俳句庵

季題 6月「父の日」

  • 燦々と日は高空に父の日来
  • 長野県     木原 登 様
  • 父の日や親子で交す祝ひ酒
  • ブラジル     林 とみ代 様
  • 父の日と子よりカードの旅行券
  • 千葉県     渡邉 竹庵 様
  • 父の日の母のひと言ありがとう
  • 大阪府     津田 明美 様
選者詠
  • 父の日の無聊に仰ぐ欅かな
  • 安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 今月の兼題は「父の日」です。歳時記を開くと、五月五日の「こどもの日」、五月第二日曜日の「母の日」に続いて、六月第三日曜日に「父の日」があります。五月五日は昔から「端午」の節句で、三月三日の「雛祭」とともに、季節の移り変りの大事な祝日でした。周知の通り、「母の日」も「父の日」もアメリカに始まりました。多種多様な「父の日」を、共感を覚えつつ拝見しました。
 優秀賞の木原登さんの句。「父の日」の句には、様々な父が登場します。この句の善さは、「燦々と日は高空に」と、父の日を愛でていることにあります。自らも「父」として、雲一つない大空を仰いでいます。その自覚が、正に燦々とした思いの句となっています。
 林とみ代さんの句。「父の日」の題には、自ずと父への感謝の思いが籠められています。この句のお子さんは、すでに社会人として活躍されているのでしょう。「親子で交す祝ひ酒」には、それを見守る温かい思いが感じられます。杯を交す父と子、いい景です。
 渡邉竹庵さんの句。この句は父の日のお祝いとして、お子さんから「旅行券」が届いたという楽しい句です。「カードの旅行券」が具体的で善いですね。こういう品物の祝いは、昔も今も感謝の印しです。それは同時に、父親の健康をも表わしています。
 津田明美さんの句。この句は前句と異なり、「母のひと言」が主体です。それは「ありがとう」です。純粋な感謝の思いです。食事を囲んでのことでしょうか。母が父に向かい、「お父さんいつもお仕事ご苦労さま、ありがとう」と言う姿には真心が籠っています。
 今月の佳句。〈父の日や戦に散りし父のこと 渡邊國夫〉。〈父の日ね姉は箸止めつぶやきぬ〉。〈父の日や誇り得るもの何も無し 勢田清〉。〈父の日や遺影の父に灯をともす 豊宣光〉。善く出来ています。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。