俳句庵

3月『卒業』全応募作品

(敬称略)

卒業の空に水尾曳く飛行雲
担任へふと笑顔みせ卒業す
卒業の歌は学舎を駆け巡る
卒業の白線流し校史継ぐ
卒業や父の背広がよく似合い
手作りの弁当母も卒業す
卒業や淡い想いは持ち越しに
卒業子胸張り唱う国歌あり
卒業の校歌半分ほど覚え
卒業式以下同文を何度でも
卒業をしても制服着る娘
講堂の大時計鳴り卒業す
四回目卒業をして何者に
共学の女子に混じりて卒業す
苦労した卒業証書手に未来
父兄みなカメラかざして卒業式
好きだよの一言言へず卒業す
卒業の孫に一句のプレゼント
道端の花に気付きて卒業す
城跡へ早集まりて卒業子
この道も今日でお別れ卒業す
卒業歌やがて大きく歌ひけり
卒業の後ろ姿の光りたり
グランドへ出て一礼の卒業子
三番の歌詞の意味知り卒業す
校庭をひと巡りして卒業す
沈黙のあちらこちらに卒業式
卒業証書車椅子にてたまはりぬ
初恋の夢を毀して卒業す
以下同文の卒業証書持ち帰る
卒業し目指すは東京日本橋
卒業証書丸め最後の校舎見る
思い出と校舎を濡らす卒業歌
まっすぐに帰らぬ群るる卒業生
不消化のデカルトカント卒業す
校門に立ちて撮り合ふ卒業生
人生の脱皮の如く卒業す
カレー屋の卒業式日の割引券
試験管一本洗い卒業す
満杯の靴箱晴れて卒業式
遊び足り学び足らずに卒業す
兎ともハグに温もる卒業日
下駄箱の名前そのまま卒業す
卒業のアルバム硬く重たかり
以下同文卒業証書捧げ受く
抱え持つ鉢植え咲いて卒業す
卒業歌居るはめそめそ男の子
ひとりずつ名前呼ばれて卒業す
過疎の村これで廃校卒業生
着ぐるみの子も何人か卒業子
同期会早も話題に卒業す
卒業の子にまた新しき時間
卒業式以下同文を何度でも
親も子もまたそれぞれに卒業す
講堂の大時計鳴り卒業す
初恋も卒業だよね髪を切る
白鳥省吾の校歌で卒業す
卒業子百葉箱の白さしむ 
共学の女子に混ぢりて卒業す
卒業や鶴のようなる黒スーツ
肩幅は師よりも広き卒業子
卒業歌口笛吹けばきみ泪
壇上の松を仰いで卒業歌
木造の校舎はきしむ卒業日
この頃は和服少なき卒業式
卒業やどこかで会おうじゃあまたね
俳句とは卒業できぬものとなり
卒業や吾のこれより始まりぬ
校歌のみ残りし母校卒業期
道楽に卒業難し年となり
卒業は別れ出会ひの交差点
卒業のラストシーンの鮮やかに
卒業期第二ボタンの思ひ出を
校門に海鳴り強き日卒業す
卒業式何か忘れた物がある
分校の最後の一人卒業す
恋もせず硬派貫き卒業す
豚小屋の鳴き声止まず卒業す
三年の帰宅部生活卒業す
卒業す本棚にある「罪と罰」
目標はお笑ひ芸人卒業す
卒業日ことに砂塵の強かりき
明日に逢う約束もして卒業す
卒業は仮の免罪符かもしれず
卒業す大器晩成信じさせ
学目覚め悪しき遊びを卒業す
自転車を磨き尽して卒業す
校長も散髪したて卒業期
卒業や今日を限りのお下げ髪
金平糖街に飛び出す卒業期
ネクタイや初ひだつ蜂の胸光り
ビザ下りて卒業待ちの航空券
蝶の如セーラー服を脱ぎにけり
卒業や父の遺愛の腕時計
卒業し街の光に身を放つ
この町をいでてこの恋卒業す 
今船出友と語った羅針盤
空仰ぎ卒業生の輪を抜けぬ
卒業のエール交換武者震い
卒業や就活なほも続く日々
卒業す皆勤賞を誇りとし
この村の最後の生徒卒業す
卒業歌ひとり想い出繰っており
卒業や前途に不安多々抱へ
先頭の背は見えぬまま卒業す
選ぶ道人それぞれに卒業す
卒業歌世の不景気を捩じ伏せる
卒業や校門出れば違ふ道
不景気はさておき子らの卒業歌
卒業生想ひを胸に村を発つ
卒業や仏壇の火の揺らめけり
校長の訓示厳粛卒業す
廃校の卒業生はただひとり
右手に添う弓手卒業証書受く
病む母に広げて見せる卒業証
祝辞受け全校合唱卒業す
国籍の違う我が子よ卒業す
伝統の白線流し卒業す
50過ぎ新たな卒業感無量
椅子机大河で洗ひ卒業す
終わりまでフォルテッシモの卒業歌
全校の大地燦燦卒業す
今日もまた汽笛がなって卒業す
日捲りのその日ひと日が卒業日
卒業の寄せ書きだけは真ん中に
空席の一つも埋まり卒業式
卒業歌二番がいいと駄々こねる
老いた師の手の温もりや卒業式
卒業式後はやっぱり土手走る
廃校となりし校舎も卒業期
卒園児ひばりのごとく囀れり
下駄箱を触って撫でて卒業す
たらちねのための卒業証書かな
ややあって卒業の辞を述ぶ上司
卒業写真かの世の友をふやしけり
色恋を卒業せずに逝きにけり
ゆく雲の行方まぶしみ卒業す
卒業の証書離婚の父に見せ
聞こえきて唇うごく卒業歌
数日後東京へ発つ卒業子
校歌の山明日は発ちゆく卒業子
部活に明け部活に暮れて卒業す
はたして師は尊かりしか卒業式
代返の友と別れて卒業す
よく殴る師でありしかな卒業式
以下同文の卒業証書賜れり
殴られてなぐられ通しで卒業す
昨日今日同じ朝来て卒業す
卒業や彼の師今なら半殺し
夢という一文字胸に卒業す
卒業や彼の師インパール帰りとか
思い切り校歌を歌ひ卒業す
卒業の思い出暗き50年 
一円玉水に浮かせて卒業歌
卒業式暫し佇む教室かな
数学の追試乗り越え卒業す
十を知り九つ忘れ卒業す
卒業や声変はりした喉仏
思いきりフォルッテシモの卒業歌
卒業の文集に夢多きかな
誰もいないゴールにシュート卒業す
分校や卒業証書の手漉き和紙
卒業や角のたこ焼き屋に集ふ
留年を本日以て卒業す
振り返る卒業生の可憐さや
宝塚足止めさせる卒業歌
卒業の帰り道夢叶ふ道
卒業歌音程はずす少年A
夕暮るる校舎輝く謝恩会
万華鏡パチンと弾け卒業す
卒業の深き一礼男伊達
卒業や微笑みおくる由比ヶ浜
卒業やソナタ終曲弾きをへり
いっぱしの卒園の子ら蒙古斑
歌声は青空千里卒業歌
歯切れ良き神学部長卒業歌
揃ひの靴別々の途へ卒業す
一人泣きもう一人泣き卒業す
卒業や初デートせし喫茶店
袖光る学生服や卒業日
後輩の白き手袋卒業歌
幼くも卒業詩集に憂いあり
青春は部活一筋卒業す
卒業の映画を未だ忘れえず
卒業の教科書嵩の増しにけり
女教師の袴姿や卒業す
担任の<贈る言葉>卒業や
川に入る潮高き日や卒業す
優勝旗代々繋げ卒業す
卒業の日に都むけ旅立てり
学校に文机返す卒業す
吾は知らぬ子の卒業歌ひびきをり
恋を知り失恋を知る卒業す
故郷の山川称える卒業歌
制服の小さくなりぬ卒業や
卒業後別れし友と逢わぬまま
卒業歌体育館の滲みをり
卒業子去つて講堂ひんやりと
卒業の君よ胸なる釦はも
卒業の教師の顔に動転す
まず母へ卒業証書ひろげ見せ
みんなより半音ずれて卒業歌
部室奥たばこ焦げ跡卒業子
卒業や個性派目立つコスチューム