俳句庵

10月『秋祭』全応募作品

(敬称略)

岐阜県     金子加行
鳶職の大幟より秋祭
移住者にオープンなるや秋祭
秋祭巡るカメラや忙しき
定まらぬ吾が子の腰や秋祭
秋祭代代継ぎし笛鳴らす
兵庫県     岸下庄二
名称は村のままなる秋祭
半ドンで仕事を終へる秋祭
ひょっとこの面を頭に秋祭
秋祭終れば元の過疎の村
秋祭犬も法被を着てゐたり
埼玉県     飯塚璋
ドラム缶の海賊料理秋祭
秋祭鎮守の森を掃き清め
千葉県     柊二
自治会の祭具一噸夏祭
愛媛県     砂山恵子
祝儀袋に古き店の名秋祭
地車(だんじり)の真白き綱や秋祭
じいの法被おくるみにせり秋祭
秋祭果てて星屑ふたつ三つ(ふたつみつ)
秋祭盆正月に帰らねど
奈良県     堀ノ内和夫
秋祭太鼓とどろく宮の杜
秋祭法被姿の肩車
新潟県     近藤博
神楽舞ふ巫女の優美な秋祭
秋祭童男ワッショイ樽神輿
秋祭綿菓子買ふ子出店前
村里もこの日賑はふ秋祭
宵宮のはやも賑はふ秋祭
愛知県     常磐
裃で畏まる父秋祭
東京都     石井真由美
兵児帯の金魚のような秋祭
村人の賽銭響く秋祭
提灯の石段登る秋祭
綿菓子に顔を隠して秋祭
村役や地酒に熨斗の秋祭
愛知県     西谷寿
今はなき実家で始まる秋祭
故郷の秋祭見て齢を知る
二人行く告白できず秋祭
秋祭娘と二人手をつなぐ
友と行く秋祭きっと最後かな
長野県     木原登
弟の小さき手引きし秋祭
山国の星美しき秋祭
弟は享年六歳秋祭
旅のバス村の祭の中通る
山暮れて露店華やぐ秋祭
神奈川県     佐藤博一
ポン菓子の音澄みわたる秋祭
豊穣の五穀捧げて秋祭
農機具の展示されたる秋祭
秋祭伸ばして叩く飴細工
綿菓子の中にふくらむ秋祭
兵庫県     季凛
拗ねた子のまま秋祭へ連れて来て
だんじりに俺乗るからと秋祭
マドンナの帰った後の秋祭り
駅降りて秋祭らし音はねる
だんじりの数の神来て秋祭り
兵庫県     村山祥江
仏壇に お神酒供えて 秋祭
秋祭 孫の綿菓子 ひとちぎり
台所で 刻むお囃子 秋祭
秋祭 老若男女 集いけり
子らの背を 孫追い越して 秋祭
大阪府     木山満
余所者も身内顔なる秋祭り
秋祭り思わぬ回合胸躍り
老後の事暫し忘れて秋祭り
秋祭り提灯マンボ人寄する
秋神輿二基に止められバス立往生
大阪府     藤田康子
笛なぜ淋しいのだらう秋祭
無人駅の閑散として秋祭
島根県     寺津豪佐
台風も地震も逸れて秋祭
お神輿にぶら下がる子や秋祭
年寄りの威勢が良くて秋祭
囃子方デビューの次男秋祭
酒提げて叔父の一族秋祭
三重県     北村英子
ヨーヨーボール気まぐれに秋祭
スーパーボール追ひかけし秋祭
失恋をただ歩きをり秋祭
守秘義務の重きお面や秋祭
食欲に合わせて来たる秋祭
神奈川県     守安雄介
御下がりの時代遅れや秋祭り
助っ人の長髪目立つ秋祭り
四股で締む信玄堤秋祭り
地下足袋の出番待ちたる秋祭り
父の香の半被鉢巻秋祭り
宮城県     石川長二
子らの手に綿菓子持ちて秋祭
ダム底に村の面影秋祭
窓の外かすかに聞こえ秋祭
東京都     内藤羊皐
喃語の子連れてゆきたし秋祭
秋祭昭和の貌に揃ひけり
茹卵一〇〇個寄付ある秋祭
レンタルの法被で向ふ秋祭
秋祭氷川の杜に千の闇
東京都     岩崎美範
お囃子は傘寿の二人秋祭
高齢化進む故郷の秋祭
秋祭三基の神輿ぶつけあふ
朝風呂に五体浄めて秋祭
狛犬も赤いべべ着て秋祭
栃木県     鹿沼 湖
婦人部の作る豚汁秋祭
年寄の目尻赤らむ秋祭
老頭児も童も馬も秋祭
をとこ帯結び直して秋祭
千葉県     いなだはまち
異国の香醸す秋祭のリズム
嫁っこは派遣の女子や村祭
村祭男子女子の神隠し
無機質に太鼓は響く秋祭
茨城県     諸岡千裕
露天商英語ペラペラ秋祭
空腹に負けたゆるキャラ秋祭
今日降らぬ雨に感謝す秋祭
林檎飴売る元市議や秋祭
境内のジムは陥落秋祭
大阪府     津田明美
一里塚これより向こう秋祭
豆絞りギャルも凛々しき秋祭
地を揺らし空を担いで秋祭
少年に若者の貌秋祭
担ぎ手は地縁血縁秋祭
山口県     ひろ子
お揃いの法被掛け声秋祭り
青空へ毛槍放つや秋祭り
兵庫県     髙見 正樹
秋祭山車に茶髪の囃子方
千葉県     玉井令子
お囃子の清し音色や秋祭
三百年続く伝統秋祭
からくりの巧みな屋台秋祭
十一台引き揃えらる秋祭
提灯の照らす高山秋祭
ブラジル     西山ひろ子
一と刻を過客の一人秋祭
サンバあり阿波踊り有る秋祭
世話役と呼ばれ棲み古り秋祭
日本中の郷土食あり秋祭
各国の料理の匂ふ秋祭
山口県     山縣敏夫
孫二人法被を纏い秋祭
秋祭村の広場は笛太鼓
綿菓子は村の鎮守の秋祭
里の駅下りたらそこは秋祭
駅前の広場に集う秋祭
徳島県     白井百合子
神宮の一夜火の番秋祭
名ばかりの青年団や秋祭
今頃は神輿を担ぐアルバイト
幼子や綿菓子ねだる秋祭
ひさしぶり肩たたきあう秋祭
東京都     安西信之
協賛の大学若し秋祭
やぐら組む竹のきざはし秋祭
三重県     平谷富之
秋祭り郷土の偉人を称えけり
職員のマジック披露秋祭り
秋祭り施設のイベント楽しみに
岐阜県     ときめき人
一日の神の役なり秋祭
兵庫県     はなちる
豊穣の黄金に沸くや秋祭
秋祭神輿軽々男衆
笛の音の遠きふる里秋祭
米立ちて宿の夕餉や秋祭
畦道の幟賑やか秋祭
神奈川県     塚本治彦
労農の皺深き笑み秋祭
神主が露店の地割り秋祭
秋祭リボンの揺るる女の童
神主も酔うてをるなり秋祭
大字も小字もともに秋祭
東京都     飯田哲司
秋まつり田に明け暮れる褒美かな
秋まつりおろしたて着る割烹着
秋まつり軒提灯や路地ほのか
少子化や山車が思案の秋まつり
秋まつりかたずけすんで皆無言
宮城県     西條利光
秋祭り裾から覗くアキレス腱
秋祭り迎える風の心地よし
石段を二段飛びして秋祭り
秋祭り嫗の紅の赫けリ
秋祭り吾子の笛の音聞き分ける
奈良県     平松洋子
裳裾揚げ乙女ら今宵秋祭
秋祭大盛り焼きそば分けあひて
豊作の願い叶える秋祭
千葉県     長谷川ぺぐ
秋祭はじむ手拍子宮の朝
鳴り物や清しき空に秋祭
故郷の友も散り散り秋祭
災害に一致団結秋祭
大阪府     太田省三
秋祭声を嗄らして巫女来る
秋祭走れの笛を腰で待つ
編み込みの髪をきりりと秋祭
献血へ足袋の列なす秋祭
この里はみんな地鶏よ秋祭
千葉県     鳥越 暁
秋祭手のぺとぺとな甘さかな
秋祭湿り帯びつつ浜の風
じいじいの顔もほころぶ秋祭
惚れ直す襷姿の秋祭
着ぐるみに法被着せたる秋祭
東京都     勢田清
旅人として故郷の秋祭
勇ましき女太鼓や秋祭
踊りの輪外で見て居り秋祭
秋祭露店巡れる人の波
遠くから太鼓の響き秋祭
茨城県     風峰
獅子頭黒目艶やか秋祭
秋祭電車にぎやか若い衆
また小さくなりし母との秋祭
背負う子のわたあめ赤き秋祭
下駄の緒のちょっときつめや秋祭
東京都     長岡馨子
神饌は自慢の大根村祭
東京都     かつこ
わっしょいと老いも若さも秋祭り
なつかしき揃いのシャツに秋祭り
静岡県     城内幸江
秋まつり若衆担ぐ米俵
町内の色交ざり合う秋祭
秋まつり土手に少年群れにけり
秋祭父は役員席にをり
艶やかな法被鉢巻き秋祭
千葉県     峰崎成規
鳳凰の稲穂天駆く秋祭
悶着も支度のひとつ秋祭
秋祭暁闇揺する触れ太鼓
長老も嘗て若い衆秋祭
地摺りてふ地祇への祝意秋祭
山形県     白竜
秋祭相より集う老いたる子
令和の世老人会の秋祭
笛吹きの一人だけ秋祭り
秋祭老馬と我わ身内なり
東京都     石川 春兎
秋祭母公認のズル休み
前日の混み合う床屋秋祭
秋祭の綱に引かれて行く子かな
東京都     豊宣光
故郷を遠く離れて秋祭
田の神に扮しておりぬ秋祭
寅さんがぶらり立ち寄る秋祭
秋祭鎮守の森をにぎやかに
秋祭年寄りばかり残りけり
神奈川県     亀山酔田
神世から津々浦々の秋祭
引き絞り天長地久秋祭
秋祭聴けや笛方三代目
前獲れの蛸烏賊南瓜秋祭
勇み立ち馬も苦労ぞ秋祭
宮城県     林田正光
朝風呂の身を清めての秋祭
路線バス廃線決まり秋祭
秋祭神輿担いで海に入る
いつからか骨董市や秋祭
「やや良」が丁度良きかな秋祭
千葉県     伊藤博康
笛吹くはあの人なりや秋祭
秋祭神を敬ふ気配なく
初めての半纏羽織り秋祭
秋祭風任せなり音の波
秋祭日延べの是非に悩みけり
三重県     後藤允孝
鍬鎌を上座に供ふ里まつり
余所者も神酒振舞われ秋祭
九天に届けと太鼓秋まつり
廃校の庭に一夜の秋祭
秋まつり獅子あやつるも笛次第
東京都     伊藤訓子
少年に戻りし夫の秋祭
夕の風ソースの匂ふ秋祭
秋祭ボーカルへ振るペンライト
秋祭母を偲べば千切れ雲
昨夜よりの土砂降りあがる秋祭
東京都     伊藤 直
世話役や酒の旨さの秋祭
腹に来る太鼓の音や秋祭
秋祭男料理に男酒
兵庫県     岸野孝彦
御旅所に神輿仲良く秋祭
青法被小虎の文字や秋祭
秋祭稲穂も揺らす太鼓かな
初恋の娘の影や秋祭
シデ棒で青空突きし秋祭
千葉県     入部和夫
ははも子も法被姿や秋祭
わが町の露地に賑はひ秋祭
母が児を眼で追ってゐる秋祭
神輿渡御三日三晩の秋祭
駆け下る子供の神輿秋祭
愛知県     木下澄枝
流れゆく雲きはやかに秋祭
酒蔵の振る舞ひ酒や秋祭
街道に繰り出す屋台秋祭
笛太鼓くり出すごとく秋祭
綿菓子をふはとからめて秋祭
神奈川県     川島欣也
帰り道星の豊かな秋祭
浦祭神輿を禊ぐ寄せる波
異邦人の手を借りるや秋祭
子を前に手取り足とリ秋祭
千の風黒雲払う秋祭
東京都     小澤富雄
外人も射的に興じ秋祭
終点で神主も降り秋祭
耳の裏化粧禿たる在祭
秋祭父そっくりな笛の音
青森県     竹浪誠也
呼ばれたる昼酒たぷと秋祭
賑はひはほどほどが良し村祭
いそいそと野良切り上げて村祭
笛響けダム湖に沈む村祭
馳走みな地産地消や村まつり
埼玉県     いまいやすのり
田の神に先づは一礼秋まつり
産土に子らの集まる秋まつり
きのふ逢ふけは法被の秋まつり
秋祭のろのろ進む路線バス
秋まつりお天道様の笑みの中
福岡県     深町明
ひよつとこの美脚なりけり秋祭
蛸壺のからりとしたり秋祭
弁当に海山のもの秋祭
秋祭思ひ思ひの大漁旗
青年は何とかレンジャー秋祭
埼玉県     彩楓(さいふう)
奉納の巫女舞ひの鈴秋祭
大阪府     永田
よそ行きの隣の町の秋祭
東京都     佐藤博重
秋祭り玩具の吹矢枕辺に
吹矢して過ごせし友や秋祭
覗きゆく出店嬉しき秋祭
神奈川県     野川喜一郎
秋祭りこの日ばかりは若衆が
常念岳変わらぬ雄姿秋祭り
古民家の崩れしままや秋祭り
秋祭り便りが届き里帰り
帰らずばなるまい里の秋祭り
神奈川県     立野音思
辻々に響く掛け声秋祭
三姉妹揃いの浴衣秋祭
お囃子の音色も澄みし秋祭
藍染の法被きりりと秋祭
千葉県     伊藤順女
秋祭おかめの面も売られをり
秋まつり団地の子等の太鼓かな
明日の空を気にして眠る秋祭
神奈川県     矢神輝昭
秋祭幼馴染や気恥ずかし
秋祭出店はいつも昭和色
秋祭の老若男女権化かな
秋祭字を競いて搗合わせ
うどん屋の親爺世話役秋祭
愛媛県     渡邊國夫
子も孫も揃ひの法被秋祭
秋祭山車に提灯百も点け
トラックで巡る神輿や里祭
酒蔵の開け放たるる里祭
秋祭山車に金糸の龍の面
神奈川県     原川篤子
メトロ出て西新宿の秋祭
通過する小駅に灯見ゆ里祭
父の背に眠る鬼面秋祭
鼻筋の白粉きまる秋祭
秋祭果て木々のこゑ杜に満つ
滋賀県     船岡房公
ゴブランの見送り幕や秋祭
幔幕の染め抜き紋や秋祭
軒先に掲ぐる御幣秋祭
早もぎの蜜柑の香り秋祭
神奈川県     志保川有
マルクスの声に秋祭を後に
告白も別れも秋祭の夜
ちっと変な助さんかぶり秋祭
担手は授乳中なり秋祭 
直会は胼胝自慢なり秋祭
千葉県     みやこまる
小遣いはいつも百円秋まつり
秋まつり子どものいない町内会
レクリエーションルームに集ふ秋祭
もう我をわからぬ人と秋祭
駄菓子屋の明日は閉店秋まつり
茨城県     萱原祥暢
対岸の稽古囃子や秋祭
お旅所に憩ふ若衆秋祭
若衆は孫の友達秋祭
若人の溢るる過疎地秋祭
神奈川県     松野勉
秋祭焼き饅頭の風舐める
おにぎりは不揃いで良し秋祭
東京都     岩川容子
いつかまた訪ねたき村秋祭り
秋祭り山車に積まれし米俵
里山の空気澄みたる秋祭り
秋祭り果てて一村眠り落つ
埼玉県     守田修治
茶柱の立ちしは言わず秋祭
郷里捨て新たな町の秋祭
町中の体温上げて秋祭
秋祭ゆったり泳ぐ飛行船
高校生誘惑多し秋祭
愛媛県     加島一善
金色の須弥山担ぐ秋祭
金色の宇宙を担ぐ秋祭
裾まくる振袖の追う秋祭
須弥山へ舁き棒刺さる秋祭
潮浴びる神を担ぐや秋祭
三重県     西井治男
秋祭り和太鼓響く境内に
東京都     笹木弘
少年が大人になりし村祭り
瓢箪に酒を詰込み秋祭
姉さんの口紅を借り村祭り
法螺貝の合図ありて秋祭
農道をふら付いて来る村祭り
埼玉県     水夢
荒神輿みず掛けられて最高潮
山里に獅子笛ながれ秋祭
秋祭ひかりの中を風かよふ
百の足袋近づいて来る神輿かな
太鼓の音うねるやま里秋祭
神奈川県     龍野博史
助つ人の法被とりどり秋祭
商店主みな活気づく秋祭
秋祭わつしよわつしよと足袋踊る
秋祭飛騨の匠の屋台曳く
東京都     中田ちこう
寿司桶をひろげて母の秋祭
卵かけ飯を掻っ込む秋祭
神奈川県     皆空亭
秋祭あやかし潜む社裏
秋祭坂を登れば母の村
道化出で舞は佳境の秋祭
兄の舞甥が引き継ぐ秋祭
愛知県     新美達夫
JAも一燈献ず秋祭
さながらに同窓会の秋祭
馬役の馬を宥むる秋祭
大阪府     室谷早霞
秋祭札授けをる村娘
新婚の婿も誘はれ里祭
「寅さん」に似た人のゐる秋祭
今香具師は浪速言葉や秋祭
村祭ひよっとこを買ふ教師かな
東京都     右田俊郎
秋祭中止を決めた被災の地
秋祭り駆け出す子の手五百円
町会の揃いの法被秋祭
担い手の年ごとに減る秋祭
被災して中止と決まる秋祭
神奈川県     三好康子
秋祭三代揃ひの半被かな
笛方の祖父に教わる秋祭
笛の音に浮足立ちて秋祭
おとうとの稚児に選ばる秋祭
「祝 令和‼」ご祝儀はづむ秋祭
三重県     倉田 伊都子
秋祭り 子らの掛け声 目減りなり
大太鼓 景気良き音 秋祭り
埼玉県     哲庵
秋祭百年続く五目飯
ひょっとこもおかめも老いて秋祭
秋祭笛の上手のまた減りて
鼻筋の紅も可愛い屋秋祭
四代が揃い山車引く秋祭
神奈川県     神田央子
喧騒と光を纏い秋祭
福岡県     紙田幻草
よその子が尋ねて近し秋祭
村民の何倍になる秋祭
人生の何やら親し秋祭
しみじみと人の集まる秋祭
激しさは無き火のありし秋祭
ブラジル     林とみ代
秋祭おかめひょっとこ滑稽なる
古里の記憶にありし秋祭
橋三つ渡れば里や秋祭
獅子舞の二つ競ひて秋祭
笛太皷村中ゆすり秋祭
静岡県     大澤定男
秋祭見に畦道を行ったきり
秋祭双子の姉に誘われて
おおかたの田は刈り取られ秋祭
四斗樽に夜は夜で酔うも秋祭
来年の暦も売らる秋祭
神奈川県     井手浩堂
ふるさとの山河変わらず秋祭
船揚げてこの村々の秋祭
人寄せの太鼓打ち初む秋祭
埼玉県     小玉拙郎
赤飯の色濃い薄い秋祭
酒減らぬ令和の神酒所秋祭
還暦を古希が指揮する秋祭
畦道に人せわしなき秋祭
無人駅今日のにぎわい秋祭
宮城県     下僕
射的屋の子供はゲーム秋祭
ジェット機が行く故郷の秋祭
即吟が聞こえ声かけ秋祭
秋祭仰臥の義父の息荒し
秋祭だろうか校庭から煙
千葉県     横井隆和
道の駅ご当地菜菜秋祭り
刃こぼれの鋤鍬研ぐや秋祀り
田畑は農士の剣ぞ秋祀る
農大生地響く太鼓や秋祭り
埼玉県     吉野 静
祭礼の絵巻つくづく秋祭
地下足袋の飛び跳ねている秋祭
曳っかわせ今はじまるや秋祭
蔵の町の路地ことごとく秋祭
秋祭絢爛絵巻蔵の町
大阪府     椋本望生
七十路を超えて脇役秋祭
村の森どつと引き寄す秋祭
斜の「3」出ればビンゴや秋祭
秋まつり三面鏡の聞く太鼓
綿菓子に隠くる幼子里祭
千葉県     山田香津子
老人衆の熱気穏やか秋祭り
三世代の捩り鉢巻秋祭り
ブラジル     玉田千代美
秋祭テレビを見ては楽しめり
秋祭老いて若さを貰ひけり
秋祭踊る楽しみ見て楽し
神奈川県     海野優
秋祭名残りの月を踏みにけり
秋祭り当地自慢の力士かな
伝へくる舞ひの雅や秋祭
福岡県     多事
地に空に灯りの丸し秋祭
両の手で鶏毟りをる秋祭
綿菓子の列の長さよ秋まつり
秋まつり稚児濡らさじと傘の列
夕にして妖しき小屋よ秋まつり
富山県     加能雅臣
地下足袋にアンクレットや秋祭り
栃木県     垣内孝雄
三代の拓士の村や秋祭
秋祭軽四輪の振れ囃子
秋祭厩の栗毛産気づく
秋祭村の鎮守に供へ酒
秋祭姉さ二十歳の撥さばき
東京都     豊島 仁
潮騒の浜によきかな秋祭
秋祭少し早目の夕餉とり
秋祭今朝から父の姿なし
秋祭父余念なき佐渡おけさ
秋祭浮けぬ落語に月もなし
京都府     中村 万年青
甥っ子の空手演武や那覇大綱引き
男衆の見場華やぐ秋祭
獅子舞や男の両脛の美しき
神奈川県     髙梨 裕
村役と子が山車を引く秋祭
足長のピエロも踊る秋祭
背広脱ぎ佳か男衆秋祭
秋祭担ぐ神輿にタトゥーギャル
踏切に踏ん張る神輿秋祭