俳句庵

7月『虹』全応募作品

(敬称略)

愛媛県     砂山恵子
ああ虹と声や眼下に黒瀬ダム
父逝きて二十五年か虹の橋
虹を見る在宅医療研修日
虹消えて背広の列に加はりぬ
くきやかな山の稜線朝の虹
大阪府     二三女
虹渡りあの世の話し聞かせ来る
旅立ちの黄泉比良坂虹の橋
あの虹の向うへ君は旅立ちぬ
黄泉路より君戻りしか虹の橋
愛知県     寿春
遠くから虹で知らせる神様が
虹色の服を着て手をつないでね
虹つくる子がはしゃいでた幼き日
愛猫と歩いて渡る虹の橋
雨やんで虹が浮かんで喜ぶ子
岐阜県     ときめき人
虹見る日背筋を伸ばし凛とせり
兵庫県     岸下庄二
吊橋を大きく跨ぐ雨後の虹
ハイウエーぐんぐん虹に近づきぬ
片端を島に降ろして虹立ちぬ
半円を海に沈めて虹立ちぬ
虹の出て授業を一時中断す
新潟県     近藤博
七色の虹が弧をなし晴れ渡り
虹かかる海原はるか佐渡の見ゆ
降り止みて虹の掛け橋をちの山
雨あがり山々跨ぐ虹の橋
橋渋滞苛立ち見遣る虹の橋
岐阜県     金子加行
虹になき色で別れを告げらるる
吊橋に揺れ虹の真ん中へ行く
指切りの二人が誓ふ虹予報
虹観たい子を連れてゆく里帰り
野球部の虹へ飛び出す声聞こゆ
千葉県     柊二
虹捉え三人の白髪寄せて
鳥取県     門脇かずお
虹の門潜りて売られゆく仔牛
真っ先に校長が虹見つけたり
ベビーカー静かに虹の降りてくる
虹の出るころ見計らいお茶にする
虹消えてあなたがはっきりと見える
神奈川県     松野勉
夕虹や真っ直ぐ帰る家がある
虹の橋一品多い夕餉かな
埼玉県     飯塚璋
高速道筑波にかかる虹追うて
奈良県     堀ノ内和夫
虹立てば老いの一団腰伸ばす
ロブ上ぐるテニスコートの空に虹
ビルの窓虹見る人の並びをり
栃木県     鹿沼 湖
二重虹天使の歌の流れをり
虹消えて後ろの席へ戻りけり
ワイパーと同心円の虹の橋
しばらくはときめきやまぬ朝の虹
朝虹のゆつたり右へ流れをり
千葉県     いなだ君二年生
北南イムジン河に架ける虹
虹立つや町に流るる「七つの子」
夕虹や里の竈に立つ煙
長靴を猫の履くたび虹の橋
引き金に掛ける指先架かる虹
兵庫県     岸野孝彦
無人駅続くばかりや虹かかる
父母の霊祈るがごとく虹仰ぐ
孫の絵や虹と太陽外は雨
虹滲み空に溶けゆく夕まぐれ
雨やめば峰から峰へ虹の橋
愛媛県     渡邊國夫
虹立つや区画整理の干拓地
虹の橋母の郷より孫の街
夕虹を欲しがる幼婆の背
虹二重山に堀切り馬落し
老の漕ぐ田舟に雑貨虹の中
東京都     勢田清
くっきりと田圃より立ち虹の橋
入院の母居る方や朝の虹
大虹や母の故郷の法事の日
虹だよと呼べば隣家の窓も開き
みな立ちて濃き虹の橋眺めけり
東京都     岩崎美範
手をとりてちちはは渡る虹の橋
虹たつや地震の苦しみ残る街
虹たつやかつてキューポラありし街
虹消えて普段の街に戻りけり
幸せの二度来る予感二重虹
千葉県     伊藤博康
虹の出る空の気配になりにけり
この街のどこかに虹の根元有り
新作の和菓子のごとき虹かかる
日が差して虹は無言で立ち去りぬ
県境をひとまたぎして虹出る
千葉県     渡邉竹庵
虹の橋ほうき星から落とし物
みちのくや今も昔も虹の先
今日帰る最南端の駅に虹
水遣りのやがて戯る吾子と虹
長野県     木原登
夕虹へ牧のオカリナ吹きにけり
妻よ来よ今全天に二重虹
円虹にわが青春のありにけり
海の虹白雨の雫なほこぼす
八丈島の海真つ青に夕立虹
神奈川県     野川喜一郎
虹の向こう子に会いたしと願う吾
虹立ちて丹沢山塊3世代
平戸より黒島までの虹の裾
玄海も小さきと思う虹立てり
秋の虹吾子の一生如く消え
神奈川県     塚本治彦
看護士の告げて回りぬ虹の橋
山稼ぎ虹消ゆるまで昼休み
夕虹や喧嘩せし子の仲直り
大字も小字も一つ虹の中
虹仰ぐ牛と牛飼並び立ち
神奈川県     神田央子
携帯の電池少なや遠き虹
埼玉県     岸保宏
虹消えて路肩の人が散りにけり
早朝に飛び立つ機体虹くぐり
丁寧に書く便箋の虹模様
愛知県     茜雲
祈りつつ走る道中出でし虹
まあいいか私は私朝の虹
愛知県     遊泉
神島へ虹の架け橋余るほど
園庭の園児ずぶぬれ虹を追う
青森県     竹浪誠也
虹立ちていつとき野良を怠けゐる
学舎のどの窓からも虹の橋
土手道を虹追いかけて走る走る
虹消えて子等はほどなく遊び出す
田舎より手紙来さうな夕の虹
兵庫県     髙見 正樹
かかる虹雨が洗いし街の空
京都府     村田稔子
幼な子と ホースで水やり 夕虹か
山口県     山縣敏夫
振り向けば海峡間に虹立てり
虹を背にポーズを決める儂の妻
丘の上愛犬の目に虹を見る
海峡に立つ朝虹を一跨ぎ
虹架かる山間を行く霊柩車
埼玉県     いまいやすのり
虹立ちて見知らぬ人と立ち話
夕虹や聳ゆる穂高引き立てり
消えかかる虹の後ゆく路線バス
渋滞を暫し忘れて二重虹
虹の橋二峰の嶺に掛かりをり
大阪府     金成愛
母は母に叱られてゐる虹二重
東京都     内藤羊皐
鳳凰の気配を隠し虹匂ふ
おとうとの葬儀へ懸かる虹二重
夕虹や焼香迄の長き列
水分の社へ消えたる虹の翳
虹立ちて眉の白髪を抜きにけり
大阪府     藤田康子
虹の両端その先の自分いろ
背にありし陽を忘れたる冬の虹
山口県     ひろ子
同窓の校歌うるわし虹たちぬ
神奈川県     ―
夕虹や煌めく玻璃の摩天楼
天守への暗ききざはし二重虹
動きだす花嫁舟や虹の橋
病床の母に窓あけ虹の帯
放課後のチャイムのそよぎ淡き虹
岡山県     渡辺 牛二
峡狭し山から山へ虹の橋
水小さく跳ねて小さく庭の虹
静岡県     城内幸江
夕暮れの虹エプロンのままで外
ゆふぐれの虹駆け抜ける陸上部
虹消えて買い物袋重くなり
虹立ちて眼鏡の汚れ拭きにけり
虹消えて色をなくした水溜り
徳島県     白井百合子
海原の虹の架かりし夕景色
虹立ちて願いをひとつ託すなり
大地から吹き上がる虹空高く
夕暮れの買い物帰り虹が立つ
夕虹のちょっと嬉しい帰り道
兵庫県     はなちる
オリオンの矢は放たれて虹の橋
耕人を包む虹光過疎の村
稜線に虹輝きて鳥が鳴く
古稀迎え虹の欠片を探す手や
夕虹の残像微か君の背に
大阪府     津田明美
二人して見上ぐ虹より来る明日
虹消へてなほ幻影に佇めり
虹の環をくぐり夢二の絵の中へ
虹の橋渡る未来はクリスタル
虹の根を追いかけ村の鎮守かな
茨城県     風峰
最終の打者の三振虹立てり
ビル谷間四車線幅虹立てり
風下ろす棚田の揺らぎ虹の色
なんとなく幸せ気分午後の虹
上棟の家を跨ぎし夕の虹
神奈川県     矢神輝昭
ホースから溢れる虹で洗車をす
棒高跳びそこを越ゆれば虹の橋
ブロッケン虹の輪に吾神父なり
一湾を天馬が翔けて虹の橋
龍が来て虹呑み込みて雨もらす
東京都     小麦
CDの溝に落ちたる虹埃
虹色の靴下を干す雨催い
パレードの空に泳ぐは虹の旗
色弱の瞳が騒ぐ虹ひとつ
虹色の傘を恥じたる通学路
神奈川県     龍野博史
虹の橋めざしアクセル踏み込めり
夕虹にスピード上ぐる新幹線
放水のダムの飛沫に二重虹
千葉県     峰崎成規
スカイツリー虹を束の間光背に
希望にはさらなる希望二重虹
虹の脚支ふる位置に生活あり
虹たつを告げたき人はただ一人
街騒を一瞬止むる大き虹
三重県     後藤允孝
夕虹の消えて名残を惜しみけり
仰向けば虹はみんなの眼の中に
果てしなき旅に友逝く虹の郷
虹二重吾も二重のまぶた持つ
夕日さす大河に架かる虹の橋
神奈川県     井手浩堂
虹の橋新幹線をまたぎをり
虹の根の在り処を子らと言ひ合へり
虹立つや明日退院の大窓に
三重県     平谷富之
雨上がり一つの楽しみ虹の橋
幸せが虹の向こうにきっとある
埼玉県     櫻井俊治
濁流の大河を跨ぐ夕の虹
東京都     伊藤はな
あの虹の彼方の母を偲びをり
あの虹のむかうにおはす母の面
叱られて涙に曇る虹立の立つ
遺骨抱く夫の背や虹の空
黙祷をすれば脳裏に浮かぶ虹
東京都     伊藤之忠
朝虹や双眼鏡の中の鳥
海沿ひの線路は細く虹の帯
鉄塔の並ぶ山路に虹立ちぬ
今日の虹英霊の碑に捧げをり
眼の前の高き石垣虹の梁
東京都     佐藤博重
朝虹は慈雨の兆と畦を刈る
大阪府     永田
いつどこで誰と見しとは言はぬ虹
東京都     長岡馨子
虹立つやモノクロームの街覚めぬ
ブラジル     玉田千代美
虹を見て神の恵みと手を合す
虹が出る心なごみて里偲ぶ
幸せや旅の行く手に虹を見て
ブラジル     林とみ代
国境の壁無き空や虹の橋
七色の虹消えぬ間の願ひかな
誰が住むや虹の根かかる山麓
夕虹や明日の旅立ち吉ならむ
愛知県     斉藤浩美
教室の総立ちとなる二重虹
投稿は落選つづき虹の端
見るものを沸騰させて虹消ゆる
悩むとは人の世のこと虹の帯
垂直に水平に空広ぐ虹
東京都     豊宣光
亡き母が浄土へ渡る虹の橋
虹消えて暗き浮世となりにけり
縄かけて虹引き下ろす天邪鬼
口げんか終へて出づれば空に虹
虹立ちぬ明日は吉事のあるごとく
千葉県     玉井令子
店先のカーネーションは虹の色
走れども虹のトンネル抜けられず
二重虹山の向こうは甲斐の国
虹の足目指しアクセル踏みにけり
朝虹や今日の運勢大吉なり
千葉県     山田香津子
片脚を工場街に夕の虹
家族旅行の北の大地や夕の虹
橋いくつ夫との野道虹かかる
房総の豊かな台地虹の橋
東京都     海苔太郎
午後二時の 雨に濡れつつ 虹を待つ
虹かかる 光と水の 舞踏会
宮城県     林田正光
聖橋ニコライ堂の上に虹
朝虹の消ゆるを見たり夜勤明け
虹消えて普通の空に戻りけり
ひとときの地球の平和二重虹
虹を見る消えないように小声かな
東京都     五十嵐秀山
通勤のバス遅れ来る朝の虹
乗り違う始発電車に朝の虹
アトリエを過る自転車円き虹
二重虹池上線の窓越しに
夕虹の頓堀の橋より揺るる
富山県     加能雅臣
男坂うしろ姿の虹はるか
夕虹やレコードに針落とすなり
一切れの虹つっ立っている埠頭
大阪府     太田紀子
ダム工事殉職者の碑虹の中
虹消えし空いつまでも見つめをり
虹の端受け止めてゐたる天王山
神奈川県     守安雄介
絶海の孤島の虹の高さかな
丸虹を抜けぬ機影や雲切れる
墨で描く虹はやっぱり墨の色 
夕日染む瀑布の虹や紅を帯ぶ
虹跨ぐブリッジの名はレインボー
滋賀県     東野眞知子
虹架けて天女は月へ帰りけり
虹の輪をくぐり花嫁来たりけり
願ひ事半ばに虹の消えにけり
夕虹の消えて夕日の海に落つ
朝虹をくぐり山より始発バス
滋賀県     船岡房公
虹消えて湖すべりゆく白帆かな
西山に片足架けり夕の虹
夕虹や掠れかかりしボールペン
三重県     倉田 伊都子
副虹に思い募るる幸せ色
東海の海に零れし時雨虹
愛知県     新美達夫
憧れてなほ虹の根を見定めず
離陸機の虹の橋より今脱けり
ぎりぎりまで虹をみてゐてバスに乗る
神奈川県     志保川有
虹の弓に時間なる長き矢を番ふ
虹立つや角に供えられし花々
よき人の逝きモネ色の虹の立つ
虹立つや大山街道ますぐなり
北斎が浪のうねりや虹の立つ
埼玉県     小玉拙郎
楽譜から移す視界に虹走る
扇状地なお広々と虹わたる
上りきって虹を見おろす観覧車
虹を見る人あり錆びた歩道橋
大阪府     椋本望生
濁世より浮世の島へ逆さ虹
虹の脚砂の中より掘り出して
逆さ虹渡りて島の母を訪ふ
虹消えて逃亡犯は闇の中
夕虹をスマホに入れて旅の果て
千葉県     横井隆和
・宇宙船に煌めく虹や己が尿
・ベランダへ着く間に消えし虹の端
・閉じる書の窓辺に開く虹の橋
・白鷺のゆたりと潜る夕の虹
岡山県     岸野洋介
虹出れば大声上げて子ら呼びぬ
山峡にかかる虹橋しばし見る
滝つぼに瞬時にかかる虹あまた
噴水の虹に見とれて童心に
片虹の立てる棚田を植え進む
神奈川県     川島欣也
日照り雨こしらえ壊す虹の橋
虹の文字虫のたくみの芸術品
虹を見る子供の抱く桃源郷
消火器の筒先虹を作り出す
プリズムの雨粒揃う虹の道
東京都     右田俊郎
出航を告げる銅鑼の音夕の虹
島と島結ぶごとくに夕の虹
あの虹をくぐれと吾子のリクエスト
洋上に大きくかかる虹二重
虹の門くぐるかにゆくクルーズ船
千葉県     伊藤順女
虹でたよ拗ねている子へ呼び掛ける
病室の窓の彼方へ虹立ちぬ
両脚でしっかりと立つ夏の虹
神奈川県     亀山酔田
虹立つや帝の姫の住し寺
虹架かる子が見上げれば皆寄りて
虹立つや手足の長き少女いて
虹と言い虹と返して嗚呼と言い
虹立つや小人の町は忙しき
愛媛県     加島一善
今日もまた虹を吐きたる那智の滝
薄紅の富士山跨ぐ虹の橋
水かぶる象の背中に虹立ちぬ
夕虹や夕日と共に消え去りぬ
隧道を抜けてあらたの虹の橋
東京都     中田ちこう
三川内へ唐子隠るや白き虹
神奈川県     重兵衛
虹立つや吉里吉里国の独立す
ゲル出でて大きな虹の中へゆく
ゲル出でて虹立つ朝迎へけり
神奈川県     原川篤子
わだかまり消ゆるかに虹消えにけり
背なの子を起こして虹を見せにけり
子に見せるホースの虹は片足に
諦めぬ夢まだありて虹たてり
虹たてり消えゆく迄を祈りけり
東京都     岩川容子
虹はるか出国ロビーの大硝子
虹の橋離島にひとつの滑走路
目つぶれば瞼の奥に残る虹
虹消えて夕餉の支度急ぎけり
東京都     遠藤弘子
虹たつや赤子を抱けばほんのりと
千葉県     入部和夫
古希の身に夢のあまたや虹の橋
大空や絵本のごとき虹の橋
大海や海の丸さに二重虹
虹を子の追ひかけ走る橋の上
虹立つや不思議の国にゐる如し
宮城県     西條光観
虹追って虹追ってなお遠離り
虹を手に背伸びしている赤子かな
大虹やダンプの走る三陸道
虹の足虹の終わりの住む絵本
三重県     西井治男
徐に消えた虹跡なぞる吾
虹に拝兄への祈り一分間
登下校パラソルたたむや浮かぶ虹
東京都     笹木弘
虹消えて現実の世に戻りけり
夭折の子の渡り行く虹の橋
虹消えて泣く子笑う子元気な子
虹を見て幸せな気にさせにけり
夕虹の足を蹴飛ばし逆上がり
神奈川県     後藤真子
あの虹が結婚指輪だよと君
虹色の旗の行進自由へと
虹立ちてキャンプ場のライダー沸く
朝虹や勇気もらひてひとり旅
復興の地へ人へ約束の虹
東京都     遠山比々き
ふるさとは日本の鬼門虹仰ぐ
埼玉県     守田修治
さいはての駅より消えし虹の路
人情の句読点かな旅の虹
虹を見て手を休めたる測量士
虹かかる今夜の銀座多忙なり
虹がでた明日の手術はうまく行く
北海道     飯沼勇一
虹立つや野球少年校庭へ
夕虹やスマホの地図を見る少年
青年を迎えるバイク宿の虹
青銅の大仏頭上を跨ぐ虹
埼玉県     水夢
遥かなるトトロの森に虹おぼろ
ハワイ島風のふくらみ虹の橋
溶岩果つる海原に太き虹
迸る水の裏側虹生まる
舵握る太き腕や虹の橋
埼玉県     吉野静
夕虹をくぐる童の影絵めく
野良猫といっしょに見てる二重虹
兄弟の諍ひをはりさっと虹
何もかもいやな一と日や虹の立つ
夕虹や一と日のをはり明日の色
静岡県     池ヶ谷章吾
虹が出たと布れて回る子虹の下
千葉県     長谷川ぺぐ
病室の窓そよぐ風虹立ちぬ
夕虹や故郷はなれ幾年ぞ
虹立ちて下校楽しや水たまり
山形県     齋藤碩志
船頭の背に虹立つ最上川
円虹に我が望み消え失せぬ
手に杖を虹止むまで雨宿り
虹立てば災事の匂い混じる街
福岡県     西山勝男
殉教の島へとつなぐ虹の橋
虹の輪の真っ只に我が山河
夕虹や阿蘇の寝姿輪の中に
窓越しに荼毘を待っ間の時雨虹
虹の根の真っ只中に水城あと
埼玉県     哲庵
朝虹を仰ぎ三十五階まで
吹割の滝に架かりし月の虹
北方の四島を巻く虹の帯
瀬戸内の島と島とを結ぶ虹
虹の橋架けて逢ひたき人の有り
東京都     安西信之
虹架かるダムに沈みし村一つ
駅員と吾と見てゐる朝の虹
千葉県     みやこまる
虹立ちぬ一人暮らしに慣れし頃
亡き父の夢より覚めて虹立ちぬ
墓碑銘に縁者とあらむ虹の果て
夕虹や逆援の糸繕へり
虹見れば思い出しそう忘れ物
東京都     田中史子
分校へ虹をくぐりて定期船
福岡県     多事
ホースより漏るる虹あり吾子の臍
何処ぞよりピアニカの音虹の脚
ナイアガラ虹の投網へ観覧船
雨の端を抜かば振り向け虹の橋
倚松庵出でて大きな虹の下
東京都     飯田 哲司
夕映えをほのかに染めて夢の虹
猛烈な雷雨押しのけ虹鎮座
しずく落ち物干竿の先は虹
虹の色問われてスマホすがる古希
遥か空虹を見たのはいつの日か
東京都     豊島 仁
天と地に架ける令和の虹の橋
悠久の大河を虹は跨ぎけり
歌舞伎座を出れば見栄切る虹二つ
さまざまな地獄と虹を見たりけり
母は胸父は背中に虹を待つ
神奈川県     髙梨 裕
胸無きと妻の一言うすれ虹
旅終えて虹立つ家に帰りけり
早雲城夢いくばくの春の虹
墓地ひとつ虹立つ墓にマッチする
船待てば母の島より虹の立つ
京都府     中村 万年青
虹の橋渡れば未来輝きて
レインボーカラーLGBT主張せり
夕虹や晴れたらきつと祭笛