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俳句庵2023年1月優秀賞発表

季題 

  • 紅梅の一木残すダム湖畔

    大阪府 津田 明美  様

  • 紅梅の咲きてはなやぐ尼僧庵

    ブラジル 林 とみ代 様

  • ありありと芳紀の風情薄紅梅

    大阪府 鈴木 千年 様

  • 紅梅や今日は合格発表日

    愛媛県 加島 一善 様

  • 紅梅や空に一朶の雲ながれ

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

二月の季題は「紅梅」です。紅梅、自梅ともに、皆さん方の庭にも咲いていることと思います。花木の中でも殊に愛されている花です。二月の題はその紅梅です。古来詩歌に詠まれている花だけに、句作には心を正す花です。今月の皆さん方の出句は何時もより少ないでしたが、それだけに秀句も多いでした。数かずの秀句を、心して味わって下さい。
優秀賞の津田明美さんの句。作者は大阪在住。広大なダム湖をつつむ湖畔の景です。その湖畔に一樹の紅梅が花を咲かせています。重層なダム湖を背景に、一樹の紅梅の景は見事です。「一木残す」に、景を自身の胸に織り成す写生のわざが善く感じられます。紅梅の季節もそうそう近づいて来ました。
林とみ代さんの句。作者はブラジル在住です。この「尼僧庵」は、キリスト教の修道女の施説でしょうか。その庵の庭に、今年も紅梅が咲き始めました。「咲きてはなやぐ」に、如何にもその花の美しさが感じられます。座五の「尼僧庵」が善く締めています。
 鈴木千年さんの句。「芳紀」は、年頃の女生の年齢に挿頭す言葉。「芳紀まさに十八歳」、対象の「薄紅梅」に、「芳紀の風情」がみごとマッチしています。上五の「ありありと」も、その風情を見下ろすように、「薄紅梅」を近づけています。
加島一善さんの句。お孫さんを詠んだ句でしょう。紅梅の咲く頃は、高校の入学試験発表の時期です。この句、中七下五にそれを率直に読み上げているのが宜しいです。「今日は合格発表日」、善い調べです。「紅梅」との取合せもみごとです。
  今月の佳句。〈紅梅や路地の銭湯袋道 伊藤順女〉。〈紅梅やかなたに碧い筑波山 小松崎孝志〉。〈紅梅やまだ生かされてありがたき 木山満〉。〈両足で天蹴る赤子紅梅花 砂山恵子〉。夫々の紅梅が生きています。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

季題 

  • 移民等の郷愁癒す冬桜

    ブラジル 林 とみ代 様

  • 独り居の母への手紙冬桜

    埼玉県 石塚 彩風 様

  • 床の間を飾る一枝や冬桜

    東京都 豊 宣光 様

  • 特養の妻は傘寿や冬桜

    神奈川県 川島 欣也 様

  • 夕焼けを仄と浴びゐる冬ざくら

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 令和五年に入りました。1月の季題は「冬桜」です。歳時記には、「冬桜は十二月から翌年の一月にかけて咲き、花は白色の一重咲きで木も小さい」と書いてあります。今月の皆さんの出句は、何時もより少ないでしたが、多様な冬桜の景を写してあり、選にも興味深いものがありました。仮名は旧仮名遺でお書き下さい。
 優秀賞の林とみ代さんの句。作者はブラジル在住です。彼の地にも「冬桜」は咲いているのでしょう。他郷に移り住んでいる人たちにとって、「冬桜」は掛替えのない故郷の花です。冬桜を仰ぎつつ古里を思う同邦の人たちの姿が、浮かんで来ます。冬桜の花の功用を思うみごとな表現の句です。
 石塚彩風さんの句。「一人居」は「独り居」としました。作者は今、「冬桜」を見つつ、実家に独り住む母堂に手紙を出そうとしています。冬桜には、母堂への思い出があるのでしょう。冬桜が出過ぎず、「母への手紙」を善く支えています。
 豊宣光さんの句。この句は一転「冬桜」が主役です。床を一段高くした「床の間」。壁には書画の掛物が飾ってあります。その前に一鉢の冬桜が置いてあります。落ち着いた家居の様子が浮かんで来ます。中七の「一枝や」が、善く一句をまとめている句です。
 川島欣也さんの句。作者の夫人は、特別養護老人ホームに入居しています。傘寿(八十歳)です。それだけの句ですが、読んでいると、「妻は傘寿や」に、作者の思いが厚く込められている思いがします。そして、その思いを確と支えているのが、冬桜です。
 今月の佳句。〈幹撫でて労う母や冬桜 いちご一会〉。〈鄙びたる町の賑はひ冬桜 伊藤順女〉。〈もののふの眠る鎌倉冬桜 井手浩堂〉。〈冬桜酔えば十八番のいくさ歌 哲庵〉。夫々に生活があります。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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