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俳句庵2022年12月優秀賞発表

季題 

  • コロナ禍の予防も終えて年用意

    ブラジル 林 とみ代 様

  • 野仏を洗ふ老婆の年用意

    愛媛県 加島 一善 様

  • 表札の母の名外す年用意

    神奈川県 海野 優 様

  • 老い二人暮ししづかに年用意

    沖縄県 渡嘉敷五福 様

  • 年用意残る雑木も伐り揃へ

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 12月の季題は「年用意」です。歳末になると、新しい年を迎えるために、様ざまな用意をします。成田不動などでは、長い笹竹で寺院の梁の塵を払う姿が、映像に写されています。大掃除も多様です。「年用意」は、そういう景を写し取った句です。今月は出句の数が何時よりやや少ないでしたが、佳句が多いでした。何時もの通りの厳選の中から受賞作品を選出しました。
 優秀賞の林とみ代さんの句。巷間最も恐れられている「コロナ禍」は、三年過ぎても、絶滅の気配はありません。予防接種も五度目に入っています。この句、「予防も終へて」に、年用意に向う思いが、さらりと表現されています。「コロナ禍」が突出していないのが、よろしいです。
 加島一善さんの句。一見して情景が浮かんで来ます。野路を入った所に立つ年数を経た仏像。今では掃除をする人もなく塵が付いています。今、一人の老婆がその仏像を洗っています。「年用意」とあるから、それは恒例となっているのでしょう。善い景です。「老婆」が活きています。
 海野優さんの句。この「母」は、今年他界されたのでしょう。父は既に亡く、老母の表札が殊に人眼を引いていたと思われます。その母が他界され、表札から外されることになったのです。「母の名外す」に、思いがこもっています。
 渡嘉敷五福さんの句。作者は七十二歳。「老い二人」の表現も宜しいでしょう。この句、「暮ししづかに」に注目します。日常の生活も、また年用意も、この中七の通りなのでしょう。それを蘇生しているのが、老い二人なのです。こういう家庭は、かねてより清潔感のある、さっぱりとした家族です。
 今月の佳句。〈ふるさとの味を取り寄せ年用意 斉藤浩美〉。〈来年の今頃如何に年用意 伊藤博康〉。〈氏神に一年を謝し年用意 岩崎美範〉。〈家刀自の滞りなき年用意 永田〉。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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