俳句庵

4月『公魚』全応募作品

(敬称略)

穴あけて公魚釣りし日の遠く
公魚の微かな魚信見逃さず
公魚の舟にさざ波縺れけり
公魚の肯ふやうに釣られけり
公魚のしずかに釣られて来たりけり
公魚の氷の下より寒きとこ
団欒に公魚囲み笑顔咲く
うやうやとワカサギ釣りて捧げます
雪国の獲れし公魚馳走なり
釣れて良し釣れなくて良し公魚釣り
糸を垂れキンと凍れりわが身かな
あわれみの心も釣って公魚釣り
公魚や空を映して透き通り
公魚や三枚におろすほどで無し
公魚のかそけきいのち掌に
公魚の湖にも迫る温暖化
公魚や月光とともに凍えけり
公魚と遊びあそばれ瞬の賭け
公魚や一族もろとも南蛮漬け
公魚の訴へるやうな瞳かな
公魚や酢の海沈む宴かな 
人釣って公魚一日楽しめり
公魚を貧しく食べし廃屋か
公魚の湖面に緩む水音かな
甘露煮の公魚つつく嫁姑
わかさぎの湖に見らるゝ一夜干
公魚の天を仰いで釣られ来し
公魚や氷穴を天の窓として
公魚の味は淡白吾(あ)にも似て
公魚で込み合いたるや舟の中
公魚漁漢(おとこ)は猛し網を引く
釣りあげて公魚の目の薄みどり
公魚の焼き汁ぽたぽた火の噎び
行く季節ワカサギ釣りで惜しむかな
公魚や網揉みくちゃに犇めけり
微かなる魚信逃さず公魚釣り
舫解き公魚漁に船つづく
告白を公魚釣りで決めてみん
公魚やいのち犇めくひとつ網
公魚やげに群れたるやあな否や
網抜けて跳ぬ公魚を宙に追ふ
公魚の波を友にて旅立ちか
藻の匂ひ纏ふ公魚網を引く
公魚の氷穴に覗く湖の春
公魚の豊漁見送る茜雲
凍らずば公魚釣りを船上で
公魚を揚げて夕餉の整へり
瞬く間公魚跳ねて瞬かず
芦ノ湖で公魚と富士去年の春
公魚の釣れるピッチに余裕でき
紅梅を公魚に添えフライ食う
公魚のぴくりと跳ねて動かざる
公魚の氷を穿つ春の音
一日の釣果小鉢のさくら魚
公魚や老化防止の響きあり
公魚と言ふ哀しみのありにけり
公魚の獲りたてといふ湖の味
公魚の命多く食べ今日も生く
公魚の釣られて氷まとひけり
公魚や細身透かせて湖の色
春光が氷穴貫く公魚釣り
ぽつぽつと水輪現れけり公魚来
みぞれ降る暗き湖公魚舟 
水底の公魚あの少年の日の
二度三度跳ねて公魚凍りつく
公魚のフライになった背ピンと張り
公魚のかなしからずや伊万里皿
公魚の釣果は問わず別れけり
からっと晴れて公魚を釣りあげる
公魚釣り次第に迫る山の影
公魚の一族郎党釣られけり
公魚や筑波颪を帆に受けて
公魚の釣れる楽しみ夢心地
公魚の鱗弾けし親子舟
公魚の命一つをいただけり
公魚の甘露煮とやら松江の味
公魚や湖春を揚げる音のして
公魚の天麩羅もある退院日
公魚やアルミの皿をはみ出せり
公魚や釣られて泳ぐ油かな
釣り糸にわかさぎ値札のごと垂るゝ
公魚の食ふをためらふ瞳かな
いくたびも氷穴を覗く公魚釣り
公魚のフライにしたりよく跳ねる
公魚を食べて身細る思いかな
公魚や闇へと垂るる白き糸
公魚が棒のかたちに釣られけり
公魚を二匹食して白寿かな
公魚や釣られてすぐに油に浸かる
公魚を夫婦で食べて久しいか
公魚を手繰り春を掴みけり
白鳥のやうに湖上を公魚船
公魚を釣れば後悔先に立つ
公魚釣り湖上に春を手繰り寄せ
公魚の命の味は酸っぱいか
公魚を食べて夫婦で長話