俳句庵

5月『メロン』全応募作品

(敬称略)

メロン二つ並びて箱入り娘かな
到来のメロンの香り部屋に満つ
儲けものメロン嫌ひの姉がゐて
見るだけで買う事の無きメロンかな
テーブルの真中に置くメロンかな
メロン切る法事の膳に大振りに
メロンの香網目のやうに広がれる
お見舞いにメロンもちたり友の声
姪っ子に網目正しきメロン切る
郷愁の詰まってをりしメロンパン
桐箱に香り納めしメロンかな
夕張の苦悩を想ふメロンかな
残されしメロンの皮の薄さかな
夕張や立派に育つ良きメロン
食べごろを待てずメロンを等分に
包丁に香りを残すメロンかな
等分に目くじらたてるメロンかな
メロン食ぶ銀のフォークに銀の匙
ずっしりと重いメロンに夏来たり
給わりしメロンに一家落ち着かず
メロン抱く夕張の街だくやうに
メロンメロンなんて響きのいいことば
メロン切る心に物差し押し当てて
亡き父を偲ぶ縁のメロンかな
メロン食う笑顔の写真友の通夜
食べ頃を添えて送らるメロンかな
仏前に供へしメロン熟れ過ぎて
熟するを待てずに食べるメロンかな
メロン食ぶ五歳持つ匙左利き
はからずもメロンの客となりにけり
仏前のメロン抱へ来小さき手に
吾が胸の銀座に香るメロンかな
メロン食べスプーンは皮まで掬ひけり
メロン食べ甘さに酔いて一休み
齧りつきメロン種つく両の頬
食べ頃を待たさるるのもメロンゆゑ
「試食して」メロン差し出す朝市女
それだけで幸せになるメロンかな
夕張の名立たるメロン気に懸かる
北の旅土産に買ひしメロンかな
休憩の網目選みてメロン買ふ
メロン割るだけでいらいら失せにけり
小さき手に大きスプーンのメロンかな
友の母美しかりしメロンかな
網目混み迷路思はすメロン球
味色香五感くすぐるメロンかな
軟らかに底の熟すを待つメロン
水の星よくぞメロンを産みにけり
網目美(は)し味も旨しとメロン買ふ
メロン切る子に分数を教えつつ
店の奥玉座を占めるメロンかな
メロンの香銀座の夜の匂いけり
すれ違うダンボール箱にメロンの香
命日は仏前狭しメロン好き
夕餉卓鎮座ましますメロン在り
見舞客またもメロンを引き下げて
メロン舟果肉くっきり吃水線
メロン受くはにかむ顔にニキビ跡
舫解きメロンの切られ舟形に
とりかこみメロンの値ぶみする夜かな
手を底に追熟まだかとメロン診る
当分と言ふ難しさメロン切る
追熟の今か今かとメロン手に
農高の試作栽培メロンかな
デザートか昼餉の卓にメロン在り
仏前に色香供えるメロンかな
触診のいかが追熟メロン球
メロン食べ皆も笑顔に戻りけり
神聖な儀式の如くメロン切る
お見舞いにメロンもちたり定番か
芳醇な香りを掬ふメロンかな
姪来り脚組みかへてメロン食む
ぶすとても見掛けにあらずメロン買ふ
刃にふればさっとひろごるメロンかな
器量よし見合ひの決断メロン買ふ
夕張の星と輝くメロンかな
切り分けて同じ愛あるメロンかな
卓袱台のメロン眺める午後3時
朝早き駅にほっこりメロンパン
メロメロンメロンのココロメロンメロ
飾られてこれ見よがしのメロンかな
心中に定規を持ちてメロン切る
人生の節目に出て来るメロンかな
仏前にメロンを並べ品比べ
あれほどの味忘れざるメロンかな
温室のメロンを抱きもぐ農婦
おっとりの深窓の味メロンかな
一歩でもメロンに近づく貯金する
しんがりをメロンで締めるフルコース
甘ひ甘ひメロンのごとき二人かな
網の目の如くに長寿メロンかな
メロン食べ遠き北路を思ひ出す
角度決め奇数の家族メロン切る
妻の風呂メロン冷えるを待つごとし
心地よきメロンの重さ家路かな
戴きしメロン酒屋へ御裾分け
賞味期限貼られしメロン頂きぬ
挨拶が済んで出されるメロンかな
メロン箱立方体に愛もあり
この時を幸せと思うメロンかな
浮いた腰また座らせるメロンかな
果樹園今年はメロン大収穫
メロン切る子らの視線を集めつつ
まだ早いみためはメロン味レモン
祝宴に香りを添えるメロンかな
メロンはね自然と同じみどりいろ
食べごろは今日か明日かと待つメロン
メロン一片香り残さず掬いけり
メロン食べ初恋の味懐かしむ
夏の日のメロンと緑の空の青
それぞれの思い出掬ふメロンかな
野良仕事一服の涼メロンかな
はからずもメロンに入院見舞はれる
一果もて百果をなせるメロンかな
幾重にも過保護に包まるメロンかな
ブランコでメロンのごとき笑顔かな
銀婚姻を祝ふ二人のメロンかな
母の切るメロンきれいな五等分
メロン持つ白き手袋千疋屋
食べ頃のシールに頼るメロンかな
幸せを掬ふが如きメロンかな