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俳句庵2024年4月優秀賞発表

季題 

  • 退院の朝や窓辺の花の雨

    神奈川県 川島 欣也 様

  • 添ふ妻のしづかな寝息花の雨

    東京都 町田 勢 様

  • 早世の子に花の雨野辺送り

    広島県 老人日記 様

  • 蛇の目傘似合ふ舞妓や花の雨

    ブラジル 林 とみ代 様

  • 花の雨止むや軒端の夕明り

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

四月の季題は「花の雨」です。歳時記には、桜の花に降りそそぐ雨、或いは、桜の花時に降る雨、とあります。花見のあとのぼんぼりに滲む雨、散り敷く花びらに雨滴の滲むのは、如行にも今日的な物悲しさが感じられなくもない風景です。「日本大歳時記、春の部」には、こう書いてあります。私たちにも馴染みのある季語です。
四月の優秀賞は、神奈川の川島欣也さんでした。この句、上五で、今日は治療中の病気を退院する日と分かります。中七下五に、その日の「花の雨」のことが記されています。この句には、そういう作者の喜びが、静かに湧くように詠まれています。「窓の雨」が見事です。
 入賞の三句は、それぞれの人への思いが善く出ています。町田さんの句。「添ふ妻」が、奥さんへの思いを善く表わしています。その奥さんも、いつしか眠りに入ったと見えて、気の付いたのは、「しずか」な寝息でした。「花の雨」が効果的です。平和な、思いの深い句と言えましょう。
 老人日記さんの句。「早世」は世を早く去ること。今日はその子の野辺送りでした。雨が降っています。この句、その花の雨が、逝去の子を包むように、良く出ています。
 林とみ代さんの句。一転、舞妓さんの姿を写しています。それが「蛇の目傘似合ふ舞妓」で、その華やかな傘とともに、舞妓の姿が思い出されます。「花の雨」に相応しい句です。

今月の佳句。〈お見合ひも別れの時も花の雨 千葉 伊藤順女〉〈人形を抱きあやす子花の雨 埼玉 石塚彩楓〉〈大仏の胸より零れ花の雨 神奈川 沼野大統領〉〈花の雨ひとり汲む酒旅の宿 東京 右田俊郎〉

「選者詠」の選評
「花の雨」がひと時止んだ時の句です。今まで雨に烟っていた軒端がほのかな明りに包まれて、風景に形が見えるようになった折、浮かんだ句です。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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