俳句庵

12月『年忘れ』全応募作品

(敬称略)

千葉県     柊二
リモートの壁に献立年忘れ
高知県     野中泰佑
一興や知恵捻りたる年忘れ
飲み放題食い放題や年忘れ
年忘れにて天昇や忙しさ
献杯に返杯や為す年忘れ
一献の美酒や飲み干す年忘れ
千葉県     柊ニ
ひさびさの素顔リモート年忘れ
山梨県     森下博史
かつぶしが乱舞湯豆腐年忘れ
ザーザーのラジオと過ごす年忘れ
大嫌いひきわり納豆年忘れ
高級酒今年も飲めず年忘れ
やれやれと河童ため息年忘れ
兵庫県     田駆路有
年忘れ母は毎日歳忘れ
静岡県     いたまきし
年忘れ靴屋の前で立ち止まり
年忘れ指にぬくもり残るまま
兵庫県     藤濤英介
年忘れコップの結露四つかな
大阪府     藤田康子
メンバーの減りても増えず年忘れ
悪しきこと無きが幸なり年忘れ
神奈川県     川島欣也
和気藹々上戸も下戸も年忘れ
底つかぬ語らい種や年忘れ
糟糠の妻認知症年忘れ
コロナ禍やひとり手酌の年忘れ
三密を避け集まれぬ忘年会
兵庫県     岸下庄二
年忘れ十八番の演歌先越さる
年忘れ席次を決める籤を引く
兵庫県     岸下庄二
年忘れいつの間にやら下剋上
中締めを終へて長々年忘れ
年忘れ酔つたふりして盾を突く
愛知県     西谷寿
借りた金すべてをリセット年忘れ
年忘れしたくもできずつらき日々
貧乏で年忘れして夢見たい
年忘れ忙し過ぎてぼけ始め
コロナ禍ですべてリセットで年忘れ
神奈川県     松野勉
「大丈夫。」そんなはずない年忘れ
東京都     岩崎美範
湯治場に妻とふたりの年忘れ
上座には恩師の遺影年忘れ
いつの世も主役はをみな年忘れ
下戸集ふ甘味処の年忘れ
存分に泣いて笑つて年忘れ
静岡県     いたまきし
年忘れ名簿に引いた二本線
大阪府     木山満
飄々と死後の事など年忘れ
若返る泉の水と年忘れ
皺くちゃの福耳褒めて年忘れ
独り身や「高砂」謡ひ年忘れ
コロナにて今年中止の年忘れ
神奈川県     志摩比呂樹
年忘れ幼なじみをちゃんづけで
孫と相撲取って負けたる年忘れ
兵庫県     神長誉夫
干し魚の焦げの苦さや年忘れ
年忘れ猪口の蛇の目が腹覗く
忘られぬ言葉ありての年忘れ
洗う傷鮮やか年の忘れ水
言葉失せ零れゆく時除夜の宴
新潟県     近藤博
年忘れ下戸の吾とて酒を酌む
年忘れ誰も招かぬコロナ避け
福福し顔触れ集ふ年忘れ
コロナ禍で夫婦ふたりの年忘れ
老いぬれど惚けぬ幸せ年忘れ
長野県     木原登
忘年会抜け出てしばし星仰ぐ
忘年の海見て帰る一日旅
十和田湖の忘年の声聞きにけり
銘酒吟醸年を忘るるためにあり
山の歌山にて歌ふ年忘れ
ブラジル     林とみ代
忘れ得ぬ事の多きに年忘れ
年忘れ噂話に尾ひれ付き
趣味の一つ持ち寄る句座や年忘れ
へそくりの紐をゆるめて年忘れ
年忘れエッフェル塔の夜景かな
岐阜県     金子加行
まだ喋る歌へる身なり年忘れ
忘れた来二三の悔ひや年忘れ
笑ひ言ふ明るき愚痴や年忘れ
評論家恐妻家寄る年忘れ
許さるる許す顔あり年忘れ
香川県     辰野
立冬の夕鍵っ子の帰り道
山梨県     天野昭正
コロナ禍や大声出せぬ年忘れ
八十路坂誰肩抱く年忘れ
席順に不満の残る年忘れ
ストーブにスルメを焼いて年忘れ
椅子をもてストーブ囲む年忘れ
岡山県     岸野洋介
同僚の仕草気になる年忘れ
岡山県     岸野洋介
悪気なき毒舌ばかり年忘れ
酌下手の友を
二年ぶり仲間こぞって年忘れ
忘れ得ぬよきこと秘めて年忘れ
愛知県     飯田 夷佐久
少なめの〆のラーメン年忘
持ち主のわからぬ靴や年忘
浅草は極楽浄土年忘
またひとり欠けてゆきけり年忘
年寄りは先に集まる年忘
東京都     勢田清
年忘れまた来年と別れけり
年忘れイルミネーション夜の街
年忘れ別れて仰ぐ星の空
歌い踊る君美しや年忘れ
年忘れ君の音頭に皆踊り
奈良県     堀ノ内和夫
亡き友の写真も加へ年忘れ
手料理を持ち寄り開く年忘れ
東京都     熊谷明子
いつ見ても 変わらぬ人よ 年忘れ
だれもかも 年が開ければ 年忘れ
年忘れ 今年は寺に 置いてゆく
年忘れ 昨日も明日も 同じ日々
年忘れ いつもの顔か 鏡みて
東京都     内藤羊皐
年忘れ駅の北口灯を残し
定年を指に数うる年忘れ
靴下の毛玉毟りて年忘れ
疫病を語り仕舞ひの年忘れ
膝痛に施術決む妻年忘れ
大阪府     森 佳月
妻を介護してゐる吾も年忘れ
大阪府     森 佳月
寮歌でておひらきとなる年忘れ
コロナ禍や迷ひ迷ひて年忘れ
大阪府     げばげば
上席に遺影のありて年忘
猫かぶることさへ忘れ年忘れ
赤紙の届きて郷の年忘
大阪府     八王寺宇保
遅刻なく二年ぶりなる年忘れ
バリカンの首に冷気や年忘れ
宛名書き中途で終えて年忘れ
買い置きの蕎麦を肴に年忘れ
年忘れ旅と病の二派が立つ
ブラジル     西山ひろ子こ
忘年会仕切る彼女の笑ひ声
何時までも命あるかに年忘れ
限りある命大事に年忘れ
今生きる幸せ胸に年忘れ
あるがまま神に委ねて年忘れ
神奈川県     沼宮内薫
真つ先に陣取る犬や年忘れ
年忘れ三人よれば句会かな
主役主婦自治会館の忘年会
院長のおはこ飛び出す忘年会
今年また個食のままや忘年会
東京都     熊谷信子
街並みの イチョウ葉枯れて 年忘れ
イケメンを 眺めるたびに 年忘れ
年忘れ おにぎりほおばり 幸せだ
湯につかり ほっとひと息 年忘れ
年忘れ 今年こそ聴く 鐘の声
千葉県     徳翁
鍋囲み病自慢の年忘れ
忙しや四方に酌の年忘れ
千葉県     徳翁
妻と酌む孫を肴に年忘れ
神奈川県     井手浩堂
年忘れ上座引き当て落ち着かず
酒飲めぬ人が左右に年忘れ
日本酒は卓に一人よ年忘れ
東京都     右田俊郎
老いたればひとり汲む酒年忘れ
年忘れ平凡というありがたみ
蕎麦すすり紅白を観て年忘れ
年忘れ家族で卓を囲みをり
また馬齢ひとつ重ねる年忘れ
東京都     佐藤富幸
株式のまたの後悔年忘れ
土産抱き迷ひし家路年忘れ
年忘れ忘れたくなる独り酒
生きとしの喜怒哀楽や年忘れ
選曲は世代の違ひ年忘れ
東京都     佐藤美智子
酒届きまた酒届く年忘れ
遠に富士鳥ひかり行く年忘れ
健康診断受けてやうやく年忘れ
鶴亀の折り紙仕立て年忘れ
芥蔕をブロアー空へ年忘れ
広島県     老人日記
軍歌でぬ忘年会となりしかな
二人居て越せる喜び年忘れ
病持つ者ばかりなり年忘れ
抜け出してひとりが安し年忘れ
忘年の明くれば肺を切る身かな
三重県     後藤允孝
悪しきこと厭なことみな年忘
年忘世事の条理にこだわらず
会釈して名前出てこぬ年忘
三重県     後藤允孝
年忘八十路の坂を生きてをり
毒舌も美辞も受止め年忘
高知県     野中泰風
コロナ禍でオンリーワンや年忘れ
徳島県     白井百合子
中指の霜焼けうずき年忘れ
鍋の中鰤の身泳ぐ年忘れ
断捨離に心も軽し年忘れ
茶を点てる干菓子ひとつの年忘れ
古漬けを肉で丸めて年忘れ
滋賀県     船岡房公
忘年の声かからざる鍋奉行
おいそれとせつく者なし年忘れ
福井県     山本晟瑚
朝市の情景寂し年忘れ
東京都     よしだ悠
皺深きお互いの手や年忘れ 
はやばやと灯を消して待つ年忘れ 
わが年を幾度も数ゆ年忘 
妻や子の涙はしらず年わすれ 
新しき明日こそ晴れよ年忘れ 
福井県     山本晟瑚
年忘れ宴広場に花彩る
三重県     平谷富之
今年こそ 一曲増やす 年忘れ
年忘れ リーチビンゴの 声弾む
年忘れ 今年の憂さを 吹き飛ばす
静岡県     城内幸江
十人の部屋に二人の年忘れ
年忘れアクリル板を置かれをり
酒好きの説明長く年忘れ
それぞれに小鉢の並ぶ年忘れ
福井県     山本晟瑚
年忘れ路地裏に咲く白き花
兵庫県     岸野孝彦
リヤカーを洗って空気年忘れ
音もなく救急車行く年忘れ
兵庫県     岸野孝彦
朝ドラの主題歌唄う年忘れ
年忘れ父母の好物供う朝
博多へと妻と結納年忘れ
千葉県     峰崎成規
良き今年胸に仕舞ひて年忘
忘年会抜けてひとりの屋台酒
また一人去年の名零る年忘
忘年会乾杯跨ぐアクリル板
疫病抜け来し戦友たちの忘年会
神奈川県     塚本治彦
惚け初めてきたる老どち年忘れ
年忘れ歳も忘れてしまひけり
無礼講信ずるなかれ年忘れ
何やかや何はともあれ年忘れ
長幼の序も忘れたる年忘れ
沖縄県     稲福達也
年忘れはてて家路の風もよし
思ひ出に思ひ出かさね年忘れ
いざさらばまず一献と年忘れ
老いばかり他事なきとかや年忘れ
涙せしことはしまひて年忘れ
千葉県     伊藤博康
短めの挨拶うくる年忘れ
年忘れ会費いくらと聞きにけり
年忘れこの日のあるをわすれけり
気を緩め無礼講とて年忘れ
残業を終へ駆け付ける年忘れ
東京都     伊藤訓花
喜寿となり一夜のドレス年忘れ
律儀にも一升持って年忘れ
年忘れ良きことのみを胸中に
年忘れ厨の人となりにけり
東京都     伊藤訓花
金婚の差しす差されつ年忘れ
岡山県     岸野洋介
二年ぶり仲間こぞって年忘れ
酌下手の部下を
忘れ得ぬよきこと秘めて年忘れ
悪気なき毒舌ばかり年忘れ
同僚の仕草気になる年忘れ
茨城県     小松崎孝志
年忘れ大浴場の中国語
年わすれ君のうんちく残す脳
年忘一人じめする露天風呂
料亭が消え居酒屋の年忘
五十年演歌一筋年忘
埼玉県     水夢
年忘れ厨に残る一升瓶
江戸前の天ぷら揚がる年忘れ
年忘れ少し濃い目の緑茶かな
鰻屋の黒き柱や年忘れ
年忘れそろそろ君の誕生日
岡山県     八木 五十八
年忘れ妻と二人の発泡酒
アクリルの隔てし慰労年忘れ
どの席も椅子四脚の年忘れ
年忘れアマビエもある肴かな
年忘れ後ろめたきと呑みにけり
神奈川県     猪狩鳳保
拍子木をふところに入れ年忘れ
佃から銀座にぬけて年忘れ
お座敷の酒酌むほどに年忘れ
灯台に夜ごとの感謝年忘れ
祈ることに疲れし人よ年忘れ
神奈川県     金沢潤子
ため息の深き人ほど年忘れ
東京都     秋人
来る年よコロナ収まれ年忘れ
年忘れ母との別れ忘れ得ぬ
神奈川県     矢神輝昭
喧噪を避けてlineで年忘れ
余計な事思い出させて年忘れ
忘年会飲みやの屋根で猫ふて寝
もの忘れ何を今更年忘れ
人の世のノーサイドなる年忘れ
兵庫県     髙見正樹
年忘れ笑声上がる料理店
年忘れ自粛ムードに遠慮がち
老夫婦昼定食の年忘れ
埼玉県     石塚彩楓
また届く喪中欠礼年忘れ
踏台に登り伸ばす手年忘れ
サンゴ礁広がる海に年忘れ
対面の叶はぬままに年忘れ
メンバーの揃ひてフラを年忘れ
大阪府     津田明美
年忘れ一本締めでお開きに
年忘れ老いも若きも胡坐なり
年忘れ家族自慢の好々爺
一品を持ち寄り妻の年忘れ
一升瓶どんと真中に年忘れ
埼玉県     いまいやすのり
カラオケの持ち歌二曲年忘
一人増え持ち寄り句会年忘
年忘れ話の尾鰭まだ続く
年忘れ本音がちらちら見え始む
年忘れ媼五人の昼下がり
兵庫県     平尾美智男
年忘れ忘れしことを思ひ出す
岡山県     近藤こんどう
老いらくの恋の友との年忘れ
岡山県     近藤こんどう
忘年会酒が拭うや嫌なこと
老のひと蘇りたし年忘れ
ゴートゥーイート家族で年忘れ
年忘れすると気も楽御自由に
福岡県     友成聖子
笑皺ひとつ増やして年忘れ
苦も楽も笑ひ話に年忘れ
奈良県     平松 洋子
懐かしき歌が締めなり年忘れ
乾杯の音頭大きく年忘れ
年忘れ最年長となりてをり
岐阜県     ときめき人
延命の父とひと時年忘れ
埼玉県     岸保宏
廃校や屋根の草枯れ年忘れ
子の家も鍋三昧の年忘れ
菜園の手入れ忙しき年忘れ
宮城県     林田正光
逝きし人名を読み上げて忘年会
忘年会終えて新たな決意かな
年忘れ忘れたくなきことふたつ
酒抜きの忘年会もたまによし
年忘れ一人一人の忘れもの
東京都     豊宣光
来る年に望みをつなぐ年忘れ
年忘れ招かれざれば一人酒
年忘れ忘れたくないこともある
一年の垢を落とさん年忘れ
年忘れ幸も不幸もにぎやかに
東京都     かつこ
亡き夫の雑記帳めくる年忘れ
誕生日マイナス一で年忘れ
亡き夫や俳句を友に年忘れ
福岡県     深町明
声掛くるべき人のゐる年忘れ
福岡県     深町明
年忘れところどころを覚え得ず
本当は疾うに流行らぬ年忘れ
幾年を重ねて飽きぬ年忘れ
残業をして駆けつくる年忘れ
滋賀県     村田紀子
年忘れ雨も上がって下駄の音
コロナにて何と短い年忘れ
友の声聞くこともなく年忘れ
東京都     菫久
新しき歌は覚へず年忘れ
座尻の笑はぬをとこ年忘れ
揃ふ顔またひとつ欠け年忘れ
埼玉県     北川清
オンライン ビール片手に 年忘れ
忘年会 昔の上司 まだ威張り
年忘れ 軍歌を歌って 解散す
忘年会 染めた髪の毛 手直しす
昔姫 カツラトメイク 忘年会
埼玉県     宥光
たまたまの席の盛況忘年会
占いも籖も当たらず年忘れ
退出に自由の空気忘年会
終い湯のひとり鼻唄年忘れ
忘年会果てて帰宅といふ仕事
神奈川県     龍野ひろし
グローバルなるリモートの年忘
二次会の無き少数の年忘
岐阜県     雅風
上座空け上司待ちたり年忘
年忘酔余に俳句詠みにけり
パワハラも腹におさめて年忘
二次会のお呼びかからず年忘
忘年会締めは部長の腹踊り
香川県     辰野
年忘れ二品持ち寄る子ども会
猫が指ザリザリ舐める年忘れ
年忘れ炭酸の泡出尽くして
年忘れまた日々の来て粛々と
年忘れすれば増えゆく語り草
神奈川県     亀山酔田
路地裏の馴染みの店に年忘れ
忘年会酒注ぐ仕事もはや無く
近況を話し合へたる年忘れ
誰一人欠けず古稀過ぐ年忘れ
車座にならむ亡き友年忘れ
大阪府     永田
下戸組の白熱芸や年忘れ
はやばやと下戸は食べ終へ忘年会
大喰ひは無口になりぬ年忘れ
千葉県     伊藤順女
年忘れ果てて山なす皿の数
忘年の街にまばらな千鳥あし
ざわめきの中に寂しき年忘れ
酔眼で靴を選びぬ年忘れ
神奈川県     鳥井原弘
蕎麦たぐり天麩羅サクリ年忘れ
神奈川県     立野音思
また一年辿り着きおり年忘れ
蘊蓄に乾きし蕎麦や年忘れ
熱弁を見切りお開き年忘れ
愛媛県     加島一善
霜降り肉パックに妻の年忘れ
バーガーとポテトや子らの年忘れ
妻たちの日替わりランチ年忘れ
小魚を持ち寄る猫の年忘れ
また子らへ電話すママの年忘れ
埼玉県      哲庵
携帯の鳴りっ放しや年忘れ
埼玉県      哲庵
年忘れ杖も眼鏡も置き忘れ
コロナ禍や黙食黙酒忘年会
やうやうに距離を縮めて忘年会
忘れたく無きこと多し年忘れ
埼玉県     守田修治
隣よりショパン聴こゆる年忘
年忘転ばぬことよ炭団坂
燃え尽きし力士帰郷の年忘れ
二刀流見事開眼年忘
浅草寺抜けて行こうか年忘れ
東京都     長岡馨子
伯父伯母を彼岸へ送る年忘れ
茨城県     長洲研志
甥姪の歳を尋ねる年忘れ
感染数あれよあれよと年忘れ
朝刊の投函の音年忘れ
年忘れ廊下の上の隅の染み
大阪府     鈴木千年
年忘れ笑ひ飛ばせば済む話
からすみが出てもう一献年忘れ
老いてなほ談論風発年忘れ
年忘れ叩けば埃出る同士
諾はず呪はず老の年忘れ
千葉県     風泉
・忘れなやマスクの武器を年忘れ
・静静と彩るマスクや忘年会
・コロナ禍やじじばばぽっちの年忘れ
・切り上げる帰路の夜風や忘年会
大阪府     鈴木三津
電飾の並木を帰る年忘れ
年忘れひとつおぼえの手品して
年忘れ一徹の師も好々爺
川風にほてりを冷ます年忘れ
大阪府     鈴木三津
亡き人の話題も少し年忘れ
神奈川県     安藤 真青
亡妻に肩かりた日や忘年会
湯の町の花火あざやか年忘れ
「16トン」のバスに手拍子忘年会
滋賀県     別役昌子
年忘れ校歌二番の歌詞飛んで
年忘れ果てて満天星の里
信楽の緋のぐい呑と年忘れ
よきことの僅かな年の年忘れ
年忘れ伊吹も夢と締め括る
神奈川県     海野優
来た道を戻れぬと知る年忘れ
街灯に一献傾け年忘れ
年忘れ恋初めのひと隣会ふ
年忘れ身につまされる話など
埼玉県     飛翔
楽しさに我が老い忘れ年忘れ
年忘れ一緒に歳も忘れをり
老いたちの賑ふ集ひ年忘れ
忘れもの忘れたままに年忘れ
赤ん坊の笑顔みている年忘れ
東京都     田畑整
オンライン妻の目気にして年忘れ
あれもこれも来年こそは年忘れ
オンラインいつ散会か年忘れ
年忘れクレーム持ち越し忘られぬ
大阪府     酒梨
一人分とり置きながら年忘れ
忽ちに膝をくづして年忘れ
ネクタイを緩めつつ飲む年忘れ
句会をへなだれ込みたる年忘れ
忘れえぬことなけれども年忘れ
東京都     岩川容子
忘年会終われば主婦の顔となり
流れゆく刻の速さよ年忘れ
忘年を詰め込んでゆく終電車
くりごとを言う人聞く人年忘れ
神奈川県     原川篤子
忘年会一人の帰途のビル昏し
ブーツみな二つに折れて忘年会
前掛けを外して母の年忘れ
厨より漏れ來る匂ひ年忘れ
遅れ来て末席狭し忘年会 
京都府     村田稔子
自粛して 夫と二人の 年忘れ
年忘れ 涙で酒の 苦きかな
年忘れ 今年の漢字 何になる
久々に マスクはずして 年忘れ
愛知県     いちご一会
着飾っていつもの話題年忘れ
去年の分友の分もと年忘れ
福岡県     西山勝男
独り酌む越の銘酒に年忘れ
忘年や疫と向き合ひ独り酒
罹る代にまたも見合はす年忘れ
グータッチ交はして済ます年忘れ
東京都     中田ちこう
仮初めの仮装にすぎぬ年忘れ
ざる二枚酒と玉子の年忘れ
神奈川県     光南
今年また遅刻するやつ年忘れ
始まりは訃の知らせから年忘れ
スリッパの散らばりをりぬ年忘れ
彼奴もまた快癒祝ひや年忘れ
雑踏を掻き分けてゆく年忘れ
静岡県     大澤定男
初孫にビンゴを譲る年忘れ
静岡県     大澤定男
ひと家族舟盛りへ向く年忘れ
喜寿を待つビンゴで終わる年忘れ
静岡県     大澤定男
虚子捨てずウェブ歳時記年忘れ
墓誌余白磨き清々年忘れ
愛知県     斉藤浩美
小上がりに脱ぐハイヒール年忘れ
居酒屋は村に一軒年忘れ
節くれの指にマニキュア年忘れ
附けのきく居酒屋ありて年忘れ
姦しいことの華やぎ年忘れ
東京都     笹木弘
ふる里の地酒を飲んで年忘れ
最後には「同期の桜」で年忘れ
あの無口が芸達者とは忘年会
酔へば直ぐ軍歌飛び出す忘年会
片足を三途の川に年忘れ
埼玉県     釜田眞吾
忘れたき事思ひ出す年忘
年忘れ銀河の果を見て来しと
年忘れいつもの顔と陸奥の酒
神奈川県     池田恵美
次に来る人を言い合ひ年忘れ
飲まぬ人ことににぎやか年忘れ
次に来る人を言ひ合ひ年忘れ
埼玉県     小玉拙郎
顔を見るただそれだけの年忘れ
遅刻なき昭和生まれの年忘れ
お開きが長く尾を引く年忘れ
どうだった副反応はと年忘れ
東京都     水野邦彦
待ちわびて詫びる友なき年忘れ
暦には二年分と書く年忘れ
書き順を忘れたのかと忘年会
東京都     水野邦彦
年忘れあること忘る幾星霜
昨年も踏まえたき身の年忘れ
東京都     松本征枝
友逝きて忘れ忘れぬ年となり
闊歩する昭和の子供よ年忘れ
愛知県     新美達夫
寿司取つて妻と二人の年忘れ
今になりことはり入る年忘れ
マジックも出て年忘れ佳境なり
何時しかに最年長や年忘れ
愛知県     香坂泉
壁多き記念写真や年忘れ
肉多き鍋の卓へと年忘れ
一斉にアラーム鳴りて年忘れ
座敷わらしに酔い回り年忘れ
ハンガーの留まる長押や年忘れ
中国     加良太知
乾杯の画面停止す年忘れ
東京の空は鈍いろ年忘れ
独身と初めて知りぬ年忘れ
笑顔見て笑顔こはばる年忘れ
人妻の手はわが股に年忘れ
北海道     風花美絵
墨は濃く半紙は白く年忘れ
数かぞへ数あはせする年忘れ
福岡県     多事
年忘れ乾杯までのうだうだ感
万年も星は変はらず年忘れ
知られずに集ふ三人年忘れ
送別会出来ぬ先輩年忘れ
忘年会ご挨拶までマスクです
徳島県     井内胡桃
恒例のどじょう掬いや年忘れ
ほろ酔いて街をぶらぶら忘年会
徳島県     井内胡桃
忘年会果てて一杯梅茶漬け
煮詰まりて鍋かき混ぜる忘年会
徳島県     井内胡桃
忘年会二次会いつもラーメン屋
埼玉県     小安章代
軽石の漂流止まず忘年よ
コロナ禍や一人ひとりの年忘れ
コロナ戦争生き抜き感謝年忘れ
忘年や白湯の湯気ありがたく
忘年会いつ消えようか下戸の我
神奈川県     髙梨裕
山の肉炙りて老境年忘れ
パトロール終えて囲むや年忘れ
遠くない別れの町の年忘れ
走り雨ひとり遅参の年忘れ
年忘れかと百歳の大笑い