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- 俳句庵 2020年11月 優秀賞発表
- 俳句庵 2020年11月 作品一覧
俳句庵
11月『冬木』全応募作品
(敬称略)
- 宮城県 zazi
- 冬木立観光客の襟寂し
- 冬木立ポニーテールの山女かな
- 離着陸見上げる空に冬木立
- ピアス無きピアスの穴の冬木かな
- 寒林やメンソール香の風の行く
- 愛媛県 アリマノミコ
- 線路跡いっぽんの道冬木立
- 夫と来し古民家のカフェ冬木立
- 自らの命を空へ冬木立
- 千葉県 いなだはまち
- 書きためし俳句の種や冬木道
- 人は人冬木は冬木息を吐く
- 抱きしめて冬木のこゑを聞かんとす
- 埼玉県 いまいやすのり
- 風立ちて静けさ破る冬木道
- 昏れゆきて僅かにのこる冬木影
- ちかみちの坂の斜光や冬木影
- 冬木道ペタルを停めて深呼吸
- 真つ直ぐな一本道の冬木かな
- 福岡県 すがりとおる
- 東京は暮色日比谷の冬木立
- 冬木立ビニール傘に透ける手話
- 瘤といふ瘤に影ある冬木かな
- 神奈川県 髙梨裕
- 大伽藍見下ろすごとく冬木立つ
- 冬木中湧き水の音筒伝ふ
- 冬木分け人飲みし川流れけり
- 暗闇に潜むがごとく冬木立
- 火葬待つ日は柔らかき冬木影
- 岐阜県 ときめき人
- 円空の刻む吉相飛騨冬木
- 東京都 豊島 仁
- 冬木も人も散りゆくまた生きる
- 冬木の声はらはらと聞こえぬか
- 冬木哭く波涛砕ける城ヶ島
- 冬木や寺々の庭広くせり
- はっきりと冬木はるか富士の山
- 京都府 中村万年青
- 枝広げ深呼吸する冬木かな
- すっきりと街の灯見ゆる冬木立
- 幾千の枝は幹へと大冬木
- 兵庫県 はなちる
- 冬の木や明日に伸びゆく子等の声
- 待ちぼうけ冬木に風のささやきぬ
- 美しく葉を舞い散らせ冬木かな
- 曇天を冬木突き刺す外回り
- 山口県 ひろ子
- 記念樹の太りて冬木幾とせぞ
- 森の精ひそむ冬木の影法師
- 裸木なるこぶし通りや役所前
- 東京都 ホリカズヨ
- 親の手を引く吾の手や冬木道
- 読点の音一つずつ冬木かな
- 好きな子の帽子を攫う冬木かな
- ドリブルで縫うや冬木の試験林
- 冬木中赤子の息を確かめる
- 神奈川県 みぃすてぃ
- 冬木立追分宿の道標
- 水に浮く月の白さや冬木立
- 東京都 よしだ悠
- われまたも冬木となりて野に立てり
- 荒野へと延びる鉄路と冬木立
- もの言はぬ冬木ばかりの介護室
- 愛知県 茜雲
- 夕陽背に大きく見ゆる冬木かな
- 無口なる人の夢聞く大冬木
- 美術館前の冬木や人まばら
- 何もかも忘れてしまえ大冬木
- フランス語会話の稽古冬木かな
- 東京都 安達健治
- 窓越しに挨拶行き交う冬木立
- 気がつけば大伽藍かな冬木立
- 空に描く折れ線グラフ冬木立
- 束の間の道案内の冬木かな
- 筑波嶺の見え隠れする冬木かな
- 東京都 安藤ゆき子
- 冬木宿白白明けの水琴窟
- 玉響に星くず降りし冬木道
- 東京都 伊藤訓花
- ふるさとは冬木の空の澄む蒼さ
- 心経を唱へ冬木の夜の道
- 子を負へば星を咲かせた冬木道
- 在りし日の母と歩いた冬木中
- あかあかと冬木に落ちる夕日かな
- 千葉県 伊藤順女
- 真直ぐに流れる川や冬木道
- 日の当たる墓地の静けさ冬木立
- 地に触れんばかりの枝や冬木の芽
- 木洩れ日に温む冬木に倚りて待つ
- 千葉県 伊藤博康
- 校庭の隅に陣取る冬木かな
- 日が沈む山を縁取る冬木かな
- 冬木にも池に漣作る風
- 風通る冬木となりし屋敷林
- 風の音直線となる冬木かな
- 神奈川県 井手浩堂
- 湖の影動かざり冬木立
- 厨より赤き灯ともる冬木宿
- 風に鳴る冬木や子らの通学路
- 母見舞ふいつもの道や冬木の間
- 徳島県 井内胡桃
- その幹の微かな吐息大冬木
- 襟正し冬木の道を歩みけり
- 天辺に一葉残せし冬木かな
- 図書館の新刊コーナー冬木立
- ありのまま見せて冬木の樹形かな
- 東京都 右田俊郎
- 沈みゆく夕日冬木のシルエット
- 冬の木や落ちきらぬ葉のまだ残る
- 馬車走る冬木となれる並木道
- 夕暮れの冬木の枝に鳥止まる
- 次なるを信じ冬木のただ耐へる
- 群馬県 塩原香子
- 夕影をうつして冬木欠伸せり
- 冬木並び寒さの中で黙したる
- おのが葉の朽ちたる上に立つ冬木
- 銀杏枯れ枝に星座を集めたり
- 冬木立骸となりて星を刺す
- 東京都 岡本英太郎
- 人形(ひとがた)に見えし冬木に追われけり
- 思い出が冬木に花を咲かせたり
- 愛媛県 加島一善
- 冬木道だれかれとなく会釈せり
- 廃校にでんと立つたる冬木かな
- 残月に片身の白き冬木かな
- ゆたかなる光りを浴びて冬木道
- バス曲り現れ来たるあの冬木
- 愛知県 非掲載
- 暗闇に並ぶ冬木の笑い声
- 国道の全てに耐えて冬木立つ
- 神奈川県 海野優
- 鳥来れば一幅の図や冬木立つ
- 単線の緩き曲線冬木立
- 異なれる意見をひとつ冬木かな
- 問はるるも冬木とのみの応へかな
- 七十路や老いには遠し冬木立
- 埼玉県 釜田 眞吾
- 梅らしき姿の梅の冬木かな
- 冬木立烏の声も筒抜けに
- 大楠の冬木の奥にある蕎麦屋
- 拳骨に剪られ冬木となりにけり
- 兵庫県 岸下庄二
- みちのくに残る一本大冬木
- 津波にも打ち勝ち立ちぬ大冬木
- 電飾で飾らる街の冬木かな
- 瘤二つ露にしたる冬木かな
- 大津波冬木一本残しけり
- 埼玉県 岸保宏
- 人途絶え博物館の冬木かな
- 静まりし遍路の杖と冬木かな
- 登校の子等を見つめし冬木立
- 兵庫県 岸野孝彦
- 父のこと想う日差しの冬木かな
- 冬木立知るや知らぬや古戦場
- 森深き木に生まれたし冬木かな
- それぞれの影を重ねる冬木かな
- 冬木立見守るがごとき峠かな
- 岡山県 岸野洋介
- 冬木背に吉備路にすらり塔五重
- 朝の雨幹を光らせ冬木たち
- 電飾をまとい華やぐ冬木たち
- 背を丸め塾へ行く児ら冬木道
- 椋鳥の声姦しき冬木かな
- 東京都 岩崎美範
- チター泣くラストシーンや冬木道
- 子の病みて帰りを急ぐ冬木道
- 亡き姉の星を見上ぐる冬木道
- 木洩れ日の温もりに酔ふ冬木中
- 吾もまた裸一貫冬木道
- 東京都 岩川容子
- 冬の木の根に執着の力瘤
- 鴉鳴くひときわ高き冬の木に
- 老いるにも力のいりて冬木立
- 今にして見ゆるものあり冬木立
- 人住まぬ冬木の中の一軒家
- 神奈川県 亀山酔田
- 見上ぐるに冬木ずずんと背を増して
- 獣らは命遣り取り冬木立
- 突き抜けて遊ぶ子どもら冬木立
- 大冬木開拓誌にも記載ある
- 冬木立獣道畑へ延び始む
- 茨城県 菊池風峰
- 窓一面モノクロ模様冬木影
- 人ひとり冬木桜の土手に立つ
- 冬木道道はまっすぐ塩の道
- 大冬木寺の参道真正面
- 星の降る冬木の梢あわいにも
- 千葉県 玉井令子
- マラソンの駆け抜けてゆく冬木道
- 公園の砂場に伸びる冬木影
- ブラジル 玉田千代美
- 雪降らぬ国に育ちぬ冬木かな
- 幹全体傷付けられて冬木老ゆ
- 新潟県 近藤博
- 葉は落つも命漲る冬木かな
- 亭々と葉のなき冬木凛として
- 葉は落つも冬木凛たる並木道
- 境内に亭々として冬木立つ
- 凛然と空を突き上ぐ冬木かな
- 岐阜県 金子加行
- 冬木立さらに霊山らしくせし
- 何度目の窓の冬木や母見舞ふ
- 冬木置き一年時計一回り
- 冬木立恋を失ふ人に似し
- 湖の鏡寂しき冬木立
- 神奈川県 原川篤子
- すつぽりと吾(あ)の影入るる冬木かな
- 曇天に枝先尖る冬木かな
- 森は今コローの色に冬木立つ
- この道の先に句碑あり冬木立
- 冬木道校塔白く迫りけり
- 福岡県 戸澤孝一
- 裏木戸を開ければ見ゆる冬木かな
- 三重県 後藤允孝
- 風去りて君の影追ふ冬木立
- 遥かなる深みに透けてゆく冬木
- 晩年の静けさにあり冬木かな
- 己が身を一糸纏わぬ冬木かな
- 安らぎの黙となりたる冬木かな
- 大阪府 高木音弥
- 冬木よりほろほろ溢るひかりかな
- 夕暮れの冬木を鳴らす風の路
- 足止めて見上ぐ冬木に星の雨
- 日本海車窓過ぎゆく冬木かな
- 背を預け冬木の鼓動聴いてゐる
- 愛媛県 佐藤めぐみ
- 見栄も我も栄誉も捨てし冬木かな
- 冬木の芽今日は息子の生まれし日
- モノクロの世界広がる冬木立
- 愛媛県 砂山恵子
- 本当は泣きたいけれど冬木抱く
- また明日と柔らかく言ふ冬木道
- 冬木道ハイヒールの音消えてゆく
- 緩やかに移らふ夕日冬木道
- 冬木抱き何を焦るか忘れたり
- 秋田県 笹弓
- 鉄棒とブランコの傍冬木かな
- 街道の並ぶ冬木の黒き肌
- 境内の日だまり懐く冬木立ち
- ひとつかみ空をにぎつている冬木
- 雨上がり冬木の枝の煌めけり
- 東京都 笹木弘
- 嵌め殺しの窓に揺れたる冬木かな
- 六道の輪廻を悟る冬木かな
- 各々に生き方のあり冬木かな
- 光陰を上手に使う冬木かな
- 真夜中はゆっくり眠る冬木かな
- 愛媛県 山家志津代
- 売り土地の看板括る冬木かな
- 媽祖廟に平伏すものや冬木影
- 千葉県 山田香津子
- 日本海の荒波の音冬木立
- 八甲田の怪物となる冬木立
- 神奈川県 山田知明
- 一日を持て余したる冬木かな
- 青空に袖通したる冬木かな
- 大空を持て余したる冬木かな
- 風に歌を忘れた冬木かな
- 風を梳かしていたる冬木かな
- 東京都 山本貴士
- むく犬の首輪引く人冬木道
- 洋犬に引かれゆく人冬木道
- 冬木道老父の病知らされり
- 子らの掌の温かきこと冬木道
- 空仰ぎ大地を掴み大冬木
- 山口県 山縣敏夫
- マスクして行き交う人や冬木道
- 冬木宿恋しい人に文を書く
- こんな世に凜としている冬木立
- 我は往く一直線に冬木立
- こんな世に三々五々と冬木立
- 千葉県 四葩
- 冬木仰ぐ目裏にある父の影
- 鳥声の突き抜けていく冬木かな
- 神奈川県 志保川有
- 古新聞選者は兜太冬木立つ
- 星もなく冬木の群の黒々と
- 音もなき冬木の原やグレコ死す
- 死ぬは居ぬ居ぬは死ぬなり冬木原
- 吾よりも年若き死や冬木影
- 島根県 非掲載
- 面影の冬木明るしおんぶ紐
- ひらひらの終わった頃や冬木立
- 野良猫と冬木の下の待ち合わせ
- 電飾のこそばゆそうな冬木かな
- 暫くは凌ぐ糊口や冬木の根
- 神奈川県 守安雄介
- 水気失せ老婆の顔の冬木の芽
- お受験の踏ん張り時や冬木立
- 犬の尿湯気を上げたる冬木の根
- 冬木の芽選び食いたるサルの群れ
- ぴゅーぴゅーと風を泣かせる冬木立
- 埼玉県 守田修治
- 冬の木の独り言聴く夜学生
- 投薬の一つになって冬木かな
- 改札を出れば迎える冬木かな
- 冬の木や子らは夢見る紙芝居
- 待ち人のあまりに遅き大冬木
- 埼玉県 小玉拙郎
- 逆光にまぶしき冬木黒々と
- 殺風景てふ風景を生む冬木かな
- 冬木行きまた冬木来る単線路
- おのおのが伽藍に紛れ立つ冬木
- 茨城県 小松崎孝志
- 我が影を覆い尽くすや冬木影
- 病室の小さな窓の冬木かな
- 相方といつも黙って冬木道
- ぴかぴかの洗たく日和冬木立
- きゅんきゅんと風切音や大冬木
- 福島県 松井くろ
- 母に似て冬木どっしり慎ましい
- 堂々と冬木は冬木とし休む
- 公園の冬木を叩く老二人
- 東京都 松本佳明
- 冬木立日差しの弱さに影薄く
- ひゅるり風マフラー握る冬木道
- ふらふらと寂し気揺れる冬木かな
- 帰り道冬木の影を追いかける
- 今は亡き母に影似る冬木かな
- 東京都 松本征枝
- 野良帰り冬木の囲む藁葺き家
- 屋敷林冬木を待ちて枝下し
- 電飾に眠りの浅き冬の木々
- 鳥の巣を二つ付けたる冬木かな
- 吹き抜ける風の音のみ冬木立
- 神奈川県 松野勉
- 冬木道人それぞれのディスタンス
- 静岡県 城内幸江
- 目印の冬木を追つてハイキング
- 通せんぼするには淋し冬木かな
- 鳥の巣は冬木にもたれかかりけり
- 夕暮れをやさしく支え山冬木
- 寒木や吊り橋渡る人静か
- 愛知県 新美達夫
- 声掛かるその日期すべし冬木立
- サーカスのテント払はれ冬木立
- 今からが真の付合ひ冬木立
- 大阪府 森 佳月
- なにげなく冬木の幹に耳あてて
- 冬木立見つめたるわれ日時計に
- 送迎車冬木とともに待ちにけり
- 枝先で空掴みたる冬木立
- 曇り窓透かして見るや冬木立
- 山梨県 森下博史
- 背もたれの冬木と僕のツーショット
- 頂きで冬木待ってる低登山
- 埼玉県 水夢
- 石畳猫の通りし冬木坂
- どこからか口笛のして冬木立
- 鬼瓦はたと睨みし冬木立
- 電飾の冬木の唄ふけやき坂
- 筑波嶺の空揺れてをり冬木立
- 神奈川県 水野伸一
- 裏庭の冬木凛々しい過疎の村
- 辞表出し清しく眺む冬木かな
- 引退の門出見送る冬木かな
- 半島の潮風研ぐや冬木立
- 東京都 水野邦彦
- 背を伸ばし腰折れ耐える冬木あり
- つなぐ手の温もり増すや冬木道
- 陽が昇り傾く冬木影伸ばし
- 風かわす身のこなしよし冬木立
- 庇役用も済みしし冬木かな
- 東京都 勢田清
- 夕暮れに冬木数本美しき
- 港へと冬木の坂を降り行く
- 冬木立上り来たりて海の色
- 冬木立遠き人々過ぎし日々
- 冬木抱き夕陽の余熱感じけり
- 三重県 西井治男
- ヘェアウエイの冬木我に試練を
- ブラジル 西山ひろ子
- 居て欲しき人ふと偲び冬木かな
- 風が風追ひこして行く冬木かな
- 日差し受け旅人憩ふ冬木かな
- 父在はす靖国の杜冬木立
- 走り根が石持ち上げて大冬木
- 福岡県 西山勝男
- 依代と仰ぐ斎庭の大冬木
- 大冬木磐井の君をふところに
- ひとときを命はぐくむ冬木かな
- 山頭火籠りし堂の大冬木
- 老いてなほ背筋を正す冬木かな
- 愛知県 西谷寿
- 冬木さえ春待つ準備怠らず
- 宿命に厳然と立つ冬木かな
- 耐え忍ぶ冬木に勇気もらい立つ
- 年老いたわれを表す冬木かな
- 決然と荒れ野に立てり冬木かな
- 愛知県 斉藤浩美
- オリンピック延期の街の冬木影
- 志村けんの冬木まつすぐ立ちゐたり
- 生意気な三歳となり冬の樹々
- 上京をしてもひとりや冬木道
- 転職を決むる冬木の瘤にふれ
- 東京都 石井真由美
- 電飾やサイドビジネス冬木かな
- 魔女の杖梢に星を冬木立
- 冬木立空いつぱいの星たちよ
- 樹々の星魔女の一振り冬木かな
- 大阪府 石原由女
- 星の下語りだしたる冬木ゐて
- 山の端の蒼き風呼ぶ冬木かな
- 冬木の芽すくり伸びしてゐたりけり
- 滋賀県 船岡房公
- 電飾を纏ふことなき冬木かな
- 逆さ箒立てたるごとき冬木かな
- 人気(ひとけ)なき駅のタクシー冬木風
- 神奈川県 前田恵美
- サックスの音はいづこより冬木道
- 神を説く人立ちつくす冬木かな
- 冬木道ひた行く果ての入日かな
- 東京都 足立智美
- 庇ふ手も拾ふ手も無く冬木の葉
- オーロラの裾掠めゐる冬木かな
- 冬木立つシュルレアリスムのやうな斜陽
- 冬木立ホスピスの照度になれり
- 福岡県 多事
- 消え去りしヒト属幾多冬木立つ
- 暮るる陽を宿して紅し冬木立
- 冬木立つ先輩顔の嘴広鸛(ハシビロコウ)
- 蒼天へ筆先たつる冬木かな
- 講堂のパイプオルガン冬木立
- 大阪府 太田紀子
- おみくじの凶を引きけり冬木立
- 連結器の一瞬の音や冬木立
- 不発弾残る沖縄冬木立
- 大阪府 太田省三
- 冬木道盲導犬は脇見せず
- 冬木みな生きるみづおと聴診器
- 一本の縄の結界冬木立つ
- 電飾のまばゆき夜や冬木道
- 幹を曲げ浜辺に並ぶ冬木かな
- 静岡県 大澤定男
- 祖父黄泉へ看取る祖母母冬木立
- 祖父座右に急ぐべからず冬木立
- 祖父老ひて孫の手二本冬木立
- 祖父先ずは麒麟獣舎へ冬木立
- 祖父の斧鋸遺影冬木立
- 香川県 辰野
- ウィズコロナ商機見出すまで冬木
- 癌治療冬木の生を見習いて
- 東京都 中田ちこう
- 瞽女唄や冬木をつつむ月明り
- 神奈川県 猪狩仙次郎
- 湖の冬木一本不動かな
- 冬木立抜けて湯けむり地獄谷
- ふるさとの冬木に待てば鹿の寄る
- 潮風に我が身涸らして冬木かな
- 誰を待つ冬木や灯り消えし門
- 東京都 長岡馨子
- 諦めて母白髪(はくはつ)に冬木かな
- 茨城県 長洲研志
- 教会のステンドグラス冬木影
- 静けさや湖面に映る冬木立
- 冬木にも枯れる意味あり青き空
- 冬木道あえて小股でサクサクと
- 若さより冬木も枝のしなやかさ
- 千葉県 長谷川ぺぐ
- 風強く吹くも冬木の立ちん坊
- 千葉県 鳥越暁
- 何か居る冬木の洞にひつそりと
- 冬木立つやどりぎの葉だけ繁るなり
- 夜半過ぎぎしぎしぎしと冬木鳴く
- 探鳥の椅子となる根の大冬木
- 樹木医が隙間を埋める冬木あり
- 大阪府 津田明美
- 耐へてなほ命艶やか冬木の芽
- 冬木立星影友として佇ちぬ
- 頬寄せて冬木に滾る命聴く
- 妣恋へば冬木の先に誰かをり
- 寂として天を指したる冬木かな
- 神奈川県 塚本治彦
- 老人の孤高のごとき冬木かな
- 無住寺の無住寺のまま冬木立
- 晩年の虚子立つごとき冬木かな
- 鉄格子窓ある狂院冬木立
- 晩年の西行庵や冬木立
- 埼玉県 哲庵
- 俯きし影ばかりなり冬木中
- いくつかの病発覚冬木立
- 冬木影より細身なる影法師
- そそり立つ癌病棟の冬木かな
- 蒼天に根を巡らせし冬木かな
- 山梨県 天野昭正
- マラソンの折り返し点大冬木
- 根を張りて凛として立つ大冬木
- 雉飛んで冬木の空の目覚めけり
- 烏来て冬木に止まり鳴きて去る
- 頼もしき青年のごと冬木立つ
- 千葉県 渡邉竹庵
- 根も幹も冬木の中の見えぬもの
- 天を衝くメタセコイヤの冬木かな
- 二町歩を囲む冬木や工場跡
- 記念碑に刻む母校の冬木かな
- 散り落ちて毛細血管まで冬木
- 大阪府 藤田康子
- 尼寺を見守るごとき冬木かな
- 冬木に纏わる風妣恋ふるごと
- 東京都 内藤羊皐
- おとうとに早き晩年冬木立
- 冬木立奏楽堂のピアノ鳴る
- 象のなき象舎陽翳る冬木かな
- 冬木立背びらとしたる秩父嶺
- 心中の未遂を告げる冬木かな
- 大阪府 二三五
- 夫の背に揺れる木漏れ日冬木道
- 車椅子膝に揺らるる冬木影
- 東京都 二川昌弘
- 一本の冬木おおしく風に立つ
- けやき坂冬木の向こう灯がともる
- 林立す冬木椿を見守りて
- 仰ぎ見る冬木の枝の宿り木や
- 冬木立シンメトリーのやじろべえ
- 千葉県 入部和夫
- 晩節を汚すべからず冬木かな
- 泣きそうで泣かぬ児であり冬木
- 仰ぎ見る冬木のなかの昴星
- 老いてなほ躰愛しき冬木かな
- 退院日陽ざしに温む冬木かな
- 徳島県 白井百合子
- 冬木立軽く散りゆく枯れ葉かな
- 韓流の恋の縺れや冬木立
- 枝に掛ける遺愛の帽子冬木立
- 朝雨の物哀れなり冬木立
- 蔦絡む窮屈そうな冬木かな
- 北海道 飯沼勇一
- 手を拡げ天持ちあげてをる冬木かな
- 抱きつけば陽の香ほのかに冬木かな
- 枝折られなほ風に立つ冬木かな
- 冬木立つ枝先に星ちりばめつ
- 葉の百枚残し冬木立ちにけり
- 埼玉県 飯塚璋
- 筒音の聞こえて来り冬木宿
- 冬木影鯉の眠りは深かからむ
- 芽吹き初む伊豆大島の冬木かな
- 千葉県 柊二
- 裸木の弁天池にゆるる君
- 群馬県 武藤洋一
- 願ひ事冬木の枝に揺れてをり
- 相撲部屋テッポウの音冬木の芽
- 初恋を見て見ぬふりの冬木の芽
- 冬木にもタオル干されし合宿所
- 鐘楼に人の気配や冬木の芽
- 北海道 風花美絵
- 冬木立足音響く通学路
- 蝦夷栗鼠の姿くっきり冬木立
- 冬木影せまる夕暮れ馬そり跡
- 冬木立LEDでお粧しを
- バキバキと幹に試練の冬木立
- 千葉県 風泉
- ・冬木立パリはビュッフェの画廊かな
- ・チターの音と冬木の並木とアリダ・バリ
- ・冬木がごと灯下に白し妻の指
- ・譲り合い名乗り合う枝冬木立
- 奈良県 平松 洋子
- 寂しさに鳥近寄れぬ冬木立
- 待ち合わせ冬木の傍の若人ら
- 冬木立イルミネーション纏ひして
- 三重県 平谷富之
- 冬木立我の苦労を知っている
- 滋賀県 別役昌子
- 冬木に凭れ面接の話など
- 金釘の吾の字に似たる冬木かな
- ニーチェ読む書斎に影を差す冬木
- 大冬木従へて常磐木の松
- 冬木一本塩屋崎の風に立つ
- 千葉県 峰崎成規
- 生く力溜むる冬木の慎ましさ
- 電飾に寝不足気味の冬木道
- 伸びてすぐ消ゆる午後の日冬木影
- 東京に武蔵野返す冬木立
- 一切を風に削がせる冬木かな
- 神奈川県 芳賀りおん
- 冬木には笠智衆ばかり集いけり
- 百年の孤独に似たり冬木立
- 人去りて闇に埋まる冬木立
- 東京都 豊宣光
- 断捨離や残る冬木のごときもの
- 凛として一途に冬木直立す
- 盆栽の冬木いたわる父の顔
- 藁の中冬木静かに息づきぬ
- 鳥さえも寄らぬ冬木の孤独かな
- 埼玉県 北川清
- 廃校の 庭に残りし 冬木立
- 電飾を 冬木に着せて 日暮待つ
- 稜線に 夕陽に影や 冬木立
- 無人駅 残るポストに 冬木立
- 来ては去る 冬木は鳥の 口伝場所
- 三重県 北村英子
- 冬木にもイルミネーション頼みをり
- 年輪は年経る証冬木立
- 真白なる冬木に神の気配して
- 立ち尽くす冬木の呼吸日の呼吸
- 冬木立鬼が潜むか全集中
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 介護棟冬木の影の直線に
- 並木道冬木となれば背を丸め
- 長野県 木原登
- 午後三時雀あつまる冬欅
- 影と影重ね連なる冬木立
- 大空へ凛と聳つ冬ポプラ
- 牧場の星々統ぶる一冬木
- オアシスのやうな日溜り冬木中
- 神奈川県 矢神輝昭
- 冬木立抜けて茅戸で握飯
- 山路来てぽつり呟く冬木かな
- 冬木立相身互いて一山と
- 無関心を装う人も冬木かな
- 一山の冬木は僧兵天睨む
- 神奈川県 龍野ひろし
- 鶏小屋と呼ばれし校舎冬木影
- 日の暮れてサタンのごとき冬木かな
- ブラジル 林とみ代
- 待ち合せの場所の思ひ出冬木老ゆ
- 立て札に冬木の歴史認めけり
- 身の回り省き身軽や大冬木
- 売り屋札掛けて突つ立つ冬木かな
- ネオンの灯にあらはとなりぬ冬木宿
- 宮城県 林田正光
- 冬木道踏みしめて行く明日へと
- 公園の冬木抜ければ道近し
- 冬木立見上ぐる空や茜色
- 道標坂の上なる大冬木
- 冬木根の大地を摑む力かな
- 大阪府 鈴木三津
- 骨格のしかと人にも冬木にも
- 手をあてる冬木に生きる温みあり
- 奥津城の大き冬木が道標
- 千年の冬木の洞に山のこゑ
- 石畳もたげて神の大冬木
- 大阪府 鈴木千年
- 日が落ちて冬木一本づつとなる
- 冬木立とは日の当りゐる木立
- 冬木立つ命の樹液通はせて
- 冬木いま金剛力を育てをり
- 冬木みな退屈さうにしてをりぬ
- 兵庫県 髙見正樹
- 広場ではラジオ体操冬木立
- 聳え立つ社の冬木砂利を踏む
- 見通せる冬木の林水平線
- 公園の桜は冬木風に鳴る
- 常緑やしんと居並ぶ冬木立