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俳句庵2022年11月優秀賞発表

季題 

  • 満天の星に抱かれ山眠る

    東京都 岩川 容子 様

  • 戦無き世を夢見つつ山眠る

    埼玉県 哲庵 様

  • 懐に湖を抱きて山眠る

    千葉県 伊藤 順女 様

  • 事件なき村の駐在山眠る

    神奈川県 塚本 治彦 様

  • 山眠る相見て妻と経し月日

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 11月の季題は「山眠る」です。春期の「山笑ふ」に対を為す句です。この季語を見ていると、いつしか静けさに包まれて来る思いがして来ます。皆さんの作品にも、場面は変わりますが、同じ思いが感じられて来ます。それぞれの情景を鑑賞致しましょう。
 優秀賞の岩川容子さんの句。「満点の星」が、一句に相応しいです。中七の「抱かれ」が、上五と下五を善く結んでいます。広々とした野の四周には、幾つもの山が続いています。振り仰ぐ天上には星が瞬いています。そういう景を、この句は温かい思いで表現しています。上五中七がみごとです。
 哲庵さんの句。上五の「戦無き世」が、この句を読む人の思いを納得させるでしょう。その思いは、四囲の山並にも通っています。「戦無き世を」、「夢見つつ」と読むと、その思いは、句を読む全ての人の思いを納得させ、山眠るに至ります。
 伊藤順女さんの句。こういう景は、山の多い日本では、善く見ます。善く見る景ですがそれを一句にまとめるには、言葉の選択が必要です。それをこの作品は善くまとめています。「懐に」の上五がみごとです。
 塚本治彦さんの句。テレビドラマの刑事ものを見る人は多いでしょう。「事件なき村の駐在」もその一つです。「事件なき」に、その村の自然や住民の環境が浮かんで来ます。平和な風土には、そういう風土の物語りが有ります。ストーリーが浮かんで来るような「刑事もの」です。
 今月の佳句。〈終バスのテールランプや山眠る 佐藤美智子〉。〈炭焼きの煙一筋山眠る 佐藤慶子〉。〈八軒の部落を抱き山眠る 飛翔〉。〈日は沈み妻の墓ある山眠る 岸野 洋介〉。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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