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- 俳句庵 2017年11月 作品一覧
俳句庵
11月『短日』全応募作品
(敬称略)
- 宮城県 石川初子
- 短日や学童保育の窓の灯よ
- 岐阜県 金子加行
- 段取りの問はる短日請け仕事
- 短日を終へてしまひし探し物
- 短日の二人の影や無人駅
- 短日に足止めさるる列車事故
- 短日の追はる言い訳許されず
- 愛媛県 砂山恵子
- 短日や渡せぬままの箱ひとつ
- タクシーの巣通り多し暮早し
- 短日の申し送りの詰め所かな
- 御先にが口癖になる暮早し
- 短日や私の影の長きこと
- 愛知県 遊泉
- 日短や隣家の犬の遠吠える
- 詰将棋妻の留守居の暮易し
- 閉門の動物園の暮早し
- 揺れ動く浮子見詰めて日短し
- 灯さるる舫ひ舟かな暮易し
- 大分県 小野山 道山
- 短日や 七百粁の 帰路昏し
- 短日や 鉄階段の 音乾く
- 帆檣の 影曳く埠頭 日短し
- 短日や サイレン響く 下校道
- 短日や 後味悪き 議論閉づ
- 新潟県 近藤博
- 短日や交通渋滞気の急くに
- 塾帰り児童早足日の短か
- 短日はちと足早に散歩かな
- 短日や片付け半ばに明日とせむ
- 短日や外の吾子呼ぶ母の声
- 兵庫県 はなちる
- 短日に洗濯物の湿りたる
- 短日や灯りともりて早夕餉
- 短日や風呂に入りて酒旨し
- 短日や農作業終えカラス鳴く
- 足早に帰宅の波の短日や
- 埼玉県 飯塚璋
- 短日や鯉もそろそろ眠る頃
- 東京都 石川昇
- 短日や夕刊コラムにいい話
- 短日のシャッター通りの暗さかな
- 千葉県 鈴木良子
- かヨテ吠ろ不慣れな道や日短し
- どの国も水禍の始末暮はやし
- 日英語仕分けて話す短日差
- マンシヨンの遅配郵便暮早し
- Eメールに変わる電話や短い日
- 大阪府 藤田康子
- 短日や先日逝った友のこと
- 短日や忘れしことのあるやうな
- 短日やヘッドライトの淡きかな
- 兵庫県 紫 桔梗
- 短日や午後五時を鳴く鳩時計
- 短日や間違ひ電話二度三度
- 短日や入国審査直ぐ終へる
- 短日や屋台に続く客の列
- 短日やがらくた市の早仕舞
- 大阪府 池の端 二三
- 短日や散歩も少し急ぎ足
- 短日の日帰り旅行はや暮れし
- 短日や出店はやばや店仕舞い
- 短日の窓辺のあたり昏れ急ぐ
- 短日の干し物早に取り入れし
- 愛媛県 渡邊國夫
- 短日の帰り急げどバス迂回
- 暮早し帰宅促す母の声
- 日短やナイターとなる草野球
- 裏木戸の裸電球暮早し
- 伏す妻へ夕餉の支度暮易し
- 神奈川県 佐藤博一
- 為すことのあらば短き日となりぬ
- 短日や手早く済ます水仕事
- 庭師来て帰り支度や日短し
- 丁寧に一日を過ごし日短し
- 挨拶も目礼のみや日短し
- 長野県 木原登
- 短日の昼湯に浸かる奢りかな
- 短日の跨線橋にて別れけり
- 短日の燈台灯る安乗埼
- 短日の没日いよいよ美しく
- 短日やエンディングノートまだ真白
- 千葉県 伊藤博康
- もう一回逆上がりして暮早し
- さあ帰ろ怒られぬ前日短
- 短日の角の豆腐屋店仕舞ひ
- 短日や遊ぶ子どもの声聞こゆ
- 短日や生垣の影無くなりぬ
- 千葉県 柊二
- 遭遇す野外ステージ日短
- 東京都 五島洸
- 短日の街に入りゆく万歩かな
- 短日の舟を降りれば日本橋
- 短日の植木鋏を洗ひけり
- 短日や立ち飲み仲間懲りもせで
- 短日の列車西へと動き出す
- 宮城県 林田正光
- 短日の日時計少し早まりぬ
- 短日にやっと届いた「偲ぶ会」
- 短日にベートーベンを聴く夕べ
- 短日や小雨忽ち本降りに
- 短日の水車の回る蕎麦屋かな
- 山梨県 天野昭正
- 短日や忽ちかげる峡の駅
- 短日のはや灯をともす峠茶屋
- 短日や身籠る母に寄り添ふ児
- 短日や洗濯物の生乾き
- 火の気なき母なき生家日短し
- 愛知県 当卯
- 短日のチェックの済まぬ予定表
- 短日の行き交ふ駅に人を待つ
- 短日の家路だんだん遠くなり
- 東京都 内藤羊皐
- 短日の死地に赴く象の背な
- 菓子屑の零るる絵本日短
- 短日の沓脱石の雫かな
- 三匹の猫欠伸して日短
- 短日の仇討譚の歌舞伎かな
- 京都府 田端敏弘
- 短日や野菜の名前言わす医者
- 短日や確かに長い杖の丈
- 引出しに溢る宿題日短
- 滋賀県 東野了
- 短日の一人の家に帰りけり
- 映画館出て短日の雑踏へ
- 短日や妻に長居の客二人
- 短日の死に行く猫の家出かな
- 短日の火を焚いてゐる農夫かな
- 愛媛県 向井桐華
- 短日や猫の寝床を整へし
- 短日の活気あふるるガード下
- 短日や俎洗ふ手の早し
- 兵庫県 噂野アンドゥー
- 病床で述べる短日余命かな
- 短日や烏も鳴いた夕日暮れ
- 短日や飯炊く香り誘われて
- 短日や余命短し米寿かな
- 人生も季節短日折り返し
- ブラジル 林とみ代
- マニフェストの列も早足日の短
- 予定通り行かぬ物事日の短
- 短日や繕い物の捗らず
- 最果ての亜国旅して暮早し
- 短日の動く歩道を駈足で
- 千葉県 野木編
- 短日や母のレシピに余白あり
- 短日や五時の暗さよまだともう
- 暮れ早し書棚の隅の罪と罰
- 短日や塾の送迎母が来て
- 短日や駅前広場車列でき
- 東京都 岩崎美範
- 短日や老いの時間の早きこと
- やつと鳴る終業ベルや日短か
- 短日や余命わづかな友の笑み
- 四時を打つ和光の時計日短か
- 台所に鍋煮ゆる音日短か
- 神奈川県 河野肇
- ペダル踏むママは機関車短き日
- 短日や浮浪児といふ死語のあり
- 短日や黙し薪割る父の背(せな)
- 短日や胃カメラで見る己が内
- 短日や埴輪の馬のやさしき目
- 兵庫県 岸野孝彦
- 短日に地蔵も永き眠りかな
- 短日や命短し夢空し
- 短日や白亜の城の夕まぐれ
- 短日や限界の村闇は濃き
- 短日や太鼓山車行く善通寺
- 三重県 西井治男
- 短日や身体縮むも影長し
- 短日の沈む太陽万華鏡
- 暮早し家路に急ぐ鳥の群れ
- 山口県 ひろ子
- 老犬の散歩道早や暮れなずむ
- 短日や万歩計まだ満たされず
- 短日や買い物客の急ぎ足
- 美術展出れば短日迫りたる
- 短日や御幣整え暮れなづむ
- 東京都 佐藤博重
- 腑に落ちぬことのあれこれ暮早し
- 短日の後書から読む文庫本
- 神奈川県 松風子
- 短日を惜しみ長編映画かな
- 短日や重い荷物を背に負いて
- 短日や半日だけのデイケアに
- 短日やいつかといふはいつのこと
- 短日の市華やぎて雑踏す
- 埼玉県 岸保宏
- 短日や一番線に人気なく
- 短日の柱時計や変わりなく
- 短日や太鼓の音が忙しけり
- 神奈川県 守安雄介
- 短日や漫画読みつつランチ食う
- 短日や締切迫る俳句庵
- 短日と言えども明き南部屋
- 短日や昼めし済ませ床につく
- 短日や覚えていない昼の飯
- 山口県 山縣敏夫
- 母親の子等急かす声日短し
- 愛犬に家路を急かす暮易し
- 用件を手早く済ます暮易し
- 小走りに勤めを済ます暮早し
- 運転は早めのライト暮早し
- 神奈川県 川島欣也
- 短日やはや店仕舞う辻商
- 短日やプランはずれてばかりいる
- 星空を見上げる勤め日短
- 暮れ早し東寺の塔の真下から
- 短日やあとひとホール回りかね
- 神奈川県 白銀
- 植物で 短日あるに 理科室で
- 短日で 駆け込み寺の 和尚様
- 短日の 夕暮れ時に 日本高く
- 短日に 散るや白夜の 現実へ
- 短日が おおらかに匂う 日本歌
- 東京都 田中礼子
- 銭湯の煙真っ直ぐ暮早し
- 短日や仏間の引き戸壊れたる
- 短日や父撮る写真空広し
- みちのくの人はせっかち日短か
- 短日のデパ地下混みて買わざりし
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 短日や冷凍品を手に取りて
- 短日やいつもよりやや近回り
- 短日や立ち漕ぎをする帰り道
- 宮城県 福田良光
- 短日の廊下に慌て灯をともす
- 短日や母話したる骨粗鬆
- 人混みに若き吾を見し日短
- 短日やヘリ爆音を轟かせ
- オレンジのポストへ急ぐ日短
- 大阪府 津田明美
- 短日の路上ライブの輪の崩れ
- 短日の推理小説斜め読み
- 地下鉄を出で短日の雑踏へ
- 一駅を過ぎて街並み暮早し
- 短日の背より暮れゆく下校かな
- 神奈川県 森山茂
- 短日や路地みたしたる夕餉の香
- 短日やつかまる子無きかくれんぼ
- 短日やしまい忘れた三輪車
- 短日や時計見てから薬飲む
- 短日や五回で終わる草野球
- 兵庫県 堂本あつし
- まだ暑い 短日と詠む その不思議
- 短日が 楽しくもある 新居かな
- 短日の日暮れ 一人暮らしも慣れにけり
- 短日は なぜ寂しいと 言うのだろう
- 短日と 言えなくなりし 長寿の世
- 東京都 勢田清
- 短日の町に魚焼く匂いかな
- 短日や家路は向かい風のなか
- 短日の藪にかしまし群雀
- 短日やともしび一つ町はずれ
- 短日や母を迎えに町に行く
- 三重県 後藤允孝
- 短日や街路樹の影長くして
- 客足のぴたりと止まり暮早し
- 短日や長居の客は腰をあげ
- 日短し軋む雨戸を急ぎ閉め
- 短日の石灯籠に灯をともす
- 神奈川県 塚本治彦
- 短日や残業手当なき教師
- 短日や犬の首輪に反射板
- 短日や定時で帰る老教諭
- 短日やエンジン止めぬ郵便夫
- 短日や煮物の匂ふ裏通り
- 岡山県 岸野洋介
- 短日や昼風呂たてる老い鰥夫
- 短日や付録の厚き雑誌買う
- 短日や塀のり越える生徒また
- 暮早し化粧直しのOLら
- 茶店でてすぐ短日の歩となりぬ
- 愛知県 西谷寿
- 短日の空星月がともにあり
- 短日に仕事が遅くのびる夜
- 短日の仕事終わりが辛くなる
- 短日の夕暮れに鳥巣に帰る
- 短日の夕暮れに月空上る
- 神奈川県 矢神輝昭
- 短日に夕餉の支度鍋に向く
- 短日にそそっと入る縄のれん
- 短日にはやばや縮め亀の首
- 短日やかんてきの火の赤赤と
- 短日に赤ちょうちんや招き猫
- 東京都 伊藤はな
- 短日や傾ぶく赤の日を背負ふ
- 日短し残る予定を雨の中
- 篁の雀の塒暮易し
- 息急きを切って坂道暮早し
- 日短や母の寝顔を見て帰る
- 米国 鈴木良子
- 短日や回転寿司の皿重ね
- 暮早し高速疾駆救急車
- みじか日や衆議員選激論戦
- 短日や源平遺跡須磨巡る
- 繰り返す夫との会話暮れ早し
- 埼玉県 哲庵
- 短日や千本ノック半分に
- 日短かや補習児童の生あくび
- 日短かや孫の宿題手伝へり
- 短日や飛行機雲の筋長く
- 短日や大道芸に人だかり
- 神奈川県 原川泉水
- 気忙しい短日了えて炉辺の茶
- 短日の無為を悔いつつ夜の帷
- 短日や夕日見ぬ間の夕支度
- 短日や烏の帰巣の慌ただし
- 短日や灯を点すまで納屋仕事
- 埼玉県 よしこ
- 忙しなく一日過ぐる暮早し
- 短日の帰宅時間の見間違ひ
- 短日や点す灯りの早々と
- 短日の朝刊たたみ夕刊来
- 短日の老いの晩学また明日
- 兵庫県 山地美智子
- 短日やみな足早の帰り道
- 短日や回覧板はすぐ回す
- 短日やまた一つある買ひ忘れ
- 短日や万歩を老いの日課とす
- 売り家に人の来てをり日の短か
- 神奈川県 皆空眞而
- 谷間(あい)は十戸ばかりの日短
- 短日や思案の末の女坂
- 短日や日は出日は入り日は傾(かし)ぐ
- ブラジル 西山ひろ子
- 短日の悔ひの残りし一事かな
- 会釈して微笑み合つて暮れ早し
- 短日やクラクション鳴らし娘来る
- 短日の揉め事早もまとまりぬ
- 短日の有無を言はせぬ返事かな
- ブラジル 玉田千代美
- 暮早し長電話して慌て居り
- 暮早し老の昼寝もままならず
- 暮早し井戸端会議ほどほどに
- 神奈川県 海野優
- 短日の夜にはづせし付け睫毛
- つれなさのことば交はして日短か
- 探すほど失せもの隠れ日短か
- 奈良県 平松洋子
- 短日と言へど手抜かず夕餉時
- 短日と電話で帰宅促され
- 短日や魚屋さんの二割引き
- 奈良県 一人坊
- 待ち焦がれ 短日の雨 囲炉裏座し
- 交わす酒 短日の宵 路地の猫
- 短日に 汽笛に急くや 駅舎道
- 短日の 池面ゆらりと 月と酔い
- 愛知県 新美達夫
- 作業着をタオルで叩き日短
- 粛々とクレーンを畳み日短
- 短日や簡易保険の外回り
- 庭の木に凭れし脚立日短
- 連動し信号変る日短
- 愛媛県 加島一善
- 短日や東天の月日追い遣る
- 短日の夕日いつやら居なくなる
- 短日やビニールハウス灯り点く
- 短日や清盛夕日呼び戻す
- 短日や夕日引っ張るシロナガス
- 埼玉県 守田修治
- 長生きを実感したる暮早し
- 短日や猫は将棋を指さないし
- 短日やちあきなおみに浸りきる
- 生垣に布団干したり日短か
- 短日や止めた煙草が欲しくなり
- 京都府 新井ゆかり
- 短日や急ぎ迎えに愛しい子
- 短日やため息ひとつ風寒し
- 短日や遊び呆けて子ら遅し
- 神奈川県 月野木 若菜
- 短日や何か忘れているやうな
- 短日の舞台転換めく銀座
- 短日やそろそろ会議切り上げむ
- 短日や退社時間を急かされて
- 残業の時間気になり日短か
- ブラジル 広田ユキ
- 短日や駈足でゆく我が余生
- 時計の鳩また鳴いてをり暮早し
- 腕組んで溜息ついて日短か
- 短日やサラサラこぼる砂時計
- 短日や孫の寝顔を見て帰る
- 千葉県 横井隆和
- 短日や反射タスキを持たす朝
- 早や長けり響く木桶や暮るる湯屋
- 日短かは嬉し怖しや酒の嵩
- ツリーより短景遥かに火事二つ
- 日短かを忘する地下街飾り窓
- 東京都 豊宣光
- 短日や退社時刻は闇の中
- 短日の早寝の床に眠られず
- 短日の暮るる早さを慈しむ
- 短日や赤提灯の灯が誘ふ
- 窓白し短日の朝始まりぬ
- 神奈川県 井手浩堂
- 短日や診察待ちの月刊誌
- 短日の五時の鐘聞く暗さかな
- 短日のメモを見て買ふ夕べかな
- 短日や船の汽笛は山越えて
- 短日や早めに出づるウオーキング
- 神奈川県 龍野ひろし
- 空欄多き短日の予定表
- 短日の砂場に残る移植ごて
- 東京都 住澤義英
- 短日や今日も立ち飲み路地裏で
- 短日や何処にあるやら日向かな
- 短日や子らに急かされ夕仕度
- 短日や門で待ちます幼子を
- 短日や蟻も急いで家路かな
- 大阪府 太田紀子
- キィーボードに手暗がりあり日短か
- 短日や亡き娘の写真の薄埃
- 北海道 飯沼勇一
- 北国の路線バスに灯暮早し
- 短日や長きトンネル出るも闇
- 短日や体育館の電気点く
- 短日や猫日向捜して移動せり
- 暮早し読経の速度早まりぬ
- 岐阜県 ときめき人
- 漱石の机艶増す短日ぞ
- 東京都 中田ちこう
- 暮早しただプレス音風走る
- 埼玉県 尾苅鍋太
- 落日に我を重ねる六十路かな
- 日の落ちて鳥はねぐらへ我もまた
- 落日や喜寿の心はあかあかと
- 定年の迫りし日々や日短か
- 街灯の早くもつきし日短か
- 滋賀県 村田紀子
- 短日や枝切る音と夕餉の香
- 草を刈る翁の吐息短日や
- 母見つけ足早となる短日や
- 短日や浜辺に残る赤い靴
- 東京都 岩川容子
- 短日やさっきまで居た鴉たち
- 短日の後髪ひく別れかな
- 短日や河原に残るかまど石
- 短日やはやばや照らす感知灯
- 神奈川県 月野木潤子
- 短日の浜は明日を待つばかり
- しろ水を撒く短日の庭草に
- 短日の父の机の大きやか
- 短日を帰りて誰も居らぬ家
- 鋳物師の町さびさびと暮れ早し
- 神奈川県 猪狩 千次郎
- 短日や平等院の池乾き
- くもの囲のとろりと垂れて日短し
- よぎるもの小鳥ばかりよ日短し
- 抜かれざまあいさつされて暮早し
- 短日や仔犬尾を振る硝子窓
- 福岡県 西山勝男
- 短日や八十路の歩みせかせかと
- 短日の返り詣でもいそいそと
- 短日や旅程を組むもままならず
- 短日や父の齢も疾うに過ぎ
- 短日の女将の立ち居てきばきと
- 大阪府 椋本望生
- 日短か麒麟の頭暮れ染むる
- 暮早し老いのハンドルはるみ節
- 暮早し鐘と鴉と帰ろかな
- 短日の空地獄めき浄土めき
- 短日のリズムに乗れぬフラダンス
- 神奈川県 成田あつ子
- 短日や隣家の厨はや灯り
- 短日や犬の引綱強く引き
- 短日の覚えなき傷指にあり
- 短日のテールランプやルビーめき
- 短日やクロスワードのホテル窓
- 岡山県 岡村正美
- 短日や枝先残して梯子下り
- 短日のミシンのリズムアレグロに
- 短日や日暮れて仕舞う洗濯物
- 短日の昼寝そこそこ野良仕事
- 短日や手前の大根抜き帰る
- 千葉県 入部和夫
- 短日や帰る子の背に夕日射し
- 東京都 皆川里枝
- 短日や沖に遊ぶ陽たまゆらに
- 短日やどっしり重い義姉の尻
- 短日やあかりの灯る隠居部屋
- 短日や日向に残る蔵のひび
- 短日や田舎の便り読み返し
- 東京都 右田俊郎
- 短日や日記に記すことの減る
- 短日や郵便物の届く音
- 短日やあれもこれもと欲張って
- 短日や路地にいつもの豆腐売り
- 今月も予算未達か暮れ易し
- 愛媛県 アリマノミコ
- 短日の猫三びきは目をつむり
- 店仕舞い蕎麦屋の暖簾日短
- 数独のペン転がりて暮れ早し
- 短日や天に捧げる木守柿
- 山形県 齋藤碩志
- 短日やあっという間のネットサーフィン
- 短日や眠気抑えて書にふけり
- 短日や小分けの薬飲み残し
- 短日や学びの机仕舞ける
- 短日や病臥の我にながきとき
- 新潟県 伊藤優美子
- 香を焚く短日の部屋しづかなり
- 短日に上の家(や)の椅子の音
- 短日の工事の声の大きけり
- 東京都 碩真由美
- 短日の出口に迷ふ大手町
- 〆切の時間変はらず日短
- 埼玉県 小玉拙郎
- 短日や水彩絵の具の生乾き
- 短日を早回りする回覧板
- 晩酌のかげん難し暮れ早く
- 神奈川県 三好康子
- 短日や齟齬をきたせし意思疎通
- 短日の遅れて来たる通夜の席
- 草の香をまとふ下校児暮早し
- 短日や常より多き野菜屑
- 短日の人並渋谷交差点
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- 短日のシャツの裾上げボタン付け
- 短日の帯締める時キュキュと音
- 短日やサイコロ大に切る野菜
- 短日や棚に置きある展翅板
- 短日のジャズのビートや理髪店
- 兵庫県 ぐずみ
- 短日や離れて遠き喫煙所
- 短日の漁場に明り宝くじ
- 暮れ果つる短日看護師のチェンジ
- 短日や定時の守衛所に灯り
- 病者伏す点滴遅し暮早し
- 兵庫県 山崎衣玖
- 短日の夜や肌掛けを足してやり
- 短日の閉店間際ノート買ふ
- 短日や飼ひ犬の毛も白髪めく
- 短日にコインの熱を握りけり
- 短日の遮断機は鳴り響みけり
- 千葉県 下総真里
- 短日や欠けたままなる認印
- 短日の声やわらかき薬剤師
- 列の尾に白杖の人暮早し
- 神奈川県 髙梨裕
- 短日の暮れるに早き街路灯
- 短日やもうひと畝と鍬入れし
- 短日や待つ事長き一日なり
- 戻り来て短日の灯も灯らずに
- 短日や明り届かぬ仁王門
- 京都府 中村 万年青
- 突然の姉の来訪暮早し
- 短日や沖のタンカー日に向きて
- 振り回す姉の守りして暮早し