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俳句庵2023年4月優秀賞発表

季題 

  • 桜餅ひと日豊かに過ごしけり

    大阪府 津田明美 様

  • 桜餅妻の墓前に供えけり

    岡山県 岸野洋介 様

  • 母の忌や欠かせぬものに桜餅

    大阪府 鈴木三津 様

  • 嵐山や散歩の後の桜餅

    京都府 中村万年青 様

  • 遠き日の母の笑顔やさくら餅

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 四月の季題は「桜餅」です。「鶯餅」や「草餅」のような親近感はありませんが、作品は江戸に遡ります。歳時記の先人の句と並んで、〈とりわくるときの香もこそ桜餅 万太郎〉という先師の句を読んでいると、言葉が止まる思いがします。歴史は参考として、今は今としての「桜餅」を案出しましょう。今月も多様な「桜餅」の句が出ています。予選二十数句の中から入選句を選びました。
 優秀賞の津田明美さんの句。桜餅の有り様が、「ひと日豊かに過ごしけり」という作者の安寧と結びついているところに、この句の善さを感じました。「豊かに」が、「桜餅」と善く結びついています。「ひと日」も善いですね。季語の有り様を、入念に点楡してある作品と言うべきです。
 岸野洋介さんの句。作者は現在九十歳。妻への思いは、この句に充分に表現されています。亡き夫人は、生前桜餅が大好きだったのでしょう。今、作者は、買って来た桜餅を、夫人の墓前に供えつつ、在りし日を思い出している様子が善く出ています。
 鈴木三津さんの句。作者の母堂は桜餅がお好きだったのでしょう。「欠かせぬものに」に、句を読みながら私たちも思いを深くします。桜餅を好む人は年齢的にも幾らか高齢という感じがします。「欠かせぬものに」には、そういう作者に生活習慣も善く出ています。
 中村万年青さんの句。嵐山は京都市西部にある山。大堰川に臨み桜の名所と言われています。その嵐山を望みつつ、「散歩の後の桜餅」が善いです。眺望の良さが作者をつつみ、嵐山の風姿を自ずと浮かび上がらせている句と言えましょう。
 今月の佳句。〈縁側へほどよき風や桜餅 瀬川令子〉。〈この子らとこの桜餅食む平和 加島一善〉。〈ほのかなる香にときめくや桜餅 井手浩堂〉。〈桜餅今ある命惜しみつつ 岩川容子〉。景が浮かんで来ます。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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