俳句庵

1月『初鴉』全応募作品

(敬称略)

埼玉県     哲庵
亡き父の叱声めくや初鴉
初鴉100歳越へを願ひけり
初鴉酔うておるのか千鳥足
光りもの落として行けり初鴉
初鴉疫病退散祈りけり
宮城県     zazi
嘘つきに選り分けられて初烏
喧噪の断片縫って初烏
初烏気配火の無い街頭に
初烏コンビニ閉まる直前に
初烏何も喋らぬ老夫婦
静岡県     いたまきし
初鴉天の気まぐれ気にもせず
埼玉県     いまいやすのり
産土神に二羽来て三羽初鴉
バス停のベンチにをるや初鴉
ことさらに鳴き声大き初鴉
ひと声を日溜まり土手に初鴉
初鴉声かけおうて大鳥居
福岡県     すがりとおる
悪太郎明けて社の初鴉
碩学は濡羽色なり初鴉
松ぼくり宮居に落とす初鴉
悪太郎明けて社の初鴉
米国     スナップドラゴン
初鴉羽広げたり隅田川
初鴉 厄災の街睥睨す
浮世絵展出れば舗道に初鴉
初鴉白狼が旅の友
初鴉墨水の上羽ひろげ
岐阜県     ときめき人
初鴉朝日を纏ふ御柱
兵庫県     はなちる
仲間呼ぶ空は青きや初鴉
ゴミ散乱挨拶派手に初鴉
清められ参道に陽の初鴉
故郷は静かなる朝初鴉
東京都     伊藤訓花
肉親の声の欲しさや初鴉
国籍を聞きそびれたり初鴉
はらはらと雨はふるふる初鴉
帆船と白砂青松初鴉
初鴉猫の居座る厨口
千葉県     伊藤順女
青空へ三たび言祝ぐ初鴉
宮の杜の松の高きに初鴉
神奈川県     井手浩堂
参道をとび歩きをり初鴉
東雲の空鳴き渡り初鴉
枝ぶりのよき老松や初鴉
徳島県     井内胡桃
箒目を足踏みばかり初鴉
神の庭遊び惚けし初鴉
欄干の濡れて光りぬ初鴉
初鴉何か善きことある予感
静やかや鎮守の森の初鴉
群馬県     塩原 香子
初鴉一声鳴いて大空へ
茜空影絵のごとき初鴉
初鴉暁の空を悠々と
初鴉ふはつと屋根に飛び移り
初鴉鳴きつつ茜の空を行く
埼玉県     釜田眞吾
初鴉朝日に光る大甍
明け初めの鎮守の森の初鴉
初鴉一声残し去ぬりけり
兵庫県     季凛
八百万の神々起こし初鴉
つやつやと光を受けて初鴉
一片の知性跨げる初鴉
神奈川県     亀山酔田
初鴉吼えるがごとく空へ消ゆ
地球的規模の茜ぞ初鴉
ビー玉が綺麗で好きで初鴉
点検の済んで鳴きだす初鴉
時々に思い出す友初鴉
石川県     鞠子
初鴉霊峰仰ぎ羽撃けり
風に吹かれ孤高だに見ゆ初鴉
初鴉羽音かすかに気多の杜
岐阜県     金子加行
生き方の無為を笑ふや初鴉
一村の起きよと啼くや初鴉
一島の四方に啼くや初鴉
国宝の屋根憚らず初鴉
悪党の声と聴くなや初鴉
大阪府     高木音弥
日輪を追ふか番の初鴉
初鴉幼子の手の御籤かな
澄み渡る空悠々と初鴉
神奈川県     志保川有
初鴉陽を背に受けて威厳あり
初鴉意気揚々と声を張る
過疎村の杉の止まり木初鴉
何ごとか告げるがごとく初鴉
朝の湖の神明鳥居初鴉
神奈川県     春居 ハッピー
老松に 独り飛び来る 初烏
古枝に 日当たりも良く 初烏
ご近所へ 挨拶に行く 初烏
電線に いつもように 初烏
どこからか 紙くず落とす 初烏
福島県     松井くろ
初鴉嫁は朝からいそがしい
飼ひ猫のやうに鳴く初鴉かな
跡取りのなき家あまた初鴉
大阪府     森 佳月
新世界通天閣に初鴉
巫女の襟緋色覗いて初鴉
睨む吾どこ吹く風の初鴉
埼玉県     水夢
浮御堂へ声落としゆく初鴉
初がらす夕日消えゆく風の中
初鴉ねぐらの辺り早や暮色
神木の風に煽られ初鴉
たじろがず大海原へ初鴉
福岡県     世良日守
初鴉少しでてきた喉仏
東より八咫烏めく初鴉
カラオケの満点とりて初鴉
携帯の電源入れる初鴉
コーヒーの苦味の増して初鴉
東京都     勢田清
朝焼けの空何処へ行く初鴉
梢にて嗚呼と啼きけり初鴉
初鴉砂目清らか寺の庭
無窮なる朝空高し初鴉
アンテナに日の出見ており初鴉
ブラジル     西山ひろ子
初鴉あかねの空に二羽三羽
落日を借景とし初鴉
歳時記に初鴉無き国に古り
初鴉芥蹴散らしてしたり顔
埼玉県     石塚彩楓
寺町の風を力に初鴉
初鴉武蔵野の空ほしい
火山灰の降る故郷遠し初鴉
初鴉翼大きく渡る空
初鴉一声ありて松の枝
福岡県     多事
庭園の翠の富士や初烏
娘らの目元にはラメ初烏
笑ふ癖つけろと書かる初烏
初烏人はをらぬと啼きにけり
並びかた妙に神妙初烏
香川県     辰野
詣で来て初鴉聞き眠りつく
初鴉誰が託宣受け取るか
病棟を巡視患者と初鴉
二見ヶ浦の夜を明け巡る初鴉
篝火の爆ぜ舞い上がり初鴉
東京都     中田ちこう
さざめきは遠く影絵の初鴉
千葉県     長谷川ぺぐ
旅立ちについて来るかい初鴉
朝靄に眠る酒場や初鴉
神奈川県     渡邊むく
叩頭の堂に入りたる初鴉
三重県     藤田ゆきまち
初鴉なにもなきことありがたし
初鴉四角い空を丸く飛ぶ
電線に怠り鳴かぬ初鴉
よく言へば気の利く人よ初鴉
足をすくわれ初鴉に笑われ
千葉県     徳翁
朝ぼらけ起きよと啼くや初鴉
初鴉早速御慶申し越し
初鴉去年と変わらず貌と声
初鴉居住まい正し千木の上
初鴉玉砂利歩み威儀正す
東京都     内藤羊皐
犬屋敷かつてある街初鴉
初鴉獄舎の跡を翔び立てり
うぶすなの阿吽へ糞れる初鴉
上水の底ひを乱す初鴉
初鴉幼子揺する祖父の肩
徳島県     白井百合子
初鴉幸は中ほど古稀近し
里山の暮らし気に入る初鴉
初鴉空から猫に声かけて
今年こそ足を鍛えて初鴉
初鴉鳥居で遊ぶ羽音かな
大阪府     八王寺宇保
初鴉子の住む町へ飛び行けり
初鴉厚き新聞取り入れり
聞き倣しにコロナコロナと初鴉
庭畑の防護ネットや初鴉
産土に感謝の礼や初鴉
埼玉県     飛翔
木の枝に日の出待つてる初鴉
おめでとう一声鳴くや初鴉
今日も又この枝が好き初鴉
昨日今日この木ばかりに初鴉
初鴉ヒョツコリ誰か来る予感
千葉県     柊二
富士山へ二拍手潮の羽初鵜
北海道     風花美絵
空明けて揺れる枝葉に初鴉
初鴉今年は遠慮願います
初鴉供え物なく相済まぬ
千葉県     風泉
・闇の世や白蛇を引きよ初鴉
・昨二羽の朝ゆく杜や初鴉
・鳴け高くワクチン急げと初鴉
茨城県     風峰
定位置にごみ収集車初鴉
甲高き今年また来る初鴉
百年の大樹越えゆく初鴉
三世代歩む参道初鴉
初鴉一鳴き杜の静寂かな
奈良県     平松 洋子
初鴉道を譲ってくれにけり
初鴉大空高く飛び立てり
大空や一番乗りの初鴉
埼玉県     堀口房水
初鴉武蔵の果てに吉報来
遠富士より還るこだまや初鴉
初鴉魂替へてもらひしか
愛知県     遊泉
町内に年明け告げる初鴉
黒羽の何故か気高き初鴉
トランスにわが家を見入る初鴉
今日ばかりは追ふ気にならぬ初鴉
半時も過ぐれば憎き初鴉
神奈川県     立野音思
じゃんけんぽん小さき掛け声初鴉
コロナ禍や孫は来らず初鴉
初鴉社に來たる序列あり
初鴉神を迎へに東雲へ
初鴉マスクの群に驚きぬ
大阪府     鈴木三津
鳴声に黒の重厚初鴉
一と声を善男善女へ初鴉
鰹木に日を照り返す初鴉
霞ケ関のビルに谺や初鴉
漆黒の何にも染まず初鴉
大阪府     鈴木千年
初鴉真正面に嘴を上げ
初鴉四神へ声を挙げにけり
一と声を魑魅魍魎へ初鴉
松ヶ枝に瑞兆の声初鴉
御陵に耳の冥加や初鴉
埼玉県     飯塚璋
酔醒めの厨の窓に初鴉
初鴉鳴くや母屋の鬼瓦
声あげて川の向うへ初鴉
兵庫県     岸下庄二
初鴉いつもと違ふ啼きっぷり
一羽立ち二羽来て三羽初鴉
産土の杜騒がしく初鴉
畏くも千木に戯る初鴉
この街の勝手知りたる初鴉
新潟県     近藤博
神奈備にかあかあ鳴けり初鴉
淑気満つ神域かあかあ初鴉
瑞祥か庭に飛び来る初鴉
神垣に朗々鳴ける初鴉
東雲の空に鳴き飛ぶ初鴉
愛媛県     砂山恵子
初鴉深夜当直終へし窓
一瞬のとまりし時を初鴉
石鎚は神の山なり初鴉
初鴉未だ明けなき伊予の山
朝映えの溶けゆく空を初鴉
埼玉県     北川清
砂浜に 食べ物もとめ 初鴉
初鴉 やつこ凧と きそい飛ぶ
初鴉 鷹見て騒ぐ 浜離宮
初鴉 銀座道りも お休み日
初鴉 ドローンめがけ 威嚇する
東京都     岩崎美範
山門に猫と対峙の初鴉
つがひかな仲むつまじき初鴉
馬跳びをじつと見てゐる初鴉
天平の甍に一羽初鴉
激変の街をさ迷ふ初鴉
神奈川県     松野勉
初鴉大師線待つ人臭さ
初鴉スーツケースの車輪音
大阪府     藤田康子
翔べること美しきかな初鴉
天上の端に一声初鴉
神奈川県     守安雄介
大仏の頭の日の出初烏
門松を争う鴉霞が関
浅草の鳩を虐める初烏
烏賊蛸の煙に集く初烏
初烏焼烏賊狙う鶴ケ岡
大阪府     木山満
初鴉今朝は品よく神々し
初鴉朝日にコウとご挨拶
自転車のかごに釘付け初鴉ガラス
初鴉きくきくきくと低飛行
初鴉狙い定めて飛び立てり
神奈川県     嶋村博吉
初鴉箱根駅伝第一区
初鴉空青すぎて広すぎて
キャンパスはウイズコロナや初鴉
初鴉飛ぶ新しき羽根を持ち
若冲の絵より出でしか初鴉
奈良県     堀ノ内和夫
初鴉原発の街離れたり
三輪山より青垣巡る初鴉
宮城県     石川初子
ソロキャンプしているごとく初鴉
福岡県     深町明
後ろ手に詣ででゐたり初鴉
一昨日と昨日と合へど初鴉
誰も見ぬテレビとなりて初鴉
生粋のマルクス派なり初鴉
「クリスマス・カロル」読みをり初鴉
長野県     木原登
クレーンに止まり街見る初鴉
西空ゆ東へ三羽初鴉
千曲川挟み鳴きあふ初鴉
水浴びて羽を浄むる初鴉
山の信濃川の信濃を初鴉
東京都     佐藤富幸
参道の揺れる提灯初鴉
初鴉の聲夢から目覚む朝
ゆく年の無事に合掌初鴉
大鳥居くぐりし空に初鴉
神前に新たな誓い初鴉
東京都     佐藤美智子
日の出待つ筑波山頂初鴉
ずっしりと新聞届く初鴉
ヘッドライト越しに仰ぐ初鴉
珈琲やテラス呼び込み初鴉
まっさらな年にひと鳴き初鴉
東京都     二川昌弘
初鴉三が日明け顔を見せ
初鴉離宮の先へ飛んで行き
街角やとんと見かけぬ初鴉
東京都     吉田悠二郎
今年こそ白くなりたい初鴉
愛知県     岡本圭司
紅く観る ビルで戯る 初鴉
初鴉 鳴いて群れなす 開田村
大阪府     内本惠美子
テイファニーの街でこわだか初鴉
初鴉頭上に聞いてでは一歩
アンテナのてっぺん取ったり初鴉
千葉県     井出春夫
初鴉、柿の実見つけ、百舌鳥追いつ
千葉県     伊藤博康
初鴉仲間引き連れ飛びにけり
初鴉祝詞のごとく鳴きにけり
行きがけに少し休みし初鴉
電柱に遠くを見やる初鴉
初鴉蕪村描きし絵のあらむ
滋賀県     別役昌子
山里へ子らは帰らず初鴉
山風にファルセットなる初鴉
初鴉志村居らねど勝手に啼く
比叡より麓の森へ初鴉
蒼空を我が物顔に初鴉
静岡県     城内幸江
煙突の煙は止まり初鴉
初鴉遊び足りない子らの中
いつもより澄んでる空気初鴉
初鴉始発電車に飛び上がる
もう鳥を追いかけている初鴉
東京都     安達健治
初鴉相談し合う集積場
影のみが墨一色の初鴉
街路樹にたわわに実る初鴉
賑わいでかき消されたり初鴉
門柱で見張り番かよ初鴉
ブラジル     林とみ代
尼僧庵の静かな庭や初鴉
初鴉教会の鐘響く空
初鴉コロナの行方憂ひけり
初鴉茜に染まる空飛べり
テレビ塔陣取りたるや初鴉
茨城県     小松崎孝志
一本の電柱高き初鴉
初鴉つがいとなりて東雲へ
故郷へ帰れぬ無念初鴉
東雲へ元気願うや初鴉
ふるさとへ向かう風切る初鴉
三重県     後藤允孝
終の地と決めたる郷や初鴉
初鴉太々しくも人襲ふ
人の世を嘲笑ひたる初鴉
群青の潮目や空に初鴉
身の錆をみな声にして初鴉
滋賀県     村田紀子
夜明けだと声を競って初鴉
掃き清め見上げた空に初鴉
山際の鳥居に並ぶ初鴉
初鴉一声発し大空に
石段を駆け上がる子よ初鴉
宮城県     林田正光
格調の高き啼き声初鴉
我が顔を覗き見してる初鴉
七つの子今は大人の初鴉
砂浜に朝日とともに初鴉
初鴉第一声は茜空
兵庫県     岸野孝彦
赤鳥居睥睨したる初鴉
初鴉我に寄り添う孤愁かな
山城の跡へ帰るや初鴉
初鴉黒人霊歌夕茜
初鴉虚空をにらむ哲学者
千葉県     峰崎成規
ぬばたまの暁闇よりの初鴉
独唱も合唱も栄ゆ初鴉
東雲の色に染まむと初鴉
神宮の使徒誇りたる初鴉
初鴉鷹の威風でひと日舞ひ
和歌山県     中浴智美
暁の勁きひと声初鴉
兵庫県     髙見正樹
太き声大樹に群れる初鴉
大羽を誇示し滑空初鴉
唐突に羽搏きの音初鴉
ふてぶてしそうで素早き初鴉
初鴉間合い測りて飛び立ちぬ
神奈川県     矢神輝昭
礼服を召すに見えたり初烏
初烏今日は艶よし品もよし
初烏馴染みの声に窓開けて
天皇杯捲し立てるは初烏
初烏今日の一声麗句かな
埼玉県     岸保宏
初鴉地蔵の頭取り合いし
初鴉園児の列を脅しけり
電線に蜜に重なる初鴉
大阪府     津田明美
相輪の静寂を覚ます初鴉
初鴉常と変はらぬ朝なれど
鈴の音の空に吸はれて初鴉
鈴の音の響く社や初鴉
何と言ふことも無き朝初鴉
島根県     寺津豪佐
初鴉まだ濁りなき空気吸う
鈴の音柏手の音初鴉
田畑の茫洋として初鴉
氏神は猿田彦様初鴉
三重県     北村英子
初鴉ブードゥー人形見つめをり
鳥居より神の使ひの初鴉
初鴉絵本のパン屋定休日
後光差す神社の列の初鴉
初鴉あの世この世を知りてをり
千葉県     山田香津子
八雲立つ神話の国や初鴉
神奈川県     沼宮内薫
犬小屋を荒らし放題初鴉
我ここに高みの枝や初鴉
人に慣れ都会また良し初鴉
詠へよと右脳かすめる初鴉
今日も又団地居座る初鴉
三重県     平谷富之
初鴉 去年の出来事 鳴ひている
群馬県     武藤洋一
駅伝の繋ぐ襷や初鴉
初鴉球児の素振りランニング
カナリアの番見合わす初鴉
初鴉耳遠き爺詰将棋
稽古場に響くテッポウ初鴉
滋賀県     船岡房公
初鴉明けの近江の湖光る
参詣の途次に目が合ひ初鴉
啼き交はし確かめ合へり初鴉
福岡県     深町明
羽一つ落としてゆけり初鴉
わたつみはいま静かなり初鴉
一声に夜明けの来たり初鴉
初鴉供物咥へて帰りけり
初鴉音をゆたかに羽搏けり
茨城県     長洲研志
投函の音より早く初鴉
突っ掛けと郵便受けと初鴉
1ミリの日差しの先の初鴉
毎朝の体位変換初鴉
日常の介護する朝初鴉
千葉県     入部和夫
青空の光と遊ぶ初鴉
水子絵馬絶句の國男初鴉
賽銭の御札ひらひら初鴉
菩提樹にくぐもる声や初鴉
めでたさは小吉ほどの初鴉
神奈川県     塚本治彦
鳶を追ふ空中戦や初鴉
瑞鳥となりてしまひぬ初鴉
めでたさや脚三本の初鴉
吉兆やはた凶兆や初鴉
変はらずの嗄れ声や初鴉
神奈川県     龍野ひろし
初鴉今日は厄介者とせず
初鴉鋭き声を捨て行けり
愛知県     木下澄枝
ほのぼのと空あかあかと初鴉
白壁に続く石段初鴉
ひと声に空広がりて初鴉
足摺の怒濤見据えて初鴉
京都府     村田稔子
顔洗う 変わりなき朝 初鴉
筆ふるえ 「拓」と記したり 初鴉
初鴉 コロナ禍の鍋 ひとり鍋
手を合わす 臼杵石仏 初鴉
コロナ禍や 里にひとり湯 初鴉
東京都     猪俣ま悠
初鴉彼は誰時を喰らいけり
初鴉地上の門をくぐりけり
初鴉空の狭間に遊びおり
脱ぐ影は雲母となりぬ初鴉
埼玉県     小玉拙郎
朝焼けのプラネタリウムに初鴉
とはいえど生ごみ漁る初鴉
初鴉迦陵頻伽と空にあり
死は幾万平和はひとつ初鴉
北海道     飯沼勇一
参道の監視続ける初鴉
黒一点どんどん近づく初鴉
初鴉富士に向かひて威嚇せる
初鴉カメラ目線のモデル顔
墨を擦る窓の横には初鴉
東京都     笹木弘
御水舎の水を呑みたる初鴉
光陰を啄むやうに初鴉
渋滞のない杜に舞ふ初鴉
定位置は鳥居の上の初鴉
今日も何かを咥へてゐる初鴉
千葉県     山田香津子
八雲立つ神話の国や初鴉
初鴉杜の静寂起こしたり
初鴉神籬の静めざめさす
愛媛県     加島一善
大吉の御籤ついばむ初鴉
初鴉朝に来たりてめでたしと
初鴉ひかりを纏い我が畑へ
初鴉鎮守の杜の巨樹を越ゆ
薄紅の富士へつがいの初鴉
東京都     吉田悠二郎
一本の大樹に一羽初鴉
東京都     山本貴士
啼く声を故郷へ連れて初鴉
起こしてと頼みし寝顔初鴉
啼き終へてあさげに翔べり初鴉
朱鷺色の寅次郎の背や初鴉
掌に蒸す五円玉初鴉
東京都     岩川容子
参拝の列に一声初鴉
神在わす出雲の空の初鴉
初鴉声の彼方に日の出る
ありあけの月浮く空に初鴉
東京都     吉田悠二郎
光芒と為り大枝の初鴉
堅雪を突く觜や初鴉
東京都     長岡馨子
磨かれし配達のカブ初鴉
山梨県     森下博史
珍しく今年別嬪初烏
初烏初失恋を見ない振り
初烏配達人とする会釈
くぐもったボスの一声初烏
俺のボケ今年も防げ初烏
埼玉県     守田修治
初烏御神籤というくじを買う
諸説あり拝めば治癒の初烏
対峙する長谷大仏と初烏
よく似合う七里ヶ浜の初烏
初烏日の色澄んで二重橋
愛媛県     佐藤めぐみ
泊まり来し孫の寝息や初鴉
詣でたる山門の上初鴉
イギリス     ビッカリー美和
初日あび金に染まりの初鴉
東京都     松本征枝
子等の声響かぬ年や初鴉
神々し一夜明けたる初鴉
初鴉天変地異の無くもがな
世の常ぶ訃報もありし初鴉
平穏を唯祈るのみ初鴉
静岡県     大澤定男
初鴉村ぢゅうの音一つにし
初鴉添い寝の孫がああと言う
初鴉軒の先から日本海
初鴉なほ父祖の地に一羽二羽
初鴉祖父の謡の第一声
愛知県     斉藤浩美
鬼瓦と同じ方向き初鴉
初鴉コロナ禍中の街俯瞰
ひといない街をたのしむ初鴉
ハンガーを運ぶ塒や初鴉
林立のビルからビルへ初鴉
東京都     水野邦彦
影もなくなくなくなくや初鴉
その姿絶えぬらむやぞ初鴉
ふるさとへ声とどかせよ初鴉
酔い醒ます白湯を飲む間に初鴉
マスク取り深呼吸後の初鴉
愛知県     新美達夫
故郷の山高からず初鴉
またひとつ利口になつて初鴉
一張羅の礼服纏ひ初鴉
神奈川県     原川篤子
初鴉ビルの隙間の空を飛ぶ
神木の天突く高さ初鴉
初鴉白き参道俯瞰せり
明け染める社の空や初鴉
濁声も今日は清声初鴉
神奈川県     前田恵美
初鴉日に瑠璃色となる翼
高みよりかわきたる声初鴉
初鴉厨に灯りともすとき
玉砂利に後姿の初鴉
東京都     松本佳明
初鴉街を見下ろし君臨す
初鴉泣く子黙らす声姿
初鴉光る黒羽射る視線
初鴉姿勢正して第一声
初鴉朝一番の清冽さ
神奈川県     水野伸一
長旅は続くと告げる初鴉
彷徨の標となるや初鴉
来たるとも去れりとも鳴く初鴉
いつもより遠くに聞こゆ初鴉
何事も無き朝嬉し初鴉
神奈川県     海野優
初鴉地蔵の供物掠めけり
咥へ立ち繰り返してをり初鴉
領空や領土ことなし初鴉
東京都     右田俊郎
初鴉コロナこの先如何なるや
自粛せよひたすら自粛初鴉
変異する意思に慄く初鴉
初鴉何かの変はる予感あり
初鴉人の未来に憂ひ顏
愛媛県     山家志津代
吉凶の一夜に変わり初鴉
耳すます季語となるらし初鴉
だみ声はいつもと同じ初鴉
初鴉きのふと同じ墨衣
初鴉少し気取っておるやうな
東京都     豊島 仁
初烏五重の塔で夜明け待つ
白白と明治神宮初烏
新暁の大空一羽初烏
故郷やおらが地蔵と初烏
初烏はるかな富士へ向かいけり
京都府     中村万年青
電線に並んでいるは初鴉
鉄塔を木になぞらえる初鴉
日輪に黒羽も照るや初鴉
神奈川県     髙梨裕
日の当たる向いの畑の初鴉
氏神の空広広と初鴉
朝日差す魚籃観音初鴉
合わす手の光揺るがす初鴉
詣でれば杜陣取る初鴉