| 木守柿に鴉配慮や突かざる | 柿割れば隣の美代のあばた顔 |
| 篤姫を孫と語りつ柿を剥く | バス待ちに柿食う客や町の人 |
| 嫁ぐ日の姉にわが家の柿をむく | バス停のポールを囲む柿の種 |
| 婆ちゃんの柿むく皮の切れ目なし | バス待ちの柿籠照らす夕日かな |
| 鍵っ子のおやつは皿の柿ひとつ | 熟柿の滴りており金婚日 |
| 柿むいて縄に括って軒に干す | 図書館の窓薄暗き柿若葉 |
| 学校の往きと帰りに数ふ柿 | 柿落ち葉避けて見舞いの客となり |
| 身代わりにランドセル置きし柿泥棒 | 渋柿の一口かじる夕陽かな |
| 熟柿の下でうつかり立ち話 | 当てもなく旅路の畦や吊し柿 |
| 近江の海柿をたわわに従えて | 柿かじる見上げる空や万国旗 |
| みの柿の蔕の蓋とるそこからは | 柿の色なかゝだせぬ絵筆かな |
| 柿の木の下に宝がといふ夢 | 若さゆえ歯茎に刺しぬこねり柿 |
| 柿啜るベツドの母のおちよぼ口 | 聞かん坊が故に登るは柿ノ木 |
| 柿落ちて夜半に目覚ざむ旅の宿 | 柿渋や裏切ったのは貴方です |
| 渋柿か鳥の飛び行く夕まぐれ | 列乱す虚無僧の手にうれし柿 |
| 一面に海風やさしおけさ柿 | 登下校誘いかけるも熟し柿 |
| 鈴なりの盆栽の柿奥会津 | 田園のここぞとばかし渋き柿 |
| 白皿に盛られし庭の記念柿 | 柿食へば背筋伸ばせと妣の声 |
| 渋柿の甘く化けたり藁の中 | 柿落し終へて樹上のトランペット |
| 裏年の柿の木見上げ実を数え | 柿熟れて肩抱きあふ道祖神 |
| パーシモンで振り抜く打球秋の空 | 柿すだれ間口五間や坂の上 |
| 柿一つ影と供うる地蔵かな | 柿の実をカニがはさみで切り落とす |
| 柿の葉やざらりと鳴きし月明り | 熟し柿スプーンですくい食べちゃおう |
| 柿の葉やざらりずらりと大和路に | 渋柿を魔法をかけて甘くする |
| 柿の木や象肌持ちて仰ぐ空 | 柿色に染まる夕暮れ秋の空 |
| 柿食べておむすび食べて猿になり | 柿ゼリーお口の中が秋になる |
| 柿落下引力寂し廃屋や | 柿羊羹紅色の秋の味 |
| 柿とふ字(こけら)と読みし俳句会 | 肖りて柿を食ひつつ苦吟する |
| 名あて祖父便り祖母なる柿届く | 年功の慌て騒がず熟柿かな |
| 柿五六顆上枝(ほつえ)に棹の届かぬか | 百あれば百の顔なり柿の蔕 |
| 柿剥けば皮の一連妻の腕 | 実のならぬ老大木の柿紅葉 |
| 熟れ柿をすくふスプーンの左利き | 老いてなほ柿泥棒をしたくなり |
| 吹く風に一蓮托生熟柿落ち | 柿たわわ妊婦ゆっくり昼下がり |
| からす達わたしも好きなずくし柿 | 人気なき寺苑を統べる木守柿 |
| 皮むきて母の器用さわかりけり | 水よりも風敏くなり柿旨し |
| 歳とった酒のつまみに干し柿よ | 望郷の思ひ語らず柿を食ぶ |
| 渋柿を抛りぬ兄の憎らしき | 猿と蟹のお伽話や柿の種 |
| 富有柿の夕陽のやふにつぶれゆき | 風よりも水敏くなり柿旨し |
| 柿渋のやはき更紗に顔うずめ | 此の国の同じ呼び名の柿旨し |
| 柿の色カンヴァスに秋来てをれり | 眼裏の生家も柿もスーパーに |
| よく熟れて少し怒っています柿 | 百年の移民の歩み柿たわわ |
| 干し柿を暖簾に吊るす旅の宿 | 故郷に似た移民村柿たわわ |
| 垣根越え食べられたいか枝の柿 | いただいてかぶりついたがしぶの柿 |
| 食べ終えた刺身が消えて柿絵皿 | 子のおやつ夫の膾に庭の柿 |
| 家帰りテーブル見つけ柿の山 | 昭和哉柿を英語のパーシモン |
| 浅葱空いっそう栄える柿の味 | 幾年や柿を育てて村起し |
| 子供達分かっているのか柿と牡蠣 | 三方の 山の高さに 柿つるす |
| 柿と栗どちらも美味しい秋の味 | 山峡に 柿の実一つ 空に浮く |
| 兄弟で柿の木登った幼き日 | 柿の実を 一つ献上 空の神 |
| 柿色に空がそまりて家路つく | 初物の柿を頂く葬の家 |
| 山あいの畑でひっそり実る柿 | 言葉なきことも幸せ市田柿 |
| あたご柿見るたび浮ぶ祖母の笑 | 柿食ふてより俳論の始めたる |
| 柿もたべなしやぶどうもたべてやる | 柿簾夕陽の欠片集めけり |
| 柿を剥く柿の形に逆らわず | 干し柿の粉ふく顔に母想う |
| 柿齧る少年白き歯を見せて | 柿たわわ過疎化の進む山里に |
| ふるさとや柿あかあかと燃ゆる里 | 里山の景となりゆく吊し柿 |
| 柿の夢火鉢の縁で熟れながら | 鐘の音時空を超えて柿を食い |
| 木守柿村一望し異常無し | 柿は「冷え」敬遠される食事情 |
| 一村の夕日を吊るす柿すだれ | 柿の実に「今が旬」とはお世辞かな |
| 不二の嶺はすでに白銀次郎柿 | 奪われる梨葡萄から主役の座 |
| 鳥の眼を集めて熟るる柿の肌 | 柿好きに思われがちな風流人 |
| 木守柿出征持参と遺書にあり | 故事多い柿の縁から物語 |
| 当てにせし富有柿食われ鳥を追う | 吊るし柿見れば思ふや母の里 |
| 鳥含め柿の割り当て決めしかど | 柿の色夕日に照らし尚赤く |
| 食べ順を決めて購う柿選び | 渋柿の皮むく夜なべ皆無口 |
| ひと突きに大柿落とし鳥退る | 干し柿の暖簾の並ぶ品評会 |
| 夜逃げしたやとなが踏みし青き柿 | 柿抱いて甲斐の光をひとりじめ |
| 柿落ちてもぬけのからの空ひとつ | こんなにも大きな柿の出来嬉し |
| 柿落ちて空の広さの不安かな | 柿たかく実り限界集落は黙 |
| 柿の秋隣り湯の女(ひと)桶静か | いまの子は柿は食わぬか盗まぬか |
| 山襞の斜め斜めに柿の秋 | 柿干せば縁側甘き日の匂ひ |
| 干し柿の縦一列の冬ごもり | |
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