メニュー閉じる

俳句庵 2022年9月優秀賞発表

季題   9月 「秋彼岸」

  • 妻だけの眠るお墓や秋彼岸

    岡山県 岸野 洋介 様 様

  • 眼裏に考妣の笑顔秋彼岸

    神奈川県 山田 ひろ志 様 様

  • 長き髪手櫛にあまる秋彼岸

    大阪府 津田 明美 様 様

  • 縁側に雨の音聞く秋彼岸

    滋賀県 東野 眞知子 様 様

  • たたなづく早瀬のひかり秋彼岸

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

九月の季題は「秋彼岸」です。秋分の日を中日とする前後七日間を指します。身近にも秋の気配を醸して来ます。単に彼岸と言えば春の彼岸です。皆さんの作品にも、「秋」の気配が多分に感じられました。それでは皆さんの作品を鑑賞致しましょう。
優秀賞の岸野洋介さんの句。一読作者の思いが伝わって来ます。作者を遺して早世された夫人への思いが、「秋彼岸」と善くマッチしています。「妻だけの眠るお墓」には、哀しみとともに、安らぎの思いも感じられます。その安らぎの思いに、作者の、亡き夫人への思いが善く読み取れる作品です。
 山田ひろ志さんの句。「考妣」は、亡き父と母。「こうひ」と読みます。この句も、上五、中七の表現が、亡き父ははの、在りし日の姿を善く表しています。「考妣の笑顔」が、「秋彼岸」と善く呼応しています。
 津田明美さんの句。「手櫛にあまる」が、日常の景を善く出しています。頭髪は人の姿を印象付けるものです。それを「長き髪」と置き、「手櫛にあまる」と受ける語法が、日常の景をみごとに位置付けています。
 東野眞知子さんの句。書斎でも客間でもなく、「縁側」とあるのが、まさに「生活のうた」です。縁側にも雨戸はあります。雨戸を開けると外気に包まれます。何故、「縁側」かという疑問もあるでしょうが、縁側という言葉には、飾らぬ素朴さがあります。「雨の音聞く」が、それを詩情化している句です。
  今月の佳句。〈いつか行く来世を想ふ秋彼岸 岩崎美範〉。〈安曇野は我が故郷よ秋彼岸 佐藤慶子〉。〈野仏に供花多き日や秋彼岸 井手浩堂〉。〈無住寺や独り墓参の秋彼岸 ダック〉。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

Page Top