俳句庵 2022年6月 作品一覧
6月「梅雨」 全応募作品
(敬称略)
- 梅雨のため洗濯物や家の中
- 珍しき真っ赤なる陽や梅雨の夕
- 珍しき真っ赤なる陽や梅雨の夕
- 静けさや静かに満ちる梅雨の郷
- 梅雨来れば吾が相棒やアンブレア
- 玉垣に寄付の金額梅雨寒し
- 腹押せど泣かぬ人形梅雨の闇
- 砂利道にひやりと風や梅雨の空
- 梅雨の浜船底上がる難破船
- 梅雨寒や同じ話題のワイドショー
- 畳目のズボンの寝押し朝の梅雨
- 梅雨滂沱石をも穿つ雨量かな
- 醜草の生気溢るる梅雨晴れ間
- 梅雨空や催ひ傘ゆく二人連れ
- 梅雨の波のたり礁を撫づるかな
- 梅雨空や降りみ降らずみ空模様
- 早乙女や今は昔の里の朝
- ふるさとの梅雨を重ねし雨の駅
- 梅雨来たる部活を休み田へ急ぐ
- ありがたき梅雨を忘れてありがたし
- 赤い傘それぞれの生そして梅雨
- 梅雨止まず濃き珈琲を淹れ独り
- 荒梅雨に上京せしや夜行バス
- 龍神のもがく姿や梅雨出水
- 荒梅雨の高速道や横転車
- 壁に梅雨染む築後半世紀
- 深梅雨の黒い聖母を拝しけり
- 産卵の翅をふるはす梅雨の蝶
- 青梅雨や香煙しるき善光寺
- たたなはる山茫々と梅雨に入る
- 梅雨燕雁木通りをすーいすい
- 梅雨晴やしあはせ指数見ゆるかに
- 学童の声かき散らす送り梅雨
- パソコンの青空ながむ雨の窓
- 梅雨の空吹き飛ばすよな封書買う
- 古傷のやはり正直梅雨来る
- 合併の厚き雑誌の梅雨湿り
- 重たげな呑み屋の暖簾梅雨の街
- 荒梅雨や池の魚のよく跳ねる
- 黒羽をはらう鴉や走り梅雨
- 退院す梅雨の重さのギプス共
- 長梅雨や段差を前に松葉杖
- 梅雨に入る化粧ポーチに頭痛薬
- 梅雨深し翁の並ぶ同人誌
- 怒られて行く当てもなく梅雨の駅
- 長梅雨の夜は書斎にクリスティー
- 荒梅雨や音立て流る最上川
- 園丁の空を見上ぐる走り梅雨
- 生来の癖毛逆立つ走り梅雨
- 首筋に纏ひつくよな梅雨じめり
- 踏切の信号滲み梅雨入りかな
- 汁だくの牛丼さつと走り梅雨
- 荒梅雨やパワーショベルの出番待ち
- ぽつぽつと聞こゆる妻の梅雨かな
- 梅雨寒やセーター羽織り文庫読む
- 梅雨の傘花柄嬉し後を行く
- 梅の雨雀三匹濡れそぼつ
- 梅天や行こか戻ろか母娘連れ
- 睡蓮や葉にパチパチと梅の雨
- 振り返り合はせる歩幅梅雨の月
- 観覧車中止となりぬ梅雨滂沱
- 梅雨空にカヌー一艘漕ぎ出づる
- 朝ぼらけ軋む雨戸の梅雨入かな
- 走り梅雨傘を畳んで通学路
- 梅雨入りに庭の草花活き返り
- 穏やかに過ぎし一日梅雨曇り
- 掃き寄せて庭木のごみに梅雨じめり
- 母の忌の近づいてゐる梅雨の家
- 梅雨じめり物音全て敏くなり
- 仁王の目門にきはだつ梅雨の雷
- 老木の切株白く梅雨に入る
- 梅雨籠とみになつかし話など
- 走り梅雨妻が買置く砂糖菓子
- 青梅雨のけぶる湖一葉舟
- 山陰の影引き寄せる走り梅雨
- 裸婦像の人魚めきたる梅雨の朝
- ウクライナ空爆朝刊の梅雨湿り
- 梅雨深し両生類のごと籠り
- ワイパーのことんと動き走り梅雨
- 梅雨寒や差出人のなき手紙
- 梅雨茸や岸の岩間の温泉のけむり
- 軒下に片目つむるや梅雨雀
- とかげ二匹追ひつ追はれつ梅雨晴間
- 走り梅雨仏足石のたまり水
- つくばひの水黒黒と梅雨ぐもり
- 梅雨晴や軽トラで来る刃物研ぎ
- 出港の汽笛の湿る梅雨入かな
- 梅雨籠何も書かずに閉づ日記
- 荒梅雨や窓に巨大な照坊主
- 梅雨冷や込み合ふ駅の地下通路
- 梅雨今も鳥のこゑ消し木々ばかり
- 町外れのこども食堂梅雨はぐれ
- 梅雨空や今朝の紅茶と走る子等
- まさに梅雨街人奪い頻りなり
- 石室の石の感触梅の雨
- 槌音のやみたる梅雨や恨めしき
- ケアマネと顔突き合わせ梅雨に入る
- 子を駅へ遠回りする今朝の梅雨
- 山里や時折鶏の鳴きて梅雨
- 荒梅雨や天に昇れぬ雲煙
- 飯を食うワイパー越しの街は黴雨
- 新幹線四時間乗りて梅雨最中
- 梅雨の日々今日は何する布団出る
- 梅雨さなか森羅万象寝に就く
- 納骨日墓前の僧や梅雨深し
- 梅雨の夜の配水塔の屋根煙る
- 青梅雨の列車にひらく山花集
- 梅雨深し蒼き瞳のペルシャ猫
- 梅雨深しをさな子の折る紙リボン
- 梅雨空をケンタウルスの翔りゆく
- 母の声思い出せずに梅雨に入る
- 茫茫と大和三山梅雨深し
- 梅雨明けの激しき雷を伏して聞く
- 恙なく術後二年に梅雨の月
- 為すことの多き一日や梅雨晴れ間
- 梅雨晴れや 一人住まいの 布団干し
- 香焚きて まだ来ぬ客の 梅雨雷
- 梅雨つずき コンビニ通い 遠き道
- 梅雨激し 銀座地下道 地図探し
- 梅雨空を 見上げ溜息 旅支度
- 雨傘を抱え帰るや梅雨夕焼
- 空梅雨や素知らぬ顔の暴れ河
- 梅雨しとど乞食姿の正造翁
- 梅雨の雨木の葉の上を滑りけり
- 梅雨の空関八州を覆いけり
- 梅雨寒に旅の楽しみ坊泊り
- 梅雨最中生徒の数より多い傘
- 梅雨湿り拭きて遊ばす滑り台
- 街外れ梅雨空みあぐ鴉をり
- 母の手は膝を撫づるや梅雨の夜
- 梅雨晴間はぐれ鴉の羽繕ひ
- 青梅雨や手垢のつきし山頭火
- 水を避け気配を避けて梅雨の蝶
- 梅雨載せて荷物重たくなりにけり
- 梅雨晴間墨噎せ返る書道室
- 梅雨晴間空は大きく息をする
- 飛行機雲一筆走り梅雨明くる
- 飛行機雲一筆走り梅雨明くる
- 桟瓦威風で受くる男梅雨
- 登校の黄傘黄合羽梅雨に入る
- 梅雨明の虚空に皓歯摩天楼
- 梅雨めくや少し混みあふ傘売り場
- 梅雨籠りコロナ籠りに癒さるる
- 梅雨入り待つ知己はあぢさゐ園の主
- 梅雨籠り雨のトレモロくちずさみ
- 走り梅雨かさを持たふかもつまいか
- 文士らの墓訪ひ梅雨の東慶寺
- 渡し舟出てすぐかすむ梅雨最中
- いく度も水位たしかむ男梅雨
- 青梅雨や欄干の朱の煙りたる
- ワイパーの 動く激しく 男梅雨
- この雲は 梅雨を呼び込む ものなれり
- ダブルパンチ 梅雨とコロナで 家ごもり
- 梅雨湿り空も空気もむらさきに
- 旱梅雨更科蕎麦の旨い店
- 梅雨ゆやけ同窓会は鎌倉で
- 梅雨寒や日暮れの淡きネオン管
- 父と子の並べ干す傘梅雨の晴れ
- 梅雨の夜コロナ病棟救急車
- 梅雨しとど入相の鐘重き杖
- 梅雨深しケチャップ濃いめナポリタン
- 大梅雨に一人濡れ身の結願寺
- 梅雨明けや羅漢の頭あたりから
- 仏壇の扉の軋み梅雨じめり
- 折紙の緩き折目や梅雨じめり
- 古本の甘き匂や梅雨じめり
- 長梅雨や轟音立てる乾燥機
- 梅雨寒や湿りたるまま着る野良着
- 梅雨のバス傘の雫に濡れる床
- 梅雨の街濡れし車道のタイヤ音
- 街灯に輝く路面梅雨に濡る
- 梅雨入りす今日もまた屋内練習
- 植物にうれしい僕に嫌な梅雨
- 梅雨ごもり妻の遺影と睨めっこ
- お好みを今日も焼いてる梅雨の路地
- ケアハウスカーテン閉じて梅雨点す
- 梅雨しとどダム放水の声険し
- 空襲で黒い雨降る梅雨の朝
- 予報士が頭悩ます梅雨来る
- 梅雨来て乾いた土が瑞々し
- 梅雨来て予報気になる日々となる
- 梅雨来て予報気になる遠足日
- 待ち望む樹木輝く梅雨かな
- 梅雨曇フーセンガムも膨らまず
- 時刻表余白にとまる梅雨の蝶
- 梅雨の沢軽き響きに白き雨
- 雨樋の目詰まり除く梅雨の朝
- 梅雨の田や母の手紙の土の跡
- 老犬の眠入る玄関梅雨の夜
- 梅雨の道古長靴に水の漏れ
- 重き音のからくり時計梅雨の空
- 里の庭梅雨の恵みのたわわなり
- 田仕事に助っ人送る梅雨の朝
- 墨をする梅雨の写経の筆重し
- 閉ざされしシャッター通り里の梅雨
- 子規庵の庭の教えよ梅雨谷中
- 子規庵の庭の教えよ梅雨谷中
- 梅雨寒や夜なべつきない印刷所
- 荒梅雨や図書館に籠る御老人
- 荒梅雨の御納戸色が止みもせず
- グラニュー糖少し湿らせ梅雨の明け
- 傘かしげ梅雨入りの路地の会釈かな
- 病室の壁ぽつねんと梅雨寒し
- 水溜り梅雨の深きを跨ぎけり
- 梅雨空を押し上げて行く快打音
- クルーズを終へて母港へ迎へ梅雨
- とりどりの色の傘ゆく梅雨の街
- 石庭の石をしとどに戻り梅雨
- 寺町の甍濡れゆく走り梅雨
- 寺町の甍濡れゆく走り梅雨
- いっときの明るき空や梅雨夕焼
- パソコンの誤作動事由梅雨湿り
- 梅雨滂沱高層ビルを洗いけり
- 梅雨予報当たり外れはどちらでも
- 梅雨入りや太宰全集揃えをり
- 梅雨寒や南行の笛長く鳴く
- LPの傷音数え梅雨の夜
- 梅雨雲を掻き切る鉄の翼かな
- 戻り梅雨友の訃伝ふ声かすれ
- 梅雨の葉に街の光が蹲る
- 梅雨入りや和菓子つまんで一服す
- 長梅雨に湿るこころの重さかな
- 走り梅雨小虫葉裏へ隠れけり
- 梅雨空や暗き昼間の信号機
- あざやかに傘の花咲く梅雨の街
- さよならと感謝を叔父に梅雨の月
- 夕暮れの風の重さや梅雨湿り
- 梅雨深し手話は言葉の道しるべ
- 水嵩を上げて大河の走り梅雨
- 風の知る梅雨の兆しや樹々騒ぐ
- 長梅雨にすること忘れもの忘れ
- バス停の屋根譲り合ふ走り梅雨
- 北海道除き列島梅雨に入る
- 校庭を見やる校長走り梅雨
- 傘の色とりどり梅雨の通学路
- 梅雨なれど無菌のくらしずれ覚ゆ
- 弁当の味濃きままに梅雨長し
- 梅雨深し免許返納してSuica
- 子と二人取り残されて梅雨深し
- 鈍色の梅雨や黄色い傘五つ
- 裏山も水墨画化す梅雨の景
- 街道の藁葺き屋根や梅雨寒し
- 梅雨ごもりコーヒー豆の固さかな
- 雨の降る垂直線や梅雨寒し
- コンビニでお握り買って梅雨の山
- 梅雨の朝一番乗りをする露天
- 無駄遣いしている子供梅雨の店
- 傘さして無口な二人梅雨の旅
- 天気予報通り開聞岳は梅雨
- 四畳半ひと間の孤独梅雨夕焼
- 梅雨深し東京湾ゆく汚物船
- 寂しいと呟き眺む梅雨夕焼
- 梅雨近し狂った暮らし誤振り込み
- 戦況は一進一退走り梅雨
- 荒梅雨や指にはりつくオブラート
- 荒梅雨やとんこつ味のやや濃い目
- 梅雨激し狛犬の目の濡れしまま
- 梅雨楽しアンパンマンのくつと傘
- ガレージはままごと遊び梅雨深し
- 辞書広げ歳時記広げ梅雨籠り
- 天気図のセンターに座す梅雨湿り
- 梅雨寒や瓦斯の炎のうつくしく
- 梅雨出水はや被災地にボランティア
- 染み抜屋表具屋も閉ぢ梅雨深む
- 梅雨空やクレーン鈍く動き出す
- 梅雨明や畑に長靴干し忘る
- リモコンの隣りに眼鏡梅雨に入る
- 原稿にインクの滲み梅雨湿り
- 青梅雨や比良も比叡も水垂るる
- 旱梅雨今朝の風はや陽の匂い
- 梅雨空へ黄色い傘の雨撥く
- シーソーの辺に潦梅雨夕焼
- 梅雨寒や農事日誌に祖父の文字
- 梅雨晴やサブグランドの草野球
- 梅雨曇おくやみ欄のあの名前
- 梅雨籠アルバム捲る妻無言
- 梅雨明や空を突き刺す避雷針
- 荒梅雨や鴉のつがい前のめり
- 東雲に水をひとくち走り梅雨
- 空梅雨の岸壁の釣り人多し
- 乳母車少し遠出の梅雨晴間
- 自転車のゴム紐切れる梅雨晴間
- 自転車のブレーキ直す梅雨晴間
- 花も葉も色きわだちて梅雨晴れ間
- 木も草も緑は深く走り梅雨
- 羊羹の肌つややかに梅雨に入る
- 梅雨寒や首まで浸かる昼の風呂
- ショベルカー再開発の梅雨の泥
- 梅雨晴れ間かたく絞って拭く畳
- 梅雨曇り天へ近付く観覧車
- 病棟の長き廊下や梅雨の夜
- 何事もすることもなく梅雨最中
- 晴れの国讃岐平野も今は梅雨
- これからの梅雨これからの憂鬱よ
- 龍吠えて明日は此処らも梅雨かな
- 窓の外眺めて梅雨を楽しみぬ
- 丁寧に毛繕う猫梅雨の窓
- 大鍋の釜揚げうどん梅雨夕焼
- 行く傘の色のいろいろ墜栗花雨
- 青梅雨や中也全集拾い読み
- 梅雨じめり洗い晒しのシャツを着て
- 梅雨の朝気づかぬうちの迷い箸
- 予報図の梅雨前線動かざる
- 旅をして蝦夷梅雨と呼ぶ雨に遭う
- 飯炊けて梅雨の温気にまざりけり
- さらでだに疫いまなほ梅雨に入る
- 雲を脱ぐ普賢の峰へ梅雨の月
- 梅雨寒し村に緊急ヘリポート
- 正座すら出来ぬ齢や梅雨の冷
- いそいそと野良へ下りたつ梅雨晴間
- 地下街を出で新宿の梅雨晴間
- 墨の香の漂ふ座敷梅の雨
- 白き花あまた咲き初む走り梅雨
- せせらぎに魚影色濃き梅雨深し
- 雲を下に五十五階の梅雨の空
- 発車メロディー靴の感触梅雨に入る
- ハンカチの女の子梅雨に入る駅
- 梅雨入りかな線状降水帯こわし
- 梅雨晴や雷族の郡とおる
- 山国や梅雨入りは早し明け遅し
- 空梅雨をいつも心配する南部
- ブラジルの梅雨の長さよ6ヶ月
- 先見える眼鏡が欲しき梅雨の闇
- チェス盤のナイトの鼻も梅雨湿り
- 連れ立ちて介護実習梅雨晴間
- 梅雨茸寄らば大樹の陰なるや
- 原子炉の丸屋根叩く男梅雨
- 梅雨来たる乾燥剤を撒き散らし
- 橋三つ越えて懐かし梅雨の里
- 梅雨籠るスマホゲームに魅せられて
- 血圧の乱れ憂ふや梅雨の日々
- 梅雨空を仰ぎ思案の外出かな
- 長梅雨や算盤玉の重き音
- 荒梅雨や足裏にひびく下水管
- 退屈な犬と目の合ふ梅雨の朝
- ガス灯や梅雨の深まる異人街
- キリン舎のとびら開きたり梅雨晴間
- 宿選ぶ天気選べず伊勢の梅雨
- 全回のパワーウインドウ梅雨の朝
- ざりがにの通せんぼする梅雨の畔
- 木の下は乾きしままに梅雨日暮れ
- 干し物で狭くなりたり梅雨の部屋
- 道路まで池広がりし梅雨の日々
- 梅雨の街傘も差さずに生徒たち
- 梅雨曇り月曜午後の保健室
- 梅雨の雷CT室は地下二階
- 長梅雨や鰻は食べぬ村掟
- 荒梅雨や書架に逆立つ露語辞典
- 梅雨に入る三十打数ノーヒット
- 梅雨空や滲む瞳の色となる
- 病床の青きシーツや梅雨来たる
- 梅雨空や平らになりし手術痕
- 梅雨来たるコピー用紙の柔らかき
- 入梅や臨月の人並びけり
- 梅雨までも遊び相手の時代の子
- 絶望の梅雨空明けぬウクライナ
- 梅雨晴れに急かされ残る疲労感
- 四回目接種有るあるらし入梅前
- 入梅の宣言我が家は疾うに出し
- 青梅雨や玻璃の箱なるロープウェー
- さよならと手を振りしより梅の雨
- 大梅雨やミルクに浸すビスケット
- 梅雨に入る何する事も部屋の内
- 梅雨空にローストポーク匂ひ立ち
- 梅雨入りせり積木ことこと床鳴らす
- 梅雨空や雲押しあげる明けの鐘
- 梅雨ながき眠れぬ夜の午前四時
- 木々の色深く潤ふ梅雨の森
- リハビリの散歩の二人梅雨晴間
- 独り言己に問ひて寒き梅雨
- 一人居の鼻歌などの梅雨の夜
- 惚けつつ真艫な話するついり
- 桐箪笥母の軋みや傘寿梅雨
- 鬼瓦仕切り直しだ傘寿梅雨
- 武者震いフル充電の傘寿梅雨
- 妻の声夢見の終い傘寿梅雨
- また戦幾声儚傘寿梅雨
- 梅雨深し寺の手水の溢れたり
- ハミングで抜ける公園梅雨晴間
- 黒々と眠る松島梅雨の月
- プレハブの現像室や梅雨深し
- 黒猫の緑の眼梅雨夕焼
- モノクロームのLPジャケット梅雨寒し
- 梅雨湿りポトフに謎の隠し味
- 入院は梅雨の最中よ図鑑買ふ
- 梅雨満月滴りながら上り来し
- 活用形倦まず唱へて梅雨楽し
- 左褄とりて祇園の梅雨深し
- ペンギンの翔び立ちさうに梅雨明くる
- 影といふ影濡れてをり梅雨の月
- 漢方薬煎じる匂い梅雨の路地
- 梅雨の闇そのまま夜になりにけり
- 古書店の匂い濃くなる梅雨湿り
- 梅雨寒や一行のみの返し文
- 頬杖に青梅雨を見る春日巫女
- 梅雨深し薬湯匂ふ母の家
- 梅雨深し気休めに貼る湿布薬
- 大屋根のつづく寺町梅雨深し
- 青梅雨や書斎の窓に大仙陵
- 梅雨晴間蝦夷にカムイの住みゐたり
- 鼈甲のネクタイピンや梅雨の蝶
- 有田焼のループタイなり梅雨夕焼
- 梅雨晴や西陣織のループタイ
- 愛弟子に愛ある叱咤梅雨晴間
- 青梅雨や歯朶の葉裏に住む小人
- 梅雨空や大人ばかりの遊園地
- ベランダに布団が並ぶ梅雨晴れ間
- 梅雨空や行事中止の電話鳴る
- 梅雨晴れや緑輝く峠越え
- つづく梅雨軒の奏でる音雫
- 梅雨に入る明けての旅の話かな
- 梅雨長く読みたき書物尽きにけり
- 梅雨長しインクの滲む招待状
- 荒梅雨や久方ぶりの賭けマージャン
- 地下道をゆく子犬連れ梅雨長し
- 新しきマンホールの蓋走り梅雨
- ぶらんこの幽かな揺れや梅雨長し
- ハルカスをがぶりとばかり梅雨の雲
- 目覚むれば梅雨の世界となりにけり
- 梅雨じめりぎぎぎとドアの軋む音
- 苔のむす灯籠の色梅雨の月
- 銀輪の雨滴さぶいぼのごと梅雨
- 梅雨晴や神保町の大カーブ
- 梅雨の川流離ふ水輪見つめをり
- 梅雨の夜や語尾のやさしい博多弁
- NO WARと二色旗高く梅雨のデモ
- 梅雨頻り電飾ニュースに核の文字
- 梅雨空や重々し国の三つほど
- 大戦史改む灯かりや窓に梅雨
- 修学旅行準備整い走り梅雨
- 沙蚕取る若き父親梅雨晴れ間
- 長椅子に趣味の園芸梅雨長し
- 荒梅雨や製瓦の町の濁り川
- 大樽にほのと味噌の香梅雨曇
- 梅雨空や気分の傘を選ぶ朝
- 葉の上を早く動くの梅雨だから
- 石庭の石に熱さよ男梅雨
- 玉砂利の静かな響き女梅雨
- 梅雨晴間初めて覗く告解部屋
- 鉄棒の鉄らしき色梅雨寒し
- ありまきら粒だちてゐる梅雨かな
- 校庭の赤旗絡みつく梅雨
- 梅雨の日の雲一枚の重きこと
- 梅の雨ビニール傘のトランポリン
- 目覚ましの音しんみりと梅雨の朝
- 黴雨きて地下鉄のおと静かなり
- 梅雨曇参道のぼる北きつね
- 梅雨空や透析の子は五十なり
- 梅雨寒や昼は名店蕎麦処
- 憂ならば色を付けたり梅雨の傘
- 古希静か梅雨の一日歎異抄
- 梅雨晴れ間庭に立つ父紙おむつ