俳句庵

5月『更衣』全応募作品

(敬称略)

愛媛県     砂山恵子
押し寄せる娘の荷物更衣
更衣道にあまたの膝小僧
花時計は三原色に更衣
狩衣に仕付け糸あり更衣
例ふれば薄荷の香り更衣
愛知県     茜雲
更衣ハワイへちょいとひとり旅
カーテンを押す風軽ろし更衣
更衣ヒールを少し高くして
窓際に青き花瓶や更衣
マニキュアのラメの煌めき更衣
千葉県     ワカシ君1年生
はとがまめくつてぱ朝の更衣
御下がりの衣に更へて兄の顔
武蔵野に更衣するフォントかな
令和てふ御代来たるらし更衣
更衣鎖骨に宿る天使かな
兵庫県     岸下庄二
更衣きのふと違ふ風吹きぬ
一人居の米寿の母の更衣
少年の声変りする更衣
身を締める枷取り除く更衣
屋外の始業体操更衣
栃木県     鹿沼 湖
スカートの裾へそよ風更衣
改札に白の溢るる更衣
通学のペダルの軽し更衣
街中へ流るる白や更衣
神奈川県     月のうさぎ
更衣朝飯食らふ反抗期
大阪府     ながた
人数分指揮する刀自や更衣
三重県     平谷富之
看護師は白から白へ更衣かな
新潟県     近藤 博
セーラー服見るに清楚な更衣
更衣肥りし故に纏はれず
恣意なるや時季を問はずに衣更ふ
更衣街の人波白っぽく
何はさて一歩先駆け衣更ふ
長野県     木原登
心の武装解くべく衣更へにけり
雷鳥の雛ふと思ふ更衣
喜寿過ぎの五十肩なり衣更ふ
衣更へクリップ一つ買いにゆく
丘に立ち湖見はるかす更衣
滋賀県     了庵
みづうみは紺から藍へ更衣
衣更へ歩幅大きくなりにけり
少女らの二の腕眩し更衣
弟は兄のお下がり更衣
更衣してよく動く手足かな
宮城県     石川初子
男子校ひかりの束なり更衣
大阪府     藤田康子
更衣一等好きな服を着る
更衣風といちばん親しい日
にんげんの脱皮はかんたん更衣
岐阜県     金子加行
朝の駅色を変へるや更衣
子沢山白きを積みし更衣
軽き身の歩幅の街や更衣
ポケットに要る物忘る更衣
朝の道心地よきかな更衣
愛媛県     渡邊國夫
孫よりのプレゼント着む更衣
もやもやの晴れぬがままの更衣
ペアルックの衣更へして神詣で
衣更へしたる娘を見送りぬ
老いたれば子に従はむ更衣
愛知県     西谷寿
街見れば更衣後の景色かな
時季外れ恥ずかしそうに更衣
子どもたち誇らしきかな更衣
かび臭さ年月を知る更衣
平成を更衣して令和待つ
静岡県     城内幸江
皺多き教師の背広更衣
病室の父腕細し更衣
右腕の古傷をみて更衣
野球部の声弾みをり更衣
大阪府     木山満
断捨離を誓いつ臨む更衣かな
結局はまた元の場所更衣かな
衣更え果てなき命に迎合す
衣更え今年限りと気弱な媼
衣更えここから始めむ我が余生
ブラジル     西山ひろ子
軽き風頬を撫でる日や更衣
風通すのみの妣の衣更衣
更衣好みし色は変はらづに
ポケツトの必需品なり更衣
一番の好み着やすき更衣
兵庫県     髙見 正樹
白眩しセーラー服の更衣
静岡県     章吾章吾
更衣猫に思い出あるらしい
更衣畳んだ己に風通す
神奈川県     神田央子
断捨離の果ての素朴や更衣
千葉県     柊二
ふところの手やさらされし更衣
神奈川県     佐藤博一
更衣つばさ得たかに外出す
教室の明るくなりし更衣
公園の遊具塗り替え更衣
昨日より今日新しく更衣
人と逢うときめきあリし更衣
大阪府     金成愛
還暦の目は少年よ更衣
宮城県     林田正光
無職にも無職のままの更衣
一仕事終へて溜息更衣
今年から自分一人の更衣
一斉にスクールバスは更衣
更衣背広ネクタイ不要かな
東京都     内藤羊皐
更衣忌日を持ちぬ弟ひとり
百船の揺蕩ふ朝の更衣
更衣へて定年までの日を数ふ
一歳の童のしたる更衣
奪衣婆の踝濡れて更衣
愛知県     岩田遊泉
明治人(めいじびと)帽子も靴も衣更
断捨離の心機一転衣更
伝統の霜降りの服衣更
警官のやや和らぎて衣更
事務室のぱっと明るき衣更
兵庫県     はなちる
更衣思い出詰めて断捨離す
更衣賽銭箱の木の香り
更衣値札を外すワンピース
ベランダに昨日の嘘や更衣
風抜けてタンス軽きや更衣
島根県     GONZA
まだ白い二の腕振って更衣
更衣手足も伸びる青畳
ポケットに数珠の見つかる更衣
更衣棄てる妻子と拾う夫
それなりに更衣ある仮設かな
東京都     石川昇
更衣街が明るくなりにけり
もう服は買わぬつもりよ更衣
青森県     竹浪誠也
ハレーション起きて教場の更衣
少女らの背筋正しき更衣
球場は白一色や更衣
すれ違ふしゃぼんのかをり更衣
丸刈りの子らの会釈や更衣
山口県     山縣敏夫
更衣しても変らぬ妻の顔
永田町選挙のたびに更衣
就活の娘が今朝は更衣
昭和から平成令和と更衣
更衣張り切る子等の登下校
神奈川県     川島欣也
早々と更衣するショーウインドー
制服は兄のおさがり更衣
更衣隙間狭くなる洋箪笥
ふくらみの気になる歳や衣更
更衣移し忘れる鍵、財布
東京都     岩崎美範
みどりごの寝顔横目に更衣
いたづらに齢重ねて更衣
二の腕の無粋な皺や更衣
尻青き嬰も負けじと更衣
カラフルな波うつ街や更衣
山口県     ひろ子
マネキンの令和の色や衣更え
ダイエット悩みの種や衣更え
東京都     笹木弘
マネキンの一足早き更衣
衣更へてゆつたり歩く力士かな
心にも風を通して更衣
衣更へて監視カメラに映りけり
洋箪笥の鏡を見つつ更衣
千葉県     伊藤博康
自分より子や孫が先更衣
着古しのシャツが一番更衣
更衣これで良いかと孫に聞く
近頃は暦待たずに更衣
年降れば更衣できなほ嬉し
ブラジル     林とみ代
娘の古着ちょいと拝借更衣
衣更へておませとなりぬ孫娘
縫直しアイデア加へ更衣
衣更へて令和楽しむ余生かな
久闊の友との出会ひ更衣
徳島県     白井百合子
断捨離の効果の数や衣更
衣更いっちょらいから普段着に
着崩すやガウチョパンツの衣更
衣更捨てる物などありません
衣更母の手縫いの一枚と
岐阜県     ときめき人
更衣地蔵菩薩の笑みほのか
神奈川県     守安雄介
昆虫の鮮やか過ぎる.更衣
ダイエット失敗したる更衣
足元の心もとなき更衣
更衣向い座席に気付きけり
エアコンのモードも替えて更衣
茨城県     風峰
ポケットに百円硬貨更替
すれ違うふと除虫剤更替
ときめきの色を揃えし更替
Tシャツの「募集中」てふ更替
更替昨日と同じ薄化粧
大阪府     津田明美
思いでもたたみて終う更衣
登校の君の眩しき更衣
残り香を又入れ戻す更衣
断捨離や今日より人生更衣
更衣写真に残す日々の在り
大阪府     杉本義雄
新元号季節と流れを衣替え
股引きの脱ぎ時衣替えの時
衣替えちょっと早いか今朝の冷え
花時計雨待つ日々の更衣かな
着ては脱ぎ派手かと鏡に衣替え
広島県     永野昌人
二の腕の種痘の痕や更衣
制服の襟に襟章更衣
黒髪は切つて仕舞へと更衣
更衣教室白くなりにけり
モデルみな何故か不機嫌更衣
愛知県     常磐
見守れるおまわりさんも更衣
大阪府     太田紀子
セーラーの肘の白さよ更衣
脇からの風吹き抜ける更衣
更衣丸裸にせる赤ん坊
神奈川県     矢神輝昭
更衣無精の亀は如何にせん
引き締める帯衣擦れの更衣
更衣しても僧衣の擦り切れて
更衣糊もぴしりと令和ぞな
あすなろの気持ち凛々しく更衣
三重県     倉田伊都子
綿入れの 山と積もりて 更衣
浮世風 さらりと流し 更衣
東京都     勢田清
心地よき風の街なり更衣
更衣こころも軽く晴れやかに
女生徒ら白い制服更衣
教室のはつらつとして更衣
軽すぎてふと頼りなき更衣
ブラジル     玉田千代美
更衣老いの楽しみ何時か消え
老いぬれば若くなりたし更衣
東京都     石井真由美
更衣ポニーテールの女の子
カスバより帰国の友や更衣
病室の母の寝巻や更衣
世の中も少し明るく更衣
異国への荷物の軽ろし更衣
三重県     後藤允孝
職退いて身軽となりぬ更衣
傘寿には傘寿の矜持更衣
身丈より袖丈合わぬ更衣
更衣して風貌の変わらじと
衣更ふ傘寿に辛き詰将棋
神奈川県     塚本治彦
草食系肉食系も更衣
老け顔の相も変はらず更衣
老人の日課変はらず更衣
逆らへぬ古女房や更衣
婚活の仕切り直しや更衣
神奈川県     志保川有
曇のち晴の予報や更衣
更衣東海原発四十年
風に痛む白き腕や更衣
押入の檜の匂更衣
更衣すれど厚物かたさずに
神奈川県     井手浩堂
女生徒の声の明るし更衣
上腕のほくろに風や更衣
デパートは早やマネキンの更衣
東京都     伊藤はな
齢なぞ何処吹く風や更衣
大空に強さありけり更衣
更衣重荷下ろした軽さかな
新しき我と向き合ふ更衣
吹く風を心に纏ふ更衣
東京都     伊藤之忠
めっきりと老ゆ足腰や更衣
この頃の食の衰へ更衣
白襟を正しく今日の更衣
足取りの危ふきことよ更衣
地下街の風は動かぬ更衣
埼玉県     いまいやすのり
判子押し今日の風吹く更衣
血圧の数値良好更衣
更衣乗換へ駅の改札口
更衣乗りたる電車隙が出来
更衣断捨離進む身の軽さ
東京都     豊宣光
変わらざるものもありけり更衣
若返る母の笑顔や更衣
口紅の色も新たに更衣
元号の改まる日や更衣
更衣少女まぶしくなりにけり
東京都     中田ちこう
駒下駄の父の指あと更衣
埼玉県     水夢
鳩笛は日暮れの音色更衣
更衣細き手首にバングルぞ
黒髪をきりりと束ね更衣
ネクタイは水玉模様更衣
更衣衝動買いの紙袋
東京都     右田俊郎
更衣ペンキ塗りたて立て看板
建て替えの老舗蕎麦屋の更衣
更衣街ゆく人のみな眩し
男子校国旗掲揚更衣
更衣女子高生の華やげり
神奈川県     皆空眞而
更衣風の名多き国に棲む
更衣新元号の呼び心地
更衣箪笥に二三冬残し
長堤の先は高校更衣
愛知県     新美達夫
戦力と当てにされゐて更衣
諸車統ぶる婦警の笛や更衣
職人の姿(なり)は嗜み更衣
立ち漕ぎの自転車少年更衣
神奈川県     龍野博史
今日からは散歩の犬も更衣
更衣ショートカットの女高生
仕舞ふ服またも増えたる更衣
更衣白の眩しき女高生
千葉県     横井隆和
D51のごと勇むドラムや更衣
背に胸にラッシュの透き間や更衣
ギプスにも解かれて今朝の更衣
埼玉県     櫻井俊治
胸元の黒子目に付く更衣
きびきびと動く巡査の更衣
東京都     佐藤博重
高層を風駆け上る更衣
銀輪の女子学生や更衣
銀輪の肩で風切る更衣
更衣壁に大書の新年号
更衣書斎の窓を開け放ち
神奈川県     原川篤子
髪切れば風も新し更衣
「水」の字の掛軸代へる更衣
校門に白の眩しき更衣
諸々の芥捨てなむ更衣
衣更へて猫抱く軽さありにけり
滋賀県     船岡房公
ポケットの数減りたるや更衣
水色のシャツもすがしき更衣
球場に白さ耀ふ更衣
職退けば疎きこと増え更衣
千葉県     伊藤順女
マネキンの腕しなやかに衣更
衣更へて肌に風添ふ心地なり
衣更白ばかりなる通学路
更衣白ばかりなる通学路
マネキンの腕しなやかに更衣
愛媛県     加島一善
衣更へて別れた人のメール待つ
衣更笑みがこぼれる老いし母
老いてなほ桃色選ぶ更衣
ナフタリンつんと鼻突く更衣
衣更へて鼻歌うたふ老いし妻
奈良県     平松 洋子
羽衣を松に束ねて更衣
そよ風に服を吊るして更衣
流行に乗り遅れたか更衣
兵庫県     季凛
毛玉取りボタン直して衣替え
影に干す冬物の服衣替え
夫の飲む麦茶の量見て衣替ふ
厚手もの「えいや!」と脱いで衣替え
仕事へと出掛けぬ夫の衣更ふ
福岡県     紙田幻草
心まで軽くなりたる更衣
若者にせかされてゐる更衣
福岡県     西山勝男
農着とて織り目正しき更衣
一介の我も行人衣がへ
老いてなほ初心に帰る衣更
衣がへ老いの暮らしにつつがなし
令和の代明日に控へて更衣
愛知県     木下澄枝
腕白の手足に傷や更衣
姿見にためつすがめつ更衣
山裾の風かろやかに更衣
更衣どの道ゆくも逆らはず
いま少しこの世に長居更衣
東京都     松井陽一
更衣適者生存せむネクタイ
見覚えの母の繕ひ更衣
流行のつひに還りぬ更衣
老妻の小さくなりけり更衣
母のだけロイヤル仕上げ更衣
岡山県     岸野洋介
沖縄の旅がきっかけ更衣
米寿とてけじめはけじめ更衣
更衣してまず妻の墓参り
令和の世いやさか祈り更衣
ポケットの小物を移す更衣
千葉県     入部和夫
地味な妻ちょっと派手目な更衣
千葉県     長谷川ぺぐ
更衣ふマネキン街やそよぐ風
ウォーキング靴も帽子も更衣
新たなる時代と共に更衣
歌声は教室の窓更衣
大阪府     椋本望生
衣かへシャツの疵あと蘇る
バックルの光久しき更衣
老いてなほ離せぬ衣更へにけり
捲りたるカウスボタンや更衣
更衣ふ青のスカーフ取り出して
埼玉県     彩楓(さいふう)
窓全開風甘やかな衣更
ポケットになくした指輪衣更
衣更日本を白く輝かせ
姉よりのおさがり嬉し衣更
衣更五年着てないワンピース
東京都     岩川容子
若き娘の手足のびのび更衣
樟脳の淡き香のこる更衣
過ぎた日の思いをたたむ更衣
更衣水仕も軽くなりにけり
神奈川県     ―
更衣陽の射す部屋の青畳
ワイシャツのはらめる風や更衣
袖通すシャツの軽さや更衣
更衣桜上水散歩道
回廊をわたる僧侶や更衣
三重県     西井治男
ペットの毛ふわふわ泳ぐ更衣
神奈川県     海野優
決められぬ衣更へして紅をひく
衣更へて鏡の中の背伸びかな
先生のにはかに若し更衣
あれこれと拡げては出す更衣
愛知県     斉藤浩美
身の不運嘆くことなく更衣
定年が延びまたスーツ更衣
保護色を持たぬ人間更衣
更衣肌にやさしき綿のシャツ
八頭身になれぬ生涯更衣
山形県     白竜
衣替我が定番のクールビズ
衣更細き腕に残る古時計
猪も年号共に衣更え
八十路の身コーディネート迷う衣更
先見えぬ病臥の床で衣更
福岡県     紅さやか
更衣青いりぼんの籠バッグ
兵庫県     岸野孝彦
白い腕白きセーラー更衣
宗悦の白磁の壷や更衣
更衣眩しき人より眩しき
黒鉄の取っ手響かす更衣
ふるさとの光も風も更衣
大阪府     岡田政子
更衣形見のマフラー巻いてみる
更衣身軽になりて飛び出す娘
わが余命自問しつつの更衣
朝の陽や更衣して駆け出す子
東京都     遠山比々き
更衣朝三暮四の吾が身かな
千葉県     四葩
もう要らぬ礼服母の更衣
こぢんまり畳む施設の更衣
若き日の華やぎの服更衣
埼玉県     小玉拙郎
腕に風若さ戻りし更衣
街ぐるみ目に鮮やかな更衣
更衣心模様の揺れかくす
備前焼き奥に片して更衣
大阪府     神谷一見
遺されし母のトルソー更衣
埼玉県     哲庵
減量を言い渡されし更衣
元号も和を貴しと更衣
終活がどうのこうのと更衣
形見分けめきし母子の更衣
生前の贈与初めか更衣
東京都     田中史子
裏地なきスカートに風更衣かな
更衣白きかいなをもてあまし
東京都     爽紫
長袖を 二枚仕舞わず 更衣
まとう風 爽快なりし 更衣
猫の声 軽やかなりし 更衣
東京都     快紫
更衣 防虫剤の 香を解く
更衣 好みの服が きつくなり
去年の染み 指で隠すや 更衣
東京都     涼紫
畳み皺 重力任せ 更衣
ポケットに 映画半券 更衣
更衣 して激辛の 麻婆食べ
埼玉県     吉野静
あらいやだ残る躾の更衣
身も軽く心も軽く更衣
更衣電車の中も軽くなり
人ごとのやうに日が過ぎ更衣
ありふれた日常が好き更衣
福岡県     多事
あいつには未だ友だち更衣
珈琲のかほる書店や更衣
更衣一両しろき女学生
校庭に総帆展帆ころもがへ
更衣今日の運勢色は青
神奈川県     三好康子
亡き人のもの捨てられず更衣
ひとまはり太目となりて衣更へ
衣更へてどこか手足のよそよそし
街角の風筋ひかる更衣
M寸の中肉中背衣更へ
千葉県     みやこまる
車椅子も歌も軽やか衣替
リハビリの義母のわがまま衣替
花の名で揉めたる母子衣替
衣替袖引く母の細き指
ツボにくい込む指先や衣替
神奈川県     小林清美
水色に寝具そろえて更衣
東京都     飯田哲司
枝づたいぬけがら見事更衣
ちぎれ雲なぜ見つからぬ更衣
出す度に思いなつかし更衣
通学路同じ生徒か更衣
更衣熱い砂浜青い海
山口県     三浦圭三
卒寿翁ますます華やぐ更衣
歳ととも彩はなやかや更衣
乙女等の生あしまぶし更衣
更衣出たり入たり試着室
赤ちゃんのガーゼの肌着更衣
神奈川県     髙梨裕
衣更へてひとりの居間に風招く
更衣仏間に母の置き鏡
撥剌と女現る更衣
姑の二の腕白き更衣
更衣老い一徹の侘び住い
東京都     豊島仁
あれこれともう日が暮れる更衣
捨てきれぬシャツが一枚更衣
更衣スクランブルに白き波
更衣妻百日の服を出し
更衣歌舞伎座へ行く母送る
京都府     中村万年青
半袖の二の腕寒し更衣
白シャツの目にも眩しき更衣
一二枚残し置きたり更衣