ブラジル 林 とみ代 様
埼玉県 石塚 彩風 様
東京都 豊 宣光 様
神奈川県 川島 欣也 様
安立 公彦
令和五年に入りました。1月の季題は「冬桜」です。歳時記には、「冬桜は十二月から翌年の一月にかけて咲き、花は白色の一重咲きで木も小さい」と書いてあります。今月の皆さんの出句は、何時もより少ないでしたが、多様な冬桜の景を写してあり、選にも興味深いものがありました。仮名は旧仮名遺でお書き下さい。 優秀賞の林とみ代さんの句。作者はブラジル在住です。彼の地にも「冬桜」は咲いているのでしょう。他郷に移り住んでいる人たちにとって、「冬桜」は掛替えのない故郷の花です。冬桜を仰ぎつつ古里を思う同邦の人たちの姿が、浮かんで来ます。冬桜の花の功用を思うみごとな表現の句です。 石塚彩風さんの句。「一人居」は「独り居」としました。作者は今、「冬桜」を見つつ、実家に独り住む母堂に手紙を出そうとしています。冬桜には、母堂への思い出があるのでしょう。冬桜が出過ぎず、「母への手紙」を善く支えています。 豊宣光さんの句。この句は一転「冬桜」が主役です。床を一段高くした「床の間」。壁には書画の掛物が飾ってあります。その前に一鉢の冬桜が置いてあります。落ち着いた家居の様子が浮かんで来ます。中七の「一枝や」が、善く一句をまとめている句です。 川島欣也さんの句。作者の夫人は、特別養護老人ホームに入居しています。傘寿(八十歳)です。それだけの句ですが、読んでいると、「妻は傘寿や」に、作者の思いが厚く込められている思いがします。そして、その思いを確と支えているのが、冬桜です。 今月の佳句。〈幹撫でて労う母や冬桜 いちご一会〉。〈鄙びたる町の賑はひ冬桜 伊藤順女〉。〈もののふの眠る鎌倉冬桜 井手浩堂〉。〈冬桜酔えば十八番のいくさ歌 哲庵〉。夫々に生活があります。
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。
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安立 公彦 先生 コメント
令和五年に入りました。1月の季題は「冬桜」です。歳時記には、「冬桜は十二月から翌年の一月にかけて咲き、花は白色の一重咲きで木も小さい」と書いてあります。今月の皆さんの出句は、何時もより少ないでしたが、多様な冬桜の景を写してあり、選にも興味深いものがありました。仮名は旧仮名遺でお書き下さい。
優秀賞の林とみ代さんの句。作者はブラジル在住です。彼の地にも「冬桜」は咲いているのでしょう。他郷に移り住んでいる人たちにとって、「冬桜」は掛替えのない故郷の花です。冬桜を仰ぎつつ古里を思う同邦の人たちの姿が、浮かんで来ます。冬桜の花の功用を思うみごとな表現の句です。
石塚彩風さんの句。「一人居」は「独り居」としました。作者は今、「冬桜」を見つつ、実家に独り住む母堂に手紙を出そうとしています。冬桜には、母堂への思い出があるのでしょう。冬桜が出過ぎず、「母への手紙」を善く支えています。
豊宣光さんの句。この句は一転「冬桜」が主役です。床を一段高くした「床の間」。壁には書画の掛物が飾ってあります。その前に一鉢の冬桜が置いてあります。落ち着いた家居の様子が浮かんで来ます。中七の「一枝や」が、善く一句をまとめている句です。
川島欣也さんの句。作者の夫人は、特別養護老人ホームに入居しています。傘寿(八十歳)です。それだけの句ですが、読んでいると、「妻は傘寿や」に、作者の思いが厚く込められている思いがします。そして、その思いを確と支えているのが、冬桜です。
今月の佳句。〈幹撫でて労う母や冬桜 いちご一会〉。〈鄙びたる町の賑はひ冬桜 伊藤順女〉。〈もののふの眠る鎌倉冬桜 井手浩堂〉。〈冬桜酔えば十八番のいくさ歌 哲庵〉。夫々に生活があります。
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。