうろうろす
- 雑草や残暑の中で生き生きと
- 年老いし汗さえみせぬ残暑かな
- こうろぎととも寝する残暑かな
- 大阪府 太田 省三
- 極楽に遠き御堂の残暑かな
- 遮断機の音に残暑の極まれり
- 大盛の辛口カレー秋暑し
- トラックの荷台に丸太秋暑し
- 窓開けて残暑の風を逃しけり
- 大阪府 瀬戸 順治
- 残暑今スカイツリーに果てにけり
- 埼玉県 岸 保宏
- 野良犬も日陰を選ぶ残暑かな
- 郷の母又思う頃残暑かな
- 拡声器残暑二倍三倍に
- 京都府 欲句歩
- 見舞来て気遣いされている残暑
- 東京都 沖田顫童
- 秋暑し神保町の交差点
- 宮城県 林田 正光
- 絵手紙の残暑見舞いを受け取りぬ
- メニュー見て冷やし中華といふ残暑
- 残暑かなクーラー止まる午後六時
- 残暑かな台風一過その後に
- 残暑なお厳しくなりぬ甲子
- 兵庫県 岸下 庄二
- 自治会の議事の進まぬ残暑かな
- 野良の猫河岸の残暑をさ迷ひぬ
- 残暑にもただ黙々と盲導犬
- 辻違へ残暑の中を引き返す
- 風見鶏ゆるり振り向く残暑かな
- 東京都 西谷まさる
- 秋を待つ砂のほこりの薄茶かな
- 空蝉や今宵そなたと燗の酒
- うつせみやさやかなる葉のレクイエム
- 一陣のせみの抜け殻風車
- 大回り蝉の脱け殻蟻の道
- 千葉県 柊二
- 火の国の城に攻入る残暑なお
- 静岡県 金子加行
- 耐へ抜きて残暑の週の金曜日
- 電気代なほも食ひ込む残暑かな
- 残暑なほ職探す身のスーツかな
- 厳しきと残暑みな言ふ客の来し
- 残暑なほ工期遅れしビル伸びる
- 長野県 木原 登
- 桜古木の脂うつくしき残暑かな
- 磨崖仏残る暑さにおはしけり
- 赤松のひとしほ赤き残暑光
- まつさらな切株三つ秋暑し
- 一病に一病ふえし残暑かな
- 東京都 笹木 弘
- 両国に力士行き交ふ残暑かな
- 喫水線すれすれに揺る残暑かな
- 平行の線路が光る残暑かな
- 俳句して元気な残暑見舞かな
- 隣からカレーの匂ふ残暑かな
- 東京都 内藤羊皐
- 少年の腓に勁き残暑かな
- 古書街にカレーの匂ふ残暑かな
- 秋暑し母の忌日の水塔婆
- 秋暑し厠に出でぬなめくぢり
- 逆縁の葬となりたる残暑かな
- 愛知県 岩田 勇
- 酷暑耐へ一息つきて残暑かな
- 痩身にこたへる秋の暑さかな
- 豆腐屋のラッパかするる残暑かな
- 警官の帽子のあみだ秋暑し
- 秋暑し長き読経の終はらざる
- 愛知県 紫四季兵衛
- 晩酌の量を気にする残暑かな
- ゆとりには残暑の意味すら解るまい
- 特別な日の空に入る残暑かな
- 残る命(めい)咲き競べかな残暑の日
- 残暑の日名も知らぬ花見て涙
- 埼玉県 飯塚 璋
- 抗ガン剤窓に残暑の照り返し。
- 新潟県 近藤 博
- 季は移りなほも不快な残暑かな
- 寝ねがてや一再閨離る残暑の夜
- 日の暮るに残る暑さのもどかしく
- 退けもせでいつに終はるかこの残暑
- 夕まけてなほも居座る残暑かな
- 千葉県 伊藤 博康
- 溜息と愚痴が混ざりて秋暑し
- 暦には残暑終りし文字の無し
- 日頃見ぬ温度計見る残暑かな
- 人に会ひまず苦笑い秋暑し
- 力無くカーテン下がる残暑かな
- 宮城県 石川 初子
- 宿題のまだ終わらない残暑かな
- 窮屈の文字を見ている残暑かな
- 神奈川県 白銀
- 遺詠残る 猛暑日の汗 口惜しず
- 石清水 敲いて渡る 残暑の影
- 風鈴火山 熱さあまり 目を覚ます
- 耳たぶに残る 汗まみれになる 祖母の残像
- 過去未来 疎開の遺影 自衛権
- 神奈川県 森山 茂
- 点滴の耐え難き耐え残暑かな
- 東京都 滝 慧
- 汗ばんだビラ手渡されまだ残暑
- 眼に汗のしみる残暑の別れあり
- 残暑ゆえ輪ゴムでくくる母の髪
- 残暑の気ひきしめパトカーかけぬける
- 残暑の美子は足の爪黄に染めて
- 茨城県 塚本 洋子
- 風鈴に暑さのこして夏終わる
- 神奈川県 髙梨 裕
- 晩学や残暑休みの欲しくなり
- 遠来の客黒を着る残暑中
- 出品の筆ままならぬ残暑なり
- 祖母の背に残る暑さを労いし
- プロ野球残暑の空へ快打かな
- 京都府 中村 万年青
- 首筋につらつらまとふ残暑かな
- 氷屋の旗も汗かく残暑かな
- かき氷食べずに惜しむ残暑かな
- 地蔵会や大人忙しい残暑かな
- 生ぬるひ湯船に浸かる残暑かな
- 大阪府 津田 明美
- 一陣の風を切り取る残暑かな
- 風過ぎて残暑をたたむ写真集
- 少年の挑戦終わる残暑かな