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俳句庵2023年8月優秀賞発表

季題 

  • 移民等の先駆者偲ぶ送り盆

    ブラジル 林とみ代 様

  • 送り盆父母は互ひを杖として

    東京都 岩川容子 様

  • 見渡せる田より暮れゆく送り盆

    神奈川県 井手浩堂 様

  • 久々に家族そろふて送り盆

    東京都 右田俊郎 様

  • 古里を妻と偲ぶや送り盆

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

八月の季題は「送り盆」です。歳時記には「送り盆」と共に、「送り火」の季語も載っています。迎火、送り火、送り盆、門火、共に初秋の行事です。(日本大歳時記)。句作の際は歳時記を善く見ましょう。皆さん方の句は、北海道、本州、四国、九州、沖縄と、日本列島の全てに及んでいます。作品には、特別地方色の濃い表現はありませんでした。
 優秀賞の林とみ代さんの句。上五に「移民」とありますが、作者は移民の皆さんと交友があったと思います。「先駆者」がそれを支えています。作者の句を見て感じることは、視野の広さです。「移民」、「先駆者」、「偲ぶ」、共に視野の広さから来ています。口遊む句それぞれに景が浮かんで来ます。
 岩川容子さんの句。作者の視野に映る家庭の有り様が見てるようです。「父母は」、「互ひを」、「杖として」。中七、下五を三つに分けると、有り様が浮かんで来ます。中でも「杖として」が善いですね。助け合いの思いが良く出ています。安らかな家庭が、見えてるような思いです。
 井手浩堂さんの句。「見渡せる田」とあります。遠く広く望み見るという景です。広々とした稲田を思います。その先は山陵なのでしょう。稲田の水面には雲が浮かび、植えてある田の面の稲は丈を揃えています。まだ低い稲ですが、思いの深い田の面です。
 右田俊郎さんの句。「送り盆」を詠んだ句に、マイナスイメージは相応しくありません。この句の印象は安らぎのある家族です。「家族そろふて」が善く効いています。久し振りに揃う家族に、「送り盆」が見事に調和しています。
  今月の佳句。〈残された生家守りて送り盆 高梨裕〉。〈炊きたてを急ぎ供えて送り盆 飯島まゆみ〉。〈送り盆主なき庭朽ち果てつ 山田翔子〉。〈父の名をそつと呼ぶ母送り盆 岩崎美範〉。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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