俳句庵

10月『秋うらら』全応募作品

(敬称略)

福井県     山本晟瑚
縁側で満月眺む秋うらら
兵庫県     岸下庄二
公園のベンチにごろ寝秋うらら
谺する出船の汽笛秋うらら
ひょうきんなからくり時計秋うらら
千切れ雲ゆつくり流れ秋うらら
秋うらら程よき揺れの一両車
千葉県     柊二
ランナーのガイドロープや秋うらら
静岡県     いたまきし
前菜とスープたいらげ秋うらら
秋うらら見えないものに話す魔女
ぐうたらに空を見るだけ秋うらら
奈良県     福田依愛
遠景を各駅停車秋うらら
いまここをふるさととして秋うらら
エクモより帰宅との報秋うらら
秋うらら猫の毛先のひかりたち
りん鳴らす母の指先秋うらら
山梨県     森下博史
パチンコに負けてバス停秋うらら
お見舞いの帰り豆腐屋秋うらら
登山靴紐をほどいて秋うらら
顔なじみ探す銭湯秋うらら
秋うららカール天空露天風呂
新潟県     近藤博
四阿にちと腰を据え秋うらら
秋うらら湖面をすいすい遊覧船
秋うらら園児らはしやぐ遊園地
空蒼く風の柔らに秋うらら
天に地に陽光満つる秋うらら
神奈川県     志摩 比呂樹
天守閣よりの一望秋うらら
秋うらら蝿が手をする目を閉じる
兵庫県     神長誉夫
秋うららコッヘルの湯気高々と
秋うらら青春十八きっぷ手に
地の賛歌宙聴き入りて秋うらら
秋うらら眠るキリンの首くるり
秋うらら櫂が水面の葉色混ぜ
大阪府     藤田康子
アメリカで二刀流沸く秋うらら
秋うらら母のごとく立つ灯台
ブラジル     西山ひろ子
秋うらら夢の世界の女将さん
秋麗やごミサ見守るマリア様
秋麗やおはじき瓶に光持ち
秋うらら青いシグナル雨弾き
笑む孫のまなこの色気秋麗
愛知県     西谷寿
秋うらら雲の流れに人心地
秋うらら静かに起きてお茶を飲む
秋うららねこもしゃくしもあくびする
秋うらら心ゆるびて横になる
秋うらら時計の針が停止する
東京都     小山正司
まだ青い 団栗見つけ 秋麗
シーソーに 蝗を見つけ 秋うらら
秋うらら 既読の返事 待つ午後よ
耳元を 蜻蛉追い越す 秋うらら
秋うらら 悲しい気持ち 空に溶け
広島県     ゆうすい
秋うらら子らに手を振るパイロット
秋うららしおりを挟む参考書
お浸しのかつぶし揺れる秋うらら
広島県     ゆうすい
秋うらら点検中のエレベーター
秋うらら校舎の裏の弓道部
岐阜県     金子加行
秋うららかつて村あり道祖神
秋うらら子に縁談の届きたる
再スタート図りし地なり秋うらら
秋うらら隣町まで歩かうか
秋うらら左ひだぢや深き森
東京都     よしだ悠
疫病も水害もくそ秋うらら
埼玉県     岸保宏
休耕田絨毯にして秋うらら
車椅子穂が絡まれし秋うらら
秋うらら地蔵の目尻上がりけり
長野県     木原登
雲を見て雲と話して秋うらら
八千穂高原白樺林秋麗ら
手術後の眼帯外す秋うらら
三々五々牛が牧食む秋うらら
秋麗の城下一望天守閣
大阪府     八王寺宇保
空き缶の走るメロディー秋うらら
海上の空に柵なし秋うらら
三度目の霊柩車なり秋うらら
逆打ちの結願成れり秋うらら
軽症のうちに治癒せり秋うらら
福井県     山本晟瑚
秋風に花木のそよぐ露天宿
東京都     岩崎美範
秋うらら壁にミレーの農民画
あの角を曲がれば生家秋うらら
秋うららシャボンの匂ふ理髪店
秋うらら退院近き友見舞ふ
秋うらら旧姓で呼ぶクラス会
神奈川県     海野優
忙しと口に出しては秋うらら
秋うらら長々と書く恋の文
差出しのなき絵手紙や秋うらら
埼玉県     北川清
多摩上水 小道散策 秋うらら
喜多院や 五百羅漢と 秋うらら
秋麗や 鹿の鳴き声 ここかしこ
奥入瀬や 季節の映り 秋うらら
戦時ぬけ 米寿お祝い 秋うらら
千葉県     徳翁
秋うらら祖父より残る稲田刈る
あくびするテリアのベスト秋うらら
自転車で土堤をノロノロ秋うらら
秋うららカフェのテラスで英字紙を
福井県     山本晟瑚
秋の香や溢れんばかりの旬果実
東京都     笹木弘
秋うらら電話で頭下げてをり
秋うらら亀の甲羅の乾きをり
秋うらら一輛で行く越後かな
秋うらら髑髏マークの海賊船
手を上げて停まるバスあり秋うらら
東京都     石川昇
秋うらら影を踏み合う鬼ごっこ
密のなきベンチの読書秋うらら
東京都     勢田清
秋うらら日輪高くぼんやりと
秋うらら土手の芝生にまどろみぬ
バイオリン物悲しくも秋うらら
秋うららバイオリニスト八重歯見せ
秋うらら街のかなたに青い海
徳島県     井内胡桃
秋うらら玉子サンドのずっしりと
指させば鼻寄せる猫秋うらら
徳島県     井内胡桃
秋麗の殿と名付けし野良の猫
塩むすびリュックに三つ秋うらら
秋うらら古道具屋に白い椅子
徳島県     白井百合子
入母屋に野生の猿や秋うらら
愛犬と裏山深く秋うらら
ぼんやりと空を楽しむ秋うらら
カット付き犬のシャンプー秋うらら
秋うらら電話のベルに目が覚める
神奈川県     川島欣也
秋うらら和服野点に集いけり
彩に染む田んぼのアート秋うらら
公園の園児木登り秋うらら
秋うららくすぐられるや旅心
童謡唄う散歩の親子秋うらら
岡山県     岸野洋介
秋うらら浮桟橋のひとり揺れ
秋うららこの世短き長女なり
秋うらら母のメールに「ミケの死す」
四阿は風の十字路秋うらら
傘寿来て喪服新調秋うらら
神奈川県     猪狩鳳保
秋うらら雀の嘴の黒光り
秋うららひずめの跡の真砂道
笑ふ児を笑つて見る子秋うらら
秋うらら温泉玉子の七光り
タンカーの吃水浅し秋うらら
神奈川県     沼宮内薫
秋うらら白煙ながれSL車
秋麗や真白に乾く柔道着
秋うらら宿場めぐりの第一歩
放牧の仔牛艶めき秋うらら
神奈川県     沼宮内薫
秋うらら木道わたる風さやか
兵庫県     岸野孝彦
ペダル踏む明日香の里の秋うらら
息子にも良縁来たる秋うらら
秋うららヘッセを友の旅愁かな
秋うらら太鼓囃子の響く里
涸沢で一人旅寝や秋うらら
長崎県     入口弘徳
グラウンドへボールを蹴って秋うらら
東京都     内藤羊皐
川の面に雲の耀ひ秋うらら
道切りの縄の翳揺れ秋うらら
秋うらら面差変はる鬼瓦
秋うららをさなの沓の又脱げる
秋うらら猫の毛玉の女学生
埼玉県     いまいやすのり
銀ぶらの外灯ほのと秋うらら
秋うらら新し供花の石仏
秋うらら対岸よりの大太鼓
小社のラジオ体操秋うらら
秋うらら詩吟詠ずる河川敷
埼玉県     加藤 紗子
秋うらら微かにひりつく頬かな
帽子脱ぎ秋うららへと胸開く
広島県     老人日記
秋麗や海底火山陸地めく
秋うらら彩なす京の千余年
秋うらら幟はためく過疎の村
断食の水ひといきに秋うらら
陸地めく海底火山秋うらら
千葉県     伊藤博康
忙しなき世を横に置き秋うらら
どっぷりと身を委ねたる秋うらら
秋うらら進みし授業オンライン
千葉県     伊藤博康
しんがりの馬駆けぬける秋うらら
秋うらら屋根光りをる窓の外
神奈川県     塚本治彦
秋うららどこへ行くにも日和下駄
老父母の髪刈る庭や秋うらら
居眠りのやうな釣師や秋うらら
秋うらら賽銭箱を直す禰宜
舟で着く嫁と嫁荷や秋麗ら
沖縄県     渡嘉敷五福
秋うららいいことだけを書く便り
秋うららパフェに日の差すカフェテラス
秋うららさはさりながら所在なく
人を恋ふ十九のこころ秋うらら
知るほどに好もしきひと秋うらら
奈良県     堀ノ内和夫
樹上より雛の鳴き声秋うらら
ハイパント一斉に追ふ秋うらら
大阪府     森 佳月
故郷は心のまほろば秋うらら
亀石の甲羅の重し秋うらら
フジタ描くパールの肌や秋うらら
埼玉県     岸保宏
白壁の壁の白さよ秋うらら
習字する子等の背筋や秋うらら
秋うらら宮家の話し賑やかし
神奈川県     片桐と志え
秋うららがんもふつくら炊きあがる
汚水管の蓋にペガサス秋うらら
秋うら竹輪に通すウィンナー
ボジョレー・ヌーボーうふふ一本うらうらら
秋うららマーブルチョコのぶつかる音
山口県     ひろ子
うららかや菊人形の微笑みは
彼岸花実る稲田を縁取りぬ
埼玉県     宥光
秋うららぐんぐん育つパンダの子
秋うらら吊橋渡る唯ひとり
秋例や母の髪を梳く縁の淵
秋うらら発掘つづく遺跡群
秋麗やアルプホルンの牧草地
埼玉県     三休
秋うらら池の中洲に群れる亀
秋うらら彫り深き眼の磨崖仏
秋うらら水面静かな利根渡し
秋うらら六角上る下る道
秋うらら尾まで餡子の鯛焼き屋
愛媛県     砂山恵子
万博旗すべて上がりて秋うらら
塔すべて海に向かいて秋麗
腰で漕ぐバランスボール秋うらら
秋麗讃岐の山はあくびして
寺の名が駅となる市よ秋うらら
大阪府     津田明美
秋うらら使い慣れたる花鋏
秋うらら公園デビューの乳母車
秋うららゆっくり乾く朱印帳
秋うらら飛機雲海を渡り行く
秋うらら子連れの野外コンサート
神奈川県     井手浩堂
秋うらら鎌倉街道混み合ふも
秋うらら団地に一日の野菜売り
秋うらら並び干さるる子らの靴
芸終へて胸張る猿や秋うらら
東京都     佐藤富幸
秋うらら峠の茶屋の野点傘
集団の接種終わりて秋うらら
秋うらら庭一面の天日干し
東京都     佐藤富幸
空上る田の白煙や秋うらら
東京都     佐藤美智子
秋うらら容易く出でし世辞一つ
都営バス日の丸つけて秋うらら
秋うらら大手広げて平和ボケ
真青なる空にシャツ干す秋うらら
ブーケトス教会前を秋うらら
山梨県     天野昭正
リス増えてストレスたまる秋うらら
秋うららトランペットを吹く少女
茶髪の子今は白髪秋うらら
飛行機の離発着見る秋うらら
秋うらら年寄り達のから元気
茨城県     小松崎孝志
秋うらら目を閉じ孫のバイオリン
秋うららシナモンパンの香のほのか
球場の円陣の声秋うらら
秋うらら空の吸込む白い球
秋うらら休校明けの児らの声
愛知県     斉藤浩美
秋麗の浜にこびんの流れ着く
地を摺つて母の歩ける秋うらら
留袖に会い振袖に会い秋うらら
碧眼の猫秋麗を映しをり
地球儀に傾斜を与え秋うらら
神奈川県     立野音思
秋うらら廃墟横切る雲の影
秋うらら一人暮らしが板につき
秋うらら稲荷に抜ける細き道
年を経て訪ふ故郷秋うらら
神奈川県     矢神輝昭
心字池魚の跳ねるは秋うらら
銀座にも米の実りて秋うらら
神奈川県     矢神輝昭
退院の日の近づいて秋うらら
仲違ひ映画館出て秋うらら
かずら橋渡り終えたり秋うらら
東京都     髙山善裕
遍路道思わず外る秋うらら
秋うらら散歩の足も遅くなり
京都府     村田稔子
秋うらら 洗濯物の 白冴える
コロナ禍の 登校班や 秋うらら
秋うらら 一昨昨年(さきおととし)の 旅の空
岐阜県     雅風
秋うらら子規もやりたる草野球
妻癒えて床上げ近し秋うらら
パドックに馬のお目見得秋うらら
秋うらら通りを埋むる刃物市
秋うららロバのパン来る鄙の里
三重県     後藤允孝
秋麗や読書好きなる男の子
秋うらら漁港は猫の船溜まり
野うさぎの畑ちょろちょろ秋うらら
逆上がりやつと出来たよ秋うらら
嫁ぐ子の押す車椅子秋うらら
兵庫県     髙見正樹
秋うらら歩道を塞ぐ鳩の群
草に坐す母子三組秋うらら
新しき運動靴や秋うらら
宮城県     林田正光
珈琲かそれとも紅茶秋うらら
秋うらら足軽やかにスニーカー
秋うらら外人墓地の笑い声
還暦に集う仲間や秋うらら
公園のペット談義や秋うらら
千葉県     長谷川ぺぐ
君思ひ啜るコーヒー秋うらら
滋賀県     村田紀子
秋うらら浜の足跡走り出す
五年振りハガキが届き秋うらら
木鋏を持つ手に声が秋うらら
砂山を裸足で走る秋うらら
忘れ物高く掲げて秋うらら
東京都     伊藤訓花
行間に残るふりがな秋うらら
秋うらら点滴落つる窓白し
秋うららナースコールの静寂かな
秋麗や診察室の清浄機
秋麗や本の匂ひに煙草の香
東京都     豊宣光
秋うらら空爆なき世願いつつ
秋うらら老いたる母に肩たたき
ひと房のたわわな重さ秋うらら
空は青田は黄金に秋うらら
秋うらら色づき競う木の葉かな
三重県     平谷富之
往診の結果良好秋うらら
秋うらら散歩の距離も伸びにけり
千葉県     峰崎成規
古書店で選るぞつき本秋うらら
蒼天は雲の遊び場秋うらら
水準器気泡空向き秋うらら
日時計は秒分要らず秋うらら
美術展三つ梯子し秋うらら
愛媛県     加島一善
秋うららボサノバの音とモカの香と
ピンポンのラリーの続く秋うらら
秋うらら傍に子がいて妻がいて
秋うららバス乗り換えてアマルフィへ
秋うららジェスチャーしてた昭和の日
島根県     杤谷治
立ち漕ぎの刈上げに風秋うらら
島根県     寺津豪佐
秋うらら昔二階に物干場
埼玉県     水夢
秋うらら龍登りゆく蒼き空
秋うらら海光ゆらすタグボード
秋うらら松美しき瑞巌寺
樺の木の仄白き影秋うらら
自転車のサドルは高し秋うらら
奈良県     平松 洋子
散歩道甥っ子姪っ子秋うらら
秋うららいつも校門花盛り
笑み返す赤子の負んぶ秋うらら
大阪府     鈴木千年
貧乏くじまたまた当り秋うらら
木の洞にすつぽり馴染み秋うらら
秋うららスマホゲームの指自在
絵図を手にスタンプラリー秋うらら
秋うらら古地図頼りに史碑めぐり
大阪府     鈴木三津
秋うらら庭に間遠の鋏音
来世には庭師になろう秋うらら
眠たげな明日香亀石秋うらら
笹舟に童心もどる秋うらら
雑魚一つ上げて逃がして秋うらら
ブラジル     林とみ代
秋うららワクチン接種終へにけり
園丁の口笛聞ゆ秋うらら
オンラインで祝ふ宴や秋うらら
秋うらら果実豊富な朝の市
秋うらら自粛解けたるひと日かな
岐阜県     ときめき人
秋うらら笑みの増したる六地蔵
千葉県     のん
秋風に 路地の木の葉の 笑い声
神奈川県     原川篤子
水底の石に光(かげ)ゆれ秋うらら
ビル狭間に赤き鳥居や秋うらら
秋うらら高尾山より塔二塔
秋うらら綿雲掬ふ観覧車
秋うららモデルハウスの木の匂ひ
神奈川県     龍野ひろし
秋うららバザーに集ふ車椅子
千葉県     伊藤順女
秋うらら絶叫マシン空をとぶ
富士山の遠く小さく秋うらら
よき風のとおる庭さき秋うらら
東京都     松本征枝
満点をわざわざ見せに秋うらら
鼻歌の厨に流る秋うらら
一面の物干し溢れ秋うらら
ウォーキング野辺の草まで秋うらら
秋うらら去りにしロマン手繰りおり
東京都     中田ちこう
秋うらら光があらふ道祖神
東京都     田畑 整
秋うらら馬房におが粉敷きつめて
秋うららジョギングロードでストレッチ
秋うらら信号待ちの幌型車
行きつけの床屋閉店秋うらら
道尋ね訛りわからぬ秋うらら
徳島県     井内胡桃
秋うらら玉子サンドのずっしりと
秋うららラインダンスのフラミンゴ
秋うらら古道具屋に白い椅子
指させば鼻寄せる猫秋うらら
秋麗の殿と名付けし野良の猫
静岡県     大澤定男
秋うらら閼伽水桶に家の紋
秋うららひと日は不意の昼の月
静岡県     大澤定男
秋うららソーラー時計知らぬ間に
秋うらら父の背中という自撮り
秋うらら着付け師範に嫁ぎ先
神奈川県     亀山酔田
秋麗や雄鶏競う声に声
秋うらら化粧をなして神楽舞う
ほたえるも子の裁量と秋うらら
秋麗や頂き尖る峯続き
秋麗と聞かば背筋の伸びる感
東京都     右田俊郎
秋うらら歓声上がる草野球
原っぱにテント点々秋うらら
秋うらら外れ馬券の宙を舞ふ
秋うらら人力車夫の耳ピアス
秋うらら似顔絵描きの客を待つ
宮城県     佐藤沙なゑ
秋うらら這松香る深山かな
秋うらら慰霊に遺る海の碧
秋うらら行幸啓の遺構也
埼玉県     釜田眞吾
水琴の宇宙に響き秋うらら
秋うらら風見てをらぬ風見鶏
埼玉県     守田修治
秋うらら新幹線にもごぶさたで
秋うらら桐下駄鳴らす句会かな
追伸は寸借せがむ秋うらら
秋うらら志ん生忌日きょうあした
秋うらら小紋染師の伸子張り
兵庫県     えいえい
練習す選手宣誓秋うらら
埼玉県      哲庵
秋うらら丘を越え行くタンデム車
秋うららスカイツリーに飛行船
秋うらら両手に杖の街散歩
埼玉県      哲庵
秋うらら縦一列の車椅子
秋うらら妻の打ちたる蕎麦すする
愛知県     飯田 夷佐久
秋麗や銀杏並木の影長し
鯛焼きの裏に焦げあり秋うらら
蜜柑の木切りたる庭へ秋うらら
四十九の父は無職で秋うらら
秋うらら犬の吠え合ふドッグラン
東京都     岩川容子
懐かしき駅のこの香や秋うらら
秋うらら空に届けと観覧車
秋うららベンチに杖の忘れ物
野にありて笑う羅漢や秋うらら
茨城県     長洲研志
庭先の大の字の猫秋うらら
秋うららアコーディオンの女の子
肉球は臭く愛しく秋うらら
境内の竹ぼうきの音秋うらら
笹子抜け矢立ての杉や秋うらら
中国     加良太知
初授乳くすぐったいよ秋うらら
秋うらら鼻より溶けてゆくかゆみ
待たぬときまたタクシー来秋うらら
秋うらら牛乳箱の青光り
秋うらら指でのたくる英単語
千葉県     四葩
秋うらら良き笑顔して配達夫
秋うららずしりと重き米袋
東京都     山﨑勝久
風見鶏港見下ろし秋麗
秋麗カップインの音軽し
甲斐甲斐し鋸ひく音や秋麗
秋うらら煉瓦塀の蔦青く
東京都     山﨑勝久
秋うらら水上バスの二階席
大阪府     酒梨
秋うららレースの子豚迷走す
秋うらら三々五々のミサ帰り
秋うらら墓地を下見の夫婦かな
秋うらら五百羅漢に影五百
秋うらら草食む馬の艶やかに
茨城県     長洲研志
背景は竹ぼうきの音秋うらら
庭先の大の字の猫秋うらら
笹子抜け矢立ての杉や秋うらら
肉球は臭く愛しく秋うらら
秋うららアコーディオンの女の子
福岡県     西山勝男
丈六の仏に見ゆ秋うらら
老い先を土と向き合う秋うらら
秋うらら軍艦島を遥かげに
秋うらら画廊にカラー魚拓展
築港も遺産の一つ秋うらら
千葉県     風泉
・秋うらら湯殿に癒えて湯気の濃く
・墨薫り秋うららかや走る筆
・カーディガンを出窓に探す秋うらら
・秋麗や一森透けて闇の鐘
静岡県     城内幸江
秋うらら並ぶ幟の眠さうな
お散歩の道はまろやか秋うらら
猫の尾はワルツを踊り秋うらら
秋うらら干したシーツに包まる子
秋うらら優しい歌を口ずさむ
神奈川県     重兵衛
秋うらら一人遅れのウオーキング
チンチンと遮断機上がる秋うらら
神奈川県     重兵衛
駅中のピアノ響けり秋うらら
下の名で呼び合う仲間秋麗
赤べこの頭ゆらゆら秋麗
北海道     森野 樹
水面から光の合唱秋うらら
秋麗や陽の匂い満つ盆地かな
校庭に弾ぜる子散る子秋うらら
トンネルを出れば一面秋うらら
北海道     森野 樹
秋うららページ繰る指加速する
兵庫県     田駆路有
ブドウ食べ皮がしなしなまで食べる
埼玉県     小玉拙郎
画用紙にまず水平線秋うらら
光受く多肉植物秋うらら
校庭にマーチングバンドの秋うらら
秋うららきちんと並ぶ稲荷寿司
東京都     日向順子
山肌をロープウェイゆく秋うらら
秋麗や子らの合唱伸びやかに
埼玉県     七島
秋うらら体重計に褒められて
針を持つことだけの秋うらら
秋うらら一つ歳とり空仰ぐ
秋うらら介護施設の母笑顔
秋うらら仏壇の祖父イケメンで
神奈川県     池田恵美
秋うらら畦に小昼の老夫婦
秋麗や切子の鉢に影あふれ
秋うららクレープの端ちぢれたる
秋麗や一息に裁つ白木綿
滋賀県     別役昌子
墨濃ゆき般若心経秋うらら
裏の子のよちよちあんよ秋うらら
塔頭に微睡む猫や秋うらら
付髪の零れ落ちそう秋うらら
衣干す若き学僧秋うらら
東京都     岱鵬
釣堀やビールで舟漕ぐ秋うらら
バス停やウツラウツラと秋うらら
ペディキュアを塗りて吹く息秋麗
父と子にお弁当持たせて秋うらら
秋うららひと筆の虹滝しぶき
埼玉県     飛翔
秋うらら動かねままに飛行船
今日よりは素敵な明日を秋うらら
銭湯の煙突あるや秋うらら
ケンケンパのリズム聞ゆる秋うらら
秋うらら二本くっきり飛行雲
神奈川県     安藤 真青
母の下いってはもどり秋うらら
宇宙旅行の吾には遠く秋うらら
頂上に寝覚め見回す秋うらら
補助輪のなしを試す子秋うらら
福岡県     川崎 日知
秋うらら珈琲を待つ十五分
疫病の届かぬ空よ秋うらら
拭き上げて潤む鏡や秋うらら
福岡県     多事
古書街のカリーの匂ひ秋うらら
散り跳びし鯛の鱗ら秋うらら
嬉々として犬泥まみれ秋うらら
秋うらら漱石の歌碑見つけたり
秋うらら役場放送スウィングジャズ
北海道     風花美絵
秋うららあと一回の砂遊び
追い越さぬ牧草ロール秋うらら
コンバイン究む幾何学秋うらら
東京都     水野邦彦
秋うららタオルを首に外野席
秋うらら炭酸水の泡数へ
秋うらら墓参のあとのせいろそば
夢さめて香る昼餉や秋うらら
大阪府     多田由佳里
杜抜ける小太鼓軽し秋うらら
愛知県     香坂泉
秋うらら押すな押すなと鳩の群れ
後輪を覆う雑草秋うらら
愛知県     香坂泉
秋うらら仏語辞典の軽さかな
秋うらら鼻先だけの成吉思汗
坂上の家に自転車秋うらら
鳥取県     475俳句
公園の涅槃は父か秋うらら
秋うららことほぐ灘の生一本
秋うららますぐに斧を降ろしたり
デゴイチの今は遊具の秋うらら
秋麗やドクターヘリの磨かれり
東京都     山本貴士
靴選ぶ吾子の鼻歌秋うらら
唐揚げと卵かえっこ秋うらら
駅に負う子の重さかな秋うらら
秋うらら子の口ずさむ七の段
秋うらら警策の音高らかに
神奈川県     水野伸一
秋うらら街頭演説美辞麗句
秋うらら履歴書送るポストかな
秋うらら巣に戻る鳥高く飛ぶ
秋うらら再就職の面接日
秋うらら求人広告拾い読む
神奈川県     髙梨裕
秋うらら乗り込みを待つ遊覧船
秋うらら目抜き通りの大道芸
一望の関東平野秋うらら
豚饅の港横浜秋うらら
歩き出す免許返納秋うらら
東京都     豊島仁
一杯のキリマンジェロに秋うらら
気になりし事片づけて秋うらら
園児等の声空髙く秋うらら
おみくじの良き事ありて秋うらら
東京都     豊島仁
荒家も有難きかな秋うらら