神奈川県 山野洋一 様
群馬県 坂口いちお 様
東京都 岩崎美範 様
千葉県 伊藤順女 様
宮崎 洋
傍題に「鴨来る」「鴨渡る」がある。鴨は早いものは八、九月ごろに北方から日本に渡ってくる。その一番手が「初鴨」。五、六羽の小グループであることが多い。「初」の付く季語はなべて同じだが、その季節の到来を愛でる思いがある。 山野洋一さんの句。大きな湖が、波を立てず静かに今か今かと初鴨を待っている。その様子を「息ととのへて」と表現したのが見事。それは実は作者のことだろう。初鴨への思いの溢れる句。 坂口いちおさんの句。この地は、作者の故郷だろう。故郷への愛情、初鴨への愛情、そして老いた自分自身への愛情。繰り返し読んでいると、作者の幸を少し分けて貰えそうだ。 岩崎美範さんの句。作者が初鴨を発見したとき、これまでの曇り空がすっかり晴れあがっていた。「まさをなる空を従へ」の措辞が上手い。この句も初鴨への愛情が溢れる。 伊藤順女さんの句。夕日が大きい理由は分からないが、大きな夕日に、長旅を終えた初鴨及び初鴨を待っていた作者の安堵感が象徴されている。安堵感故に夕日が大きく見えたのかも知れない。 今月の佳句。<初鴨や三々五々に来る園児 葦たかし>「三々五々」にこの地の子供たちの初鴨を喜ぶ気持が表れている。<初鴨の水尾真つすぐに引きにけり 山野洋一>「真つすぐ」がまことに秋らしい。<鴨の来てひと日を共に過ごしけり 木山満>待ちに待った初鴨の到来の喜び。明日も共に過ごすのだろう。<初鴨のそれぞれに名を付くる子よ 山本啓>作者の子だろうか、鴨を友のように思う気持。 「初鴨」そのものを描写してもいいのですが、新しみのある句を詠むのは苦労します。初鴨と他の自然、人間及び作者自身を取合せる句の方が作りやすいでしょう。今月の選で、初鴨を描写したのは「水尾真つすぐ」の句のみです。他は取合せです。
第1回真砂女俳句大賞
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。
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宮崎 洋 先生 コメント
傍題に「鴨来る」「鴨渡る」がある。鴨は早いものは八、九月ごろに北方から日本に渡ってくる。その一番手が「初鴨」。五、六羽の小グループであることが多い。「初」の付く季語はなべて同じだが、その季節の到来を愛でる思いがある。
山野洋一さんの句。大きな湖が、波を立てず静かに今か今かと初鴨を待っている。その様子を「息ととのへて」と表現したのが見事。それは実は作者のことだろう。初鴨への思いの溢れる句。
坂口いちおさんの句。この地は、作者の故郷だろう。故郷への愛情、初鴨への愛情、そして老いた自分自身への愛情。繰り返し読んでいると、作者の幸を少し分けて貰えそうだ。
岩崎美範さんの句。作者が初鴨を発見したとき、これまでの曇り空がすっかり晴れあがっていた。「まさをなる空を従へ」の措辞が上手い。この句も初鴨への愛情が溢れる。
伊藤順女さんの句。夕日が大きい理由は分からないが、大きな夕日に、長旅を終えた初鴨及び初鴨を待っていた作者の安堵感が象徴されている。安堵感故に夕日が大きく見えたのかも知れない。
今月の佳句。<初鴨や三々五々に来る園児 葦たかし>「三々五々」にこの地の子供たちの初鴨を喜ぶ気持が表れている。<初鴨の水尾真つすぐに引きにけり 山野洋一>「真つすぐ」がまことに秋らしい。<鴨の来てひと日を共に過ごしけり 木山満>待ちに待った初鴨の到来の喜び。明日も共に過ごすのだろう。<初鴨のそれぞれに名を付くる子よ 山本啓>作者の子だろうか、鴨を友のように思う気持。
「初鴨」そのものを描写してもいいのですが、新しみのある句を詠むのは苦労します。初鴨と他の自然、人間及び作者自身を取合せる句の方が作りやすいでしょう。今月の選で、初鴨を描写したのは「水尾真つすぐ」の句のみです。他は取合せです。
第1回真砂女俳句大賞
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。