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俳句庵2025年11月優秀賞発表

季題 11月 「冬紅葉」

  • 仰臥する母に手鏡冬紅葉

    兵庫県 岩永靜代 様

  • 冬紅葉国衆一揆の城の址

    北海道 にしやまかつお 様

  • 冬紅葉まだ恋なんて言つてるの

    神奈川県 山野洋一 様

  • 日々記憶うすれゆく妻冬紅葉

    神奈川県 井手浩堂 様

  • 冬紅葉背の杉を屏風とし

    宮崎 洋

宮崎 洋 先生 コメント

 季語「冬紅葉」 傍題に「残る紅葉」がある。冬紅葉は冬になっても散らずに枝に残る紅葉をいう。秋よりも一層澄み渡る空に残る紅葉は美しい。散りゆく紅葉、地面に散り敷く紅葉は「散紅葉」といい、別の題になるので注意が必要だ。

 岩代靜代さんの句。持たせた手鏡で紅葉を楽しんでいた母。冬になり紅葉が散り、枝には少しの葉が残るだけとなった。しかし残った葉はなかなか散らず母を慰めてくれる。母への心情を冬紅葉に託して詠んだ句。
 にしやまかつおさんの句。国衆は土着の武士。その一揆は激しかったことだろう。残る紅葉に怨念が乗り移っているようだ。
 山野洋一さんの句。口語にして作者の気持がよく伝わる。恋はいくつになってもしたいもの。冬紅葉が老いらくの恋を象徴する。作者の否定の言葉にも優しさが滲む。口語の効果だ。
 井手浩堂さんの句。記憶がうすれてゆくのは悲しい。冬紅葉のように大切なものだけは残るといいのだが。冬紅葉にいまの状態がいつまでも続いて欲しいとの作者の思いが感じられる。

今月の佳句。
<訪ふ人の安堵の顔や冬紅葉 町田勢>
<黒きまでくれなゐ極め冬紅葉 鈴木三郎>
<三姉妹逃れし谷や冬紅葉 葦たかし>
<晩学の窓に一本冬紅葉 鈴木三郎>

 「冬紅葉」は説明通り枝に残っている紅葉。しかし投句には「散紅葉」と混同しているものが多く見られた。「流れゆく」「散り敷く」「栞」「地を走り」「拾ふ」「積る」等。これは皆「散紅葉」の句だ。

第1回真砂女俳句大賞

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

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