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- 俳句庵 2020年06月 作品一覧
俳句庵
6月『入梅』全応募作品
(敬称略)
- 東京都 よしだ悠
- 入梅や廃炉九年の雨水桶
- 入梅の毛穴へぞろりコロナ虫
- 妻(め)の陰(ほと)を汗噴き出すや梅雨に入る
- 入梅の猿股ずりずりずり落ちて
- 入梅や壱億弐阡萬人へ錢
- 東京都 伊藤訓花
- ブラウスの梅雨めく湿り朝の窓
- 骨折の足と連れ添ふ梅雨入かな
- 入梅の日本列島感染症
- 空低く草青々と梅雨兆す
- 梅雨に入る月は大きく重々し
- 千葉県 伊藤順女
- 緑濃き小径となりて梅雨入かな
- 掌に湿り気少し梅雨に入る
- 月曜の朝の気分や梅雨に入る
- 千葉県 伊藤博康
- 入梅に東も西も雲ばかり
- 農作業計画通り梅雨に入る
- 東より入梅を呼ぶ雲のあり
- 入梅や作業着重き魚市場
- 新しき傘振り回す梅雨入かな
- 神奈川県 井手浩堂
- 公園の木々も木馬も梅雨に入る
- 入梅や重たき革の旅鞄
- いく度も水位見に出る梅雨の入り
- 徳島県 井内胡桃
- 群鳩のくぐもる声も梅雨に入る
- 堂鳩が雨の風呼ぶ梅雨入かな
- かき上げし重き前髪梅雨に入る
- 長靴は十七センチ梅雨に入る
- 小さき屋根白い門扉も梅雨入かな
- 東京都 右田俊郎
- 休校のつづく子不安梅雨に入る
- コロナ禍の宣言解除梅雨に入る
- 入梅や無沙汰の友へ手紙書く
- 入梅や不安と安堵入り混じる
- 入梅やむかしの手紙処分する
- 大阪府 永田
- 初夏やラジオ体操正確に
- 広島県 永野昌人
- 下駄好きの妻のペディキュア走り梅雨
- 湿気てゐる駄菓子の袋梅雨に入る
- 煮魚に添へる生姜や梅雨に入る
- 大仏の鎧ふ緑青梅雨に入る
- 愛媛県 アリマノミコ
- 入梅や墓の和草すると抜け
- 草木染めいのちをうつし梅雨に入る
- 枝うちの北山杉に梅雨入りかな
- 神奈川県 志保川有
- 探し物いまだ見だせず梅雨に入る
- 若きらの訃報の絶へず梅雨に入る
- 入梅や武郎四十五歳の死――有島武郎
- 雨樋が主役に浮ぶ梅雨入かな
- 孫の手で薬引寄す梅雨入かな
- 千葉県 風泉
- ・核にコロナに梅雨入りの汗防護服
- ・名を入れる吾子の雨具や梅雨の入り
- ・梅雨入りの山路の犬へフライ買う
- 富山県 岡野 みつる
- 午後からは読書と決める梅雨の空
- 梅雨入りの山はいよいよ青みたり
- 午後からは読書と決める梅雨の空
- 梅雨入りにいよいよ山の青さかな
- 梅雨晴れに用事抱えて走りけり
- 愛媛県 加島一善
- 入梅の自然菜園草を抜く
- 梅雨に入る今日は記念日ケーキ買ふ
- 梅雨めくや善根宿の屋根直す
- 入梅やトマトの苗にビニール傘
- 梅雨めくや消えずに残るi飛行機雲
- 愛知県 加藤峰子
- 梅雨入りを女予報士笑みで告ぐ
- 入梅や鬼籍の人の日記出づ
- 梅雨入りの気配はそこに本を積む
- 入梅を阻む家紋の鉄扉
- 捗らずため息ばかり梅雨に入る
- 神奈川県 海野優
- 入梅を家居のままに迎へけり
- 地下街の天上見上げ梅雨入かな
- 何となく傘持ちて出る梅雨入空
- 閉店の文字くろぐろと梅雨に入る
- 兵庫県 岸下庄二
- 入梅や三本立ての映画観る
- 研ぎに出す包丁二本梅雨に入る
- 入梅や反応鈍き風見鶏
- 入梅や通路の狭き古本屋
- 入梅や窓から外見る猫二匹
- 兵庫県 岸野孝彦
- 入梅や鉛の空に浮かぶ月
- 入梅や草刈り終えて塩むすび
- 入梅やぬかるみ消えて里消えて
- 入梅や棚田に向かう父母は亡き
- 入梅や越中富山の薬売り
- 長野県 岩井馨子
- りんの音のかすかに湿る梅雨入りかな
- 東京都 岩崎美範
- 良経の歌そのままに梅雨に入る
- 街商の空を見上ぐる梅雨入かな
- 姉の忌の近づくを知る梅雨入かな
- 髪の毛のうねり始むる梅雨入かな
- 苔寺の日がな賑ふ梅雨入かな
- 東京都 岩川容子
- 入梅や泣きだしそうな羅漢あり
- 入梅やしばらくぶりに手紙書く
- 縁側に顔洗う猫梅雨に入る
- 愛知県 岩田遊泉
- コロナ禍の収束近し梅雨に入る
- 相撲部屋の重きのぼりや梅雨に入る
- 古傷のまた痛み出す梅雨入かな
- 搦手の開かずの扉梅雨に入る
- 梅雨に入り三処攻めの辛さかな
- 神奈川県 亀山酔田
- 遺失物係の机梅雨に入る
- 入梅やプラモ塗装の換気中
- 稚児が淵潮渦巻く梅雨入り哉
- 大峰山奥駆道の梅雨めいて
- 槍の先見えぬと古老梅雨に入る
- 茨城県 風峰
- 入梅の街はモノクロ雨ざんざ
- 予報士の瞳みず色梅雨に入る
- 珈琲の挽く音かすれ梅雨入かな
- めんつゆの味は薄味梅雨入かな
- 鬱の字は二十九画梅雨に入る
- 埼玉県 いまいやすのり
- 梅雨めきて今日のパソコン不調なり
- 入梅の百人番所靄の中
- 風見鶏をりふし動き梅雨に入る
- 改札を出でて見上ぐる梅雨入月
- 古希近し赤い傘買ふ梅雨入かな
- 岐阜県 ときめき人
- 入梅や五百羅漢を覆ふ苔
- 東京都 よしだ悠
- 校庭なほも梅雨めく空や打球音
- 梅雨めくや毛穴へじとりコロナ虫
- 感染者五百万超え入梅す
- 梅雨始まるコロナ戦争これからぞ
- 梅雨に入る廃炉九年の腐水桶
- 神奈川県 みぃすてぃ
- 入梅や渡り廊下で空見上げ
- 入梅や昨日と違う暗き空
- バスを待つ小さき雨靴梅雨の入り
- 葉と葉と葉重なり合いて梅雨はじめ
- 若葉から青葉に変わる梅雨の入り
- 千葉県 玉井令子
- 梅雨入りて手入れのされぬ農地かな
- 日本一早い入梅めんそーれ
- 梅雨に入る屋根崩れたる空き家かな
- 入梅や二か月遅い新学期
- 下駄箱に風通したるついり前
- 新潟県 近藤博
- 入梅やコロナに重ね気の滅入る
- 素足なる足裏じめじめ梅雨に入る
- 涸れ沼の待ちゐし雨や梅雨に入る
- 鬱陶し読み書き難き梅雨に入る
- 梅雨滂沱ひすがら止まず昏れにけり
- 岐阜県 金子加行
- 天空も人も憂ひや梅雨に入る
- 入梅や一晩に伸ぶ草の丈
- 入梅や水に浮かせし島ひとつ
- 玄関に靴の乱れや梅雨に入る
- ステンドのイエス涙や梅雨に入る
- 神奈川県 原川篤子
- 三つ編みの髪すぐ解けついりかな
- 濡れて来し星の切手や梅雨に入る
- 隠沼のにごりて暗き梅雨入りかな
- 水玉の傘贖ひて梅雨に入る
- 五十階雲は眼下に梅雨のいり
- 埼玉県 吉野 静
- 入梅やウイルス流す雨になれ
- 入梅や晴れの一と日の忙しき
- 入梅のやうな空とはこんな空
- 入梅や普通になりしテレワーク
- 入梅に色深めゆく山の樹樹
- 福岡県 戸澤孝一
- 入梅や若女将は傘ひらく
- 三重県 後藤允孝
- 関宿の街並み湿り梅雨に入る
- 梅雨に入る何するとなく昼灯し
- 鈍色の光を放ち梅雨に入る
- 磯の鳥みな羽たたみ梅雨に入る
- この風は梅雨入の知らせ樹樹騒ぐ
- 兵庫県 高市敦之
- 入梅や前線の牛モーと啼く
- 入梅や翼となりて櫂光る
- 入梅や天気図を踏む猫の足
- 入梅や池に映りし点描画
- 入梅や天まで届く細き糸
- 愛媛県 佐藤めぐみ
- 朝風呂も楽しからずや梅雨に入る
- 長靴の並んで歩く梅雨の入り
- 遅目覚めそれもよしなに梅雨に入る
- 水溜りひょいと飛び越へ梅雨に入る
- 入梅やまだコロナ禍の浮かぬ朝
- 兵庫県 はなちる
- 入梅や産声響く待合室
- 入梅に土の乾きは一過性
- 入梅の風の重たき町となり
- 入梅や空気の読めぬ朝帰り
- 入梅に深き眠りの生家かな
- 東京都 勢田清
- 入梅の溝蕎麦半ば水の中
- 入梅の梅の実の毒恐ろしと
- 入梅の池広々と渓深く
- 入梅の畦のざりがに鋏立て
- 入梅の池端の道水没す
- 東京都 笹木弘
- 仁王像の剥げた膝から梅雨に入る
- 入梅や赤い衣の似合ふ巫女
- 天領の水嵩増やし梅雨に入る
- 入梅や鼻先光る摩崖仏
- 心字池の水面窪ませ梅雨に入る
- 神奈川県 三好康子
- 切れ悪しき碁石の音や梅雨に入る
- どんみりと雲の垂れ込む梅雨入かな
- 草も木も呼吸(いき)を整へ梅雨入かな
- 瀬戸の海のたりゆったり梅雨に入る
- 梅雨入前厨の戸棚磨き上げ
- 東京都 山本 左利
- 吾子ひとり小銭を握る入梅路
- 子雀も家路の長き入梅かな
- 梅雨はじめ二輪背負う荷の行先や
- 幼子は入梅そこのけゴム草履
- 後書きは針重なりて入梅かな
- 山口県 山縣敏夫
- コロナ禍の街に梅雨入り寂として
- 梅雨入りに妻の差し出す朱い傘
- 梅雨入りや傘差す子等の登下校
- 梅雨入りに綺麗どころが傘を差す
- 梅雨入りの観覧席に声も無し
- 島根県 寺津豪佐
- ざあっと風ざあっと雲来て梅雨に入る
- 入梅や埃被りし鯨尺
- 乱取のやうな雨来て梅雨に入る
- 梅雨入りは去年もプール掃除の日
- 入梅や試掘調査の粘土層
- 埼玉県 守田修治
- 快活に唄う雨あり梅雨に入る
- 名画座に駆け込む二人梅雨に入る
- 荒梅雨や水琴窟の音澄める
- しとどなる梅雨こそ楽しハーモニカ
- 合宿の振子時計や梅雨に入る
- 東京都 秋元幸男
- 籠り入梅 ガラス押し付け こぶた鼻
- 入梅の鞍 泥迸る 京都右回り
- おしかかる 入梅雲傘越し えいと返し
- 入梅きざす 街の路面に くろびかり
- 鼻先に ガラス押し付け 籠り入梅
- 茨城県 小松崎孝志
- 入梅や認知の検査始まりぬ
- 入梅や吊り天井の如き雲
- 入梅と障子の軋み報せおり
- 入梅や巣もぐり生活まだ明けぬ
- 入梅か曇天の日続くなり
- 神奈川県 岳
- 丸善の洋書の匂ひ梅雨に入る
- 梅雨空の彼方に何を見るゴリラ
- 囚われの河馬の屈託梅雨の空
- 梅雨の夜サーチライトの警備艇
- 図書館の句集三冊梅雨ごもり
- 東京都 松小庵
- 入梅に 歌声競う 蛙たち
- 入梅と 冷やし中華が 徒競走
- 入梅や 傘が満開 通学路
- 入梅や 初孫と猫 なき止まず
- 入梅で 出番が増える 乾燥機
- 神奈川県 松野勉
- 入梅や夕餉は家族水入らず
- 入梅や畳でごろり堕落論
- 静岡県 城内幸江
- 入梅や母の後ろをゆく子ども
- 入梅や渇くこと無き水溜り
- 古井戸の深さを知らず梅雨に入る
- 入梅や葉も花弁もやや重し
- 愛知県 新美達夫
- 物捨てて机上広ごるけふ梅雨入
- 雨もまた楽しからずやけふ梅雨入
- 隣家より調律の音梅雨に入る
- 断捨離の捗る今日の梅雨入かな
- 大阪府 森 佳月
- 本五冊積めばすぐにも梅雨入りかな
- パソコンの起動待てずに梅雨に入る
- 下宿にてヘアピンの謎梅雨に入る
- 入梅や猫右足で顔洗ふ
- 一人居の広き湯船や梅雨に入る
- 福岡県 深町明
- 貝殻のとりどり九十九里梅雨入
- 江戸切子きらりきらりと梅雨に入る
- 入梅や茹で上がりたる手長蝦
- 梅雨入りや頬かむりする夜勤明け
- 納竿の刻も過ぎたる梅雨入かな
- 神奈川県 十弍番
- 浪砕く荒磯諌む梅雨の入り
- 入梅やつま先ばかり見て歩き
- 入梅やせいろ一枚追加せり
- 入梅や井戸端会議の空笑い
- 梅雨の入り水平線を流し去り
- 東京都 一塁手
- 梅雨晴にさしてすぼめずこども傘
- 梅雨寒に染め抜く紋の鮮やかさ
- 梅雨曇り黴たる餅の前線図
- 空梅雨に親子蛙の遠近法
- 梅雨入りの母の手ひく子雨合羽
- 大阪府 杉本義雄
- 入梅雨やてるてる坊主あちら向き
- 入梅雨や工事現場の鉄花火
- 入梅雨に母より届くふるさと便
- 入梅雨や孫の旅立ち眩しくて
- 電柱に献花置かれて梅雨に入る
- 三重県 西井治男
- 栄養素入梅時期の一工夫
- 列島もよう入梅開花時期同じ
- 福岡県 西山勝男
- 梅雨に入る阿蘇の寝姿朦朧と
- 粛々と迎ふほかなき梅雨の入り
- 手付かずの線路いまだに梅雨入かな
- 然らでだに疫におののく梅雨入かと
- 筆頭に梅雨入と誌す農日記
- 福岡県 すがりとおる
- 上げ潮は運河に沿ひて梅雨の入り
- 入梅や湿とる暖簾の青海波
- 造船の音ひびきあふ梅雨入かな
- 埼玉県 水夢
- 入梅や本丸までの長き坂
- 入梅や拍手の中を嫁入り舟
- 湿りだす鰐口の音梅雨に入る
- 芭蕉句を紐解く朝や梅雨に入る
- 赤提灯にじむ茶坊や梅雨に入る
- 宮城県 zazi
- 梅雨入りや一月半の一日目
- 花嫁を迎えゆったりのたり梅雨に入る
- 宝くじ売り場がらんと梅雨に入る
- 梅雨入りや絵を画く人の居る酒場
- 食卓が無人になりて梅雨入りかな
- 愛知県 斉藤浩美
- 紙すべて腰のなくなり梅雨に入る
- 万の傘改札を抜け梅雨に入る
- 入梅や傘無きものはみな逃げよ
- 人間は人間を避け梅雨に入る
- 入梅や抽斗すべて重くなる
- 千葉県 いなだはまち
- 長靴の名前くつきり梅雨うれし
- 入梅の寮の起床のこゑかすか
- 梅雨始め棋聖の七六歩ぴちやり
- 梅雨入や早速届く入門書
- アイロンの蒸気くぐもり梅雨に入る
- 大阪府 石原 由女
- 耳を過ぐ風の重さや梅雨に入る
- 入梅やうつむき顔の道祖神
- 襟足にとどまる風や梅雨に入る
- 枕木に据えた滲みありついりかな
- ハンドルもペダルも重し梅雨きざす
- 東京都 石川昇
- 赤橙の滲む交番梅雨の入
- 梅雨入や理想と違う定年後
- 静岡県 浅原幸子
- 入梅の空を気にするアマガエル
- 入梅やゆったり時を刻みだす
- 滋賀県 船岡房公
- 梅雨入りや朝刊はつか端捲れ
- 句会持つことも間遠に梅雨入りかな
- 寝直して倦まざる犬や梅雨に入る
- 御神燈の点もらざるまま梅雨に入る
- 見えぬ敵抗へぬまま梅雨に入る
- 栃木県 鹿沼 湖
- 中辛のカレーあぢはひ梅雨に入る
- 入梅やサイレン鳴らす救急車
- 入梅や朝の癖毛のまとまらぬ
- 抽斗の重き箪笥や梅雨に入る
- 大阪府 佳代
- 畦掛けた昭和は遠し入梅かな
- 入梅や母の手握り歩む畦
- 畦道を子も足取られ入梅かな
- 赤い傘ブラウスの映え入梅かな
- 入梅や小さき水筒カタカタと
- 神奈川県 大野昭彦
- 痛みだす古傷さする梅雨入かな
- 静岡県 大澤定男
- 梅雨に入る古希の身ほとり欠け湯呑み
- 梅雨に入る碁敵途絶へ途絶へかな
- 梅雨に入る阿吽の仁王浅草寺
- 梅雨に入る校内写生大会後
- 梅雨に入る倹しき人の路地深く
- 奈良県 平松洋子
- 入梅や生徒の数より多い傘
- 入梅や遊び足りなく帰る子よ
- 入梅やちらつく雨に肩すくめ
- 埼玉県 哲庵
- 走り梅雨迷路めきたり渋谷駅
- 故郷の梅雨入りの報せ届きけり
- 都市閉鎖開ければ次は梅雨の入り
- 反戦歌響く新宿梅雨に入る
- 入梅や駅の出口で母を待つ
- 神奈川県 重兵衛
- 馬刺喰ふ男ありけり梅雨に入る
- ガリガリと歯の削られり梅雨に入る
- 人の世を隔てる知らせ梅雨に入る
- 迫りくる眼科医の顔梅雨に入る
- 道端にゴムまりひとつ梅雨入りかな
- 東京都 中田ちこう
- 読みさしのまま嫁ぎゆき梅雨に入る
- ヒマラヤの風のあつまる梅雨入りかな
- 徳島県 白井百合子
- 入梅に赤い長靴出番待つ
- 入梅や百円傘にイニシャルを
- 入梅や晴れ間のうちに干す布団
- 入梅に暖簾の達磨笑顔なり
- 入梅やひとり暮らしになる予定
- 神奈川県 猪狩 鳳保
- 電線の青き火花や梅雨の入り
- 梅雨めくや灯台妙に輝いて
- 庭雀大あくびして梅雨に入る
- 墓石の妙に色づき梅雨に入る
- 梅雨めくやへちまの蔓の照り初めて
- 千葉県 萌
- ロッカーに赤い置き傘梅雨に入る
- 入梅のキッチン甘い玉子焼き
- 入梅に爪皮なんぞ探しをり
- 藍暖簾くぐり蕎麦喰ぶ梅雨の入り
- 学舎の門閉じたまま梅雨に入る
- 千葉県 長谷川ぺぐ
- つゆいりの空は何色はけんぎり
- 入梅の雨にくすぶるネオン街
- やりきれぬ愚痴をついりのどぶに吐く
- 日持ちする食品選び梅雨めいて
- 銀鼠の雨やはらかに梅雨に入る
- 大阪府 津田明美
- 人去りてよりの身ほとり梅雨入りかな
- 入梅や路地の踏板音軋む
- 入梅の葎の鳥の声知らず
- 入梅や夕影深き樹間より
- 人去りて身の内に来る梅雨入りかな
- 神奈川県 塚本治彦
- 保険証切れたるままの梅雨入りかな
- 入梅や寝癖つきたる髪のまま
- 入梅や塗り絵綾取りお飯事
- 入梅や雨の吹き込む外厠
- 無住寺や無住寺のまま梅雨に入り
- 岐阜県 雅風
- 梅雨入りの傘行く銀座通りかな
- 予報より三日後れの梅雨入かな
- 富士山の表も裏も梅雨に入る
- 入梅や散歩嫌がる万歩計
- 美らさんの海より梅雨に入りにけり
- 滋賀県 坪田正温
- 入梅や厄除けの札貼りかへる
- 入梅や雨の匂ひの地下ホーム
- お通しはキンピラゴボウ梅雨入かな
- 校門を閉ざしたままの梅雨入かな
- 入梅や門灯点きしままの家
- 山梨県 天野昭正
- 真夜中に赤子の泣きぬ梅雨の入
- 濡れて来る人に炉を焚く梅雨の入
- 松姫の逃れし峠梅雨に入る
- ウイルスと戦ふ地球梅雨に入る
- 誕生日忘れし母や梅雨に入る
- 京都府 田端敏弘
- 面会の来ない頬杖梅雨に入る
- 梅雨に入る翁の像の旅支度
- 若き日のあだ名は河童梅雨に入る
- 入梅や互いに言えぬ事も糧
- 入梅や五坪の畑残す母
- 千葉県 四葩
- 入梅や喪服に白き襟と足袋
- 大阪府 藤田康子
- 入梅や一円切手貼り忘る
- 入梅や雨靴履かぬ街の人
- 東京都 内藤羊皐
- 幼子の積木崩れて梅雨に入る
- 稟議書の誤字の滲みて梅雨に入る
- 乳歯いま軒へ抛れる梅雨入かな
- 生け垣の匂ひ立ちたる梅雨の入
- 入梅の梢重たき杜の影
- 千葉県 入部和夫
- 入梅や老いをいたはるストレッチ
- 寄る辺なき静かな余生梅雨に入る
- 電柱に鴉の一羽梅雨の入り
- 晴耕雨読又楽し梅雨の入り
- カラフルな傘を背負ふ子梅雨入かな
- 北海道 飯沼勇一
- 自主隔離する部屋狭し梅雨に入る
- フェアウエイはやはらかなりし梅雨に入る
- 入梅や遅れ遅れの路線バス
- ページ繰る指先で知るついりかな
- 梅雨入り空車椅子押す足重し
- 埼玉県 飯塚璋
- 入梅や駝鳥の玉子もて余す
- 入梅や年に一度の検診日
- 入梅や縁側の猫顔洗ふ
- 東京都 尾田 一郎
- 入梅に青き枇杷の実天を衝く
- 入梅に新装パン屋列長し
- 入梅の雨音ばかり日曜日
- 入梅に止めしブランコ木偶の坊
- 入梅や靴音高き女たち
- 千葉県 柊二
- 入梅や列島に肩ならべおり
- 三重県 平谷富之
- ワイパーの動き激しく梅雨かな
- 入梅でなおさら遠のく外出が
- 介護士の洗濯困らす梅雨に入る
- 静岡県 平野宏
- 梅雨に入る生物兵器といふ愚
- 体温計の狙ふは額梅雨に入る
- 寅さんの自粛の恋や梅雨に入る
- 千葉県 峰崎成規
- 登校の黄傘影なく梅雨に入る
- 入梅の薄き夕刊重き記事
- 大川に潮も潮香も満ちて梅雨
- パソコンも籠りも慣れて梅雨に入る
- 緑青の息吹き返す梅雨入かな
- 神奈川県 芳賀順一
- 入梅や欠席多き農学部
- 豆腐屋の合わぬ勘定梅雨入かな
- 入梅や謎の解けない文庫本
- カミュがいてカフカが笑う梅雨入かな
- がりがりとフランスパン割り梅雨に入る
- 三重県 北村英子
- 傷心に他言するなと梅雨の入り
- 自粛日の朝から晩も梅雨に入る
- 入梅や自己満足にミシンの音
- あの男白々しくも梅雨に入る
- 疫病の広がりてなほ梅雨の入
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 訃報聞く入梅の空は垂れこめて
- コロナ禍に入梅ならずも家に居り
- 東京都 安藤ゆき子
- 入梅や茶杓の銘は青海波
- 入梅や今日も朝靄青磁色
- フェルメールの真珠煌めき入梅す
- 岡山県 名木田純子
- カーテンの白のまぶしき梅雨入かな
- 入梅や金平糖のつややかに
- 入梅や雫のやうなピアス揺れ
- 愛知県 木下澄枝
- 入梅や波が押しくる舟着場
- 本棚の読みたき一書梅雨に入る
- 入梅や軒に舟吊る輪中村
- 湖よりの風の湿りや梅雨に入る
- 黙読にまさる音読梅雨に入る
- 長野県 木原登
- 梅雨きざす牧に親馬子馬かな
- 入梅や喜寿過ぎて又五十肩
- 田も畑も形ととのへ梅雨に入る
- 公園に青き獅子像梅雨に入る
- 落葉松林白樺林梅雨に入る
- 大阪府 木山満
- 入梅や花柄傘を廻し見る
- 入梅や嘘めく日差し海馬光
- 入梅や夕茜して多少の希望
- 入梅や心身濡れてやはり梅雨
- 入梅や雨の音さえ気鬱なり
- 神奈川県 矢神輝昭
- 入梅や泣く子に引かれつ出漁す
- 戦局は奄美群島入梅と
- 入梅や鈍色の海舟重し
- 入梅の授業参観窓の外
- 木曽川に魚のはねたり梅雨の入り
- 山口県 ひろ子
- 入梅やメモ書き増える走り書き
- 入梅や瀬音激しくなりにけり
- 入梅や庭の四葩の咲くを待つ
- ウイルスは何処に隠れかたつむり
- 神奈川県 龍野ひろし
- 梅雨に入るゆつくり捲る美術本
- 園児らのどろんこ遊び梅雨に入る
- 傘躍る下校の子らや梅雨に入る
- 入梅の電車の鈍き動かな
- ブラジル 林とみ代
- 入梅や子の弁当に気を使ひ
- 髪型をさっぱりとして梅雨に入る
- 心までうっとうしきや梅雨に入る
- 生ぬるき風そよぎたる梅雨に入る
- コロナ菌付かぬ工夫や梅雨に入る
- 宮城県 林田正光
- 入梅や太宰全集備え置く
- 入梅や遠富士霞む日々続く
- 入梅や湖畔の宿はすでに雨
- 兵庫県 髙見 正樹
- 刈揃う公園の芝梅雨に入る
- 京都府 中村万年青
- 日本一早い梅雨入の奄美かな
- 照り映えゆる青葉若葉も梅雨に入る
- 降り続く銀のしずくも梅雨の花
- 神奈川県 髙梨裕
- 入梅や一際白き水の花
- 入梅や草木濡れて深緑
- 入梅や十字の花の揃いたる
- 入梅の匂いや野の湿り
- 入梅の鬱なる空や水たまり
- 東京都 豊島 仁
- 梅雨めきて灯早き丸の内
- 梅雨に入る傘あり降らずなきて降り
- 梅雨に入る文一行の筆もなし
- 入梅の噂している蛙かな
- 入梅の庭ですねてる如雨露かな
- 富山県 姫野篤弘
- 病室の会話は小声梅雨湿り
- 遠富士や蓼科高原梅雨晴間
- 目も耳も借物ばかり五月闇
- 紙飛行機飛ばす少年梅雨の晴
- 爺一人梅雨の雨戸を少し開け
- 茨城県 守屋重伍
- 池魚どもは入梅の波紋何思う
- 廃村のあおき轍や梅雨に入る
- 懐古とは入梅の寒き稲子の湯
- 晩酌はピアソラタンゴ打つ入梅
- 過疎村の入梅振り子のごと静か
- 東京都 太田圭
- 更衣室梅雨めく空に肩落とす
- 空梅雨や手庇添えるカタツムリ
- 入梅や遊具のしずく払う袖
- メダカ鉢最初の雨滴梅雨の庭
- 梅雨登園鞄三つに傘二つ
- 東京都 韓祐志
- 自粛明け出口は遥か梅雨入る
- 梅雨入る闘わずして頬濡らし
- くらき朝まさか梅雨入り家人問う
- 梅雨入る水遣り習い鉢の土