俳句庵
季題 10月「秋うらら」

- 秋うらら壁にミレーの農民画
- 東京都 岩崎 美範 様

- 秋麗の城下一望天守閣
- 長野県 木原 登 様
- 秋うらら使ひ慣れたる花鋏
- 大阪府 津田 明美 様
- 衣干す若き学僧秋うらら
- 滋賀県 別役 昌子 様
- 秋麗の富士
目交 ひに旅果つる - 安立 公彦
安立 公彦 先生 コメント
十月の題は「秋うらら」です。「秋麗」とも言います。秋晴の日の、うららかさを感じる季語です。
単に「麗らか」とあれば春の季語になります。
今年の秋は雨が多く、また、夜間に強い地震が発生したりしましたが、僅かな秋晴のひとときを、「秋麗」と捉えるところに、俳人の季節感覚があります。
皆さんの「秋麗」に、その感覚は善く表現されていて、実りある選句のひとときでした。
優秀賞の岩崎美範さんの句。ミレーは周知の通り、フランスの画家です。「農民の生活画」で馴染みがあります。この句は集会所での所見でしょうか。ミレーの絵には特殊な展示場の制約はありません。「ミレーの農民画」で、充分にその絵の善さは伝わって来ます。万人に愛されるミレーの絵です。
木原登さんの句。「天守閣」の句です。私たちの住む県には、各地に城が残っています。濠や土塁をめぐらした城です。本丸、二の丸三の丸などと郭が区分され、本丸には天守閣があります。
その天守閣からは、まさに「城下一望」の眺めです。「秋麗」が、その城下町と善く呼応しています。
津田明美さんの句。剪定の句です。秋は草木の徒長枝が多い季節です。樹形を整えるのには伸び過ぎた枝の剪定が必要です。「使ひ慣れたる花鋏」が、善くそのことを表わしています。
「秋うらら」が、「花鋏」とともに、見る人の気持を安らげます。
別役昌子さんの句。一転「学僧」の句です。「若き学僧」とあります。仏門に入り、仏道の修業をする若年の仏教の修行僧です。作者は寺の裏手を通るとき、寺域の一隅で、丁度若い学僧が、自らの法衣を干している景を見ました。如何にも「秋うらら」の景です。この句、「若き学僧」が善いです。「秋うらら」と善く呼応しています。
今月の佳句。<秋麗や真白に乾く柔道着 沼宮内薫>。<還暦に集ふ仲間や秋うらら 林田正光>。<丈六の仏に
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