| 柘榴笑ふ入日の窓の厨かな | 淋しさを笑い飛ばして柘榴の実 |
| 大口の柘榴が笑う金メダル | 写生には少し手強い柘榴の実 |
| 子を愛す全き母の柘榴かな | 約束は柘榴の実の下午後三時 |
| 石女となりし柘榴の去就かな | 行く人の帰り見届け柘榴の実 |
| 幼稚園砂場の上の柘榴笑む | 知らぬ間にわが身を割って柘榴の実 |
| ざくろ売る老婆の紅緒鞍馬寺 | 粒よりのぎっしり詰まり柘榴の実 |
| 幾星霜訛りも抜けし花柘榴 | 月満ちて裂ける音する柘榴の実 |
| 身の内に夜叉と観音花柘榴 | 口元のついほころびし柘榴かな |
| 井戸端の閉じる口無し柘榴かな | 柘榴の実入れて青空撮りにけり |
| 石榴の実固まりし血のごとくなり | 柘榴の実夕陽をとどめてをりしかな |
| 石榴食べ赤い小鳥になりにけり | 柘榴裂け満身創痍となりにけり |
| 石榴の実あかあか燃えし命の火 | 掌に柘榴遊ばせ老い二人 |
| 全力で石榴割れける虚空かな | 数えても数え切れない柘榴の実 |
| 石榴落ち侘しさませり廃屋や | 一日を無事に過ごして柘榴の実 |
| きのふよりけふの緋の濃し柘榴かな | あの花にこんな実のなる柘榴かな |
| 秘め事を吐き出すごとく柘榴裂け | お世辞の一つも言えず柘榴の実 |
| ぱっくりと割れし柘榴のルビー玉 | 夕焼を食べて終いし柘榴かな |
| 憂き事の割れて晴るるや柘榴の実 | 人知れずわが身をさらす柘榴かな |
| 人知れず裂ける柘榴の不気味なる | ピースする柘榴少年紅き指 |
| 少子化にあらな多産や柘榴の実 | 亡き父のごつき拳や柘榴の実 |
| 柘榴割れ犇くルビーのあまたなる | 時に笑み時に怒って柘榴の実 |
| 柘榴裂けルビーの宝石溢れ見ゆ | 青空をもぎ取るやうに柘榴もぐ |
| 無住寺落つるにまかせ柘榴落つ | 幼児に破顔一笑柘榴の実 |
| 赤心とはこの事なるや柘榴の実 | 口下手で無骨な父や柘榴の実 |
| 割れ柘榴胸の痞へを吐けと言ふ | 爆弾を落す如くに柘榴割る |
| 裂けし実の麗子の笑みに似てをれり | 告げ口はしない約束柘榴の実 |
| 鬼流す涙知りをる柘榴かな | 懸命に笑みをこらへて柘榴の実 |
| 描きかけの柘榴が匂ふ教室に | 鑑定師抜く日本刀石榴落つ |
| 青空を赤い実で弾(は)じ柘榴かな | 実ひとつの柘榴を愛す我もまた |
| 子宝の笑う柘榴に鬼子母神 | 柘榴酒に亡母の思い出漬け込みぬ |
| 登下校見上げるだけの柘榴かな | 柘榴たわわ今朝の献体見送りて |
| 花と実の似ても似つかぬ柘榴かな | 割れてなほ見向く人無き柘榴かな |
| はちきれる若さを見せて柘榴の実 | 喉チンコ見せて石榴の大笑い |
| 柘榴ノ実少年真っ赤な嘘を言ひ | 石榴弾けて甘い恋に落つかな |
| 口開けて何か言いたげ柘榴の実 | 魂が燃えたるような柘榴の実 |
| 人気無き事を確かめ柘榴笑む | 更年期ザクロジュースを日々食す |
| 青空をかっと吐き出す柘榴かな | 津々と柘榴はじけて燃ゆる恋 |
| 枝先に釣られるやうに柘榴の実 | 零れたる柘榴の赤に染まる恋 |
| 泣き言は言わないつもり柘榴の実 | 弾けたるザクロお化けと子らが言ふ |
| 柘榴の実愚痴のいくつかこぼしをり | 百面相して柘榴食ぶ夫かな |
| 吹き出して笑い止まらぬ柘榴かな | 妻逝きし人の庭先石榴熟る |
| 少年に高き塀あり柘榴の実 | 妻逝きし人の庭先石榴熟る |
| 青空の一つとなりし柘榴かな | 柘榴酒に氷の浮かぶペアグラス |
| いたずらを見ても見ぬ振り柘榴笑む | 恋知る子ルビーの光赤柘榴 |
| 悪童が突いて逃げる柘榴かな | 大笑いおさな口あく赤柘榴 |
| 女の子笑い転げる柘榴かな | 思い出が口で弾ける赤柘榴 |
| 多感なる乙女心や柘榴の実 | バス停の木椅子の傷や石榴の実 |
| 立ち話聞いて微笑む柘榴の実 | 実石榴や石塀続く袋小路 |
| 柘榴もぐ子らの視線を集めつつ | 酸っぱさも石榴の命貰いけり |
| 屋敷より身を乗り出して柘榴の実 | 青空が夕日に熟す柘榴かな |
| 夕焼をむさぼるやうに柘榴の実 | 実柘榴やソロモン王の夢の跡 |
| 大空の耳目を集め柘榴の実 | 打ち明けて心も深く柘榴かな |
| 大空に喝を入れたる柘榴かな | 実ざくろや寺の本尊鬼子母神 |
| 通勤の足を止めたる柘榴かな | 絹の道胡姫旋舞して柘榴あり |
| どの子にも優しき母や柘榴の実 | あこがれの美肌ざくろのジュース飲む |
| お早うと声かけている柘榴の実 | 絵手紙のはみだしそうな柘榴かな |
| 夕焼を添えて柘榴をもぎにけり | われ画家となれば描かむ石榴の実 |
| ジャンプする少年届かず柘榴の実 | 宝石を包みてごつき柘榴かな |
| 柘榴割る少年一途な顔となり | 実柘榴の厚き割れ目にルビーかな |
| 手にとればしみじみ緻密な柘榴かな | 採れさうで採れない位置の柘榴かな |
| 裂けてより陽の濃く匂う柘榴かな | プロポーズされし柘榴の実の爆ぜる |
| 青空に喝を入れたる柘榴かな | 柘榴の実爆ぜても海の遠きかな |
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