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俳句庵2023年10月優秀賞発表

季題 

  • 新米や日の本の幸ここに有り

    大阪府 津田 明美 様

  • 黄金の波うつ棚田今年米

    ブラジル 林 とみ代 様

  • 新米や外地赴任の子を想ふ

    東京都 岩川 容子 様

  • 田の神に謝して頂く今年米

    東京都 岩崎 美範 様

  • 新米を吹く風寛に千枚田

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

十月の季題は「新米」です。歳時記は次のように記してあります。「今年収穫した米を新米と呼ぶ。十月ごろ、早稲の米が出回ってくる。秋祭は新米収穫の祝いで、新米に糯米を加えておはぎ餅を作り、神に供え、自分たちでも食べる。去年の米を古米と呼び、一昨年の米を古古米と言う。また、新しく仲間入りした者を新米と言うのは、新前の音転である。」新米は季語としては晩秋に当たります。皆さん方の出句は、府県を問はず、佳句が多いでした。
 優秀賞の津田明美さんの句。冒頭にもあるように、新米は今年収穫した米です。この句の善さは、新米を「日の本の幸」と評価した中七にあります。更に下五の「ここに有り」に、その存在の位置付けを見ます。通しで読むと善く納得させられる一句です。
 林とみ代さんの句。棚田に育った今年米を「黄金の波うつ棚田」と表現したのが、みごとです。秋になるとこの棚田は、全く「黄金の波うつ」棚田となります。「今年米」の豊かな表現とも受け取れます。
 岩崎美範さんの句。「田の神」は、田を守護する神、農業の神です。一家は今、今年米を食べています。既に神棚にも供えてありますが、「田の神」に謝しながらの食事です。真摯な思いのする句です。
 岩川容子さんの句。一句を読むと、「外地赴任」が重く映じられているのが分かります。歴史と共にある「新米」を語りながら、その新米をわが子と共に食べるのが、母の思いなのです。その日の間近いことを願っています。
 今月の佳句。〈父祖の地の水の近江の今年米 鈴木三津〉。〈新米来離農の手紙添えられて 龍野ひろし〉。〈新米や田んぼと語る父のゐて 後藤允孝〉。〈今年米土のぬくみの残りをり 町田勢〉。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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