| 独り居も又よし緑茶と桜餅 | 手頃なる土産に求む桜餅 |
| 道明寺糒の紅や桜餅 | 縁側に茶を持ち出して桜餅 |
| 手の窪に香り移せり桜餅 | 懐紙から移り香匂う桜餅 |
| ながらえて葉の香いとほし桜餅 | 桜餅母の土産にもう一つ |
| 白もあり薄紅もあり桜餅 | 祖母の部屋桜餅の香漂えリ |
| それありとかすかな香桜餅 | 茶柱も立ちて華やぐ桜餅 |
| 葉脈の様窪みある桜餅 | 桜餅香る包みの隣席 |
| 濹東といへば荷風よ桜餅 | 正客の葉まで食いたる桜餅 |
| これでもかと葉を着せられて桜餅 | もう少し待ってみるかと桜餅 |
| 長命寺父の忌毎の桜餅 | 桜餅主役はどちら茶を点てる |
| 桜餅長命寺てふ寺はなし | 孫の手に幸せ余る桜餅 |
| 女には女の話さくら餅 | 一粒に恋の香りて桜餅 |
| 桜餅しにせ店舗の改装中 | 入園を香が呼び起こす桜餅 |
| 日のあたるベランダの椅子桜餅 | 何ゆえに仄かが似合う桜餅 |
| デパ地下へ下りたついでの桜餅 | 桜餅蟠りの消えし頃よ |
| 喜寿の坂野良着のままの桜餅 | 二人の桜餅一人桜餅 |
| さりながら仔細などなし桜餅 | 陽だまりの光景過ぎた桜餅 |
| 幕の間に二つたいらげ桜餅 | ほんのりと赤子のほっぺ桜餅 |
| 酒も好き桜餅も大好きで | 懐かしや亡き母匂ふ桜餅 |
| 父のため砂糖ひかえめ桜餅 | 桜葉のアロマ毛布で餅眠る |
| 望郷はふと湧くものよさくらもち | 桜餅君を想ひて胸キュンと |
| 新海苔の香りご飯ののぼる湯気 | 桜の葉お餅に着せて衣替え |
| 桜餅半分あげる好きだから | 桜餅お皿に載った春二つ |
| 桜餅香りに遠い日の記憶 | 遠く来て買い求めけり桜餅 |
| 留守番をお願いとメモ桜餅 | 訪ふ君の変わらずにをり桜餅 |
| あの人の恥じらふ笑みや桜餅 | 残る葉に残る香りや桜餅 |
| 鍵っ子の今日のおやつの桜餅 | 桜餅皿に残る葉残らぬ葉 |
| 幼子のはにかむ仕草桜餅 | 路地入るや香り豊かに桜餅 |
| 桜餅食べて思い出またひとつ | 桜餅知らず知らずの笑顔かな |
| 桜餅毎年感じる家の味 | 婆さまが孫と分けあう桜餅 |
| 甘党の夫に土産の桜餅 | 注文が来てから作る桜餅 |
| 遠回りしても買いたき桜餅 | 桜餅女ばかりの賭けマージャン |
| 常連の能書き聞くや桜餅 | 桜餅女系家族の格闘家 |
| お土産の味は昔の桜餅 | 不器用な男なりけり桜餅 |
| 酒やめて舌は老舗の桜餅 | 厨にて足る友のゐて桜餅 |
| 婚約の整い後の桜餅 | 初物を食べて長生き桜餅 |
| 白亜なる天守を供に桜餅 | 数読の途中休憩桜餅 |
| 天城越え踊り子来る桜餅 | 少女趣味抜けぬ翁や桜餅 |
| 桜餅地蔵に供う渋茶かな | 初物に西向き笑ひ桜餅 |
| 桜餅指折り数え娘買う | 桜餅家族団欒てふ昔 |
| 桜餅紅き毛氈千の風 | こんな日は母と二人で桜餅 |
| 建長寺天下禅林桜餅 | デパートのショウウィンドウの桜餅 |
| 墨堤のそぞろ歩きや桜餅 | 雨の夜一人で食べる桜餅 |
| 菓子折の片方に寄りぬ桜餅 | 雛壇に一つ供(そ)えたい桜餅 |
| そのままの葉ごと食むべし桜餅 | 桜葉のほのかにかほる和菓子かな |
| 恙無く齢を重ぬ桜餅 | ほのかなる春の香(か)かおる桜餅 |
| 緋の床几掛けて相席さくら餅 | 桜餅食べて思うは母のこと |
| 相席に軽き会釈やさくら餅 | 春の香(か)がほのかに薫る桜餅 |
| 年金の日日にもゆとり桜餅 | ほのかなる母の想ひ出桜餅 |
| 母在らば百の齢やさくら餅 | 桜餅やっと塩味の調和知り |
| 桜餅まづ香と色を味はへり | いつもながら風呂敷より桜餅 |
| ポケットに句帖を仕舞ひさくら餅 | 桜餅紅の加減を茶匙ほど |
| 桜餅買ってあるよと母の声 | 桜餅葉を食べる母すてる父 |
| 葉一枚残して尽きぬ桜餅 | 桜餅別腹ありと妻は二個 |
| 嬉しきは花の添へある桜餅 | 店先に水琴窟や桜餅 |
| 食べ終へてなほも残り香桜餅 | 桐箱のカステラ並ぶ桜餅 |
| うとうとと眠りのなかに桜餅 | 桜餅書(ふみ)のとなりに座りたり |
| 菓子皿に三つ四つ在す桜餅 | 桜餅回転寿司の皿にあり |
| 仏前に桜餅好く母なりき | 一周忌父の墓前に桜餅 |
| 花どきを一足先に桜餅 | 桜餅居間の偕老むつまじき |
| 葉にこそ季節の移ろふ桜餅 | 桜餅口のかおりは大島や |
| 桜餅ガラスの奥でよい感じ | 桜餅ぶつぶつありし道明寺 |
| 初恋をほんのり偲ぶ桜餅 | 桜餅少女の眼して食みぬ |
| 少しだけ大人になりて桜餅 | ままごとへ訪ふ客の桜餅 |
| ハイヒール脱いでいただく桜餅 | 鉄瓶の炉に湯のたぎりさくら餅 |
| 一年生大きな希望桜餅 | 華やぐや桜餅売る婆の庵 |
| 桜餅今日はバレエの発表会 | 上棟の神にも供へ桜餅 |
| 会席の水屋に匂ふ桜餅 | 桜餅うれしき重さ買ひにけり |
| 毛細管のごとき葉脈桜餅 | 桜もち食みて別れし友の亡く |
| 桜餅春慶塗の楊枝添え | 桜もち母とふたりの時過ぎて |
| 少女より乙女になりぬ桜餅 | 送別の句会に配りさくら餅 |
| 陳列の紅で微笑む桜餅 | 桜もち懐紙に移り香の仄か |
| 桜の葉優しく包み笑ってる | 穏やかに齢重ねて桜餅 |
| 瞳を閉じて桜の香りもっちりと | 塩漬の桜葉うれし長命寺 |
| 食べようかはずして食べる桜の葉 | 天平の貌で食せり桜餅 |
| もっちりと桜の色の花びらよ | 桜餅見守るように織部焼き |
| わびさびの香り嗜み茶をすする | 桜餅散らない内に召し上がれ |
| 桜葉の塩味キリリと舌を過ぎ | 矢絣や赤い床几に桜餅 |
| 深更に独りで食べる桜餅 | 文字数字かすむ齢に桜餅 |
| 妹の雛飾りに桜餅 | 元禄の色と香りの桜餅 |
| 茶を飲んですべて消え去る桜餅 | 宴席はことばの坩堝桜餅 |
| 京都旅行道明寺粉の桜餅 | 孫を抱きほのかに香る桜餅 |
| 葉は鹹く生地は薄く餡は甘く | ダイエット敵となりたる桜餅 |
| 酒豪とは昔のことよ桜餅 | 葉っぱまで祖母の味する桜餅 |
| 花見れば道は自ずと長命寺 | 桜餅君と食べたら尚甘き |
| 目つむれば遠き日のある桜餅 | 四代が好みし物や桜餅 |
| てのひらも桜に染まり桜餅 | 食紅の色ほんのりと桜餅 |
| 真っ白な懐紙に透けて桜餅 | 早春を手作りにして桜餅 |
| 桜餅伊万里の小皿に咲きにけり | 一服の茶をたて愛でる桜餅 |
| 風向きの変はりし隅田川桜餅 | 病む母に四分の一の桜餅 |
| 味噌っ歯が笑って照れて桜餅 | 遠回りして買ふ長命寺桜餅 |
| しばし沸く老人ホームや桜餅 | 気疲れの妻との旅や桜餅 |
| 初孫へ香りだけでも桜餅 | おほかたは眼楽しむ桜餅 |
| 毛氈に男も交じる桜餅 | 無造作に桜餅食ふ若さかな |
| 薀蓄の終り待ちかね桜餅 | 皿選ぶ楽しさのあり桜餅 |
| 桜餅強き女も口細う | ひとつかみほかに匂う春の餅 |
| 桜餅葉っぱ食べよか残そうか | 満開の桜思いつつ桜餅喰う |
| 葉を求め母娘で作る桜餅 | 桜餅匂いを乗せて遠出する |
| 桜餅一つに句座の和みけり | おもい切り葉まで食らう長命寺桜もち |
| 長命寺道明寺とて桜餅 | |
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