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俳句庵 2022年7月優秀賞発表

季題   7月 「夜の秋」

  • 最終便発つ駅頭や夜の秋

    山形県 庄司 芳彦 様

  • 讃美歌を口遊みゆく夜の秋

    ブラジル 佐藤 慶子 様

  • 鉛筆を削り揃へし夜の秋

    岐阜県 金子 加行 様

  • 信濃路や牛の長鳴き夜の秋

    埼玉県 守田 修治 様

  • 故郷へ帰る列車や夜の秋

    安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 七月の題は「夜の秋」です。晩夏になり、夜はすでに秋の気配の漂うことを言います。嵗時記の解説には、「夜の秋を夏の季語とすればこそ詩情があり、秋の季語だったら、何れ変哲もない言葉です。」とあります。一瞬の感触です。今月も四六〇の出句の中から、三〇の句を選び、更に選考を重ね、最終決定句としました。
 優秀賞の庄司芳彦さんの句。「発つ」は出発するの意です。既定便の最後の列車の出発する駅頭です。間もなく発車ベルが鳴る頃です。毎日のことながら、そこには緊張が走ります。その思いを、作者は、「夜の秋」としました。駅頭と気象が善く釣り合っています。
 佐藤慶子さんの句。讃美歌は辞書には「キリスト教で、神または救い主を讃美する歌」とあります。原句の中七は「歌ふて」でしたが、「て」が強すぎるので、「口遊みゆく」としました。如何にもブラジルの地域感があります。「夜の蟬」も素直に味わえます。
 金子加行さんの句。日常、鉛筆を善く使う生活なのでしょう。「削り揃へし」の中七がそのことを善く表現してあります。同時に、「揃へし」に作者の傾向も窺えます。「夜の秋」が活きています。
 守田修治さんの句。上五の「信濃路」に、中七の「牛の長鳴き」が善く呼応しています。作者の住所は埼玉にあります。この句は旅行時でしょう。「夜の秋」も上五中七を良く支えています。正に夜の秋の景です。
 今月の佳句。〈灯を消して波の音聞く夜の秋 木原登〉。〈ベランダに妻と月見る夜の秋 井手浩堂〉。〈一つ灯に妻との写経夜の秋 西山勝男〉。〈一病を慰め合えり夜の秋 岩川容子〉。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。

今月の応募作品

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