- 山本海苔店トップ
- 俳句庵
- 俳句庵 2019年11月 優秀賞発表
- 俳句庵 2019年11月 作品一覧
俳句庵
11月『時雨』全応募作品
(敬称略)
- 埼玉県 飯塚璋
- しぐるるや浮桟橋に人の影
- 兜煮の目玉こぼるる小夜時雨
- 時雨忌や多羅葉書く文字遊び
- 愛媛県 砂山恵子
- みづうみに蓋あるごとき時雨かな
- 夕時雨叱り過ぎたる子を探し
- しぐるるやバックミラーに消ゆる影
- 時雨傘猫背の医師とその妻と
- 片時雨漁村のバーに付けまつげ
- 新潟県 近藤博
- 時雨るるや媼駆け込む雁木かな
- 時雨雲稜線すっぽり覆ひけり
- 時雨晴れ雨粒きらら照りにけり
- 初時雨上枝を濡らし過ぎにけり
- 時雨るるやぴたり肩寄す催合ひ傘
- 兵庫県 季凛
- 散歩中犬と目の合ふ時雨かな
- はたはたと風呂場の外は時雨かな
- 苔のある心時雨に洗わるる
- 時雨るゝや第4コーナー傾斜して
- 闇時雨ダイヤの煌めきだけ残す
- 千葉県 柊二
- 裏に聞くブルーシートの町時雨
- 神奈川県 松野勉
- しぐるるや順番待ちの自由軒
- 二軒目は裏の角打ち時雨かな
- 愛媛県 佐藤めぐみ
- 夕時雨シチューの鍋の底に焦げ
- 時雨るゝや薄衣まとふ山頭火
- 初時雨敷物を替え夕餉とす
- 小夜時雨独り黙って糸を編む
- 朝時雨同窓会の知らせ有り
- 千葉県 玉井令子
- ワイパーを弱く動かす時雨かな
- 強風のなぎ倒したる木に時雨
- 襟立ててやり過ごしたる時雨かな
- 時雨るなブルーシートの屋根愁う
- 自転車のサドルを濡らす時雨かな
- 熊本県 貝田ひでを
- しぐるるや下町気質江戸しぐさ
- しぐるるや嵯峨野の店に軒を借る
- しぐるるや三味の音を聞く先斗町
- 時雨来て四囲の山々墨絵めく
- 万事屋も昼を灯して村時雨
- 神奈川県 佐藤博一
- さっと来てささっと去し時雨かな
- 時雨るるやつれづれなるまま方丈記
- 時雨来てしみじみものを思ふかな
- ブランデーあたためめをれば時雨止む
- 東山晴れて西山時雨けり
- 千葉県 渡邉竹庵
- 時雨るるや握つたままの火傷の手
- 時雨るるや軍記物読む講談師
- 埼玉県 いまいやすのり
- 改札の出口挟んで片時雨
- 急かさるる移動販売夕しぐれ
- 朝しぐれ出掛けの迷ひ喪服かな
- 開いては又開いては時雨傘
- 時雨るるや釣り人立たず見上ぐ空
- 奈良県 堀ノ内和夫
- しぐるるやどこまで続く峠道
- 初時雨濡れて光れる石舞台
- 大阪府 木山満
- 化粧取り寛ぎて聞く時雨かな
- 時雨虹架かりて夫の回忌果つ
- 時雨来る取り残されし風鈴(すず)の鳴る
- 時雨つつ時雨つつなお時雨けり
- 街時雨看板の文字消す如く
- 兵庫県 岸下庄二
- しぐるるや相合傘の老い二人
- しぐるるや出口一つの無人駅
- 飛石の上に留め石片時雨
- 夕時雨バス待つ列の長きかな
- 小夜時雨最終便の汽笛鳴る
- 山口県 ひろ子
- しぐるるやバス停傘の出番待つ
- 鉢植えのアボガドの実や秋時雨
- 断捨離を終えてことしの秋しぐれ
- 墓じまい増えてしぐるる六地蔵
- 栃木県 鹿沼 湖
- おはしよりの芸妓の小股時雨傘
- 夫を待つ鄙のバス停夕時雨
- まつさらな朝刊滲む時雨かな
- 岐阜県 金子加行
- 首都のビル厚き硝子や時雨飛ぶ
- 老いてなほ働く肩に時雨れたる
- 時雨るるや一献もよし旅独り
- 時雨るるや革靴ひとつ駄目とせし
- 時雨るるや次のバスまで小半日
- 大阪府 藤田康子
- 洗礼名持つ母なりし村時雨
- 村時雨オラショの島の赤レンガ
- 東京都 岩崎美範
- 珍しく予報通りにしぐれけり
- 青春の本郷菊坂しぐれけり
- しぐるるや茶房の壁に一茶の句
- 花街に蛇の目の開く夕時雨
- しぐるるや車窓に夜の観覧車
- 宮城県 武田悟
- 時雨るるや閑散として湯治風呂
- 時雨るるや寝返りあった古戦場
- 病床の窓へ時雨のイ短調
- 時雨去り里は光の水たまり
- 福岡県 深町明
- しぐるるや単車が息を吹き返す
- しぐるるや履き潰したるスニーカー
- しぐるるや単車のキック二三発
- 玉浮子のぴくりぴくりと初時雨
- 構はずに洗車してゐる時雨かな
- 千葉県 伊藤博康
- カーテンを引くが如くに時雨けり
- しぐるるや信号早く変わらぬか
- いつも見るここらの山も時雨けり
- しぐるるや小走りになる駅舎まで
- 繰り言を時雨の陰に控へさせ
- 宮城県 西條光観
- 朝に陽の夕に時雨の金華山
- しぐるゝや間もなく犬の展覧会
- しぐるゝや軒先借りて野点かな
- 遠山の輝き増してしぐれ来る
- しぐれきて悠然と行く妊婦かな
- 岡山県 渡辺 牛二
- 片時雨播州平野真つ二つ
- 長野県 岩井馨子
- 田の鮒の引きあげ時や時雨ふる
- 神奈川県 皆空亭
- そんな名の献立思ふしぐれ哉
- 窓際の珈琲二杯時雨どき
- ワイパーに滲むネオンの夕時雨
- 二児乗せて漕ぐ足急ぐ夕時雨
- 天帝の涙腺緩しまた時雨
- 愛媛県 加島一善
- しぐるるや野良猫歩く塀の上
- 仁和寺の白砂に消へる時雨かな
- ネオン消へ銀座の路地の月時雨
- 写経する窓の向こうに時雨かな
- 立ち竦み時雨の色を愛でにけり
- 長野県 木原登
- しぐるるや檜皮葺なる善光寺
- 雲割れて千曲川へさつと時雨虹
- 碑に是より木曽路初しぐれ
- 山毛欅の幹しづかに濡らすしぐれかな
- 熊笹を時雨が過ぎてゆきにけり
- 神奈川県 川島欣也
- 道草の子供の竹刀時雨傘
- 時雨るるや富士に四つの登山口
- 時雨るるやLEDの交差点
- 小夜時雨八十路に届く別れかな
- 時雨ゆく善男善女の女坂
- 静岡県 城内幸江
- 内職の手の薄明り小夜時雨
- 東京都 内藤羊皐
- 夕時雨加賀十万の夜を韻き
- 窯跡の陶片乱す時雨かな
- 埋葬を終へて時雨を聴く夜かな
- しぐるるやヴォーカリストに高きこゑ
- 味噌工場跡の小路を時雨けり
- 茨城県 風峰
- ゆるらかに湖に溶け込む時雨虹
- しばし寝の時雨過ぎゆき夜の黙
- 切れ切れに棚田映りし時雨虹
- 時雨るるや待ち人多きらうめん屋
- 夕時雨橋下群るる部活の子
- 兵庫県 髙見 正樹
- 時雨避けつい立ち話晴れゆける
- 大阪府 津田明美
- 五百羅漢濡れて一山時雨けり
- 人生の踊り場に居て時雨けり
- 軒先に会話花さき夕しぐれ
- 見舞へども連れて帰れず時雨たり
- 石だたみ時雨て古都の色となり
- 神奈川県 塚本治彦
- 山の辺の道の半ばや村時雨
- 片時雨五百羅漢の泣き笑ひ
- 横時雨後ろ姿の山頭火
- 耳成の晴れて畝傍の片時雨
- 三塔の法起寺だけの片時雨
- 宮城県 林田正光
- 退院の妻の黒髪片時雨
- 散髪を終へて時雨に出会ひけり
- 恩人の送別会なり小夜時雨
- 逝きし人送る人にも通夜時雨
- 時雨忌や奥の細道旅立ちぬ
- 東京都 勢田清
- 時雨降る音ばかりなる山路かな
- 時雨の日もう薄暗き午後一時
- 山道の時雨行き交う人も無く
- しぐるゝや社の中は板の床
- 時雨道芭蕉蕪村も旅の人
- 広島県 永野昌人
- しぐるるや京に西入ル東入ル
- 濡れてゐる道は時雨の去りしあと
- しぐれては道を濡らしておはりけり
- 舗装路の湿りは先の時雨かな
- 日帰りの旅の松江の時雨かな
- 神奈川県 矢神輝昭
- 時雨ては猿の群れあり木木渡る
- 時雨来て雉が鳴きたり走りたり
- 釣舟や時雨来るらし足早む
- しぐるるやコンテで描く奈良盆地
- 時雨ては丹沢山系神隠し
- 千葉県 峰崎成規
- タワービル隠し昭和へ街しぐれ
- たちまちに黒む玉砂利初時雨
- しぐるるや逃げ音速しピンヒール
- ワイパーの振り分け忙し横時雨
- 電飾の赤ときめけり夕時雨
- 徳島県 白井百合子
- 別れても別れなくても時雨降る
- 時雨傘滴もどこか重たくて
- 髪濡れたままの参拝村時雨
- 時雨忌や天も芭蕉の句に遊ぶ
- 忘れ時の月命日に時雨けり
- 神奈川県 海野優
- 子なき身へ写真葉書の来る時雨
- 京四日奈良の三日もしぐれけり
- 妻問ひの途次にしぐれて宿りかな
- 時雨して坂道のみのつづく道
- 千葉県 三好弘國
- 時雨るるや西山越えて東山
- 時雨るるや朦朧体の東山
- 少子化を憂ふ大仏秋時雨
- しぐるるや蛇の目を選ぶ石畳
- 時雨雲切れて日矢射す桂川
- 東京都 笹木弘
- 秋時雨に武者震ひして猫戻る
- ガス灯の煙る小樽の秋時雨
- 石垣の苔を育てる初時雨
- 礒の香の浜に漂ふ時雨雲
- 時雨来て舟に揺れたる小名木川
- 島根県 寺津豪佐
- 豆腐屋に大豆の仕込みしぐれ来る
- 蕎麦湯もう一杯時雨やり過ごす
- カボチャ煮て魚焼く間の時雨かな
- 雪雲の産声幽か小夜時雨
- 時雨過ぐ町は夕陽の黄金色
- 滋賀県 船岡房公
- 一力の赤壁くすむ小夜時雨
- 高欄の木目浮き立つ時雨かな
- 彩なせる嵐山隠す京時雨
- 石積みの里に灯ともる夕時雨
- 南座の跳ねし祇園や夕時雨
- 埼玉県 岸保宏
- 読書して付箋進まぬ時雨かな
- 昨日より咳静かなり時雨かな
- ひと時雨過ぎて仏壇掃除せり
- 埼玉県 守田修治
- しぐるゝや高砂部屋の朝稽古
- 少し酔い少し眠りて時雨かな
- しぐるゝや御室の里は幕を閉じ
- 遠景に農夫の鍬のしぐれかな
- 留守番の独り言多し時雨かな
- 千葉県 鳥越暁
- ささぬ人さす人混じるひと時雨
- 番傘の骨の集めるひと時雨
- 立枯れの葉の軽ろき音の時雨かな
- 裾はしょり時雨るる中の下駄の音
- 高原の時雨の狭間色失せて
- 東京都 石川 春兎
- 旗艦店のドアマン異人街時雨
- しぐるるや片手に重き広辞苑
- 耳だけのフレンチトースト朝時雨
- 兵庫県 岸野孝彦
- 父母と夜半に目覚める時雨かな
- 葉に置きし水玉光る時雨かな
- 無人駅茜に染まる時雨かな
- 苔寺の薄暮に白き時雨かな
- 傘ささず黒髪濡れる時雨かな
- 神奈川県 守安雄介
- 時雨るるや軍艦島の黒ペンキ
- 初時雨ブルーシートに水の窪
- 時雨るるや山本山は茶に帰せり
- 時雨るるや視界不良の大和堆
- 時雨るるや狭庭の土の黒痘痕
- 愛知県 常磐
- 臨月の半歩半歩を村時雨
- 兵庫県 はなちる
- 仕事終え帰宅を迷う夕時雨
- 待ちわびる妻の帰宅や小夜時雨
- 祈る日の葉の雫落ち朝時雨
- 小夜時雨吾子の寝息に目覚めたる
- 君の腕つかんで走る夕時雨
- 千葉県 長谷川ぺぐ
- 屋根めくれ風にさらされ時雨かな
- しぐるるやブルーシートの屋根の町
- さすらひてさすらひてなほ時雨まち
- 嵐去り町はひつそり時雨傘
- 三重県 後藤允孝
- 嵯峨野来て時雨移りを展望す
- 北山の時雨て古都の暮急かす
- 三尾巡りいつも何処かで逢ふ時雨
- 梵鐘の余韻背に受け時雨坂
- 茅葺の苔の艶めく夕時雨
- 岐阜県 ときめき人
- 廃線の鉄橋消ゆる北時雨
- 神奈川県 立野音思
- 夜深し読む手を止める虫時雨
- 喫茶店硝子を濡らす夕時雨
- しぐるるや墨絵のごとき松林
- しぐるるやほのかに滲む橋灯り
- 神奈川県 猪狩 千次郎
- 初しぐれ鳴門海峡静かなる
- 燈明の地に映り初む夕しぐれ
- しぐるるや亡父愛用のソフト借り
- しぐるるや光り初めたる力石
- しぐるるやきざはし穏き二月堂
- 東京都 伊藤はな
- アイロンにあずける皺や朝時雨
- 悲しみに涙の時雨明日は晴
- 止まり木にワインの匂ふ時雨来る
- 夕時雨曇る硝子に名を記す
- 東京都 伊藤之忠
- 改築のブルーシトに時雨来る
- 自転車に立ちはだかるや村時雨
- 時雨来る砂防に落ちる砂時計
- 千葉県 四葩
- 山頭火の一間の家の軒時雨
- 時雨きていとど静けき空家かな
- 千葉県 入部和夫
- トランプの奇策や如何時雨けり
- 雑踏に馴染の飲み屋夕時雨
- 尽くしても尽くせぬ議論小夜時雨
- 北陸路しぐれがちなる海の色
- バス停に母を送りて時雨るるや
- 東京都 かつこ
- 野良猫にポーズ撮らせし時雨かな
- ベランダの洗濯見てる時雨かな
- エプロンでカメラ片手の時雨かな
- 愛媛県 渡邊國夫
- しぐるるや村に一宇の天満宮
- 校庭の尊徳像のしぐれをり
- しぐれけり目鼻のうすき六地蔵
- 禅苑の鶴亀の島しぐれいる
- 銃眼を備ふ名刹しぐれけり
- 東京都 豊宣光
- 時雨るるや老いぼれ犬の濡れそぼつ
- 道中を追いかけてくる時雨かな
- 半島の煙りて海の時雨かな
- 時雨るるや待ち人遅き喫茶店
- 托鉢の僧の鉢打つ時雨かな
- 京都府 吉田稜光
- 藍染の暖簾に替へる初時雨
- マネキンの腕はずされて初しぐれ
- プリンタの文字の掠れや夕時雨
- 一人減り二人減りけり夕時雨
- 正室の茶室に光る時雨かな
- 千葉県 いなだはまち
- 赤提灯あかく灯りて夕時雨
- バス停に傘差しのべる時雨かな
- 白タクに出で逢ふ二人小夜時雨
- 愛知県 斉藤浩美
- ビル壁を走るライトや小夜時雨
- 尊徳像読書つづけて夕しぐれ
- 駅頭に迎えの車時雨けり
- 裸婦像の乳首尖りて初時雨
- 国道に広がる油紋小夜時雨
- 愛知県 木下澄枝
- 玉砂利の軽き足音片時雨
- 神鶏のしだり尾ぬらす時雨かな
- 海分かつ橋立の道しぐれけり
- 北山の磨き丸太や朝時雨
- しぐるるや島に西港東港
- 神奈川県 志保川有
- 早朝のしぐれ危急の兆なり
- 時雨るるや日暮れて道のなほ遠し
- 故郷(さと)追れし時雨に今は癒さるる
- 時雨るるや心経の声高く低く
- 時雨るるや止るべきか行くべきか
- 神奈川県 龍野ひろし
- 時雨たる京の一日を寺巡り
- 初時雨オランダ坂を濡らしゆく
- 時雨るるや灯り消えたる老舗宿
- 時雨るるや定刻過ぎしバスはまだ
- 愛知県 新美達夫
- 鍛冶町も鉄砲町も時雨れけり
- 小窓より湯舟に聞きぬ夕時雨
- 蓑傘を着け露天湯の時雨かな
- 兵庫県 村山祥江
- 君となら 時雨も嬉し 傘一本
- 一杯の 珈琲飲む間の 時雨かな
- 時雨虹 友の門出を 祝いたる
- 山口県 山縣敏夫
- 軒下に駆け込む二人夕時雨
- 下校する子等の背中に夕時雨
- しぐるるや愛犬供に家路急く
- 里山の棚田に注ぐ村時雨
- ガン告知受けて家路の時雨かな
- 大阪府 永田
- 初しぐれ十勝の土間の広きこと
- 三重県 西井治男
- 夕時雨傘は挿さずに二人道
- 埼玉県 水夢
- 料亭の明りが灯る小夜しぐれ
- 海猫なく北の波止場の小夜時雨
- しぐるるや京都太秦撮影所
- 時雨るるや松美しき瑞巌寺
- 時雨くる花見小路の裏通り
- 奈良県 平松洋子
- 下校時の生徒騒めく時雨かな
- しぐるるや小道ゆっくり二人連れ
- 出勤の夫の背丸くしぐるるや
- 神奈川県 重兵衛
- 鯖街道時雨を抜きつ抜かれつつ
- 大橋を渡れば湖西時雨けり
- 時雨るるや弁柄格子に古簾
- 片時雨京の町屋黒格子
- 托鉢の僧の網笠時雨けり
- 東京都 佐藤博重
- 夕しぐれ竪穴住居煤匂ふ
- 広葉の縄文の森時雨れけり
- 時雨るるや故山にはかに遠くなり
- 三重県 平谷富之
- ヘルパーの買物邪魔する時雨かな
- この時雨巨人軍の涙とも
- 神奈川県 井手浩堂
- あんパンを買うて時雨の裏通り
- 桟橋を客船離る夕時雨
- なかんづく祇園小路のしぐれかな
- 神奈川県 亀山酔田
- 海沿いの時雨に濡れて人と犬
- 茶粥吹く南都は今朝もしぐるるか
- しばらくは茜の波頭しぐれ去る
- しぐるるや小さき寺に響く鐘
- 草枕奈良の時雨を聞いてをり
- 岡山県 岸野洋介
- 時雨傘たたみ熱燗頼みけり
- 陶器市時雨れてしばし品定め
- 古都奈良の駅を出れば片時雨
- 山峡に虹かけ過ぎる村時雨
- 小夜時雨生きているかと電話くる
- 東京都 中田ちこう
- 軒内の三和土染めわけ時雨けり
- 埼玉県 小玉拙郎
- 時雨抜け路面電車の乾きゆく
- 寺町は時雨てましたと畳む傘
- 竹林の葉音くぐもる時雨かな
- 時雨てもぬくもり消えぬ商店街
- 埼玉県 哲庵
- 落柿舎の簔傘濡らす時雨かな
- しぐるるやすべて京向く流人墓
- 時雨傘産寧坂を下り行く
- 遺句集を読むやしぐるる湖明かり
- 嵯峨時雨じゃこ煮る烟混じりたり
- 東京都 岩川容子
- はやばやと都電灯ともす夕時雨
- 時雨れきておいてきぼりの三輪車
- しぐるるや極楽寺への坂長き
- 朝しぐれ昨日と違う木々の色
- 時雨冷波うちつける能登荒磯
- 千葉県 隆泉
- 秋のツケ返すジョギング朝時雨
- 両の手に白菜好きのしぐれ坂
- 交差点花のワルツや時雨傘
- 末っ娘の八百屋走りや夕しぐれ
- ブラジル 林とみ代
- 舞子はんの下駄音かろき京時雨
- 時雨来て相合傘の二人かな
- 園丁の一服してる時雨かな
- 露天商の店たたみたる夕時雨
- 担ぎ屋のよろめき行くや朝時雨
- 福岡県 西山勝男
- 奥嵯峨の古刹めぐるも時雨傘
- 古色めく水城をまたぐ時雨虹
- 大いなる阿蘇をそびらに時雨雲
- 土寄せの土の香ほのと初時雨
- 埼玉県 吉野静
- 路地裏のカレーの匂ひ夕時雨
- 夕時雨わびる心をメールする
- 地下道を出る銀座の時雨かな
- 山頂の日の照りながら時雨をり
- 寂しさに触れて過ぎ行く時雨かな
- 神奈川県 原川篤子
- 湖の面騒がし過ぐる夕しぐれ
- 延段を少し光らせ時雨過ぐ
- 時の鐘時雨の街をとよもせり
- ランドセル揺らし来る子や時雨なか
- しぐるるや小江戸に響く時の鐘
- 大阪府 太田紀子
- 長き貨車時雨るる街を通り抜け
- 歌仙展出るや時雨るる京の町
- 時雨るるや小町はいつも顔みせず
- 東京都 安西信之
- 日韓の埋らぬ溝や片時雨
- しぐるるやすこし歩けば西銀座
- 恋人に戻る時雨の銀座かな
- しぐるるや湯引きにちぢむ鯛の粗
- 大阪府 椋本望生
- 妙齢のナイスショットや片時雨
- しぐるるや夢の続きを眠薬に
- しぐれても色を隠せぬ観世音
- べこの声村にこぼしてゆく時雨
- とめどなく乳を欲しがる児に時雨
- ブラジル 玉田千代美
- 時雨るるやはかない恋を捨てたまま
- 時雨来て旅の楽しさ邪魔さるる
- 時雨来て昔の恋を想ひ出す
- 時雨来る相合傘の恋燃ゆる
- 兵庫県 ぐずみ
- 角打ちの店を時雨の灯りかな
- 早仕舞ひ告げる庭師に時雨かな
- しぐるるや人間嫌ひ募る午後
- しぐれゆく松葉の先の光りたる
- もみあげを終えし松葉を時雨けり
- 福岡県 多事
- 碁打らの四五人の見し時雨かな
- 資本論新訳出たり初時雨
- 我が胸の鳩放つ時初時雨
- しぐるるや見舞籠より薫り来り
- 鉄臭き掌をしたままの夕時雨
- 東京都 飯田 哲司
- 母の顔近道急ぐ時雨かな
- 改札や傘忘れたり時雨雲
- 年寄りや時雨おしのけ巣鴨行く
- 東京都 豊島 仁
- 初時雨一直線なり隅田川
- 酔うて寝てやがて晴れゆく時雨かな
- 宿見えて天城峠の初時雨
- 天も地も富士も時雨るゝ摩天楼
- 待ち人をじらす銀座の時雨かな
- 京都府 中村 万年青
- 自転車で嵯峨野走れば夕時雨
- しぐるるや酒倉に入る人の影
- 大井川釣人の背に村しぐれ
- 神奈川県 髙梨 裕
- しぐるるや猫に餌やるホームレス
- 父母を看取りし生家しぐれけり
- しぐるるや富士に甲斐あり駿河あり
- 縄文の遺跡さすらふ時雨かな
- しぐれきて煮炊きの鍋のふくれけり