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俳句庵 2022年8月優秀賞発表

季題  8月 「秋澄む」

  • 移民船着きし港や秋澄めり

    ブラジル 林 とみ代 様 様

  • 秋澄むや喇叭兵たる父の墓

    静岡県 大澤 定男 様 様

  • 高原のカウベル遠に秋澄めり

    東京都 佐藤 美智子 様 様

  • 千年の幹の心音秋気澄む

    大阪府 鈴木 千年 様 様

  • 秋澄むや旅荷に添ふる一詩集 

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

八月の題は「秋澄む」です。秋になり、大気が澄み切ることを言います。嵗時記の季語の牽引には、「秋澄む」の上に☆印が付いています。これは基本季語を示す印です。「秋澄む」の解説には、「季語としては新しいが、最も秋の特色を体現した季語の一つ」と書いてあります。今月も皆さんの句には、取りどりの作品がありました。厳選の中から、表記の作品を選出しました。
 優秀賞の林とみ代さんの句。この「秋澄めり」には、二つの思いがあります。一つは、移民船が初めてブラジルの港に着いた時の思い、あとの一つは、年月を経て、その港を再度訪れた時の思いです。二度とも「秋澄めり」の季節だったのでしょう。「移民」という言葉が重く大きく感じられて来ます。
 大澤定男さんの句。父君は連隊の喇叭手だったのです。故人となった父君の墓に詣で、喇叭手だった父君を偲ぶ作者、喇叭手は連隊の要です。今、父君の墓に詣でながら、昔日のことが思い出されたのでしょう。この句を見ながら、私も、子供の頃、連隊の正門から出る連隊旗と、喇叭手の一団を思い出しました。歴史の一齣とも言うべき景でした。
 佐藤美智子さんの句。「カウベル」は、放牧中の牛の首につるす鈴です。「高原」が、この場合、牛馬を放し飼いする場所となります。広い牧場を彼ち此ちする牛馬。中七の、「カウベル遠に」が善く景を示しています。
 鈴木千年さんの句。「千年の幹」は、古木を称する樹齢千年の古称です。大方は地方の古寺や神社の境内に建つ古木です。私も、郷里の神社の樟を思い出しました。神木として大切にされていました。この句の「千年の幹の心音」も、そういう神社の神木と称えられた樹木なのでしょう。「心音」が「秋気澄む」に通います。

 今月の佳句。〈秋気澄む水美しき星に棲み 西山勝男〉。〈秋澄むや丘に真白き美術館 岩川容子〉。〈雲梯の子の力こぶ秋澄めり 磯野昭仁〉。〈秋澄むや大道芸に客一人 沼宮内薫〉。(註、雲様は体育施設の一つ)

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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