俳句庵

1月『繭玉』全応募作品

(敬称略)

愛媛県     砂山恵子
つかまり立ちし繭玉に触れたる子
ひとつづつ消えし繭玉よしとする
繭玉の飾られてゐる詰所かな
繭玉の日差しの中に揺れにけり
繭玉が今年の星を放ちけり
千葉県     柊二
繭玉や牛馬蚕里の家
東京都     さち
靴にリボン繭玉躍るアーケード
山口県     ひろ子
繭玉や歴史町名はなやげり
繭玉の揺れて華やぐ母の顔
兵庫県     岸下庄二
繭玉を飾る田の字の母屋かな
繭玉の重みに枝の撓りけり
繭玉を潜り出入りの奥座敷
繭玉に触れんと男の子跳び上がる
繭玉や柱時計のやや斜め
埼玉県     飯塚璋
繭玉や上り框の黒光り
繭玉を粥に炊き込み運試し
繭玉の紅白揺るる格天井
神奈川県     松野勉
繭玉やのんちゃんの上毛かるた
繭玉や子供は子供いつまでも
新潟県     近藤博
繭玉に大判小判仲間入り
繭玉にそっくり繭の形のあり
繭玉や付け方悪しくぽたり落ち
繭玉を天井高く飾りけり
小枝なる繭玉飾るや神棚に
千葉県     伊藤博康
繭玉を飾る部屋なき寂しさよ
繭玉のひとつひとつに願をかけ
繭玉の由来を語る家の長
神棚の無き繭玉の揺れにけり
繭玉をつける指先老ひにけり
埼玉県     いまいやすのり
仲見世を飾る繭玉空青し
繭玉にやはらかさうな光かな
華やぎの繭玉垂るる百貨店
繭玉の一句一句に万太郎
ふるさとの繭玉遠し靄の中
大阪府     藤田康子
繭玊のどれも色愛らしく垂る
繭玊のある客間にて畏まる
長野県     木原登
繭玉といへば遠野のおしら様
囲炉裏火の煤もめでたき団子花
繭玉を火棚に南部曲家は
繭玉に吾子の簪ゆれにけり
繭玉や母に女工の過去のあり
大阪府     木山満
繭玉や派手にしだれて小判かな
繭玉や紅と緑の程好きて
繭玉や余生は飽きた落ちもせよ
夜も更けて繭玉静かに冷えにけり
繭玉や賽の目変える風の出て
埼玉県     柏木晃
しあわせの数繭玉を枝に刺す
繭玉をつまみ食いする幼き手
繭玉の高さに孫を抱き上げる
繭玉に今年の願い無数あり
繭玉にそっと触れれば母の影
徳島県     白井百合子
ケア施設繭玉淡き談話室
繭玉や女性ねぎらう休息日
繭玉の紅白団子枝垂れけり
繭玉に笑顔の義姉やケアハウス
繭玉に大判小判揺れてをり
福岡県     深町明
繭玉は仙女の産衣かもしれぬ
子規庵の餅花の餅いくつなり
繭玉や玻璃の向かふの乳児室
繭玉の繭より白き産衣の子
繭玉のあふれてしんと静まりぬ
北海道     加藤廣子
頑なに繭玉の意地光らせて
過去未来繭玉にある秘めしこと
繭玉の呼吸伺う手のひらに
繭玉のこんにちはーの声欲しい
生きてきた印繭玉かがやきぬ
愛媛県     佐藤めぐみ
繭玉や同級生の逝くを知る
繭玉を掛けて今年も大の吉
手のひらに繭玉一つ二つ三つ
繭玉や白寿の宴に玄孫来る
繭玉を今年も無事に掛けました
愛知県     岩田勇
餅花や四人姉妹はみな美人
繭玉の映ゆ本陣の廊下かな
繭玉の埃しずかに払ひけり
餅花を飾りてでいの華やぎぬ
餅花を求めて暮るる塩の道
兵庫県     季凛
繭玉の明るき道と重力と
繭玉を飾るあぎとの眉太し
繭玉の眩し手繋ぐ人のゐて
黒髪の女曲る角繭団子
繭玉の照らす古郷の広さかな
東京都     小川由紀子
永遠の眠りについた繭玉よ
手のひらに温み感ずる繭玉に
様々な糸絡み合う繭玉よ
繭玉に初雪の日を想うとき
繭玉になつかしい人思い出す
神奈川県     立野音思
繭玉を外して食す小豆粥
繭玉や小判サイコロ大福帳
客来たれ繭玉飾る米穀店
白き手に小さき繭玉宝船
留袖や隣で揺れる繭の玉
東京都     内藤羊皐
神棚を餅花が翳掠めけり
繭玉や幼子ぐづる写真館
繭玉を拾らふ塗絵の裏表紙
繭玉に猫の栖の狭くせる
繭玉や昼薄暗きとんかつ屋
埼玉県     岸保宏
皺の手で煮詰め続ける繭玉や
繭玉や踊り手繰らせ糸取り機
繭玉や糸喧嘩して糸納め
兵庫県     髙見 正樹
餅花を飾る店先和の料理
東京都     岩崎美範
繭玉の餅をとつてと泣く子かな
繭玉を吊るす妻女のえびす顔
薄暗き庫裏に繭玉華やげり
繭玉を揺らす女の未練かな
繭玉を見あぐる嬰の尻青し
宮城県     林田正光
繭玉や色とりどりの願い事
繭玉を仕舞い忘れて月を越え
仰向けに繭玉の数数えけり
繭玉の枝垂具合のめでたさや
繭玉の揺れる影までたわわかな
東京都     勢田清
神棚の傍に繭玉新しき
繭玉や煤けし部屋に射す光
繭玉の枝の撓りて八方へ
繭玉を飾りめでたき年来る
繭玉の下で下宿の夕御飯
奈良県     平松洋子
繭玉の色カラフルな商店街
繭玉で遊ぶ子家の宝物
繭玉の色少し褪せ雨模様
茨城県     風峰
繭玉の枝垂れるままに刻を吊る
繭玉の垂れて真白き衣の色
待合室繭玉妖し揺れし午後
明日に咲く餅花数多つぼみ色
繭玉の明日へと開く季のかほり
神奈川県     塚本治彦
交番に揺るる繭玉事件ゼロ
日記書く乙女繭玉揺るる壁
繭玉の揺るる病室明日退院
繭玉の揺れれば揺るる恋心
繭玉の揺るる婚約期の一夜
岐阜県     ときめき人
繭玉や小さき祈り宿したる
千葉県     いなだはまち
千羽鶴こなたにつるす餅の花
繭玉に千手観音めく家内
枯枝に餅花咲かす孫と爺
宮城県     石川初子
繭玉のごとエコー写真に孫うつる
大阪府     津田明美
繭玉の影揺れて知る風の道
遠い眼で見る繭玉の奥の景
繭玉の揺れて華やぎ生まれけり
主無き部屋に繭玉息づけり
繭玉に目鼻描くは手なぐさみ
静岡県     城内幸江
餅花や玄関褒めてもらひけり
繭玉をつまんで歩く園児かな
繭玉や末つ子の背に合わせをり
繭玉を見上げ行列進みをり
繭玉のゆれて笑顔の女将かな
栃木県     鹿沼 湖
繭玉を丸める母のたなごころ
島根県     寺津豪佐
繭玉の風習だけが残りけり
繭玉の似合うお店の一つ減り
繭玉の下に大きなレジスター
繭玉や長男優し病がち
繭玉を作る相談役の出番
長野県     柳沢忠憲
落花生繭玉だよと孫はしゃぎ
繭玉は養蚕なしの今昔
繭玉や炎の照らす顔と顔
繭玉に母の背中の温みあり
鈴なりの繭玉捧ぐ母と子と
千葉県     玉井令子
とりどりの繭玉の色温かし
境内の繭玉市の賑わしさ
繭玉やインスタ映えの景色かな
紅白の繭玉ふわり揺れている
繭玉や目出度い気分盛り上がる
神奈川県     矢神輝昭
繭玉や爺の頭をつつく影
繭玉や抽選会場囃子立て
繭玉や揺れつ燥ぎて花電車
頷きつ言祝ぐリズム繭の玉
繭玉や頷きおうて保育園
千葉県     峰崎成規
繭玉や情けはしだれ意地は張り
繭玉の枝垂れの下にオムライス
繭玉や小判の縺れ解けぬまま
繭玉や俄かグルメは列が好き
繭玉の華やぐ影に万太郎
岐阜県     金子加行
繭玉の白きの映へし煤の梁
繭玉の先の揺れ見し地震の夜
餅花のしだれ迎へし飛騨の宿
餅花を飾れと届く父の便
繭玉の下に地酒や酌みし友
東京都     長岡馨子
繭玉やほんのり甘き祖母の味
繭玉や「お蚕さま」と皆呼びし
東京都     磯部薫子
手鏡にうつる繭玉片思い
繭玉であやすやねんねこ半纏
手鏡に繭玉うつる人恋し
背のびして触れる繭玉幼き手
兵庫県     はなちる
ふる里の繭玉の色重ね見る
繭玉の令和広がる商店街
繭玉や飾り賑やか宮参り
繭玉や団子土産にティータイム
旅の果繭玉の消えシャッター街
三重県     後藤允孝
不器用な男がつくる団子花
繭玉や灯ともすころに塾通ふ
繭玉や私の願ひ聞き入れて
餅花のひとり暮らしに揺れのなく
繭玉や折鶴ふたつつけ足して
神奈川県     龍野ひろし
繭玉の揺らす彩り濃く淡く
繭玉の客を迎ふる老舗宿
東京都     かつこ
繭玉や夫婦で正座写経する
繭玉に触れて一日初めかな
繭玉やデイサービスの迎えくる
和菓子屋の繭玉談義聞いてをり
神奈川県     守安雄介
繭玉にホバリングする社虻
繭玉に見向きもしない軒雀
繭玉を枝儘焼いて頬張れり
繭玉に戸惑う虻のホバリング
廃プラやせめて繭玉餅にせよ
神奈川県     井手浩堂
繭玉や枝の一つがよく揺れて
繭玉の揺れて新年句会かな
繭玉のしだれの端にわれ坐せり
兵庫県     岸野孝彦
繭玉を父母の写真と飾りけり
繭玉や標のごとく浮かぶ日々
紅白の繭玉揺らす風の里
繭玉や別れし人が立ち上がる
繭玉やまごうことなき道照らせ
愛知県     木下澄枝
差しかはす繭玉の揺れ音もなし
餅花やはやばや灯す飛騨の宿
繭玉や添へ木のやうに母とゐて
餅花を揺らして座る貴賓席
しなふほど餅花咲かせ飛騨の里
千葉県     風泉
蒼空や繭玉潜る高島田
白ねずみ踊る天井繭団子
ブラジル     林とみ代
繭玉のもつれ直して安堵かな
繭玉や祖母の手触りなつかしく
繭玉の柱のきずは子の背丈
餅花の揺れて幸せ呼ぶ如く
繭玉を見つむ嬰児の瞳かな
千葉県     入部和夫
餅花を飾り福徳夫婦かな
繭玉の幸を鏤め咲く如し
餅花を捥ぎ焙るるや村境
賑やかな繭玉市の人となり
忙しなく餅花の影揺るるかな
神奈川県     亀山酔田
繭玉の二日も見れば食ふと言ふ
繭玉や畑のなかに鉄の罠
繭玉や善くも悪くも過ぎる日々
福よ来い金紙小判の繭団子
坪店の繭玉嬉し卵焼き
神奈川県     志保川有
繭玉に五感応ふる兆なし
繭玉の何かを知らずとまどへり
辺野古を思ひ続け繭玉を知らず
滋賀県     船岡房公
繭玉の枝垂るるカフェや陶の碗
繭玉や古民家カフェの角柱
繭玉やレトロなカフェの古りし梁
愛知県     新美達夫
繭玉や賑はい戻る商店街
繭玉や行動早き青年部
繭玉や枝の路地まで華やぎて
愛媛県     渡邊國夫
米蔵の懸魚は鶴亀団子花
繭玉に大判小判宝船
繭玉や床に九谷の大絵皿
もち花や午後の紅茶にラテアート
団子花人事の話盛り上がる
千葉県     渡邉竹庵
繭玉や三軒きりの過疎の村
古民家のカフェは黒壁まゆ団子
神奈川県     川島欣也
故民家の帳場取り巻く繭団子
繭玉を吊るす萱葺屋根の下
繭玉と小判のもどき枝の先
繭玉の揺らぎに神や乗り来る
母と子と繭玉つくり炉辺かな
岡山県     岸野洋介
てかてかの繭玉ゆれる孫の家
米寿来て繭玉講師なお続け
神棚に吊るす繭玉すこし揺れ
客寄せの繭玉ゆれるお授け所
繭玉や家族あふれるお正月
東京都     石井真由美
床の間の繭玉垂るるさくら色
繭玉の下に父母布団敷く
繭玉に大判小判宝船
繭玉や線香の立つ仏間かな
繭玉のバランスの数理数女子
三重県     西井治男
千曲川堤防そばに繭玉を
千葉県     長谷川ぺぐ
女子会で妻はお出かけ繭団子
繭玉や今日の家内は二度寝たる
埼玉県     哲庵
餅玉や座敷童子の笑い声
繭玉や小判擦れ合う音響く
繭玉の嬶座の上で揺れてをり
繭玉の下で昔こ語りかな
繭玉のシャッター街を彩れり
福岡県     紙田幻草
繭玉や今祈るもの何もなし
繭玉を信じる人の今もあり
東京都     中田ちこう
繭玉を背に野良着干す土間暗し
愛媛県     加島一善
繭玉や淡き和の色てんてんと
店先の繭玉揺れる先斗町
繭玉や鯛と小判とお多福と
繭玉や数多の福をこぼしをり
紅白の繭玉祝ふ奥座敷
神奈川県     皆空亭
繭玉に鯛や林檎の北信濃
繭玉や父母の遺影はセピア色
東京都     岩川容子
神棚に米とお神酒と繭玉と
しだれ咲く色華やかな餅の花
繭玉やかって栄えし絹の町
繭玉の揺れて猫の目めまぐるし
東京都     笹木弘
繭玉や瓶に湯の滾る自在鉤
床の間に繭玉の影鎮まれり
繭玉のしばし揺れたる夜の地震
繭玉の揺るる合掌造りかな
繭玉の枝垂れて恋を打ち明けり
千葉県     伊藤順女
客ありて繭玉揺るる夕べかな
繭玉のゆらりと夢見心地かな
繭玉や色とりどりに揺れてをり
埼玉県     水夢
繭玉やポニーテ-ルの少し揺れ
繭玉や女流棋士直ぐ指す一手
繭玉や人形町の大判焼
繭玉ゆるる青空の広ごりぬ
繭玉たわわ遠き日の母の声
静岡県     大澤定男
繭玉の高さに白無垢綿帽子
繭玉や化粧一筋女形
繭玉や寝入りてのちを誰揺らす
繭玉のしだれや久保田万太郎
繭玉や母より淡き恋をして
埼玉県     守田修治
繭玉や寝酒を頼む旅の宿
繭玉や諸般調う京の宿
繭玉や我家に祝やってくる
繭の玉後期高齢早寝かな
繭玉に引力ありて孫集う
大阪府     永田
病棟へ繭玉届き活気かな
神奈川県     海野優
繭玉や三十路の娘花盛り
繭玉に真実はつつむ薄衣
繭玉や嫁ぐ気のなき姉娘
東京都     右田俊郎
高山の繭玉飾る民芸館
繭玉の揺るるを赤子見て笑ふ
繭玉や薬種問屋の薬箱
繭玉を焦がさぬように火に炙る
大甕に繭玉飾る漬物屋
神奈川県     三好康子
餅花や母の面輪の三姉妹
餅花に看板にぎはふ芝居小屋
餅花の設ひ新た芝居小屋
繭玉や煤くる梁に自在鉤
仲見世に万の繭玉明かりかな
埼玉県     彩楓(さいふう)
繭玉や犬が尻尾を振る宿屋
繭玉のやがては星になるといふ
繭玉や錦糸銀糸の小間物屋
繭玉の明るい空に吹く風よ
岡山県     渡辺 牛二
繭玉の揺るる茶房の客となる
富山県     加能雅臣
繭玉に紙飛行機をとばしけり
繭玉や雨戸を叩く雨の音
繭玉を仰向けで見る畳縁
神奈川県     重兵衛
繭玉や古都の老舗の薦被り
東京都     飯田 哲司
繭玉の何んともなかがあったとは
桑の葉や我れ先はんで繭玉に
繭玉や多摩が栄えた絹の道
富岡の空にぽっかり繭の雲
東京都     豊島 仁
繭玉のゆれてデパ地下威勢よき
柴又の繭玉ゆれて寅帰る
繭玉の好きことあるや赤と白
繭玉に想いを馳し越後かな
年甲斐も無き繭玉の嬉しさよ
京都府     中村 万年青
繭玉や花街に今も在る習ひ
舞玉を初めて見しは京の町
餅花や柳のしなり風ゆらり
神奈川県     髙梨 裕
繭玉や着飾る事も無き暮らし
繭玉や羽振り利かせて生きた頃
繭玉や昭和の商家金看板
繭玉や兄嫁守る生家あり
繭玉や襤褸ひく家のほの明かり