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俳句庵2025年10月優秀賞発表

季題 10月 「茸狩り」

  • 茸狩り山は起こさぬやう歩く

    静岡県 城内幸江 様

  • 茸狩り里の名水またぎ行く

    神奈川県 沼宮内薫 様

  • 茸狩りの達人といふ高二かな

    茨城県 杉山滿 様

  • 老いてなほ力満ちくる茸狩り

    群馬県 坂口いちお 様

  • 茸籠抱いて落暉を追ひかくる

    宮崎 洋

宮崎 洋 先生 コメント

 茸狩(り)は、晩秋の山に生えるきのこを採ること。松茸狩に代表されるが、他のきのこに使っても構わない。人に荒らされぬ先に朝早く山に入るのは心がはずむ。(傍題)茸とり 松茸狩 茸籠 茸筵 茸山
 城内幸江さんの句。まだ薄暗い内に山に入った。山はまだ眠っている。その山の精霊たちを起こさないように静かに歩む。茸を含む精霊を畏れ敬うこころがある。
 沼宮内薫さんの句。茸狩と名水の取合せが面白い。山の中に湧いた清流を濁さぬようにまたぐ。里の名水や茸を大切にする心が見える。
 杉山滿さんの句。高校生の茸狩の達人。確かにいそうだ。「高校生」ではなく「高二」としたことで、リアリティが生まれた。
 坂口いちおさんの句。「老いてなほ力満ちくる」の後にはいろいろなものが付くだろう。その中で「茸狩」が最もふさわしいだろう。経験・知恵・体力・五感すべてを全開にしなければならない。

今月の佳句。
<祖父遺す絵図を頼りの菌狩 高野光司>祖父の絵図が宝物の地図のようで面白い。
<松茸の料理言ひ合ふ狩り始め 葦たかし>松茸料理の会話に花が咲くのも最初だけ。滑稽な句。
<茸狩り太古の人の面構へ 坂口いちお>縄文人も茸狩をしていたに違いない。その面構えはいつの世も変わらないのだろう。
<茸狩りの夢見て笑むや数学者 野中泰風>数学者が黒板いっぱいに数式を書いたまま、茸狩の夢を見ている。取合せの妙。

 茸狩の楽しい句が多く投句されました。ただ発想が非常に似ています。「熊の鈴」「祖父や父の秘密、祖父や父が頼り」「秘密の場所」「採れないときはスーパー」「友達が冷たい」「毒キノコばかり」「終わった後の鍋」等。俳句は新しみが必要です。そのためには作者自身の発見が大切です。自分自身の五感を全開にして発見してください。

第1回真砂女俳句大賞

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

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