俳句庵

2月『立春』全応募作品

(敬称略)

宮城県      石川初子
立春や一歳となる児の一歩
東京都      伊藤はな
立春を奏でる波の光かな
土塊に春立つひかり水の音
一畳にきらめく日差し春来たる
楠の木のざわめく声に春立てり
春来るも堅き蕾の青さかな
埼玉県      飯塚璋
春立つや鳥の嘴忙しく
立春や朝のコーヒーカプチーノ
新潟県      近藤博
春立つや凍道ゆるむ日の盛り
いつまでも散らぬ底冷え春立てど
春立てど底冷えなほもつづくらし
立春や大地うごめく日のありて
立春や降りも降らずみ雪ちらり
東京都      石川昇
立春のまだぎこちなきケンケンパ
立春や出窓に青の幼児靴
東京都      内藤羊皐
立春の呼吸器射して父寝ねり
立春に匂ひの立てる埋み水
立春の乳歯の描く抛物線
立春の能面翳る修羅の劇
独奏の高きチェロの音春立ちぬ
愛知県      遊泉(ゆうせん)
にっとする児(やや)の熟寝(うまい)や春立てり
貌緩む水掛け不動春立ちぬ
ゆらゆらと池の底より春立てり
立春大吉太鼓の響く大手門
馬小屋の板蹴る音や春立てり
大阪府      藤田康子
立春やきのふの鬼の豆ひとつ
立春大吉のら猫の大あくび
立春や病気も悩みも言うまいぞ
立春や同窓会の知らせ来る
立春や水道水のほとばしる
岐阜県      金子加行
立春の乗り放題や知らぬ駅
立春の音と色なり水の街
立春の香る野菜の荷が届く
立春の書斎に問はる志
立春を聞きて軽きや二人連れ
神奈川県      佐藤博一
ランドセル入れては出して春立てり
立春や山河そはそはしてをりぬ
初孫の泣いた笑った春が来た
保育器の欠伸小さし春立てり
立春や少年塾に行くと言ふ
カナダ      森井健二
春立つ日 梅も桜も まだ遠し
立春や 湯治場の湯と 冷酒と
早春賦 歌う景色も 春遠し
立春に 軒下のつらら 光あり
立春に 春や春やと 待つ心
山梨県      天野昭正
立春の沖へ出て行く真帆片帆
立春の序曲の如し軒しずく
立春や巫女の早足猫散らす
病み痩せし人に粥炊く春立つ日
立春の光り集めて日章旗
奈良県      堀ノ内和夫
春立ちてゆるり始むる花廻り
春立つや影定まらぬもの多し
千葉県      柊二
立春や運河の壁の潮を掃く
三重県      平谷富之
立春と言ふ響きあり幸福を
立春や足も軽やか買物へ
愛媛県      渡邊國夫
春立つや面を小脇に老剣士
春来たる世界遺産の本机上
立春大吉同姓多き開拓地
健在の妣の裁台春迎ふ
立春大吉酌み交す友の来て
兵庫県      紫 桔梗
目薬の一滴二滴春立てり
立春の浜に干さるる漁の網
縄張りを見廻る猫や春立てり
立春や黄身が二つの目玉焼
立春や地球の軸のやや斜め
神奈川県      河野肇
老犬と行く妻の背や春に入る
立春の雪嶺仰ぐ帰省かな
立春や波の消しゆく足の跡
雪嶺におつうの羽や春立ちぬ
立春の時計の振り子戦あるな
静岡県      池ヶ谷章吾
立春やプリズムの色赤目立つ
緋や青や力士のまわし春立ちぬ
千葉県      伊藤博康
立春やそつと誰かが背中押す
立春や音無く上がる黒き幕
鶏鳴に誘はれつつ春来る
春来る遠くに聞こゆ犬の声
もぞもぞと地中も忙し春来る
兵庫県      山地美智子
春立つや忘れずに飲む降圧剤
春立つや切り揃えおく小短冊
何をする計画もなく春立てり
立春や押して開かぬ戸引いてみる
立春や真っ新な地の地鎮祭
東京都      五島洸
立春の渚に立てる大鳥居
春立つと柱時計のおおあくび
立春の暦に記す入院日
立春のダイヤの「7」の輝けリ
立春や包帯ゆるむ指の傷
東京都      岩崎美範
立春の光そびらに阿弥陀仏
立春や逸る生きとし生けるもの
立春の夜明を告ぐる鳩時計
立春の立たぬ卵をぽんと割る
春立つや顰天狗の赤い面
滋賀県      東野了
立春といふも大雪注意報
立春大吉税金少しもどりけり
立春や巫女より受ける守り札
立春のひかり飛び交ふ洗堰
立春や郵便受けに旅の本
神奈川県      片桐と志え
春立つや海に向かふて咲む絵の具
立春や海辺に並ぶパン屋さん
春立つや豆腐の四角崩れそふ
立春の柔らかき風角曲がる
春立つや街に女のショートヘアー
東京都      勢田清
立春に固き心のほぐれゆく
立春の日差し強まる確実に
立春のお札掛け替え改まり
立春や武蔵野の道坦々と
立春の庭に降り立ち歩きけり
京都府      田端敏弘
立春の手水を貰う五十鈴川
春立つや一段緩む吽の顔
階段を登り来る音春立つや
立春の二人で兼ねる御賽銭
春立つや久しく習うフランス語
兵庫県      噂野アンドゥー
豆を撒き 立春なれど 寒残り
立春や 春を感じる 雪が降る
豆撒きが 春のはじまり 呼んでいる
節分や 冬が立ち去り 春来たる
冬終わる 立ってくれよと 春を待つ
東京都      百目鬼英明
選ばれし白きうるいや春立てり
北の国五輪参加や春立てり
スタートの号砲鳴りて春立てり
春立てり百万石の城下町
立春やツインタワーを抜ける風
福岡県      紙田幻草
点滴の玉一つづつ春に入る
病院の煙突でんと春に入る
立春や点滴ぷくと息をする
病室の三人三様春に入る
弾み来るナースの靴音春立ちぬ
山口県      山縣敏夫
春立つや陽気な子等の登下校
初孫の朝の泣き声春立ちぬ
立春や友が最寄りの駅に着く
愛犬の甘える仕草春が来た
連れ合いの朝餉呼ぶ声春立てり
宮城県      林田正光
立春大吉娘のブーツ磨きをり
立春や規律正しき朝の来る
立春や朝餉の卓の生卵
立春大吉空へ空へと凧の文字
立春の暦本格稼働かな
山口県      ひろ子
恵方巻頬張る元気老いの春
豆まきの声もとどかず闇深し
立春や鬼捨てられぬお面かな
神奈川県      ぐ
雪付け薄明の帰港今朝立春
春立つやテーブルの下落ちし豆
立春大吉あの肉球に踏まれけり
蛇口より冬を流して今朝立春
立春の街きときと子等もきときと
長野県      木原登
立春の山を出でゆく水の音
立春の白き雲ゆく潦
春立つや噴水高き動物園
ジャングルジムに日のなみなみと春立てり
姦しき雀の会話春立ちぬ
兵庫県      はなちる
立春やスピード緩めビバルディ
立春や迎える福は万象に
立春や海中鳥居に月の影
立春の静かなる朝無人駅
朝刊のインクの青き立春や
神奈川県      原川泉水
春立つ野騏麟を御して千里の途
立春や仰ぐ麒麟座誓期す
立春や岩打つ水の音新た
立春や希望の龍の天翔ける
立春や窓越し富士の白い嶺
神奈川県      猪狩千次郎
春立や天人天女の笛太鼓
千葉県      三好弘國
立春や出番間近のチョコレート
春立つや筑波の嶺に雲まとふ
春立つや世界へ向かふジャンプ台
立春や上がり框に下駄二足
春立つや嘶き高き朝まだき
大分県      藤嶋照久
春立つや畑に足袋の跡乾き
立春の朝の雫の柔きかな
立春や地塗りの画布を日向へと
立春や海苔網手繰る夫の腕
立春や臥した母へと温き粥
神奈川県      白銀
月日経ち はるうららかな 小春日で
桜花  咲く季節なら 梅なるかも
おらが春 庭先の木に 鶯鳥
小川には カエルの卵  目に映る
苔桃が  大きくなるに  春支度
奈良県      一人坊
降りしきる立春に傘ふたりをり
立春も鯉亀眠る陵の池
立春の雪上駆けて寄るシロや
父に添う立春に発ち露天の湯
神奈川県      井手浩堂
遠富士の藍の薄まる春立つ日
立春の風と諾ふ頬の風
春立つや何を啄む野の雀
神奈川県      永井良和
立春や妻あて届く化粧品
茶柱のよく立つ日なり春来る
立春や逆立をする吾子の臍
春立ちぬ地球を少し膨らませ
春立ちぬペンキの匂ふ氷川丸
神奈川県      矢神輝昭
立春や地鳴きの声に山目覚む
立春や鮒にあぶくの二つ三つ   
立春や殻の中より雛の声
立春や紅茶に染めて角砂糖
立春や鼓動の沼にみなわ噴く
新潟県      じゃすみん
立春のまじない数多光る雲
立春や道祖神はすまし顔
三つ編みを揺らし立春窓磨く
溢れたる訛駅舎に春来る
占い師の覆面はずれ春立てり
東京都      右田俊郎
春立つ日牧舎放嘶く若き駒
立春の光と風に窓開ける
立春や昨夜の豆のこぼれをり
立春や石段二段ずつのぼる
なんとなく足どり軽き春立つ日
熊本県      貝田ひでを
立春の土掴み取り嗅いでみる
立春の路地に拍子木紙芝居
鳥たちも高みを目指し春立ちぬ
立春や安房路多き醤油蔵
せがまれて犬と散歩や春立ちぬ
神奈川県      月野木 若菜
岬まで行ってみやうか春立ちぬ
立春やコートのネット張り直し
立春や漁船の腹の文字太き
初産の部員見送り春立ちぬ
やはらかき光纏ひて春立ちぬ
神奈川県      塚本治彦
再任用合格通知春立つ日
金縛り解けたるごとく春立ちぬ
立春や吊広告に美女の笑み
立春や祖父の徘徊再開す
海風のよく吹きにけり春立つ日
大阪府      津田明美
立春の風に乗り来る読経かな
立春や光を弾く銀スプーン
立春の風の動きやドレミファソ
立春の光と影のあわいかな
立春の動く陽射しに乗ってみる
埼玉県      よしこ
立春や逆さに立てる砂時計
立春のビルの谷間や小宇宙
立春の山の白さよ信濃かな
立春を飾る彩ニューモード
勢ひの水の流れや春立ちぬ
神奈川県      守安雄介
立春や階登る赤袴
年内の立春に鬼落ち着かず
立春の顳顬青き志
立春の恋する爺や髭を剃る
年内の立春嬉し滑り止め
神奈川県      龍野ひろし
千仏に千の輝き春立てり
立春や発車のチャイム軽やかに
立春や引馬の歩の軽々と
立春の光とらへしパステル画
奈良県      平松洋子
立春に児をあやすごと木々を撫ぜ
立春や鬼も優しき顔となり
立春や残り福豆あら旨し
岡山県      岸野洋介
立春の影引き連れて宅配女
立春や晴れ晴れと鳴く軒雀
玄関の立春の護符光りけり
子ら送り出て立春の風にあう
立春と妻の遺影を陽にかざし
神奈川県      海野優
立春の割りし卵の音かろし
風呂敷に春立つ心づくしかな
立春やふと動き出す古時計
ブラジル      西山 ひろ子
窓開けて手でも振りたし春立つ日
立春の華やぐ小鳥の声も又
立春のコーヒーの香の目覚めかな
立春の雨の音さえ浮きたちぬ
春立つ日コーヒー甘く熱く淹れ
神奈川県      石川 夏山
春立つや湯島天神根津神社
立春を待ちての吟行二つ三つ
春立つや海苔が立ちたる中華そば
春立つ日茶柱立ちて大吉祥
立春を待てずに春めく上野かな
ブラジル      林とみ代
地図広げ旅の企画や春来る
立春の孫は思春期まぶしかり
立春の心和ます言葉かな
立春の庭に童等喜々として
立春や余生は趣味の輪を広ぐ
神奈川県      皆空眞而
立春を湖に旅鳥運び来し
立春の葦原舞へり冬の鳥
立春や妻が紅引く化粧台
立春のひかりやはらか趣味の画家
愛知県      斉藤浩美
立春や天変地異に負けず生く
立春の空へ空へと離陸せり
水といふ水動き出す春立つ日
春来ると十本の爪切り飛ばす
立春大吉偏食ひとつ克服す
富山県      岡野満
待ちかねた立春迎え背伸びする
春立ちて歩幅が少し広くなる
立春やそぞろ歩きを誘われる
北海道      飯沼勇一
春立つや体育館に弾む声
日めくりをめくれば今日は春立つ日
立春の風を掴んで仲見世へ
立春の文字背伸びする習字かな
立春や鬼追ひ出して猫眠る
神奈川県      松風子
春立つや伸びては縮む鮹の脚  
立春や犬の乳房のさくら色 
春来るとそよぎ始むる胸の奥
春立ちて許す心の芽生えけり
立春や糸ひくやうな街の雨
東京都      豊宣光
閑居する身にも春立つ幸来たる
旬の魚並ぶ寿司屋や春立ちぬ
立春の水つかむ手の痛さかな
立春や昨日の豆を食らひをり
立春や合格したと孫の声
愛媛県      加島一善
立春や塔の礎石の水光る
春立つ日旅立つ母に紅を差す
四国路に鈴の音来たり春立ちぬ
立春大吉入りし鬼や逆戻り
春立つや座卓の下に豆ふたつ
愛知県      新美達夫
春立つやパスタの店の三色旗
きゆきゆと鳴る寺の回廊春立ちぬ
句誌綴づる穴の位置決め春立つ日
春立つや風道探る風見鶏
埼玉県      櫻井俊治
春立つや辞令拒めず赴任の地
立春に大地の鼓動高鳴りぬ
神奈川県      伊原文夫
立春や草木先に目覚めたり
春来る軽きシューズを探し出す
春立つや子らの声増す芝の上
春立つ日俄かに地図を広げたり
ビル風のそこを曲がれば春立てり
兵庫県      岸野孝彦
立春や父母亡き里の夕まぐれ
立春や白亜の城の堀光る
立春や還暦過ぎて我も孤児
立春や小町通の風となる
立春や棒道行けば佐千夫歌碑
三重県      西井治男
立春や冷たい風で身を浄め
春立ちて別れ出合いで我を磨き
滋賀県      村田紀子
腕まくり地図を広げる春立つ日
大声で駆け寄る二人春立つ日
立春や鎌を研ぎだす翁かな
立春にぬくっと顔出す居候
立春や背に風受けて四股を踏む
東京都      岩川容子
包丁のリズムもかろし春立ちぬ
立春や野球部員の士気あがる
春立てど頬につれなき風のあり
立春や命ひしめく土の下
東京都      松岡加代子
春立つや食指で地球ひと回り
乳溢るややの唇春立ちぬ
居酒屋の志功の天女春来たる
思惟仏の指しなやかや春立ちぬ
春立つや金釘流のラブレター
神奈川県      梶満理子
立春の猫背伸びして陽がそそぐ
散歩道公園の椅子春来たる
神奈川県      成田あつ子
立春の光集めて風車(ふうしゃ)立つ
春立てり鳥声歌ふ信号機
ビル風さへやさしかりけり春立ちぬ
春立つやハリオに躍るアールグレイ
銀輪に翼あるごと春立てり
千葉県      入部和夫
目ざめては日射し優しき春立ちぬ
東京都      住澤義英
立春を明けて暮れてもたしかむる
立春や目覚めて一句詠みかえす
立春や父母の命日かさねけり
東京都      かつこ
立春は二月の四日や朝の月
立春の沖へ沖へと白き波
神奈川県      月野木潤子
佳き便り届き春立つ朝かな
立春の番茶焙ずる茶の間かな
ねりきりの薄紅色や春立ちぬ
立春のシャッター上げる自転車屋
筆談のごと立春の細雪
山口県      弘中典子
立春やかな交じり書の出迎えし
立春や初めて庭でおままごと
千葉県      野木編
四方から掃除機の音春立ちぬ
春立ちてスマホの中に旅の虫
自転車の風切る音や春立ちて
立春やそろそろ杉の目覚めたる
包丁の音軽快に春立ちて
東京都      中田ちこう
コンコルド広場の椅子の春立ちぬ
大ジャンプザトウクジラと立春と
東京都      武藤隆司
立春の見えぬ峰なき丘の上
立春や産み月の子の帰り来る
立春の立ち漕ぎでゆく小舟かな
立春の白波統べるやうに鳶
立春の日ざしに子らの弾みけり
東京都      遠山比々き
鬼の子もゐて立春の床屋かな
埼玉県      守田修治
春立つや味噌汁の湯気唄い出す
春立つ日松に着せたや江戸小紋
春立つや鴎も集う進水式
春立つや新車は希望の黄色とし
春立つや婚姻届記念の日
東京都      皆川里枝
立春に母の齢ひを尋ねけり
立春の何か始めようと思う
立春やビルに映りこむ青い空
立春の朝の食卓目玉焼き
春立つや野に先立てり黄ブラウス
福岡県      西山勝男
立春と言へど野の風尖りをり
筧より立春の水とくとくと
春立つや父の齢を疾うに越ゆ
立春の鍬のさばきもたをやかに
閼伽桶の水満々と春立てり
大阪府      椋本望生
立春の空より空へ朝雀
立春の山光らせて光らせて
洪庵の坐像の向かう春来る
甘平と名づくぺんぎん春立てり
立春の五倍ポイント持ち歩く
埼玉県      小玉拙郎
立春や玉子サンドの美しき
旅用の靴を見に行く春立つ日
立春や洗濯屋に出すネルのシャツ
千葉県      山田香津子
立春の屏風ヶ浦や五百重波
立春や万物の生歩き出す
立春や詳細にして旅プラン
岐阜県      村瀬佐智子
墨の跡のびやかなり春立つ日
立春の空深呼吸したくなる
春立つ日スタートダッシュ繰り返す
条幅の余白にほのか春来たる
馥郁と墨のにじみに春来たる
埼玉県      彩楓(さいふう)
立春や幼馴染とバスツアー
立春の光を連れて観覧車
立春のロバのパン屋のコッペパン
親に孝なれ立春の清め塩
立春の光の中を大漁旗
千葉県      下総真里
先付の玻璃の器や春立ちぬ
街頭に犬売る男春立ちぬ
兵庫県      山崎衣玖
裾出しを終へ立春の朝来たる
立春の前髪短くても良し
立春や箪笥に仕舞ふ古財布
立春の白光を行く新幹線
立春や護岸工事の回り道
兵庫県      ぐずみ
愉しきや老ひの茶店に明日立春
立春や古稀念頭に顔洗ふ
立春や張る位置変える一年の計
書肆にまだ日記帳置く春立つ日
立春や朝の河原で吹くペット
福岡県      多事
とりあへず走れてはをり立春
立春や川まで上がり来る鴎
立春に目蓋重たき磨崖仏
立春や結晶状の鼻の水
薄そうで重そな卵立春
神奈川県      三好康子
歩き始む子の第一歩春来たる
真白なるシャツにジーンズ春立つ日
春立つと口に乗せれば弾みけり
春立つや藁葺き門の古き寺
立春の綺羅なす水面観覧車
東京都      内山岱鵬
立春や豆踏み抜きて茶をこぼす
立春や未明に出会うトイレ前
夫婦(めおと)して湿布貼りっこ立春の夜
立春やベンチに置き去り犯科帳
立春やおみくじ大吉ポッケに入れ
神奈川県      髙梨裕
光はや日は立春の江戸切子
立春のシンクに水の生まれたり
立春や乳飲み子立てばその一歩
立春や恋は渡しの向こふ岸
立春や指笛を聞く丘の道
京都府      中村万年青
立春や静かに暮れる西大寺
立春や寒さの底と誰れとなく
立春やおしくらまんじゆう風の中