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俳句庵
9月『秋彼岸』全応募作品
(敬称略)
- 岐阜県 金子加行
- 寺の子のピアノの音や]秋彼岸
- 一俵の米を貰ふや秋彼岸
- 父祖眠る杉の大樹や秋彼岸
- 回し読む父の恋文秋彼岸
- 説法の訛りなつかし秋彼岸
- 兵庫県 はなちる
- 秋彼岸独り登りし霊峰に
- 秋彼岸白檀香る祖母の服
- 供花揺れて報告ありき秋彼岸
- 古里や墓碑銘連なる秋彼岸
- 畦道も平安の世や秋彼岸
- 愛知県 遊泉(ゆうせん)
- 寛解の妻の白髪(しらが)や秋彼岸
- 会報に目立つ訃報や秋彼岸
- 剃り痕の髭のまばらや秋彼岸
- 遠き日の家族写真や秋彼岸
- 散歩する犬の和みて秋彼岸
- 千葉県 宇都宮正
- 割腹の将の碑に供花秋彼岸
- 無縁墓を穿つ破砕機秋彼岸
- 墓誌の記に母と継母秋彼岸
- 大阪府 金成愛
- ながらくの御無音ゆるす秋彼岸
- 神奈川県 白銀
- 秋彼岸で 故郷へ逝く 弔い日
- 牡丹餅は すってんころんげ 秋彼岸
- 彼岸花の 赤曼寿紗華 秋彼岸で
- 秋彼岸 雑木林で 彼岸参り
- 秋彼岸 我が心の思い 胸咽ぶ
- 新潟県 近藤博
- 墓洗ひ心さやけし秋彼岸
- さびしさを味はひ初むる秋彼岸
- 昼と夜ともに均しき秋彼岸
- 閑かなる寺領賑はし秋彼岸
- 千葉県 柊二
- 路線バス花束抱え秋彼岸
- 大分県 小野山 道山
- 秋彼岸仏花の野草手折りたり
- 秋彼岸墓石に掛くる般若湯
- 秋彼岸出湯で落す娑婆の垢
- 秋彼岸仏間の遺影セピア色
- 若院家(わかいんげ)口称(くしよう)念仏秋彼岸
- 愛知県 西谷寿
- 秋彼岸ひっそりと泣いて友送る
- 露と消え夫を見送る秋彼岸
- 涙かれ記憶うすれし秋彼岸
- 遺産分け兄と縁断つ秋彼岸
- 涙ふき笑って見送る秋彼岸
- 山口県 ひろ子
- 積み上げた無縁菩薩や秋彼岸
- 歳月の重み憂いて秋彼岸
- 荒みたる墓地の清めや秋彼岸
- 線香の燻らす風や秋彼岸
- 東京都 石川昇
- 徘徊も今は思い出秋彼岸
- 門柱に残る父の名秋彼岸
- 愛媛県 渡邊國夫
- 老いたれば人の恋しき秋彼岸
- 禅苑の修復なりて秋彼岸
- 紅茶派も緑茶派もをり秋彼岸
- 遠来の友は饒舌秋彼岸
- 喜寿祝ぎて後の彼岸の同期会
- 大阪府 藤田康子
- 秋彼岸銀杏の葉舞う本能寺
- 秋彼岸信長公を横切りて
- 秋彼岸他人には一人言に見え
- 三重県 平谷富之
- 秋彼岸また来るよと言い墓の前
- 秋彼岸我を守ってご先祖様
- 東京都 内藤羊皐
- 秋彼岸父に遺愛のトルコ帽
- 剥製の眼爛々秋彼岸
- 秋彼岸閼伽井の雫毀ちたり
- 円らかに麒麟糞りをる秋彼岸
- 秋彼岸母はおはぎを大振に
- 長野県 木原登
- ゆく雲に心あそばす秋彼岸
- 而してわれも喜寿なる秋彼岸
- 赤松の夕べ明るき秋彼岸
- 秋彼岸日本蜜蜂墓に群れ
- 野の花のなべていとしき秋彼岸
- 京都府 欲句歩
- 言わぬのに聞かれし弱音秋彼岸
- 秋彼岸父母の拓いた田圃道
- 一人来てとんぼ返りや秋彼岸
- 宮城県 林田正光
- 故里に直立不動秋彼岸
- ひとり減りふたり減りゆく秋彼岸
- 秋彼岸見知らぬ老女ひとりをり
- 愛媛県 向井桐華
- 母に告ぐ また帰られん秋彼岸
- 山寺のだんだら坂や秋彼岸
- 戒名の墓誌に増ゆるや秋彼岸
- 神奈川県 月野木 若菜
- 大正のハイカラ偲び秋彼岸
- 秋彼岸墓石は白き大理石
- 秋彼岸飛行機雲の一直線
- 秋彼岸継ぎたる人のなけれども
- 湘南の入江見下ろし秋彼岸
- 神奈川県 月野木潤子
- 墓碑銘は女ばかりや秋彼岸
- 隣り合ふ墓も参りて秋彼岸
- 小流れのさざめき後の彼岸かな
- 般若湯たづさへ秋の彼岸かな
- 閼伽桶に風のゆらぎや秋彼岸
- 千葉県 伊藤博康
- 参道の光和らぐ秋彼岸
- 甍にも柔かき陽の秋彼岸
- 強がりを一枚脱ぎし秋彼岸
- 秋彼岸廊下に寝入る猫の腹
- 秋彼岸足取り軽き通学路
- 埼玉県 岸保宏
- 秋彼岸折り紙の鶴また増えて
- 故郷の僧もなまりし秋彼岸
- 秋彼岸単行本が進むなり
- 秋彼岸霧雨濡らす遍路道
- けもの道掻き分け進む秋彼岸
- 兵庫県 紫 桔梗
- 寂聴の説教に沸く秋彼岸
- はらからの集ふ生家や秋彼岸
- 万屋で線香を買ふ秋彼岸
- 早足の僧の行き交ふ秋彼岸
- 秋彼岸墓所に臨時の駐車場
- 神奈川県 佐藤博一
- 幼名で呼ばれ振り向く秋彼岸
- 忘れるも供養の一つ秋彼岸
- 三世代揃い詣でる秋彼岸
- 逢いたきは亡き人ばかり秋彼岸
- 香煙の絶えぬ境内あき彼岸
- 宮城県 福田良光
- 秋彼岸お萩を待ちて墓掃除
- 塵ひとつ無き境内や秋彼岸
- 子ども等の歓声響き秋彼岸
- 次世代の人ら行き交う秋彼岸
- 六地蔵の迎えを受けて秋彼岸
- 愛知県 斉藤浩美
- 秋彼岸野の花摘みて供華とする
- 水子仏ミルクを供え秋彼岸
- 廃れたるここも無住寺秋彼岸
- 慰霊碑へ慰霊碑へと秋彼岸
- 哭くことは諦めに似て秋彼岸
- 埼玉県 飯塚璋
- 秋彼岸父の好物吟醸酒
- 愛知県 新美達夫
- 御萩食ふ義務の如くに秋彼岸
- 老の私語咎むもならず秋彼岸
- 兵庫県 噂野アンドゥー
- 餡子餅 暑さ寒さも 彼岸まで
- 秋彼岸 死者に手向ける オルフェンズ
- 秋彼岸 おはぎぼたもち 論争し
- ヒガンバナ 血液黒く 染める文字
- 墓の前 一輪咲いた ヒガンバナ
- 山梨県 天野昭正
- 初めての遠祖の墓参秋彼岸
- 秋彼岸人影まばら山の墓
- 魚の目や杖が頼りの秋彼岸
- 病む友のふるさと遠き秋彼岸
- 供へ物鴉が待つや秋彼岸
- 愛媛県 中川正子
- 鈴棒の重さ響くや秋彼岸
- 秋彼岸墓参の四世代へ風
- 秋彼岸伯父は戦病死にて終ふ
- 兵庫県 岸野孝彦
- 限界の村は紫秋彼岸
- 蝋燭の炎庇いし秋彼岸
- 逆打ちや大師の里の秋彼岸
- フルートの音色も侘し秋彼岸
- 忠魂碑蕭条の雨秋彼岸
- 東京都 くれいじいそると
- 秋彼岸隣の墓のなくなりて
- 住職に久々に会ふ秋彼岸
- 秋彼岸小さき地蔵に手を合わせ
- 墓石の文字まで磨き秋彼岸
- 父好きなヤクルト供へ秋彼岸
- 神奈川県 川島欣也
- 店先に仏花そろう秋彼岸
- 秀峰や雲をひとはけ秋彼岸
- 秋彼岸檀家をまわる高級車
- 秋彼岸墓碑に彫られし新仏
- 散骨の船や出てゆく秋彼岸
- 山口県 山縣敏夫
- 愛犬をお供に参る秋彼岸
- 秋彼岸家族を連れて里帰り
- 秋彼岸孫の手を引き保育園
- 連れ合いと数珠を片手に秋彼岸
- 連れ合いと線香持って秋彼岸
- 東京都 笹木弘
- 閼伽桶の水に宇宙や秋彼岸
- 天国と交信したる秋彼岸
- 秋彼岸硯の海が鎮まれり
- 竹林の風に和らぐ秋彼岸
- 母の味やっと出来たよ秋彼岸
- 神奈川県 猪狩 千次郎
- 秋彼岸力士手形の彫り深く
- 父握る寿司大らかに秋彼岸
- 秋彼岸閼伽のひとつのくわりんたう
- 秋彼岸もんじやのたねで字を書きぬ
- 秋彼岸恩師が僧となる日かな
- 東京都 岩崎美範
- 穏やかに海の暮れゆく秋彼岸
- 愁ひなき妣の声する秋彼岸
- 団子屋に行列できる秋彼岸
- 秋彼岸父母の位牌をそつと拭く
- 故郷に帰る家なし秋彼岸
- 兵庫県 山地美智子
- 忘れそうな約束メモる秋彼岸
- 死仕度進まず呆け秋彼岸
- 永らえて用なき身なり秋彼岸
- 死に方もままにはならず秋彼岸
- 老妻の意見も聞くや秋彼岸
- 神奈川県 守安雄介
- 秋彼岸三年振りに遺影拭く
- 俗名の死産の兄や秋彼岸
- 盆花を労ろうている秋彼岸
- 秋彼岸クルスの姉へ花供う
- 秋彼岸光速越ゆる物否定
- 東京都 伊藤はな
- 雑草の命をむしる秋彼岸
- 秋彼岸西より風の吹きにけり
- この世にも地獄のありぬ秋彼岸
- 今生の生者の集ふ秋彼岸
- をりをりに母の所作でる秋彼岸
- 滋賀県 東野了
- 青空に幣舞ひ上がる秋彼岸
- 秋彼岸母よりおはぎ届きけり
- 山のもの野のもの供へ秋彼岸
- 秋彼岸妻に長居の客二人
- 白髪に正午の日射し秋彼岸
- 神奈川県 井手浩堂
- 特攻機発ちし知覧や秋彼岸
- 特攻花多きこの道秋彼岸
- 父母の墓遠のく思ひ秋彼岸
- 県境の山を雲越ゆ秋彼岸
- 故郷のなまりやはらか秋彼岸
- 埼玉県 青木泰山
- 父母との暮らし懐かし秋彼岸
- 亡き父や鉄路一筋秋彼岸
- 奈良県 一人坊
- 秋彼岸 偲びギターは 無縁坂
- 秋彼岸 夜半に聴き入る 父の謡
- 里帰り 鱚釣り控え 秋彼岸
- 千葉県 野木編
- 秋彼岸 母の好物 素甘あり
- 秋彼岸 二葉の写真 並べいて
- 母遺す 線香烟る 秋彼岸
- 兵庫県 堤輝行
- 彼岸花 父母思い 墓参り
- 墓参り 彼岸花咲き 思い出に
- 東京都 坂田誠太郎
- 秋彼岸昔変わらぬ丘の道
- 野菊手に丘の細道秋彼岸
- 屋敷森遠くに見えて秋彼岸
- 香焚きて空の広さや秋彼岸
- 故郷はまた来年か秋彼岸
- 神奈川県 塚本治彦
- 誰も来ぬ永代墓地や秋彼岸
- 分譲の墓地の看板秋彼岸
- 千の墓洗ひをる雨秋彼岸
- 小坊主の短き袈裟や秋彼岸
- 園長兼和尚の多忙秋彼岸
- 東京都 佐藤博重
- 広縁に雨のこゑ聴く秋彼岸
- 硝子器の水膨らめる秋彼岸
- 東京都 住澤義英
- 義母見舞い亡母恋しい秋彼岸
- 里帰りおやきを供え秋彼岸
- 亡き人の偲ぶ落語や秋彼岸
- 坐布当てて和尚の喝で秋彼岸
- 釣り人や釣果無くとも秋彼岸
- 三重県 遊眠
- オカリナは「少年時代」秋彼岸
- 秋彼岸母の十八番の「涙そうそう」
- 秋彼岸父の遺品のハーモニカ
- 和太鼓の連打波間へ秋彼岸
- 神奈川県 矢神輝昭
- 秋彼岸釣り竿並べ爺と孫
- 錦繍の妻を偲びて秋彼岸
- 秋彼岸天下に轟く演習音
- 秋彼岸死者ともどもの宴かな
- 秋彼岸雨降るなんぞ誰そ思ふ
- 東京都 中田ちこう
- 礫つみし墓沈黙し秋彼岸
- 墓守の像の跫音秋彼岸
- 兵庫県 登るひと
- 炎昼を潜り昭和の生き字引
- 東京都 右田俊郎
- また一軒廃屋となる秋彼岸
- 住職も世代交代秋彼岸
- お地蔵の緋の前垂れや秋彼岸
- 秋彼岸気になる人に寺で遭ふ
- 秋彼岸故郷に集ふ同級会
- ブラジル 林とみ代
- 長生きのこつに談笑秋彼岸
- 秋彼岸夫の遺せし闘病記
- 亡き父の旅行記探る秋彼岸
- 親子集ふよすがとなりて秋彼岸
- 移住史の節目を祝ふ秋彼岸
- 埼玉県 よしこ
- 久に訪ふ兄の墓守秋彼岸
- 手料理の小皿に揃ふ秋彼岸
- 秋彼岸人ぬくもり残る椅子
- 行きずりに目礼交はす秋彼岸
- 秋彼岸こちらの岸に風そよぐ
- 福岡県 西山勝男
- 発心の札所打ちつぐ秋彼岸
- しづしづと秘仏に見ゆ秋彼岸
- 大根撒く秋の彼岸を目途として
- 父になき余命しみじみ秋彼岸
- 香を薫く村の骨堂秋彼岸
- 兵庫県 西行法師
- 朝露の草刈る足下に彼岸花
- 父や母眠りし墓前秋彼岸
- 東京都 飯塚佳代
- それぞれの祈りのかたち秋彼岸
- 秋彼岸猫の鈴音きは立ちぬ
- 秋彼岸ひとり暮らしの咳ひとつ
- 大阪府 津田明美
- 落日の鳥居のかなた秋彼岸
- 母逝きし日々も均して秋彼岸
- 在りし日の薄墨色に秋彼岸
- 秋彼岸ゆっくり戻る車椅子
- 山門を急いでくぐる秋彼岸
- 京都府 村田稔子
- 秋彼岸 郷里の空に 手を合わす
- 手桶だな 収まる暇なし 秋彼岸
- 蒼空を ひこうき雲や 秋彼岸
- 秋彼岸 赤いあぜ道 孫笑う
- 神奈川県 原川泉水
- 秋彼岸石肌拭いて風あらた
- 秋彼岸香に想う幾十年
- 香煙に故人を偲ぶ秋彼岸
- 秋彼岸炭火の魚煙なつかしむ
- 秋彼岸遺影の傍に草の束
- 奈良県 平松洋子
- ひと休み小豆たっぷり秋彼岸
- 温泉はつけ足しですよ秋彼岸
- 秋彼岸四天王寺の真っただ中て
- 京都府 村田高久
- 石段を腓のぞきし秋彼岸
- 秋彼岸保育園児の声隣り
- 幼子の鳴き靴追いし秋彼岸
- 神奈川県 石鎚 優
- あぜ道をたどる家族や秋彼岸
- 初めて鳴く虫らしき声秋彼岸
- 秋彼岸だれかに似たる黄蝶かな
- 山脈にも久闊を叙し秋彼岸
- 大黒のまるき微笑や秋彼岸
- 茨城県 りんむう
- 秋彼岸見えぬ誰かに会釈して
- もち米を蒸す匂ひなり秋彼岸
- 秋彼岸曾祖父母の名知らぬなり
- 大分県 財前智子
- 秋彼岸虫除けスプレー念入りに
- 亡き人のあんこの甘さ秋彼岸
- 住職の一気に増える秋彼岸
- 三重県 後藤允孝
- 静けさやピアノの流る秋彼岸
- 墓石は草に埋もれ秋彼岸
- 秋彼岸黄泉の道のり遠からず
- 吾一人墓守となり秋彼岸
- 旅先の道連れとなる秋彼岸
- 三重県 治もがり笛
- 秋彼岸墓石に浸す地下の水
- 父が編む莚の結び秋彼岸
- 福岡県 たこ
- 忙しなき 辻に伽羅の香 秋彼岸
- 鳶の声 しかと届くや 秋彼岸
- 秋彼岸 開いたままの 花鋏
- 土鍋出し 粥炊く秋の 彼岸かな
- 青空に 大島映ゆる 秋彼岸
- 熊本県 貝田ひでを
- 現世の雑事に過ぎし秋彼岸
- 合掌を真似て児もする秋彼岸
- 仮の世に長居許され秋彼岸
- 北海道 飯沼勇一
- 海見へる墓地の賑はい秋彼岸
- 極太の書の香供へし秋彼岸
- 大柄の僧の足早秋彼岸
- 秋彼岸ギラギラの波キラキラへ
- 長雨の果ての青空秋彼岸
- 愛媛県 加島一善
- 母の背(せい)小さくなりし秋彼岸
- 薄衣一枚羽織る秋彼岸
- 畦道を今年も赤に秋彼岸
- 孫来たり爺の目笑う秋彼岸
- 鈴(りん)磨く傍に孫寝る秋彼岸
- 愛媛県 山路翼
- 我が家の戸籍謄本秋彼岸
- 亡き人とともに歩んだ秋彼岸
- 秋の彼岸に祈りを込めてまた一年
- 秋彼岸赤いあいつに目を凝らす
- 瀬戸大橋に見ゆるは秋の彼岸かな
- 神奈川県 龍野ひろし
- 福耳の僧の説教秋彼岸
- 大阪府 澤部富喜男
- ひぐらしや手桶線香秋彼岸
- 天に消ゆ煙1本秋彼岸
- 母と行く手桶線香秋彼岸
- 東京都 腹胃壮
- 糠床を還す手つきや秋彼岸
- 出張のあわひの実家秋彼岸
- 耳遠き父母と夕餉や秋彼岸
- ブラジル 玉田千代美
- 秋彼岸遺影に供ふマンゴの実
- 亡き夫を偲びつ祈る秋彼岸
- うとうとと法話を聞きぬ秋彼岸
- 叶へごと祈る老人秋彼岸
- 大阪府 太田紀子
- 奥津城の箒目白き秋彼岸
- 寺に人集ひ散りゆく秋彼岸
- 岐阜県 ときめき人
- 秋彼岸円空仏の笑み真似る
- 千葉県 吉沢美佐枝
- 墓までを海沿ひの道秋彼岸
- 御手綱に結ぶ願ひや秋彼岸
- 酒一升墓にかけてや秋彼岸
- 渋滞のバスに倦みたり秋彼岸
- 東京都 豊宣光
- 秋彼岸隣の墓も黒光り
- 秋彼岸雲なき富士の近さかな
- 血の色に咲く花ばかり秋彼岸
- 沈む日は浄土の色や秋彼岸
- 秋彼岸けふより長き袖通す
- ブラジル 広田ユキ
- まだ若き夫の遺影や秋彼岸
- 戸籍我一人となりて秋彼岸
- 秋彼岸おはぎは母の十八番
- 異人僧の読経朗朗秋彼岸
- 妻の墓に誰が参りし秋彼岸
- 千葉県 横井隆和
- ・鳴き始む卒塔婆に虫の秋彼岸
- ・君発ちて早や一歳の秋彼岸
- アメリカ 姥桜
- 赤ジンジャー常夏の墓地秋彼岸
- 秋彼岸海の彼方に手を合わせ
- マンゴーとアボガド揺れて秋彼岸
- カーディナル来る庭先に秋彼岸
- 母おくり初孫迎え秋彼岸
- 岡山県 岸野洋介
- 郷の家つぐは弟秋彼岸
- 牡丹餅を上戸もつまむ秋彼岸
- ひとしきり世間話や秋彼岸
- スーパーに僧侶もおりし秋彼岸
- いずこにも妻の影あり秋彼岸
- 神奈川県 成田あつ子
- よき声の法話響くや秋彼岸
- 秋彼岸妣の帯しめ妣を訪ふ
- 石濡れて誰か詣でし秋彼岸
- 穏やかにひと日暮ゆく秋彼岸
- 秋彼岸手桶に白き雲流れ
- 千葉県 隼人
- 終活に思ひ至るや秋彼岸
- 吾が墓所を何処に為さむ秋彼岸
- 溝川にぽかりと雲や秋彼岸
- 大阪府 椋本望生
- ペリカンも河馬も帽子も秋彼岸
- 米洗ふ音にも秋の彼岸かな
- 埼玉県 武市昭良
- 秋彼岸別れ話を切り出され
- 亡き妻の言葉偲びぬ秋彼岸
- 仏にも秘めしことあり秋彼岸
- 秋彼岸犬の遠吠え淋しげに
- 秋彼岸喪服の似合う女なりき
- 広島県 平川和裕
- セピア色 十人十色 秋彼岸
- 愛知県 川俣周二
- 秋彼岸宅配便で供物の来
- 住職の代替わりして秋彼岸
- 秋彼岸先に訪ふ人のゐて
- あいさつを次々交はす秋彼岸
- 秋彼岸檀家の絶えし墓仕舞ひ
- 神奈川県 重兵衛
- 少年の神妙な顔秋彼岸
- 霊園の広さに惑う秋彼岸
- 秋彼岸手押しポンプのある古刹
- 齢とらぬ遺影の母や秋彼岸
- 閼伽桶の段数増えて秋彼岸
- 東京都 岩川容子
- 住職は話し上手よ秋彼岸
- 生きすぎと笑う幸せ秋彼岸
- 老いの身に故郷遠し秋彼岸
- 大阪府 永田
- 偶数のやうな人なり秋彼岸
- 東京都 村井葛彦
- 秋彼岸持って行くのは赤い花
- 川を越え橋を渡りて秋彼岸
- 秋彼岸献立表に箸休め
- 東京都 中込眞澄
- ふるさとの山穏かに秋彼岸
- 埼玉県 守田修治
- 秋彼岸甥叔父叔母に記憶なし
- 見えている国後遠し秋彼岸
- なにごともなかったような秋彼岸
- 一人っ子雲の家族と秋彼岸
- 五時の鐘足早となる秋彼岸
- 埼玉県 小玉拙郎
- この夏が山といわれて秋彼岸
- 秋彼岸練習曲のまだ未熟
- 復刊の文庫に迷う秋彼岸
- 千葉県 山田香津子
- 仏花買ふ房総の旅秋彼岸
- 庭野菜じつくり煮込む秋彼岸
- 祖母つくる牡丹餅五重秋彼岸
- 東京都 遠山比々き
- 石が着る衣裳売りをり秋彼岸
- 血液型各種集まる秋彼岸
- 死者よりも歳多き子ら秋彼岸
- 親まねて玄孫しやがめり秋彼岸
- コンテストの入賞祈願秋彼岸
- 岡山県 岡村正美
- 撞く鐘に犬の遠吠え秋彼岸
- 秋彼岸参りし坂に蓼赤し
- 弁当のきんぴら香る秋彼岸
- 讃岐路のイモ天甘し秋彼岸
- 秋彼岸吉備路の塔の空青し
- 千葉県 下総真里
- キャタピラの多き町なり秋彼岸
- 秋彼岸釣具の形して埃
- 巻爪は誰にも似ずや秋彼岸
- 東京都 碩真由美
- 紫の似合し祖母の秋彼岸
- 兵庫県 山崎衣玖
- 米二斗を車に積む祖母秋彼岸
- 飼ひ犬の位牌増えたる秋彼岸
- 運転を婿に譲りて秋彼岸
- 秋彼岸餡子嫌ひの末娘
- 秋彼岸供花直す手指輪なく
- 神奈川県 髙梨裕
- 手桶汲む水に生かされ秋彼岸
- ざるそばは父の味かと秋彼岸
- おひがんね臥す妻ぽつり秋彼岸
- 杖の音入日に去るや秋彼岸
- 参詣のお茶香り立つ秋彼岸
- 京都府 中村 万年青
- 秋彼岸従兄妹は黄泉へ神奈川で
- 温度差も西高東低秋彼岸
- 青空や足取り軽し秋彼岸